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幼き姫君
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この国はもう終わる。
そんな事は子供の私でも分かった。でも、どうしてこの国が終わるのか私は分からなかった。何度も何度も考えたけど、この国が終わる必要がどこにもなかった。私は、お父様に私の思いを伝えた。けれど、聞いてはくれなかった。戦で忙しいのだという。
戦とは、人が殺し合うものだといつの日か城下町に居たお兄さんに教えてもらった。お兄さんは、戦や争いのない世界にする為には必要な事なんだと仰っていたけれど、きっとそれは本心でないことも分かった。お兄さんは、戦や争いをする事が苦手だと言っていたもの。それに、その言葉を聞いた私は国の言いなりになるくらいならよそへ行けばいいと思ってしまったの。私の国の民なのにその民を見捨てるようなことを思ってしまったの。私は、その時必要とあれば民をも見捨てる酷い姫なのだと思ったわ?でも、本心でないことも私自身が一番良く分かっていたの。私は、この国が終わってしまってもこの国の民と共に他の国へ移動しようと思ってる。いつの日かまたこの国の地を踏める様にって祈りながら。
そして、ついにその時が来た。敵国との戦が始まる。私は、お父様に言われた通り軽装になり食料等は出来るだけ纏めて大きな鞄に詰め込んだ。大きな鞄を肩にかけて私は唇を噛み締めながら戦のない他国へと移動する。その時傍に居てくれたのは、郁(いく)という赤髪で金色の目をしたお兄さんと、緑玉(りょくぎょく)という黄緑の髪をお下げ髪にし、どんな時も笑顔を崩さないお姉さんだ。いきなり他国へと移動する様に言われた時は正直不安だったが、この二人がそばに居てくれたお陰で私は外でも安心して眠る事が出来た。それに、二人は戦闘なれしているのか敵に見付かっても直ぐに倒してくれた。この時まで、私は、人が傷付くところや死んでいくところを見た事がなかったから、正直驚いたし胸の辺りがズキズキと傷んだ。二人の傷の手当をしている時でさえ、二人の顔をよく見れなかった。でも、たくさんの傷を負っても私のそばから離れなかった二人を、私は見捨てたくないと思ったし二人の為に何が出来ることはないかいつでも考えてたけど、ウェンディ・スキア・ダルセーニョ王国に無事に着いても何も思い浮かばなかった。城に向かって歩いていく。長く続く沈黙。それは、そうだろう。二人は私を護りながらこの国を目指したんだから。
「…こんな私を、護りながらこの国まで一緒に来てくれた事感謝します。」
そう私が小さな声で言うと郁は疲れた顔から一気に明るい笑みを零し緑玉はいつもにこにこしていたがこの時だけは心の底から嬉しそうにしていたと思う。これからどうなるかは分からないけれど、この二人と共にずっと歩んでいきたいと私は思った。
end
そんな事は子供の私でも分かった。でも、どうしてこの国が終わるのか私は分からなかった。何度も何度も考えたけど、この国が終わる必要がどこにもなかった。私は、お父様に私の思いを伝えた。けれど、聞いてはくれなかった。戦で忙しいのだという。
戦とは、人が殺し合うものだといつの日か城下町に居たお兄さんに教えてもらった。お兄さんは、戦や争いのない世界にする為には必要な事なんだと仰っていたけれど、きっとそれは本心でないことも分かった。お兄さんは、戦や争いをする事が苦手だと言っていたもの。それに、その言葉を聞いた私は国の言いなりになるくらいならよそへ行けばいいと思ってしまったの。私の国の民なのにその民を見捨てるようなことを思ってしまったの。私は、その時必要とあれば民をも見捨てる酷い姫なのだと思ったわ?でも、本心でないことも私自身が一番良く分かっていたの。私は、この国が終わってしまってもこの国の民と共に他の国へ移動しようと思ってる。いつの日かまたこの国の地を踏める様にって祈りながら。
そして、ついにその時が来た。敵国との戦が始まる。私は、お父様に言われた通り軽装になり食料等は出来るだけ纏めて大きな鞄に詰め込んだ。大きな鞄を肩にかけて私は唇を噛み締めながら戦のない他国へと移動する。その時傍に居てくれたのは、郁(いく)という赤髪で金色の目をしたお兄さんと、緑玉(りょくぎょく)という黄緑の髪をお下げ髪にし、どんな時も笑顔を崩さないお姉さんだ。いきなり他国へと移動する様に言われた時は正直不安だったが、この二人がそばに居てくれたお陰で私は外でも安心して眠る事が出来た。それに、二人は戦闘なれしているのか敵に見付かっても直ぐに倒してくれた。この時まで、私は、人が傷付くところや死んでいくところを見た事がなかったから、正直驚いたし胸の辺りがズキズキと傷んだ。二人の傷の手当をしている時でさえ、二人の顔をよく見れなかった。でも、たくさんの傷を負っても私のそばから離れなかった二人を、私は見捨てたくないと思ったし二人の為に何が出来ることはないかいつでも考えてたけど、ウェンディ・スキア・ダルセーニョ王国に無事に着いても何も思い浮かばなかった。城に向かって歩いていく。長く続く沈黙。それは、そうだろう。二人は私を護りながらこの国を目指したんだから。
「…こんな私を、護りながらこの国まで一緒に来てくれた事感謝します。」
そう私が小さな声で言うと郁は疲れた顔から一気に明るい笑みを零し緑玉はいつもにこにこしていたがこの時だけは心の底から嬉しそうにしていたと思う。これからどうなるかは分からないけれど、この二人と共にずっと歩んでいきたいと私は思った。
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