看病

星海輝

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看病

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ある日、熱を出してしまったお姫様は仕方なく今日の仕事を休む事を部下に伝えた。今は昔の様に体調を崩したりはしないが、こうして仕事を休むことになるとお姫様は自分を責める癖があった。何も出来ない自分を責めても解決しない事は分かっていたが、それでも何も出来ない自分が嫌いなお姫様はこうして自分を責めてばかりいた。

「邪魔しまーす!」

間延びした声でそう言ってお姫様の部屋に入ってきたのはアインだ。看病に来たのか両手で沢山の読み聞かせの本を持っていた。

「…私は、小さな子供ではないから別に看病などしなくて良いんだぞ?」

お姫様は小首を傾げながらアインにそう言うと、アインは折角来たのにそれはないだろうと言いたげな顔をした後こう言った。

「でも、一人だと考えなくていい事まで考えちまうだろ?だったら、こうして読み聞かせしてやる方が良いと思ってな?」

「ま、まあ、確かにそうだが、この年になってから読み聞かせなどされたことがないからな…」

「そんな事言わずにオレに任せとけって!」

自信満々に笑って言うアインに対しお姫様は少し不安に思うもアイン言う通りにしようと思えば小さく頷いた。

「じゃあ、読むぞ?桃太郎×浦島太郎。」

「ちょっと待て!」

アインがタイトルを読み上げた瞬間にお姫様は自分が何を読み聞かせさせられるのか怖くなり制止の声を掛けると、アインは不満そうな顔でお姫様を見ては口を尖らせながらこう言った。

「なんだよ?今お母さんの気持ちになって読み聞かせてやろうと思ってんのに!」

「お母さんだろうがお婆ちゃんだろうが自分の子にわざわざ腐を連想させるものは読まんだろ!」

「ノインは平気で読んできたわ!!!!」

「…え?」

アインの返しにお姫様は固まってしまった。ノインは、いつもアインには優しくしていたからそれはないだろうと思っていたがまさかノインがアインに腐を連想させるものを読み聞かせていたのだと知ると何故だかお姫様はいたたまれなくなり布団を被ろうと布団を掴んだが、アインはそんなお姫様の行動などお見通しなのか掛け布団を引き剥がしにっこりと笑った。

「まず、この絵本を読んでから次はこっちの絵本を読むからな?」

「何故、どれもこれも腐を連想させるものばかり読もうとするんだ!!もっと、ノーマルラブ的なのもあっただろう!!」

怒りを露にするお姫様に対しアインはにっこり笑ってこう言った。

「いや、ノーマルだろうが、百合、薔薇、だろうが読み手はオレだ。聞き手の言い分なんか聞かん。」

「……病人なのだからもっと病人を気遣ったらどうだ?」

「病人でも反抗する元気があるなら最早病人とは言わない。」

「理不尽にも程がある。」

「うるさい。黙って物語に耳を傾けろ。」

そう言うとアインは、お姫様に優しい声で絵本を読み聞かせた。お姫様は納得はいかないもののアインの読む物語に少しだけ惹かれていった。

end
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