誰もが誰かに嫉妬する

麻木香豆

文字の大きさ
上 下
21 / 22
第六章

第二十話

しおりを挟む
柳さんは黙った。

「式の後にあれだけど……バンドのメンバーが芹香さん好きだってこと知っておきながら……誰と結婚することも告げずに余興やってと言ってから実は芹香さんと結婚します、は……みんなも今日まで2人をただお祝いしようって一心で……でも悔しくて悔しくて」

こんなこと結婚式の今日の今日に言うことじゃないってわかってるのに。

「とくに郁弥にいちゃんなんて……ううん、大貴くんも海斗くんも……わたしだって……」

感情任せで言ってしまった。余興の時も最後気持ちが込み上げて涙が出た。そしたら幸太以外みんな泣いちゃって。

芹香さんも泣いていた。

柳さんの表情はあえて見なかった。

「……ごめん。本当に。僕は性格が悪い。ちゃんと言えたらぶつけれたらよかったのに酷い男だ」
「ごめんなさい、こんなこと言うことじゃないよね」
「……君みたいにそうやって言えたらよかったのにな。高校生の君にそんなこと言わせた僕が悪かったよ。でも……ギターも歌も本当に良かった」
……。

「そうだよ、何やらせてくれるんだよ柳」

その声は……海斗くん!

「ほんとーになぁ……ただ僕が芹香ちゃんにちょっかい出してたからってさぁ」
大貴くんも!

「いくらなんでもここで結婚式っつーのもなぁ」
郁弥にいちゃん……みんな寝てたのに。

「最初大貴が起きて下のぞいたら二人で話してたから……」
みんなが集まった。柳さんはタジタジ。ああ、このまま喧嘩になっちゃうかなぁ。

「それによ、また海外に行くなんて」
そう、最後の挨拶の時に柳さんはそう言った。わたしと幸太は芹香さんから聞いてたから驚かなかったけど。

郁弥にいちゃんが柳さんのところに行く。喧嘩っ早かったお兄ちゃんだから……大丈夫かな。わたしは柳さんの前に無意識に立ってしまった。


「柳、今度改めて送別会……開かせてくれねぇか」
「えっ」
「……泣いちまって最後散々だったからな。やり直させてくれ。芹香の前で恥ずかしいとこ見せて俺ら面目ない」

郁弥にいちゃんは笑った。後ろの大貴くんや海斗くんも。

「ああ、頼んだ」
柳さん……。

「よし、決まった! そうそう、成美ちゃんはあともー少し特訓して高い声出せるようにしようか」
「え、わたしまたボーカルするの?」
「当たり前よ、新生バーディズのボーカルは成美ちゃんに決定!」

再結成?!

「そうだなぁ、また幸太と練習して。あいつは俺の弟子だからな」
……わたしの演奏よかったってさっき言ってたのはお世辞だったかぁやっぱり。柳さんに本音言われたらまた頑張るしかないかなあ。

海斗くんや大貴くん、郁弥にいちゃんたちもわんやわんややってる。

なんだかんだで仲良いんだから……。

「ねぇ、成美ちゃん」
「なあに? 柳さん」
じっとわたしの顔を見てる。
「本当は一番嫉妬してたのは君にだったんだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...