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第五章
第十六話
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「……大人げないと思ってる。自分も」
園長室に通されて授業を終えた海斗くんがやってきた。
「ほんと、園長やってるんだね」
「まぁね。数年前には考えもつかなかったなぁ。芹香は笑ってた」
「へぇ……って?」
笑ってた、てことは……。
「少し前に会ったんだ。あの時はそのーって。互いに変わっちまったなぁとか言ってな」
海斗くんが出してくれた麦茶がちょうどいい塩梅。
「……ここまできてもらって申し訳ない。大の大人が高校生に説得させにこられるとはな」
「いえ……」
「芹香の新しい門出だ。ちょっとしばらく気持ちの切り替えができなかっただけだ」
……幼馴染なのに、ずっと好きだったのに告白できなかったのかな。
「ほんとはな、帰国したらプロポーズしようと思ったんだよね」
「うそ、告白の前に?」
「歳も歳だし、あっちもバツイチだし。と思ったら……なんだよ。経験積んで帰ってきて子供できて結婚かよ……よりによって相手は柳」
そりゃ悔しいよね。てことはやはり海斗くんも手紙とかもらってなかったのかな。
「家族ぐるみの付き合いだったのによ、はぁ。母ちゃんたちにもお前がうかうかしてるから取られちまうんだって言われちゃったよ」
ああ、それはしんどい。
「……次の練習はいつだ?」
と海斗くん。そいや大貴くんには聞かれなかったが。
「今日の夕方にでも!」
幸太がドンっと立ち上がった。海斗はびっくりしてたが頷いた。
「……いっちょやりますか」
よしよし、きたきた。
「柳がよ、俺らに余興をやらせたことを後悔させてやる!!」
そ、そっち?! 相変わらず大人気ない。わたしは隣にいる幸太と目を合わせて笑った。
「何笑ってんだよ」
「いいえ。ガツンとぶつかっていきましょう、バンドは熱量が大事です」
「おう! まかせとけ!」
なんかいつの間にか幸太がバンドを仕切ってる気もするけどわたしにはできなかったことだなぁ。長く付き合いはあるけど……幸太のこと見直した。
幼稚園からの帰り道。
「じゃあ早速お兄ちゃんに電話してバンドスペース抑えてもらうよ」
「そうだね。それか大貴くんの楽器屋さんのスタジオって借りれないかなぁ。大貴くんもその方が来てくれやすいだろ」
「そうね、じゃあ……あっ」
とわたしがスマホを取り出した時だった。
「あら2人とも……」
芹香さんだった。偶然すぎる。
「ねぇ、よかったら……お茶しない?」
彼女の微笑みはいつ見ても美しい。
園長室に通されて授業を終えた海斗くんがやってきた。
「ほんと、園長やってるんだね」
「まぁね。数年前には考えもつかなかったなぁ。芹香は笑ってた」
「へぇ……って?」
笑ってた、てことは……。
「少し前に会ったんだ。あの時はそのーって。互いに変わっちまったなぁとか言ってな」
海斗くんが出してくれた麦茶がちょうどいい塩梅。
「……ここまできてもらって申し訳ない。大の大人が高校生に説得させにこられるとはな」
「いえ……」
「芹香の新しい門出だ。ちょっとしばらく気持ちの切り替えができなかっただけだ」
……幼馴染なのに、ずっと好きだったのに告白できなかったのかな。
「ほんとはな、帰国したらプロポーズしようと思ったんだよね」
「うそ、告白の前に?」
「歳も歳だし、あっちもバツイチだし。と思ったら……なんだよ。経験積んで帰ってきて子供できて結婚かよ……よりによって相手は柳」
そりゃ悔しいよね。てことはやはり海斗くんも手紙とかもらってなかったのかな。
「家族ぐるみの付き合いだったのによ、はぁ。母ちゃんたちにもお前がうかうかしてるから取られちまうんだって言われちゃったよ」
ああ、それはしんどい。
「……次の練習はいつだ?」
と海斗くん。そいや大貴くんには聞かれなかったが。
「今日の夕方にでも!」
幸太がドンっと立ち上がった。海斗はびっくりしてたが頷いた。
「……いっちょやりますか」
よしよし、きたきた。
「柳がよ、俺らに余興をやらせたことを後悔させてやる!!」
そ、そっち?! 相変わらず大人気ない。わたしは隣にいる幸太と目を合わせて笑った。
「何笑ってんだよ」
「いいえ。ガツンとぶつかっていきましょう、バンドは熱量が大事です」
「おう! まかせとけ!」
なんかいつの間にか幸太がバンドを仕切ってる気もするけどわたしにはできなかったことだなぁ。長く付き合いはあるけど……幸太のこと見直した。
幼稚園からの帰り道。
「じゃあ早速お兄ちゃんに電話してバンドスペース抑えてもらうよ」
「そうだね。それか大貴くんの楽器屋さんのスタジオって借りれないかなぁ。大貴くんもその方が来てくれやすいだろ」
「そうね、じゃあ……あっ」
とわたしがスマホを取り出した時だった。
「あら2人とも……」
芹香さんだった。偶然すぎる。
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彼女の微笑みはいつ見ても美しい。
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