冬月シバの一夜の過ち

麻木香豆

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極上な男

第四話 こいつじゃないとダメだ

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 シバはそこから先は李仁に誘われるがままであった。そういう始まりも何度か経験はある。その方が正直楽な時もあるようだ。

 しかし身体が男の相手は初めてだ。キスも。

 シバが男を抱くのが初めてだと言うと李仁はわかったと言い、2人で店を出て歩いてすぐのラブホテルに向かった。

「ここは男性同士も歓迎してるの」

 ラブホテルは男女だけのものではない、中には同性同士の利用はNGのところがあるのはシバも捜査で知っていた。もちろんその反対のケースも。

 それよりも今から自分は男を抱くことになるのか、ほんのり酔った状態で李仁に任せる。

 女と変わりない仕草、その魅力的な中性的な李仁を見るとシバはもっと彼を知りたくなってきた。
 耐えきれずラブホテルのエレベーターに乗り込む際にシバは李仁にキスをした。

「こうやって女の子にも強引なの?」

 と笑う李仁にさらにシバはキスをして舌を捻じ込ませる。

 キスは女と変わらない……そうシバは感じた。しかし抱きしめると自分と同じ背丈で骨骨しい身体、そして同じ部分が反応し合っていることに李仁は男であることを思い出した。

「キスがすごくお上手ね、気に入ったわ」

 そう李仁はいい、笑う。シバは鼻で笑い、またキスをしだす2人。

 部屋の階にエレベーターが着くとしばらく降りずにキスの余韻を味わい、シバが李仁の華奢な腰に腕を回して部屋に向かった。そして鍵を開け玄関に入るなり2人は服を脱ぐ。

 互いに下着のみになった時に李仁が

「女性のときもこう、部屋に入ってすぐ……?」

 と聞くと

「そういう事もなくはない。まぁ大抵風呂入ってからだな」

 と素直に答えるシバ。体を引き寄せぎゅっと抱き合う。

「にしてもさっきから女の時はこう、とかなんたら聞くけどさ。気にしてんのか」
「……聞いてみたかったのよ。わたしはあまりノンケとはしないから。ノンケってめんどくさいし女と同じ感覚でされても困るのよ」
「……そういうもんだろ」

 李仁はそれを聞いて笑って体から離れた。

「じゃあシャワー浴びてきて。私も準備するし、そのあとシャワー浴びる」
「お、おう」
 と李仁はトイレにカバンを持って入り、シバはシャワー室に入った。

 部屋に入って思ったが同性同士専用のラブホも普通のラブホもかわらないなぁと思ってると、ふと気づいた。

「……俺は挿れるほうでいいんだよな? でもあれに挿れるんだよな?」

 その確認を李仁にする物なんだろうか、そんなことしたらデリカシーのなさに呆れられるのではないのかと思いつつもシャワーを浴びる。

 湯舟に浸かったときに李仁がやってきた。脇腹、下腹部に無数の刺青が施されている李仁の体。
 綺麗な顔立ちではあるが先ほどチラッとシバが耳に無数のピアスの穴を見つけたときにはこれは只者ではないと思ってからの刺青。

 瀧本からピアノ教師の麻薬取引の情報を知る人として紹介されたのが李仁だということを思い出し、相当ヤバい情報を握っているのかとシバは思った。

「やだ、まじまじ見ちゃって。これは昔の彼氏が彫り師でね……」
「すげぇ細かいし痛かったろ」
「まぁね。ある意味罰よ」
「罰?」
「私が浮気するから」
「……だからと言って肌に刻み込むんだろ。滅多なことがない限り消せないだろ」
「そうよね。皮膚移植かしら。大抵お尻の皮膚使うらしいけどお尻もこの通り……」

 あっけらかんな李仁の返事にやはりこいつは只者ではない、と思いつつもやはり仕草や表情がそれを補うかのようにシバの心にグイグイと入っていく。2人湯舟に入り、キスをする。

「なぁ、聞きたいが」
「例のこと?」

 あ、そういえば自分は麻薬ルートの話を聞こうとしていたのに……とシバは再び思いながらも

「あ、それもあるのだが」

 とやはり気になることが先に出る。

「俺は、挿れる方でいいんだよな?」

 真剣にそう聞くと李仁は笑う。

「真剣な顔してそんなこと聞く? ……私はどっちでもいいけど大体はネコだから。さっきもその用意してきた」
「……ネコ……ああ、女役か」
「まぁそうともいう」
「挿れるんだよな、あれに」
「ええ、あれに」

 2人は見つめ合って笑う。


 そして……すぐその後、二人は結ばれるのであった。最初は抵抗あったシバだが理性がコントロールできなくなっていた。

「で、有力情報とやらを」
「……もう、こんな体勢で聞く?」
「もったいぶらせんな!」
「あっ!!」
「早く! 教えろ! 何を知ってんだよ、何握ってんだよ!」

 シバは力強く李仁に当たる。李仁はアァッっと色っぽく声を上げる。それもシバにとっては
 興奮の起爆剤にもなる。李仁は息も絶え絶えに悶えながら

「ほんと、強引な人……好き、そんな人が」

 と耳元で囁かれたシバはもう心は折れて李仁が満足するまで愛し続けた。

 そして果て切ったときにようやく李仁の口から有力情報を得たのである。
 快楽と引き換えに、裏の情報を横流しをする李仁にシバはそれから数年以上もあてにしながらもそれ以外でも欲するようになった。彼のことを。







 他の男ではダメだ、李仁という男にしかそそられない。不思議な感覚だったと今を思えば……。
 ジュリという男で2人目になるのだがやはり違う。全く違う、全然違う……。

 シバは心の中で李仁に会いたいという気持ちが強まるが……そういえばもう数ヶ月前だったかと。

「シャワーは奥にあるから浴びてきたら」
 回想している間にジュリはもうシャワーを浴びて元の服をきて整えていた。
「風呂はないのか」
「学校に風呂なんてあるのかしら。シャワーでざっと流してとっとと剣道場行くわよ」
 ジュリは椅子に座って足を組んだ。

「違う、やっぱりあいつとは」
 そう呟きながらシャワー室に入った。

「何よ……あいつって」
 そんなジュリの声も聞こえたが。
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