14 / 59
第四章 心の傷
第十四話
しおりを挟む
「何でここにいるの、宮部くん」
「……ごめん、昨日あれからお前の帰りつけてった」
あっ、とクラスメイトに揶揄されて恥ずかしくてダッシュで清太郎の下宿先の親戚の弁当屋の前を走ったことを思い出した藍里。
あれからかなりの距離があるのにつけてこられたのかと思うと自分のセキュリティが甘いと反省する。
「あと、下のファミレス……客として入った」
「えええっ!」
「おらんかったな」
「……私、調理担当で」
「あ、働いたったんか。バイトしてるんやろ? って聞こうと思ってたんやけど」
「しまった、認めてしまった」
清太郎は笑った。藍里もつられて笑う。彼女は昨日はミスをして中で怒られていたが、まさか客として清太郎がいたのか、と思うとどこかで自分が作ったものがカレの口に入ったのかと思うと……苦笑いしかできない。
「あそこのウエイターさんたち、かなりピリピリしてて笑顔ないな」
「まぁ、色々あってさ」
「色恋沙汰?」
「……まぁそういうこと。てかわかるの」
「なんとなく」
藍里は参ったなぁという表情で清太郎と学校までの道のりを歩く。
「ここまで学校と逆方向じゃん」
「んー、確かにだけど散歩と思えば」
「散歩って……てかストーカーだよ」
「人聞き悪いな。あっちって言いながら反対方向に帰るしさ。まぁ色々あったみたいだけどお前のこと守ってやれるの、俺だけだろ」
ドキン
藍里は似たような痛みを清太郎の言葉でも感じてしまう。生理痛なのか、なんなのか。
時雨がいなければもうすぐにキュンとして朝からギュッという案件である。
「……なにぎざってるのよ。そんなキャラだっけ」
「るっせぇ。小学校の時に男子たちにちょっかい出されて泣いてたのを助けたのは俺だろ」
「そうだったけど……」
「そうやら」
「そうでした」
清太郎はスタスタと歩いていく。
「待ってよ、待って」
「なんだよ、さっきはストーカーとか言って」
「ごめん、ストーカーは言いすぎた」
「罰として走って学校まで行くぞ!」
と走り出す清太郎。だが藍里は走れない。生理がきたばかりだから。体が重い。
「何だよー、走れ!」
あっという間に遠くまで行く清太郎。
「歩いて行きたいー」
「ここまでだけでも走れ!」
「いーやーだー!!!」
と藍里が叫んだ瞬間、下腹部から何かどろっとしたものが出たのがわかった。でもそれは吸収されるが不快感でしかなかった。下着の上から重ねて黒色の腹巻き型パンツも履いているのだがそこにもナプキンをセットして安心感を増しておく。
生理の経血の汚れの失敗をしたくない、数年の経験が編み出した裏技でもある。
清太郎は容赦ない。藍里は走らず出来るだけ歩数狭めに早く歩いていく。
「おーそーいっ」
「むーりー!」
「……今日は無理か」
「無理」
「わかった。藍里が走れそうな時は学校まで走るぞ」
「うん……て、これからも?」
清太郎は頷いた。藍里は顔が真っ赤になる。彼がわざわざ学校とは正反対の家まで迎えにきて一緒に登校するということなのだ。
「歩くときは離れて」
「……まぁ、な」
と2人を数人の生徒たちが通り過ぎていく。
「恥ずかしい」
「……顔真っ赤だ、バカ」
そんな朝。
「……ごめん、昨日あれからお前の帰りつけてった」
あっ、とクラスメイトに揶揄されて恥ずかしくてダッシュで清太郎の下宿先の親戚の弁当屋の前を走ったことを思い出した藍里。
あれからかなりの距離があるのにつけてこられたのかと思うと自分のセキュリティが甘いと反省する。
「あと、下のファミレス……客として入った」
「えええっ!」
「おらんかったな」
「……私、調理担当で」
「あ、働いたったんか。バイトしてるんやろ? って聞こうと思ってたんやけど」
「しまった、認めてしまった」
清太郎は笑った。藍里もつられて笑う。彼女は昨日はミスをして中で怒られていたが、まさか客として清太郎がいたのか、と思うとどこかで自分が作ったものがカレの口に入ったのかと思うと……苦笑いしかできない。
「あそこのウエイターさんたち、かなりピリピリしてて笑顔ないな」
「まぁ、色々あってさ」
「色恋沙汰?」
「……まぁそういうこと。てかわかるの」
「なんとなく」
藍里は参ったなぁという表情で清太郎と学校までの道のりを歩く。
「ここまで学校と逆方向じゃん」
「んー、確かにだけど散歩と思えば」
「散歩って……てかストーカーだよ」
「人聞き悪いな。あっちって言いながら反対方向に帰るしさ。まぁ色々あったみたいだけどお前のこと守ってやれるの、俺だけだろ」
ドキン
藍里は似たような痛みを清太郎の言葉でも感じてしまう。生理痛なのか、なんなのか。
時雨がいなければもうすぐにキュンとして朝からギュッという案件である。
「……なにぎざってるのよ。そんなキャラだっけ」
「るっせぇ。小学校の時に男子たちにちょっかい出されて泣いてたのを助けたのは俺だろ」
「そうだったけど……」
「そうやら」
「そうでした」
清太郎はスタスタと歩いていく。
「待ってよ、待って」
「なんだよ、さっきはストーカーとか言って」
「ごめん、ストーカーは言いすぎた」
「罰として走って学校まで行くぞ!」
と走り出す清太郎。だが藍里は走れない。生理がきたばかりだから。体が重い。
「何だよー、走れ!」
あっという間に遠くまで行く清太郎。
「歩いて行きたいー」
「ここまでだけでも走れ!」
「いーやーだー!!!」
と藍里が叫んだ瞬間、下腹部から何かどろっとしたものが出たのがわかった。でもそれは吸収されるが不快感でしかなかった。下着の上から重ねて黒色の腹巻き型パンツも履いているのだがそこにもナプキンをセットして安心感を増しておく。
生理の経血の汚れの失敗をしたくない、数年の経験が編み出した裏技でもある。
清太郎は容赦ない。藍里は走らず出来るだけ歩数狭めに早く歩いていく。
「おーそーいっ」
「むーりー!」
「……今日は無理か」
「無理」
「わかった。藍里が走れそうな時は学校まで走るぞ」
「うん……て、これからも?」
清太郎は頷いた。藍里は顔が真っ赤になる。彼がわざわざ学校とは正反対の家まで迎えにきて一緒に登校するということなのだ。
「歩くときは離れて」
「……まぁ、な」
と2人を数人の生徒たちが通り過ぎていく。
「恥ずかしい」
「……顔真っ赤だ、バカ」
そんな朝。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
どん底韋駄天這い上がれ! ー立教大学軌跡の四年間ー
七部(ななべ)
ライト文芸
高校駅伝の古豪、大阪府清風高校の三年生、横浜 快斗(よこはま かいと)は最終七区で五位入賞。いい結果、古豪の完全復活と思ったが一位からの五人落ち。眼から涙が溢れ出る。
しばらく意識が無いような状態が続いたが、大学駅伝の推薦で選ばれたのは立教大学…!
これは快斗の東京、立教大学ライフを描いたスポーツ小説です。
行くゼ! 音弧野高校声優部
涼紀龍太朗
ライト文芸
流介と太一の通う私立音弧野高校は勝利と男気を志向するという、時代を三周程遅れたマッチョな男子校。
そんな音弧野高で声優部を作ろうとする流介だったが、基本的にはスポーツ以外の部活は認められていない。しかし流介は、校長に声優部発足を直談判した!
同じ一年生にしてフィギュアスケートの国民的スター・氷堂を巻き込みつつ、果たして太一と流介は声優部を作ることができるのか否か?!
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【本編完結】繚乱ロンド
由宇ノ木
ライト文芸
番外編更新日 12/25日
*『とわずがたり~思い出を辿れば~1 』
本編は完結。番外編を不定期で更新。
11/11,11/15,11/19
*『夫の疑問、妻の確信1~3』
10/12
*『いつもあなたの幸せを。』
9/14
*『伝統行事』
8/24
*『ひとりがたり~人生を振り返る~』
お盆期間限定番外編 8月11日~8月16日まで
*『日常のひとこま』は公開終了しました。
7月31日
*『恋心』・・・本編の171、180、188話にチラッと出てきた京司朗の自室に礼夏が現れたときの話です。
6/18
*『ある時代の出来事』
6/8
*女の子は『かわいい』を見せびらかしたい。全1頁。
*光と影 全1頁。
-本編大まかなあらすじ-
*青木みふゆは23歳。両親も妹も失ってしまったみふゆは一人暮らしで、花屋の堀内花壇の支店と本店に勤めている。花の仕事は好きで楽しいが、本店勤務時は事務を任されている二つ年上の林香苗に妬まれ嫌がらせを受けている。嫌がらせは徐々に増え、辟易しているみふゆは転職も思案中。
林香苗は堀内花壇社長の愛人でありながら、店のお得意様の、裏社会組織も持つといわれる惣領家の当主・惣領貴之がみふゆを気に入ってかわいがっているのを妬んでいるのだ。
そして、惣領貴之の懐刀とされる若頭・仙道京司朗も海外から帰国。みふゆが貴之に取り入ろうとしているのではないかと、京司朗から疑いをかけられる。
みふゆは自分の微妙な立場に悩みつつも、惣領貴之との親交を深め養女となるが、ある日予知をきっかけに高熱を出し年齢を退行させてゆくことになる。みふゆの心は子供に戻っていってしまう。
令和5年11/11更新内容(最終回)
*199. (2)
*200. ロンド~踊る命~ -17- (1)~(6)
*エピローグ ロンド~廻る命~
本編最終回です。200話の一部を199.(2)にしたため、199.(2)から最終話シリーズになりました。
※この物語はフィクションです。実在する団体・企業・人物とはなんら関係ありません。架空の町が舞台です。
現在の関連作品
『邪眼の娘』更新 令和6年1/7
『月光に咲く花』(ショートショート)
以上2作品はみふゆの母親・水無瀬礼夏(青木礼夏)の物語。
『恋人はメリーさん』(主人公は京司朗の後輩・東雲結)
『繚乱ロンド』の元になった2作品
『花物語』に入っている『カサブランカ・ダディ(全五話)』『花冠はタンポポで(ショートショート)』
神様のボートの上で
shiori
ライト文芸
”私の身体をあなたに託しました。あなたの思うように好きに生きてください”
(紹介文)
男子生徒から女生徒に入れ替わった男と、女生徒から猫に入れ替わった二人が中心に繰り広げるちょっと刺激的なサスペンス&ラブロマンス!
(あらすじ)
ごく平凡な男子学生である新島俊貴はとある昼休みに女子生徒とぶつかって身体が入れ替わってしまう
ぶつかった女子生徒、進藤ちづるに入れ替わってしまった新島俊貴は夢にまで見た女性の身体になり替わりつつも、次々と事件に巻き込まれていく
進藤ちづるの親友である”佐伯裕子”
クラス委員長の”山口未明”
クラスメイトであり新聞部に所属する”秋葉士郎”
自分の正体を隠しながら進藤ちづるに成り代わって彼らと慌ただしい日々を過ごしていく新島俊貴は本当の自分の机に進藤ちづるからと思われるメッセージを発見する。
そこには”私の身体をあなたに託しました。どうかあなたの思うように好きに生きてください”と書かれていた
”この入れ替わりは彼女が自発的に行ったこと?”
”だとすればその目的とは一体何なのか?”
多くの謎に頭を悩ませる新島俊貴の元に一匹の猫がやってくる、言葉をしゃべる摩訶不思議な猫、その正体はなんと自分と入れ替わったはずの進藤ちづるだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる