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第三章 つきのもの
第十一話
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台所を通ると時雨が朝ごはんを作っていた時雨。藍里の弁当箱はもう保冷バッグに入っている。
「おはよ、早かったね」
「う、うん……あのね」
藍里は洗濯物のことを言おうとするとリビングから音が聞こえた。テレビがついている。そしてさくらが起きていることに気づく。
「さくらさんも、起きてるんだけどさ……」
「ママも早いよね」
「僕が起きたら起きちゃって5時からずっとリビングでテレビ見てたんだけど」
母親が機嫌悪い、それを聞くとひやっとする藍里。機嫌の悪いさくらは少し苦手なのだ。
すると時雨が台所の奥に藍里を手招く。そしてリビングにいるさくらに聞こえないように小声で伝えてくれた。
「さっきテレビで……前の旦那さんが出ててさ」
「パパ……」
「そっから機嫌悪くなってさ」
小声でこそっと話を少しいつもより近い距離でするのにどきっとする藍里。洗濯物のことはいつ言えばいいのか……もどかしくなる。
するとリビングから声がした。
「時雨くーん」
「はーい」
近くの距離でいられた時間はあっという間に終わった。
まだドキドキはしていた。
あんなに近くで話したのは藍里にとっては初めてだった。ほのかに匂うレモンの匂い、正直彼が初めて家に来た頃は女世帯の家に1人の男性が来たのもあってか、家の中の匂いが変わったのを藍里は感じとった。
父といた頃、父はいい香りの香水をつけていた。何と言う香水だったか、レモンの匂い……そして微かに彼の吸っていたタバコの匂い。
タバコの煙は苦手だったが父の匂いは嫌ではなかった。父と住まなくなってから次第に臭いはなくなり、なんか寂しくなった時期もあったが次第に慣れていくのが不思議と感じる。
そして久しぶりの男の人の匂い。そういえば、と藍里は思い出した。父と最後にいた頃の年齢と時雨の年齢は同じくらいだ。
時雨は今はタバコを吸わないが家に来た頃はタバコを吸っていたらしい。今は働いてないからと吸ってはない。きっと彼も香水かなにかレモン系のものを身体に纏っているのだろうか、来た頃にふと香る匂いに藍里は懐かしさを感じた。
「おはよ、早かったね」
「う、うん……あのね」
藍里は洗濯物のことを言おうとするとリビングから音が聞こえた。テレビがついている。そしてさくらが起きていることに気づく。
「さくらさんも、起きてるんだけどさ……」
「ママも早いよね」
「僕が起きたら起きちゃって5時からずっとリビングでテレビ見てたんだけど」
母親が機嫌悪い、それを聞くとひやっとする藍里。機嫌の悪いさくらは少し苦手なのだ。
すると時雨が台所の奥に藍里を手招く。そしてリビングにいるさくらに聞こえないように小声で伝えてくれた。
「さっきテレビで……前の旦那さんが出ててさ」
「パパ……」
「そっから機嫌悪くなってさ」
小声でこそっと話を少しいつもより近い距離でするのにどきっとする藍里。洗濯物のことはいつ言えばいいのか……もどかしくなる。
するとリビングから声がした。
「時雨くーん」
「はーい」
近くの距離でいられた時間はあっという間に終わった。
まだドキドキはしていた。
あんなに近くで話したのは藍里にとっては初めてだった。ほのかに匂うレモンの匂い、正直彼が初めて家に来た頃は女世帯の家に1人の男性が来たのもあってか、家の中の匂いが変わったのを藍里は感じとった。
父といた頃、父はいい香りの香水をつけていた。何と言う香水だったか、レモンの匂い……そして微かに彼の吸っていたタバコの匂い。
タバコの煙は苦手だったが父の匂いは嫌ではなかった。父と住まなくなってから次第に臭いはなくなり、なんか寂しくなった時期もあったが次第に慣れていくのが不思議と感じる。
そして久しぶりの男の人の匂い。そういえば、と藍里は思い出した。父と最後にいた頃の年齢と時雨の年齢は同じくらいだ。
時雨は今はタバコを吸わないが家に来た頃はタバコを吸っていたらしい。今は働いてないからと吸ってはない。きっと彼も香水かなにかレモン系のものを身体に纏っているのだろうか、来た頃にふと香る匂いに藍里は懐かしさを感じた。
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