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第二章 幼馴染
第七話
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2人は学校を出る。藍里は男女2人で帰るのは少し恥ずかしさを感じたが、他にも数組ほど男女で帰ってるのを見てまぁいいかと。
それよりも幼馴染との再会が嬉しい。
「そいや家はどっちなん」
「あっ……」
藍里は思い出した。母との約束を。友達やクラスメイトには家を教えないことという。
一応離婚をしたのだが、一度逃げた神奈川の移住先を父や祖父母たちに乗り込まれてさくらは大変な目にあったと。そのとき藍里は地元の小学校に通っていたから話しか聞いていないが。
現に父親や祖父母には今は会っていない。離婚が正式に決まる前に会っただけである。
別にバレても問題はないのだが、さくらはあの時の見つかった時のことをトラウマになっており、時折逃げていた時のように怯えたりフラッシュバックを引き起こすのか鬱になるのを藍里は見たことがあった。
だから極力教えないで、と。そしてバイト先は住んでる所の下にあるファミレスだが、当初はウエイトレスを頼まれたのだが同じ理由でさくらは店に対して店に出る仕事だけはやめてほしい、と頼み込んで渋々調理担当にさせてもらえたと言う。
「ごめん、そういう理由で……教えられないの。途中まで、あそこの角まで」
「……そうなんか。わかった。僕もこう一緒に帰ろうっていうのもあれだったな」
「ううん。大丈夫。クラスでもまだ馴染めないし、知ってる人がいるだけでもホッとするよ」
最初は互いにワクワクしていたのだが事情を伝えていくうちに2人の中は重い空気になる。いつかはわかってしまうことで、隠し事したくても隠せない藍里。
でもそれをしっかり飲み込んでくれる清太郎に、昔と変わらずなんだかんだで優しいとさらにドキッとさせられてしまう。
こうやって女性に優しいのは彼の姉が女の子は大事にしな、という厳しい言いつけがあるからだ。
そしてなんだかんだであっというまに藍里の言った角まで着いてしまった。
「……じゃあ気をつけて帰れよ。ぼくんちはあのすぐそこにある弁当屋、あそこがおばさんたちの店で店舗も構えてる。空いた時間には配達とかしてるから、なんかあったら朝こいよ」
実のところ、藍里もあの弁当屋の前を通る。でもこの角までと言ったからにはそれは伝えられない。
「電話番号だけでもええやろ。何かあったら電話しろ。あと裏には弁当屋の電話番号あるし」
と、その場で弁当屋のフライヤーに清太郎は電話番号を書いて藍里に渡した。
「……ありがとう」
「じゃあ、また明日な」
「うん」
と、清太郎の後ろ姿を見て見えなくなってから動こうと見ていた所だった。
「百田さんー、見てたよー」
藍里は振り返ると数人の女子たちがいたのだ。クラスメイトたちだった。
「ねえねえ、宮部くんとすっごい仲いいけど……幼馴染って本当?」
「あ、うん……」
「ねぇ、あんなに仲良いなら付き合っちゃいなよ」
「いや、それは」
藍里は女子たちに囲まれる。
「ごめん、バイトがあるから!」
と走り去った。すごく顔が真っ赤になってるのはわかる。もうなにがなんだかで、すっかりわすれて清太郎の弁当屋の前を走ってしまった。
「あれ? 藍里?」
声をかけられたのもわからないほど藍里は走った。
そしてマンションまで辿り着くとエレベーターに乗り、べたんと座り込んでしまう。
「……彼は幼馴染よ、ただのっ」
息を切らしてもまだドキドキは止まらなかった。
ピンポン
5階に着く。息も絶え絶え。なんとか部屋にたどりつき、ドアを開けた。
いい匂いがする。お肉の匂い。きっと時雨が仕事から帰ってくるさくらのためにご飯を作っているのだろう。さくらも走って疲れて食べたいとは思ったが、今日はバイト先で賄いを食べる予定だった。
「あら、おかえり。すっごい髪振り乱して何かあった?」
台所からぴょこんと顔を出す時雨。
「ただいま……美味しそうな匂い」
「ありがとう。エビチリ作ってるんだけど、食べる?」
確かにトマトケチャップの匂い、ニンニクの匂いもする。それらがきっとこの美味しそうな匂いなのだ。
「食べる!」
「少しニンニク多めにしちゃったけど……服着替えたら味見して欲しいな。今日バイトでしょ」
「うん。じゃあ今から着替えてくる」
そのあとエビチリを味見するどころかたくさん食べてしまった。
今まで食べたエビチリよりも全然味が違う、と感動してしまった。少しニンニクの匂いが強いが。
藍里は時雨のことが好きなのはこの彼の料理の腕前もあるかもしれない。
それよりも幼馴染との再会が嬉しい。
「そいや家はどっちなん」
「あっ……」
藍里は思い出した。母との約束を。友達やクラスメイトには家を教えないことという。
一応離婚をしたのだが、一度逃げた神奈川の移住先を父や祖父母たちに乗り込まれてさくらは大変な目にあったと。そのとき藍里は地元の小学校に通っていたから話しか聞いていないが。
現に父親や祖父母には今は会っていない。離婚が正式に決まる前に会っただけである。
別にバレても問題はないのだが、さくらはあの時の見つかった時のことをトラウマになっており、時折逃げていた時のように怯えたりフラッシュバックを引き起こすのか鬱になるのを藍里は見たことがあった。
だから極力教えないで、と。そしてバイト先は住んでる所の下にあるファミレスだが、当初はウエイトレスを頼まれたのだが同じ理由でさくらは店に対して店に出る仕事だけはやめてほしい、と頼み込んで渋々調理担当にさせてもらえたと言う。
「ごめん、そういう理由で……教えられないの。途中まで、あそこの角まで」
「……そうなんか。わかった。僕もこう一緒に帰ろうっていうのもあれだったな」
「ううん。大丈夫。クラスでもまだ馴染めないし、知ってる人がいるだけでもホッとするよ」
最初は互いにワクワクしていたのだが事情を伝えていくうちに2人の中は重い空気になる。いつかはわかってしまうことで、隠し事したくても隠せない藍里。
でもそれをしっかり飲み込んでくれる清太郎に、昔と変わらずなんだかんだで優しいとさらにドキッとさせられてしまう。
こうやって女性に優しいのは彼の姉が女の子は大事にしな、という厳しい言いつけがあるからだ。
そしてなんだかんだであっというまに藍里の言った角まで着いてしまった。
「……じゃあ気をつけて帰れよ。ぼくんちはあのすぐそこにある弁当屋、あそこがおばさんたちの店で店舗も構えてる。空いた時間には配達とかしてるから、なんかあったら朝こいよ」
実のところ、藍里もあの弁当屋の前を通る。でもこの角までと言ったからにはそれは伝えられない。
「電話番号だけでもええやろ。何かあったら電話しろ。あと裏には弁当屋の電話番号あるし」
と、その場で弁当屋のフライヤーに清太郎は電話番号を書いて藍里に渡した。
「……ありがとう」
「じゃあ、また明日な」
「うん」
と、清太郎の後ろ姿を見て見えなくなってから動こうと見ていた所だった。
「百田さんー、見てたよー」
藍里は振り返ると数人の女子たちがいたのだ。クラスメイトたちだった。
「ねえねえ、宮部くんとすっごい仲いいけど……幼馴染って本当?」
「あ、うん……」
「ねぇ、あんなに仲良いなら付き合っちゃいなよ」
「いや、それは」
藍里は女子たちに囲まれる。
「ごめん、バイトがあるから!」
と走り去った。すごく顔が真っ赤になってるのはわかる。もうなにがなんだかで、すっかりわすれて清太郎の弁当屋の前を走ってしまった。
「あれ? 藍里?」
声をかけられたのもわからないほど藍里は走った。
そしてマンションまで辿り着くとエレベーターに乗り、べたんと座り込んでしまう。
「……彼は幼馴染よ、ただのっ」
息を切らしてもまだドキドキは止まらなかった。
ピンポン
5階に着く。息も絶え絶え。なんとか部屋にたどりつき、ドアを開けた。
いい匂いがする。お肉の匂い。きっと時雨が仕事から帰ってくるさくらのためにご飯を作っているのだろう。さくらも走って疲れて食べたいとは思ったが、今日はバイト先で賄いを食べる予定だった。
「あら、おかえり。すっごい髪振り乱して何かあった?」
台所からぴょこんと顔を出す時雨。
「ただいま……美味しそうな匂い」
「ありがとう。エビチリ作ってるんだけど、食べる?」
確かにトマトケチャップの匂い、ニンニクの匂いもする。それらがきっとこの美味しそうな匂いなのだ。
「食べる!」
「少しニンニク多めにしちゃったけど……服着替えたら味見して欲しいな。今日バイトでしょ」
「うん。じゃあ今から着替えてくる」
そのあとエビチリを味見するどころかたくさん食べてしまった。
今まで食べたエビチリよりも全然味が違う、と感動してしまった。少しニンニクの匂いが強いが。
藍里は時雨のことが好きなのはこの彼の料理の腕前もあるかもしれない。
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