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ただいま
第六話
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2人は神社から出て街に戻る。天狗様のいる場所と街は本当に同じ現代なのか疑問になる程雰囲気が全く違う。
振り返る由貴。
「子供の頃はもっと大きいと思ってたけどそうでも無いんだな」
「なにいってんや、あの時は子供だったしな、俺よりも大きいお前が何言うとる」
「……だよな、いこか」
由貴は虹雨についていく。車に乗り、20分ほどしたところの駐車場に車を停めて歩く。由貴にとっては知らない場所。住んでいた町の横の市でたまに遊びにいっていたが駅周辺だけであり、ここは駅から離れ、川の向こうの商店街であった。
古い居酒屋や昔ながらのお店が並ぶ。
「こんなところあったんやな」
「子供の頃はここまで行かなかったやろ。この先の奥のボーリング場はよう行ったけどもここはこどもの俺たちは行かんかったよな」
由貴はうろうろしていたが、急に足を止めた。
「どないしたん」
由貴が足を止めたのはアンティークな店ではあったが張り紙がしてあった。
『諸事情により閉店しました』
という文字と感謝の言葉、そしてどこかへの連絡先の電話番号も書かれている。
「ここの店主、こないだ亡くなったんや」
「……亡くなった?」
「心筋梗塞だったらしくってな。所長の夫の弟さんでな……まだ50歳、若いよなぁ」
由貴は慌ててカバンから何かを探している。財布を取り出して何かを抜き取った。名刺である。
「ここや……亡くなったんか」
「どした、てかなんで由貴はここの名刺を持っとるんや」
「もらったん、東京にあるときに」
「いつ?」
「んー、4、5年前かな……」
「あんな広い東京の中で同郷の人間と会うなんて」
「虹雨に助けてもらったくらいすごい確率やな」
「……そやな。いくぞ」
だが由貴は動かない。虹雨は手を引っ張る。
「お前は引きが強い。もしかしたらまだその人おるかもしれん」
「おるわ」
由貴が指を刺す先には店内の明かりが付き、そこにはスーツを仕立てているこの店の店主がいた。そして2人に気づいて微笑む。
「……やっぱお前は……」
「ドア、鍵かかってない」
閉まっているはずのドアが開いた。由貴と虹雨は見つめ合う。
「行くしかないか」
「ごめん」
「なんでお前謝ってる」
「……なんでやろな」
さっと2人の目の前に男は立っていた。
「いらっしゃいませ、どうぞ……こちらに」
振り返る由貴。
「子供の頃はもっと大きいと思ってたけどそうでも無いんだな」
「なにいってんや、あの時は子供だったしな、俺よりも大きいお前が何言うとる」
「……だよな、いこか」
由貴は虹雨についていく。車に乗り、20分ほどしたところの駐車場に車を停めて歩く。由貴にとっては知らない場所。住んでいた町の横の市でたまに遊びにいっていたが駅周辺だけであり、ここは駅から離れ、川の向こうの商店街であった。
古い居酒屋や昔ながらのお店が並ぶ。
「こんなところあったんやな」
「子供の頃はここまで行かなかったやろ。この先の奥のボーリング場はよう行ったけどもここはこどもの俺たちは行かんかったよな」
由貴はうろうろしていたが、急に足を止めた。
「どないしたん」
由貴が足を止めたのはアンティークな店ではあったが張り紙がしてあった。
『諸事情により閉店しました』
という文字と感謝の言葉、そしてどこかへの連絡先の電話番号も書かれている。
「ここの店主、こないだ亡くなったんや」
「……亡くなった?」
「心筋梗塞だったらしくってな。所長の夫の弟さんでな……まだ50歳、若いよなぁ」
由貴は慌ててカバンから何かを探している。財布を取り出して何かを抜き取った。名刺である。
「ここや……亡くなったんか」
「どした、てかなんで由貴はここの名刺を持っとるんや」
「もらったん、東京にあるときに」
「いつ?」
「んー、4、5年前かな……」
「あんな広い東京の中で同郷の人間と会うなんて」
「虹雨に助けてもらったくらいすごい確率やな」
「……そやな。いくぞ」
だが由貴は動かない。虹雨は手を引っ張る。
「お前は引きが強い。もしかしたらまだその人おるかもしれん」
「おるわ」
由貴が指を刺す先には店内の明かりが付き、そこにはスーツを仕立てているこの店の店主がいた。そして2人に気づいて微笑む。
「……やっぱお前は……」
「ドア、鍵かかってない」
閉まっているはずのドアが開いた。由貴と虹雨は見つめ合う。
「行くしかないか」
「ごめん」
「なんでお前謝ってる」
「……なんでやろな」
さっと2人の目の前に男は立っていた。
「いらっしゃいませ、どうぞ……こちらに」
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