最高で最強なふたり

麻木香豆

文字の大きさ
上 下
34 / 99
ただいま

第三話

しおりを挟む
 実のところ、倉田には自分たちに霊能力ができた時から天狗様のお世話係として2人とのパイプ役にもなっていた。子供だった2人は倉田に何度も怒られてはいた。

 怒られると言うものの今のような不気味さのあるものであって子供ながらに怖かったと言うのも覚えている。だが彼のおかげで霊能能力をうまくコントロールしたり手強い霊から身を守って貰えたりアドバイスをもらったりしていた。

 久しぶりに倉田の洗礼を受けたところでいよいよ天狗様の小屋にたどり着いた。

「今日は機嫌が良さそうだから……あ、そのショコラを渡せば喜ぶでしょう。甘いものには目がない、さらに都会のものにはね。今のこの世はネットひとつですぐ手に入るけど天狗様はそういうのが嫌なんですよ、私もですが……こうやってここまで登ってきて手渡しをする、それがいいんです……すぐ手に入っちゃダメです」

 と小屋のドアを開けると甘い匂いがする。

「ういっすー! 虹雨、きたか! ……お前は由貴か」

 大柄の鼻の大きな男がいる、由貴よりも倉田よりもでかい男だ。その男の手には小さい丸いチョコ、足元には無数の箱が置いてあった。

「……天狗様……! 何をしてらっしゃるのですか!」

 倉田にそう言われるとその男、天狗様と言われる男は箱を蹴り上げて隠したつもりだったがチョコが散らばり、拍子に柱に小指をぶつけて痛がってのたうち回っている。

 散らばったチョコは虹雨達が持ってきたブランドのものやハイブランドの関東で出回っているものである。倉田をはじめ坊主達がそれらを取り、片付けている。もはやドリフのコントのようだ。

「……なんで持ってるんや」
「虹雨が前に持ってきてからすっごく気になっちゃってー頼んじゃった」
「そうやったなぁ、前持ってきたやつのお店の新作やん。そんなに気に入ってるならそっちがよかったか。今日は違うやつ持ってきた」
「ほ、欲しい!!」

 と虹雨が渡そうとするとすかさず倉田が間に入って奪い去った。天狗様の静止を振り切って外に出て天高くチョコを投げつけ、カラス達がやってきて全部喰らっていった。

「なにをする倉田! 別にいいだろ、チョコの一つや二つ」
「確かに一つや二つはいいですよ。でもそんなにこっそり持ってたら一つや二つじゃないでしょ。あんなに食べて、あれも食べたら虫歯になります」
「虫歯にならん! ちゃんと歯磨きしとる!」

 ここからしばらく倉田と天狗様のやりとりが続く。虹雨も由貴も坊主もいつもの事だ、と坊主も一緒に座って2人を見ることにした。

「こないだも歯が痛いって言ってここに歯医者さん呼んだら親知らず生えてて奥歯と親知らずの間に虫歯が出来ていて歯茎も腫れて膿んで……なのに抜きたくない、抜かないって」
「だって痛いんじゃもん、前右の奥の二つの親知らず抜いたのにまた抜くなんて嫌じゃ」
「子供じゃないんだからっ。それに今回はレントゲン撮らなくちゃ手術も工事、いいや改修工事よりもひどくなるってあなたが大暴れするから」
「それはいくらなんでも誇大表現じゃっ」
「言っとくとですね、ここまで歯医者さんを派遣するのにいくらかかってると思ってるんですか。医師だけでなくて看護師、器具、それら器具や薬品を運ぶ運送費……」
「あと出張費じゃろ」
「わかってるくせに! 親知らず抜かない限りチョコは当面禁止です!」

 天狗様はうずくまって泣いている。

「相変わらずやん、天狗様」
「やろ、安心したか。帰ろか」

 と虹雨と由貴が帰ろうとすると

「あほ、帰るな」

 と倉田に止められる2人だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

花の檻

蒼琉璃
ホラー
東京で連続して起きる、通称『連続種死殺人事件』は人々を恐怖のどん底に落としていた。 それが明るみになったのは、桜井鳴海の死が白昼堂々渋谷のスクランブル交差点で公開処刑されたからだ。 唯一の身内を、心身とも殺された高階葵(たかしなあおい)による、異能復讐物語。 刑事鬼頭と犯罪心理学者佐伯との攻防の末にある、葵の未来とは………。 Illustrator がんそん様 Suico様 ※ホラーミステリー大賞作品。 ※グロテスク・スプラッター要素あり。 ※シリアス。 ※ホラーミステリー。 ※犯罪描写などがありますが、それらは悪として書いています。

動画配信者が消えた

佐倉海斗
ホラー
『心霊スポット巡り 特別編』として投稿された動画を最後に行方知らずになった動画配信者がいる。生放送と謳った動画につけられたコメントに対する返信はなく、続報もない。彼らの行方を知る者もなく、SNS上で拡散された噂話や根拠のない推測が話題を呼び、動画視聴率は駆け上がっていく。 彼らの身に何が起きたのか。 すべては動画の中に残されている。 ※小説家になろうで掲載している短編を元に書いています。

妖怪達の薬屋さん

いちみやりょう
ホラー
人の噂話や悪意は弱い妖怪に影響する。 悪意や噂話に飲まれ自我を失った妖怪達を旅をしながら健康に戻したり事件を解決したりする男の話。 投票やお気に入り登録ありがとうございます。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

(ほぼ)1分で読める怖い話

アタリメ部長
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。 現在 100話 越え。 エブリスタ・カクヨム・小説家になろうに同時掲載中 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 【総文字数 700,000字 超え 文庫本 約7冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

処理中です...