最高で最強なふたり

麻木香豆

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真新しいエレベーター

第三話

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「絶対言霊通りやわ、由貴のせい!」
「すまん……言霊発令中やったな」
 虹雨は頭を抱えた。由貴もシュンとしている。

「いくらなんでも急すぎやわ」
「このアパート取り壊しだなんてって今大丈夫やろ、決まったことやし」
「……まぁな、もともとルームロンダリングだったわけだしこの依頼終わって落ち着いたら次の依頼で他のルームロンダリングなり何かあったら引っ越すかなぁって思ってたけども」
「それそのままやん、次もルームロンダリングだったらええけど……言霊効果」
「期待しとくわ」
「どうすんの、新しいところ見つかる?」
「今から探せって言われても……引越し準備とかしてたら依頼も受けれへんし、てか引っ越し費用ー」

 ピコン

 スマホの着信音。虹雨は慌てて出た。

「所長、どうもですーコウです。はい、はい……報告書書き直しですか。さっきもメールを送りましたよね。今の部屋、取り壊しって。他のルームロンダリングのご依頼とかないんですか……ない? ない? そうですか。はぁ、はい……他の依頼の件も……ない、ないですか」

 2人してガクッと首を下ろす。虹雨は着信を切った。

「あぁぁぁぁぁ……どうすりゃええんや」
「でも管理人さんが取り壊しまでならいてもいい、僕もここに特別に住んでもいいていうてくれたしね」
「そりゃ当たり前や。そうでもなきゃあかんやろ」
「例のこの部屋の事件のせいで退去が相次いでってそれだけやないやろ、あのエレベーターといい」
「……あぁ、都会でこの部屋と同等のアパートで由貴と男同士の2人暮らしで住むのに絶対今の貯蓄では見つからんぞ。どうすりゃいいんだよ。実家に帰るかどっかで野垂れ死ぬか」
「ん、今なんて」

 由貴が虹雨の顔を覗き込む。

「野垂れ……」
「それは言うな」
「実家に帰る……あ」
「実家……虹雨の」
「でも東京から岐阜に戻るんか……引っ越し費用嵩むし仕事も田舎やしあるかどうか」

 由貴は虹雨の肩を持つ。そしてしっかりと目を見ながら

「もう僕はあの夜東京では死んだんや。虹雨と再会からの岐阜で再出発したい」
「そか……」
「って僕も岐阜に戻っても実家には戻りたくないし」
「まだ親とは仲直りしとらんのか」
「しとらん」
「で、あっち戻っても一緒に暮らすつもりやったん?」

 由貴は目を丸くする。虹雨はスマホでメールを誰かに打っている。

「東京では2人で暮らしてもええけど誰が岐阜でも一緒に暮らすってゆうた」
「え、ちゃうの」
「ちゃう」
「そんな、僕また野垂れ死ぬしかないっ」
 虹雨は項垂れる由貴を見て笑った。
「んなわけないやろ、冗談」
「冗談きついわ、昔から変わらんな」
「あ、母ちゃんから返信来たで……『帰ってきてもええけど、あんたらの住む部屋はない』……へ???」

「「えぇぇぇえっぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!!!」」

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