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~キングキメラ討伐へ~

第27話 引き延ばされる世界

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「――行くぞリリ!走れ!」

「承知っ!」

ハルト達はけ声をして、Uターンをし思い切り走って逃げた。
このような狭い空間では戦いづらい。外でミーシャの援護えんごを受けながら戦うのが吉だろう。

キングキメラは追いかけながら火をいてハルト達を焼こうとする。
しかし超高レベルなハルト達に追いつける訳もなく。

やがて外の光が見え、二人は広場に飛び出した。
広場で息が上がったキングキメラとハルト達は対峙たいじする。
ハルトはミーシャの方を見る。スコープが太陽の光でちらりと反射しているのが分かる。

――ハルトが合図を出した刹那せつな、ミーシャはキングキメラの右足を穿うがち消し飛ばした。

「ドッパァァァン!!」

右足を飛ばされた怒りと痛みにキングキメラはうなりをあげた。
それでも奴は立っている。5mはあるだろう恐ろしい風貌ふうぼうだ。
情報の通り獅子の頭、蛇の尾、山羊の胴を持っていた。
その鋭い爪、牙でハルト達をおそうがまるで当たっていない。

「”水刃すいじん”っ”炎槍えんそう”!!」

リリが「水刃」と「炎槍」でキングキメラを斬りつけ、焦がした。
キングキメラは己の戦力差に気づき逃走をこころみるもミーシャがそれを許さない。

ミーシャは二発目を撃ち、後ろ足を飛ばした。
逃げようとしていたキングキメラは足を破壊されその場に倒れた。

「”創造クリエイト”っ!」

ハルトは「創造」でオリハルコンの檻にキングキメラを閉じ込めた。
鋭い爪で引っくもかすり傷すらつかない。
そしてかざされたハルトの手には魔力が集中する。
ハルトはリリに離れろと指示を出し、リリは小さくうなずいて下がる。
頭上に突如として現れた青く小さい球体にキングキメラは首はかしげげるがもう遅い。

「――”蒼焔そうえん”」

キングキメラは贖罪しょくざいの余地も残らずハルトの「蒼焔」によって命絶えた。
しかし証拠となる素材を持ち帰るため、威力はおさえられていた。
ハルトとリリがおりの中を覗くと蛇の尻尾だけが残っていた。生命力が高い故なのかまだクネクネ、と動いている。
ハルトは少し気持ち悪がりながらも手掴みでアイテムボックスに仕舞った。

「――よしっ、これで依頼は達成かな」

あとはメリアルガ公国に戻ってヴァシルさんに報告するだけだ。
その後は猫耳族の手掛かりを集めて、ミーシャを故郷に連れていこう。
第二の人生、上手く行き過ぎて怖いな。転移直後は散々な扱いをされてきたが。

ハルトとリリが馬車に戻ろうと歩み出したしていたその時だ。

「――ッ!!主様!!」

リリが緊迫きんぱくした表情で叫んだ。手を伸ばしハルトを救おうとするがとても間に合わない。
ハルトはによるうなじへの攻撃をその肌で感じ取った。
引き延ばされる意識、世界がスローモーションになった。
これが走馬灯というやつか。


死ぬのか、俺。


ここまで理想のように上手くいっていたのに。


――いや、死なないッ!!
俺が死んだらリリはこのまま殺されるだろう。
ミーシャも取り残して死ぬなんて無責任なことはとてもじゃないが許されない。

〉「限界突破」スキルを得た。

〉称号「生きる意地」を得た。

「――ぐぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!!」

ハルトは「限界突破」によって跳ね上がったステータスによってギリギリ回避した。
しかしわずかに斬りつけられたうなじから血が跳ねる。
ハルトは痛む傷を右手で抑えながらにらんだ。
リリは生きているハルトを見て安堵しながらも、尋常ではない汗を流していた。

は淡い光としてそこに佇んでいたが、徐々に”人型”を織りなしていった。
現れたのは銀髪に赤い目の美少年であった。
圧倒的な魔力、圧力。立っているのもやっとだ。

「ハルト様ッ!!」

焦燥しょうそうられたミーシャが最大出力で”アレス”を美少年に撃った。
しかしその美少年は全く見向きもせず、銃弾は見えない膜に防がれてしまう。
防御魔法の類だろうか。
ハルトは突然現れた美少年に「ステータス鑑定」を使用した。

―――――――――――――――
〈#&(&$ Lv?????〉
EXP:??????/??????
【年齢】???
【種族】???
【職業】?????
HP:?????/?????
MP:?????/?????
攻撃力:??????
防御力:??????
魔法力:??????
幸運:??????
速度:??????
【スキル】
??????
EXエクストラスキル】
『??????』
―――――――――――――――

何者なのだこいつは。「ステータス鑑定」のレベルが足りないのか、はたまた上位の存在なのかは不明だ。その場にいた全員が謎の存在に焦っていた時、美少年が口を開いた。

「$%&')#$=)'#?#?」

しかし何を言っているのか誰も聞き取れなかった。
その美少年は咳払いをした後再び喋り出した。

「――あー、この世界の標準語はこれで合ってる?」
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