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穏やかな(?)日々
雪さんの話
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侑吾が愛した雪は、離婚した元妻との子を育てていた。
侑吾と雪が一緒に暮らすとなった時、お互いの親からは絶縁を言い渡されていた。それでも雪が亡くなった事を連絡した時、あちらの両親は高齢ながらも蒼汰を引き取ると言ってきてくれた。
血の繋がらない男に孫が育てられるのを不安に思ったんだろう。しかし、侑吾には蒼汰を手放す事が出来なかった。
日に日に雪に似てくる蒼汰を心から愛おしく思えたし、三人で暮らした数年で、しっかり家族になれている様に思ったからだ。
何より侑吾は再び一人で暮らす事がとても恐ろしいことに思えた。
侑吾は厳しい家庭で育った。家の中に家族はいるのに、笑いあう事も無い。一緒にいるのに心は違う場所にあるような、壁を感じる家庭で育った侑吾にとって、侑吾を信頼し、懐いてくる蒼汰が可愛くて仕方が無かった。蒼汰が居る事で、より一層家族というものに近づけている気がしていた。
そんな大切な存在を手放すなんて、出来なかった。
何より、あの時蒼汰を手放していたら侑吾は雪の後を追ってしまっていたかもしれない。蒼汰の成長は侑吾の喜びであり、生きる目的だった。
侑吾がいるから頑張れる。そこに血の繋がりなんてさほど重要には思えなかった。逃げ出したいほどの現実を踏ん張ってこれたのは、全て蒼汰のおかげだと言える。
それなのに、侑吾は蒼汰の事を近藤に言えなかった。蒼汰さえいなければ、今夜一緒に食事をしていたのは近藤だったかもしれない、なんて一瞬でも思った自分が恥ずかしい。
近藤からの好意は正直嬉しい思いもあったが、誘いに乗る事は諦めよう。そして蒼汰をたんと甘やかしてあげよう。蒼汰と過ごす時間が掛けがえの無い時間だと分かっているのだから
仄かな後悔で近藤への芽生えそうだった思いへ蓋をして、侑吾は早めに布団に入った。横並びの布団で、すやすやと寝息を立てる蒼汰の頭を撫でる。少し癖のある髪も雪から引き継いだんだろう、ふわふわとして可愛らしい。まだ幼い蒼汰には決して寂しい思いをさせまいと、侑吾は心に誓った。
侑吾と雪が一緒に暮らすとなった時、お互いの親からは絶縁を言い渡されていた。それでも雪が亡くなった事を連絡した時、あちらの両親は高齢ながらも蒼汰を引き取ると言ってきてくれた。
血の繋がらない男に孫が育てられるのを不安に思ったんだろう。しかし、侑吾には蒼汰を手放す事が出来なかった。
日に日に雪に似てくる蒼汰を心から愛おしく思えたし、三人で暮らした数年で、しっかり家族になれている様に思ったからだ。
何より侑吾は再び一人で暮らす事がとても恐ろしいことに思えた。
侑吾は厳しい家庭で育った。家の中に家族はいるのに、笑いあう事も無い。一緒にいるのに心は違う場所にあるような、壁を感じる家庭で育った侑吾にとって、侑吾を信頼し、懐いてくる蒼汰が可愛くて仕方が無かった。蒼汰が居る事で、より一層家族というものに近づけている気がしていた。
そんな大切な存在を手放すなんて、出来なかった。
何より、あの時蒼汰を手放していたら侑吾は雪の後を追ってしまっていたかもしれない。蒼汰の成長は侑吾の喜びであり、生きる目的だった。
侑吾がいるから頑張れる。そこに血の繋がりなんてさほど重要には思えなかった。逃げ出したいほどの現実を踏ん張ってこれたのは、全て蒼汰のおかげだと言える。
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