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極彩色
受け継がれているもの
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クロレバの目が、音の方を確認するとトゥフタがタンブールをクロレバめがけて投げたようだ。ただ、飛距離が伸びずタシュの足元に落ちてしまったのだけれど。
「タシュを離せ!」
「……王よ、我に投げたのか?」
王が女王に逆らい攻撃する。その衝撃はタシュには想像もつかないのだろう。兵も、エベツも、クロレバ自身も何が起きたのか理解出来ずにいる。
トゥフタが作った数秒で、タシュはクロレバの手から小刀を奪い、震えているトゥフタの手を取った。
「タシュ!これを!」
すれ違ったエベツが弦が数本千切れたタンブールを投げる。
「今のうちに逃げろ!」
「何をする?!無礼な!」
エベツは女王に飛びつき、そう叫ぶ。
「離せエベツ!兵よ!何故追わない!?」
「エベツさん!あんたもやっぱり一緒に行こう!」
大穴へと走りながらタシュは最後の誘いを申し出た。兵達は、眼前で女官長が女王を押さえているという事実に右往左往するのみだ。
「――っ私は行かない!私はこの国を、女官たちを守ると決めた!女王と共に……!」
「エベツ、本当にもう会えないのか?」
「トゥフタ様っ……いつか、いつか会えますともトゥフタ様!この国も変われるかもしれない。……私やリルが女王を支えます!」
「――そうか、いつか必ず会おうエベツ!感謝する!」
口をぎゅっと結ぶと、トゥフタは大穴へ飛び込んだ。
「離せ離せ!!!何故だエベツ!お前は私に逆らえぬはず!」
「そうです女王!しかし今、私がこう出来ているという事は、女王の本心はトゥフタ様を行かせたいと考えているのではありませんか?!」
「そんなわけがないだろう?!あやつがおらねば、美しい子が生まれぬ!国民を増やさねば!我が子を増やさねばならぬのだ!」
大穴に足を掛けたタシュが、振り返った。
「――クロレバ女王よ。あなたとウユチュ様は似ていないと思った。だが、アイムの話をした時のあなたは、ウユチュ様ととても似ているように思ったよ」
「なっ……!煩い!煩い!うるさーい!!!」
「この国が良くなることを願っている」
そう言い残すと、タシュも大穴の中へと消えてしまった。
女王の怨念の籠る絶叫が、静かな森林に吸い込まれていくのみだった。
「タシュを離せ!」
「……王よ、我に投げたのか?」
王が女王に逆らい攻撃する。その衝撃はタシュには想像もつかないのだろう。兵も、エベツも、クロレバ自身も何が起きたのか理解出来ずにいる。
トゥフタが作った数秒で、タシュはクロレバの手から小刀を奪い、震えているトゥフタの手を取った。
「タシュ!これを!」
すれ違ったエベツが弦が数本千切れたタンブールを投げる。
「今のうちに逃げろ!」
「何をする?!無礼な!」
エベツは女王に飛びつき、そう叫ぶ。
「離せエベツ!兵よ!何故追わない!?」
「エベツさん!あんたもやっぱり一緒に行こう!」
大穴へと走りながらタシュは最後の誘いを申し出た。兵達は、眼前で女官長が女王を押さえているという事実に右往左往するのみだ。
「――っ私は行かない!私はこの国を、女官たちを守ると決めた!女王と共に……!」
「エベツ、本当にもう会えないのか?」
「トゥフタ様っ……いつか、いつか会えますともトゥフタ様!この国も変われるかもしれない。……私やリルが女王を支えます!」
「――そうか、いつか必ず会おうエベツ!感謝する!」
口をぎゅっと結ぶと、トゥフタは大穴へ飛び込んだ。
「離せ離せ!!!何故だエベツ!お前は私に逆らえぬはず!」
「そうです女王!しかし今、私がこう出来ているという事は、女王の本心はトゥフタ様を行かせたいと考えているのではありませんか?!」
「そんなわけがないだろう?!あやつがおらねば、美しい子が生まれぬ!国民を増やさねば!我が子を増やさねばならぬのだ!」
大穴に足を掛けたタシュが、振り返った。
「――クロレバ女王よ。あなたとウユチュ様は似ていないと思った。だが、アイムの話をした時のあなたは、ウユチュ様ととても似ているように思ったよ」
「なっ……!煩い!煩い!うるさーい!!!」
「この国が良くなることを願っている」
そう言い残すと、タシュも大穴の中へと消えてしまった。
女王の怨念の籠る絶叫が、静かな森林に吸い込まれていくのみだった。
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