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可哀そうなトゥフタ
色
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「な、何笑ってるんだよ!」
「いやいや、なかなか城での暮らしを楽しんでいるんだなと思ってな。何よりウユチュ様の予想通りに事が進んでいる」
「なんだよ、ウユチュ様は予言でも出来るのかよ」
「まあ、勘だ。だから明言はしないよ。外れてウユチュ様の評価が下がっても嫌だからな」
「あーもう、本当にウユチュ様ウユチュ様ってお前は……ホントに好きなんだな」
呆れたようにそう言って、紅茶を含んだタシュの横で、エベツが不思議そうに問いかけた。
「タシュは不思議な事を言うな。母親を慕うのは当たり前だろう?」
「ぶふっ!?」
「汚いぞ」
口から液体が垂れた。手渡された布で口を拭う。
「え?ウユチュ様が?ん?じゃあスドゥルは王子様?」
「……知らなかったのか?」
「聞いてない!」
少し驚いたエベツの言葉に、タシュはまた声を荒げた。
「聞かれてないからな」
「お前はウユチュ様の息子かって?……そんなピンポイントで聞けるかよ?!」
喚くタシュ、げんなりしたスドゥルを仲介するようにエベツは口を開いた。
「落ち着け、タシュはこの国を知らなさすぎるようだ。同じように我々も外の者の話をあまり知らない。他国との比較はスドゥルがよくわかっているはずだ。説明してくれないか?」
「……ウユチュ様に関する事はあまり言いたくない」
「不利益な事にはならないと思うぞ」
「……エベツが言うなら。分かった。タシュ、何度も言わないからよく聞け」
「わ、分かった」
「この国には男は少ない。それはどうしてか分かるか?」
「……外に出てるとか?あ、まさか戦争?!」
タシュの国でも、戦が起きると駆り出されるのは主に男だった。タシュ自身は戦った事は無いが、父親は何度か参加したと聞いている。
「違う、この国の男は元々少ない。いてもほとんど働かない。男は王が死んだときの控えに近いんだ」
「は?!」
「まあ聞け。この国の成り立ちからだ。子供の寝物語にも使われる話だ。この国は一人の女王を中心に作られたとされている。その女王は美しかった。美しい女王は、心も見た目も美しい人で満たした平和な国を作ろうとした」
「ふむふむ、まあこの国の人皆美しいもんな」
「美しい条件は、金糸の髪である事、瞳が海か空の色である事が含まれる」
「なるほど。この国のほとんどの人がそうだもんな」
「ただ、たまに俺のように旅人との子を成す人もいた。旅人が金髪で目も蒼や緑であれば多くの場合問題は無いが、俺のように黒い目になる場合もある。これは女王の基準からすると外れている」
「そんな、色くらいで……」
感情の揺れが何もなく語られるスドゥルの話に、逆に心が揺らされる。
「だからと言ってこの国は平和だ。迫害されたりはしないし、一般庶民は何の苦も無い。珍しいとはいえ、過去に混血になった者は何人かいるし、その子孫もいる。俺のような目の色のものや、黒髪や赤毛の者もこの国にはいるんだ」
「……そうなのか」
「いやいや、なかなか城での暮らしを楽しんでいるんだなと思ってな。何よりウユチュ様の予想通りに事が進んでいる」
「なんだよ、ウユチュ様は予言でも出来るのかよ」
「まあ、勘だ。だから明言はしないよ。外れてウユチュ様の評価が下がっても嫌だからな」
「あーもう、本当にウユチュ様ウユチュ様ってお前は……ホントに好きなんだな」
呆れたようにそう言って、紅茶を含んだタシュの横で、エベツが不思議そうに問いかけた。
「タシュは不思議な事を言うな。母親を慕うのは当たり前だろう?」
「ぶふっ!?」
「汚いぞ」
口から液体が垂れた。手渡された布で口を拭う。
「え?ウユチュ様が?ん?じゃあスドゥルは王子様?」
「……知らなかったのか?」
「聞いてない!」
少し驚いたエベツの言葉に、タシュはまた声を荒げた。
「聞かれてないからな」
「お前はウユチュ様の息子かって?……そんなピンポイントで聞けるかよ?!」
喚くタシュ、げんなりしたスドゥルを仲介するようにエベツは口を開いた。
「落ち着け、タシュはこの国を知らなさすぎるようだ。同じように我々も外の者の話をあまり知らない。他国との比較はスドゥルがよくわかっているはずだ。説明してくれないか?」
「……ウユチュ様に関する事はあまり言いたくない」
「不利益な事にはならないと思うぞ」
「……エベツが言うなら。分かった。タシュ、何度も言わないからよく聞け」
「わ、分かった」
「この国には男は少ない。それはどうしてか分かるか?」
「……外に出てるとか?あ、まさか戦争?!」
タシュの国でも、戦が起きると駆り出されるのは主に男だった。タシュ自身は戦った事は無いが、父親は何度か参加したと聞いている。
「違う、この国の男は元々少ない。いてもほとんど働かない。男は王が死んだときの控えに近いんだ」
「は?!」
「まあ聞け。この国の成り立ちからだ。子供の寝物語にも使われる話だ。この国は一人の女王を中心に作られたとされている。その女王は美しかった。美しい女王は、心も見た目も美しい人で満たした平和な国を作ろうとした」
「ふむふむ、まあこの国の人皆美しいもんな」
「美しい条件は、金糸の髪である事、瞳が海か空の色である事が含まれる」
「なるほど。この国のほとんどの人がそうだもんな」
「ただ、たまに俺のように旅人との子を成す人もいた。旅人が金髪で目も蒼や緑であれば多くの場合問題は無いが、俺のように黒い目になる場合もある。これは女王の基準からすると外れている」
「そんな、色くらいで……」
感情の揺れが何もなく語られるスドゥルの話に、逆に心が揺らされる。
「だからと言ってこの国は平和だ。迫害されたりはしないし、一般庶民は何の苦も無い。珍しいとはいえ、過去に混血になった者は何人かいるし、その子孫もいる。俺のような目の色のものや、黒髪や赤毛の者もこの国にはいるんだ」
「……そうなのか」
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