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可哀そうなトゥフタ
久しぶりの友人
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「ああ、来ると思っていた」
疲れた様子で立ち上がったエベツがドアを開ける。そこに立っていたのは先程タシュの頭に顔が浮かんだスドゥルだった。
「スドゥル?!」
「久しいな。生きていると聞いてウユチュ様も喜んでいた」
「もって事はお前もって事だよな?」
「そ、それは――!い、今は良いだろう」
「ハハハ、相変わらずだな。でもどうしてスドゥルがここに?」
「私がウユチュ様に相談したからだろう」
久々の再開に高揚するタシュを落ち着けるようにエベツの言葉が割って入って、スドゥルもそれに同調した。
「ウユチュ様の命で来た。力になれる事は全てするようにと言われている」
冷静な言葉に、今の目的を瞬時に思い出してタシュの顔は雲った。
「エベツは曲がりなりにも宮使え。言えぬことも多い。だから代わりに俺が来た。俺ならある意味治外法権だから何を言っても罰せられないからな」
「そうなのか?」
二人が話している間に淹れた蜂蜜紅茶をエベツが机に置いた。比重が違う為、澱の様に沈殿している蜂蜜を匙で混ぜる。もちあげられた煌めきはゆっくりと弧を描いて、やがて紅い液体と同化した。
「私には私の事情がある。しかし、スドゥルを呼んだ一番の理由は、この件に関してはウユチュ様、延いてはスドゥルが適任だと思ったんだ。何より彼は外の者との混血だからね」
「え?!何それ聞いてない!」
「言っていないからな」
秘密を暴露された感もなく、平然と言ってのけた。
「え、じゃあ、前に言ってた愛しい人に抱かれながら死んだって外から来た人ってのは……」
「俺の父だ」
「そ、そういう大事な事は……」
「今しただろう。ほら、他にも聞きたい事があれば話せ。ウユチュ様の命があるからなんでも答えてやれるぞ」
ホントにこの男はウユチュの事しか考えてない。これをただの忠誠心だとは到底思えないがスドゥルの変わらなさにどこか安心するのも確かだ。
「いくつか確認したい事があるんだ」
「ああ、いくらでも」
「スドゥルはトゥフタが女王に何をされているか知っているか?」
「具体的な手法は知らないが、大まかには理解している」
「そうか……お前はそれを酷いとは思わないのか?」
「……良い事だとは思わないが、そういうものだと理解している」
「もし、お前が王に選ばれていたらと想像してもか?」
タシュの問いかけにスドゥルは一瞬、不思議そうに見返してきたが、すぐに自分の中で納得したようで小さく頷いた。
「その想像は難しい。この国の王は、一番美しい男子だと決められているんだ」
「スドゥルだって綺麗じゃないか。よく見たらウユチュ様にも似ているし、選ばれても不思議じゃないだろ?」
「……なっ……!」
「でもトゥフタ様の方が美しいだろ?」
突然の賛辞に面食らったスドゥルが言葉を失っていると、横からエベツが問いかけてくる。
「んー……まあスドゥルはウユチュ様の事が好きすぎるのが分かってるからなぁ。トゥフタは綺麗だ、間違いない。だけど、その辺は好みもあるだろ?たまたまトゥフタが俺の好みどんぴしゃってだけで……あ」
「どんぴしゃ?」
「い、いやいやいや今のはちょっと言い過ぎた!スドゥルがいたから気が抜けてつい!」
ぴくり、と不穏に眉を寄せたエベツに慌ててタシュが否定する。その様子を見てスドゥルがにやにやとしていた。
疲れた様子で立ち上がったエベツがドアを開ける。そこに立っていたのは先程タシュの頭に顔が浮かんだスドゥルだった。
「スドゥル?!」
「久しいな。生きていると聞いてウユチュ様も喜んでいた」
「もって事はお前もって事だよな?」
「そ、それは――!い、今は良いだろう」
「ハハハ、相変わらずだな。でもどうしてスドゥルがここに?」
「私がウユチュ様に相談したからだろう」
久々の再開に高揚するタシュを落ち着けるようにエベツの言葉が割って入って、スドゥルもそれに同調した。
「ウユチュ様の命で来た。力になれる事は全てするようにと言われている」
冷静な言葉に、今の目的を瞬時に思い出してタシュの顔は雲った。
「エベツは曲がりなりにも宮使え。言えぬことも多い。だから代わりに俺が来た。俺ならある意味治外法権だから何を言っても罰せられないからな」
「そうなのか?」
二人が話している間に淹れた蜂蜜紅茶をエベツが机に置いた。比重が違う為、澱の様に沈殿している蜂蜜を匙で混ぜる。もちあげられた煌めきはゆっくりと弧を描いて、やがて紅い液体と同化した。
「私には私の事情がある。しかし、スドゥルを呼んだ一番の理由は、この件に関してはウユチュ様、延いてはスドゥルが適任だと思ったんだ。何より彼は外の者との混血だからね」
「え?!何それ聞いてない!」
「言っていないからな」
秘密を暴露された感もなく、平然と言ってのけた。
「え、じゃあ、前に言ってた愛しい人に抱かれながら死んだって外から来た人ってのは……」
「俺の父だ」
「そ、そういう大事な事は……」
「今しただろう。ほら、他にも聞きたい事があれば話せ。ウユチュ様の命があるからなんでも答えてやれるぞ」
ホントにこの男はウユチュの事しか考えてない。これをただの忠誠心だとは到底思えないがスドゥルの変わらなさにどこか安心するのも確かだ。
「いくつか確認したい事があるんだ」
「ああ、いくらでも」
「スドゥルはトゥフタが女王に何をされているか知っているか?」
「具体的な手法は知らないが、大まかには理解している」
「そうか……お前はそれを酷いとは思わないのか?」
「……良い事だとは思わないが、そういうものだと理解している」
「もし、お前が王に選ばれていたらと想像してもか?」
タシュの問いかけにスドゥルは一瞬、不思議そうに見返してきたが、すぐに自分の中で納得したようで小さく頷いた。
「その想像は難しい。この国の王は、一番美しい男子だと決められているんだ」
「スドゥルだって綺麗じゃないか。よく見たらウユチュ様にも似ているし、選ばれても不思議じゃないだろ?」
「……なっ……!」
「でもトゥフタ様の方が美しいだろ?」
突然の賛辞に面食らったスドゥルが言葉を失っていると、横からエベツが問いかけてくる。
「んー……まあスドゥルはウユチュ様の事が好きすぎるのが分かってるからなぁ。トゥフタは綺麗だ、間違いない。だけど、その辺は好みもあるだろ?たまたまトゥフタが俺の好みどんぴしゃってだけで……あ」
「どんぴしゃ?」
「い、いやいやいや今のはちょっと言い過ぎた!スドゥルがいたから気が抜けてつい!」
ぴくり、と不穏に眉を寄せたエベツに慌ててタシュが否定する。その様子を見てスドゥルがにやにやとしていた。
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