15 / 78
静かな家
翌朝外出中
しおりを挟む
「一つ言っておかないといけないと思うんだけど」
スドゥルの先導で露天商のような店舗を構えていない店が点在している静かな通りを進んでいると、タシュが言い辛そうに口を開いた。
「何だ?」
「俺、この家に来る前に衛兵に追われたんだ」
「衛兵に?どうしてだ?」
突拍子の無いことを口にしたのかと思うほど、スドゥルの顔は怪訝に歪んでいる。さすがに王様の入浴シーンを見たからと言えば呆れられる気がして、少し誤魔化したくなった。
「明らかにこの国の人間じゃないからじゃないのか?俺みたいな肌の色で黒髪の人間、この国にいないだろ?」
「確かに兵には旅人が悪意があるかどうかを調べる義務があるが、追いかけたりなんかしないはずだ。それに、金髪以外の人間も少ないがいる。私だって目が黒いが、私以外にも同じ瞳の色の人間も存在する。旅人が迷い込むことは確かに稀だが、今までいくつか事例がある」
「そうなの?!今も俺以外にも外部の人間っているのか?」
「いや、前にこの国へ外の者が来たのは20年ほど前だ。お前と同じ黒髪で黒い目をしていた」
「へえ!そりゃいい情報だな。ん?でもその人はもういないのか?」
若い女性の黄色い声が、タシュの質問をかき消した。すれ違った三人の女性が、タシュとスドゥルを見て歓声をあげたのだ。嬉しくなってタシュが手を振ってみると、三人は顔を赤らめて足早に去って行ってしまった
「ウユチュ様の言う通り男が珍しいのかな」
「私が一人で歩いていても女性たちはあのような対応はしない。お前は目立つんだよ」
「ふうん?俺の魅力はここでも通じるってことかな」
「そうかもしれない。外の人間は珍しいし、外の男と番いたがる女は多い。外の遺伝子を入れる事は重要だからな。一般市民は旅人を有難がるから」
「遺伝子?難しい話だな。まあでも、男が少ないんじゃあお前選びたい放題だろ?」
「別に。仮にそうであろうと何も感じない」
本心から出ただろう言葉は、とても冷たく感じられた。話題を変えようと言葉を周りを見ると、徐々に人通りが多くなってきた事に気付く。店舗と店舗が横に連なり、人の話し声がいくつも遠くに聞こえてきた。
「いやあ、それにしてもこの国の人間は本当に美しい……」
ふと、蜂蜜屋が目に入った。その横には蜂蜜石鹸屋が並んでいて、更にその奥には蜂蜜を使った化粧品の店に女性たちが群がっている。
スドゥルに教えて貰った所によると、この国の主な収入源は蜂蜜で、それを主として声気を行っているらしい。タシュの国では高級品だが、この国では養蜂に成功しており砂糖より蜂蜜の方が安価らしい。信じられない話だが、そのおかげで蜂蜜を加工した製品の開発も盛んで、蜂蜜由来の様々な品物が作られている。タシュの父や兄が聞けば、喜んで取引したがる物ばかりだ。
しかし、交易があると言う事はちゃんとした出入口があるという事だ。
スドゥルの先導で露天商のような店舗を構えていない店が点在している静かな通りを進んでいると、タシュが言い辛そうに口を開いた。
「何だ?」
「俺、この家に来る前に衛兵に追われたんだ」
「衛兵に?どうしてだ?」
突拍子の無いことを口にしたのかと思うほど、スドゥルの顔は怪訝に歪んでいる。さすがに王様の入浴シーンを見たからと言えば呆れられる気がして、少し誤魔化したくなった。
「明らかにこの国の人間じゃないからじゃないのか?俺みたいな肌の色で黒髪の人間、この国にいないだろ?」
「確かに兵には旅人が悪意があるかどうかを調べる義務があるが、追いかけたりなんかしないはずだ。それに、金髪以外の人間も少ないがいる。私だって目が黒いが、私以外にも同じ瞳の色の人間も存在する。旅人が迷い込むことは確かに稀だが、今までいくつか事例がある」
「そうなの?!今も俺以外にも外部の人間っているのか?」
「いや、前にこの国へ外の者が来たのは20年ほど前だ。お前と同じ黒髪で黒い目をしていた」
「へえ!そりゃいい情報だな。ん?でもその人はもういないのか?」
若い女性の黄色い声が、タシュの質問をかき消した。すれ違った三人の女性が、タシュとスドゥルを見て歓声をあげたのだ。嬉しくなってタシュが手を振ってみると、三人は顔を赤らめて足早に去って行ってしまった
「ウユチュ様の言う通り男が珍しいのかな」
「私が一人で歩いていても女性たちはあのような対応はしない。お前は目立つんだよ」
「ふうん?俺の魅力はここでも通じるってことかな」
「そうかもしれない。外の人間は珍しいし、外の男と番いたがる女は多い。外の遺伝子を入れる事は重要だからな。一般市民は旅人を有難がるから」
「遺伝子?難しい話だな。まあでも、男が少ないんじゃあお前選びたい放題だろ?」
「別に。仮にそうであろうと何も感じない」
本心から出ただろう言葉は、とても冷たく感じられた。話題を変えようと言葉を周りを見ると、徐々に人通りが多くなってきた事に気付く。店舗と店舗が横に連なり、人の話し声がいくつも遠くに聞こえてきた。
「いやあ、それにしてもこの国の人間は本当に美しい……」
ふと、蜂蜜屋が目に入った。その横には蜂蜜石鹸屋が並んでいて、更にその奥には蜂蜜を使った化粧品の店に女性たちが群がっている。
スドゥルに教えて貰った所によると、この国の主な収入源は蜂蜜で、それを主として声気を行っているらしい。タシュの国では高級品だが、この国では養蜂に成功しており砂糖より蜂蜜の方が安価らしい。信じられない話だが、そのおかげで蜂蜜を加工した製品の開発も盛んで、蜂蜜由来の様々な品物が作られている。タシュの父や兄が聞けば、喜んで取引したがる物ばかりだ。
しかし、交易があると言う事はちゃんとした出入口があるという事だ。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる