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静かな家
眠気
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「え?知ってるの?」
「もしかしてあなたが知っているのは……
『遠い遠い白の国、昔昔アクバイ、全部白い国。そこには全てが手に入る。たくさんの宝石、栄養のある食べ物、美しい女。遠い遠い白の国、昔昔、アクバイ、見つけたら全て手に入る』
『砂の砂の真ん中、緑緑続く道、極彩色の花々。おそれず踏み出せ、穴の中。目を閉じるな、二度と開かぬぞ、目を開け。百数えたら手を伸ばせ、掴め掴め、離すな、立ったそこが白の国』
という歌かしら?」
ウユチュが口ずさんだ、その歌声はアイムにとても似ていた。
「そう、です。でもどうして?」
「この歌をアイムに教えたのは、私だからよ」
「え?!」
「アイムがあなたに教えたのなら、それだけであなたの人となりは分かったわ。タシュ、あなたは信用に足る人だわ。ね、そうよねスドゥル」
「……そう、ですね」
口元に手を当てつつ、スドゥルは頷いた。
「じゃあ少し眠るわね。あなたが悪い人じゃないと証明されてよかった。これで衛兵に差し出さない言い訳が出来たのだから」
「あ、衛兵……」
目を擦るウユチュの肩に、美しい織物がスドゥルによってかけられた。優しい笑顔でウユチュを見ているのを見てウユチュへの思いは忠誠心だけではないのだろうと確信する。
二人は何やら小声でやりとりをすると、ウユチュは笑顔で、スドゥルは不満そうにタシュの顔を見つめた。
「まずはこの国を見て回って、聞きたいことがあればスドゥルが答えてくれるから」
「え、あのアイムの事は?!」
「ごめんなさいね、タシュ。私もう眠くて眠くて」
「ウユチュ様はお休みになる、ほら行くぞ」
「じゃあお前が教えてくれるんだな!?」
「アイムの事以外ならなんでも」
「なんでだよ!俺が知りたいのは――っ」
「ほら、とにかく出掛けるぞ。ウユチュ様の眠りを阻害する者は誰だろうが許さん」
「わ、わーったわーったからその刃に手を掛けるのをやめろ!」
二人のやり取りが遠ざかっていくのを、心地よく聞きながらウユチュは目を閉じる。スドゥルが楽しそうに話しているのを心から喜びながら、彼女は意識を奥深くへと落としていった。
「もしかしてあなたが知っているのは……
『遠い遠い白の国、昔昔アクバイ、全部白い国。そこには全てが手に入る。たくさんの宝石、栄養のある食べ物、美しい女。遠い遠い白の国、昔昔、アクバイ、見つけたら全て手に入る』
『砂の砂の真ん中、緑緑続く道、極彩色の花々。おそれず踏み出せ、穴の中。目を閉じるな、二度と開かぬぞ、目を開け。百数えたら手を伸ばせ、掴め掴め、離すな、立ったそこが白の国』
という歌かしら?」
ウユチュが口ずさんだ、その歌声はアイムにとても似ていた。
「そう、です。でもどうして?」
「この歌をアイムに教えたのは、私だからよ」
「え?!」
「アイムがあなたに教えたのなら、それだけであなたの人となりは分かったわ。タシュ、あなたは信用に足る人だわ。ね、そうよねスドゥル」
「……そう、ですね」
口元に手を当てつつ、スドゥルは頷いた。
「じゃあ少し眠るわね。あなたが悪い人じゃないと証明されてよかった。これで衛兵に差し出さない言い訳が出来たのだから」
「あ、衛兵……」
目を擦るウユチュの肩に、美しい織物がスドゥルによってかけられた。優しい笑顔でウユチュを見ているのを見てウユチュへの思いは忠誠心だけではないのだろうと確信する。
二人は何やら小声でやりとりをすると、ウユチュは笑顔で、スドゥルは不満そうにタシュの顔を見つめた。
「まずはこの国を見て回って、聞きたいことがあればスドゥルが答えてくれるから」
「え、あのアイムの事は?!」
「ごめんなさいね、タシュ。私もう眠くて眠くて」
「ウユチュ様はお休みになる、ほら行くぞ」
「じゃあお前が教えてくれるんだな!?」
「アイムの事以外ならなんでも」
「なんでだよ!俺が知りたいのは――っ」
「ほら、とにかく出掛けるぞ。ウユチュ様の眠りを阻害する者は誰だろうが許さん」
「わ、わーったわーったからその刃に手を掛けるのをやめろ!」
二人のやり取りが遠ざかっていくのを、心地よく聞きながらウユチュは目を閉じる。スドゥルが楽しそうに話しているのを心から喜びながら、彼女は意識を奥深くへと落としていった。
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