12 / 32
2night--ホテヘル
4
しおりを挟む
「ここがりーくんのお部屋でーす!」
「あ、うん。ありがとう」
「って前も入ったよね!相変わらず汚いなぁ。……まあ座って?えっと、コーヒーで良い?」
ソファに座らせると、なのははキッチン部分に置いてあるスティックコーヒーを取り出した。小さなキッチンの上にも物が溢れている。前回と同じくらい散らかった部屋で、理一郎が寝ている敷布団のスペースだけが鮮かに浮かび上がっている。
「勝手に良いの?」
「良いの良いの。てかさ、鉄さん以外の男がここに入るのってちょー珍しい。お兄さん一体りーくんの何?」
「な、何と言われると……」
何なのだろう。
体調不良の所に現れて、背中をさすってくれて風俗を斡旋。その後手で抜かれたこの関係は一体何と言えば良いんだ?自問してみるが、ピッタリくる言葉が見つからない。
平凡に平和に生きてきた佐々木にとっては、ジェットコースターのような数日間だ。
佐々木があれでもないと考え込んでいる間にお湯が沸き、手際よく甘い香りのするコーヒーがテーブルの僅かな空きスペースに置かれた。
「なのは達ね、りーくんにはお世話になってるんだ」
自分の分もいれたなのはが、両手でマグカップを掴みながら口を開いた。
「へ?」
「だからね、騙したらしたらダメだよ?」
こんな場所で働く、こんな髪型で、こんな話し方で、こんな恰好をしている女の子からの真面目なトーンの語り口に、一瞬思考が止まった。
何故だろう、彼女がこんなに真剣に話して来るとは思っていなかった。ある種、の偏見が自分の中にあった事に衝撃を受けたのである。
「騙すなんてそんな……」
「なのはとかさ、他にも色んな店で働いてる子も……男の子も女の子もいるんだけどね」
「は、はい」
真剣な表情のなのはに向かって居住まいを正し、先を促す。
「まあこんなトコって言ったらアレだけど、やっぱりこんなトコで働くって事は、みんな結構事情アリでさ。りーくんが色々世話してくれて働かせてもらってるんだ。もちろん大きな声で言えない仕事だって思う人も多いけど……なのはめっちゃ感謝してるの。生きてくのにお金って必要じゃん?」
「そ、その通りです」
なのはが話すたびに耳ついている無数のピアスがじゃらじゃらと揺れる。その中にある猫モチーフのピアスと目が合った。
「耳、気になる?」
「え、まあ……痛くないのかなって」
「これね、元カレが開けたの。なのはが言う事聞かなかった時に」
「え?」
ピアスに触れながらさらりと話す内容じゃない。猫が怒っているように見えた。
「それってDVでは……?」
「うーん。そうともいうかな。お金稼いで来いってすんごい条件悪い店で働かされててさ。まあなんだかんだあって、りーくんと鉄が助けてくれたんだよね」
「それは……」
佐々木の方が傷ついたような顔をして、なのははクスっと笑った。
「そんな子がこの辺にはいっぱいいるんだ。だから、みんなりーくんが大好きなの。お兄さんがもしもりーくんに悪い事したら……」
むむっと睨みつけられ、居心地が悪い。
彼女の真剣さが伝わってきた所で、ドアが開き、話の主役理一郎が入ってきた。
「あ、うん。ありがとう」
「って前も入ったよね!相変わらず汚いなぁ。……まあ座って?えっと、コーヒーで良い?」
ソファに座らせると、なのははキッチン部分に置いてあるスティックコーヒーを取り出した。小さなキッチンの上にも物が溢れている。前回と同じくらい散らかった部屋で、理一郎が寝ている敷布団のスペースだけが鮮かに浮かび上がっている。
「勝手に良いの?」
「良いの良いの。てかさ、鉄さん以外の男がここに入るのってちょー珍しい。お兄さん一体りーくんの何?」
「な、何と言われると……」
何なのだろう。
体調不良の所に現れて、背中をさすってくれて風俗を斡旋。その後手で抜かれたこの関係は一体何と言えば良いんだ?自問してみるが、ピッタリくる言葉が見つからない。
平凡に平和に生きてきた佐々木にとっては、ジェットコースターのような数日間だ。
佐々木があれでもないと考え込んでいる間にお湯が沸き、手際よく甘い香りのするコーヒーがテーブルの僅かな空きスペースに置かれた。
「なのは達ね、りーくんにはお世話になってるんだ」
自分の分もいれたなのはが、両手でマグカップを掴みながら口を開いた。
「へ?」
「だからね、騙したらしたらダメだよ?」
こんな場所で働く、こんな髪型で、こんな話し方で、こんな恰好をしている女の子からの真面目なトーンの語り口に、一瞬思考が止まった。
何故だろう、彼女がこんなに真剣に話して来るとは思っていなかった。ある種、の偏見が自分の中にあった事に衝撃を受けたのである。
「騙すなんてそんな……」
「なのはとかさ、他にも色んな店で働いてる子も……男の子も女の子もいるんだけどね」
「は、はい」
真剣な表情のなのはに向かって居住まいを正し、先を促す。
「まあこんなトコって言ったらアレだけど、やっぱりこんなトコで働くって事は、みんな結構事情アリでさ。りーくんが色々世話してくれて働かせてもらってるんだ。もちろん大きな声で言えない仕事だって思う人も多いけど……なのはめっちゃ感謝してるの。生きてくのにお金って必要じゃん?」
「そ、その通りです」
なのはが話すたびに耳ついている無数のピアスがじゃらじゃらと揺れる。その中にある猫モチーフのピアスと目が合った。
「耳、気になる?」
「え、まあ……痛くないのかなって」
「これね、元カレが開けたの。なのはが言う事聞かなかった時に」
「え?」
ピアスに触れながらさらりと話す内容じゃない。猫が怒っているように見えた。
「それってDVでは……?」
「うーん。そうともいうかな。お金稼いで来いってすんごい条件悪い店で働かされててさ。まあなんだかんだあって、りーくんと鉄が助けてくれたんだよね」
「それは……」
佐々木の方が傷ついたような顔をして、なのははクスっと笑った。
「そんな子がこの辺にはいっぱいいるんだ。だから、みんなりーくんが大好きなの。お兄さんがもしもりーくんに悪い事したら……」
むむっと睨みつけられ、居心地が悪い。
彼女の真剣さが伝わってきた所で、ドアが開き、話の主役理一郎が入ってきた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
クソザコ乳首くんの出張アクメ
掌
BL
おさわりOK♡の家事代行サービスで働くようになった、ベロキス大好きむっつりヤンキー系ツン男子のクソザコ乳首くんが、出張先のどすけべおぢさんの家で乳首穴開き体操着でセクハラ責めされ、とことんクソザコアクメさせられる話。他腋嗅ぎ、マイクロビキニなど。フィクションとしてライトにお楽しみください。
ネタの一部はお友達からご提供いただきました。ありがとうございました!
pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。
なにかありましたら(web拍手)
http://bit.ly/38kXFb0
Twitter垢・拍手返信はこちらから
https://twitter.com/show1write
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
出産は一番の快楽
及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。
とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。
【注意事項】
*受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。
*寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め
*倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意
*軽く出産シーン有り
*ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り
続編)
*近親相姦・母子相姦要素有り
*奇形発言注意
*カニバリズム発言有り
【R18】気持ちいいのがバレるまで
葉住 純/Hasumi Jun
BL
【注意】
◆R18作品です。18歳未満の方はお控えください。
◆BLです。本当にお気をつけください。
◆4話まで予定しています。
【あらすじ】
ちょっとしたことでも大袈裟なくらいくすぐったがる拓海を見て、奏のイタズラ心に火が点き⋯⋯。
王道です。
【要素】
◆くすぐり
◆寸止め
◆亀頭責め(ちょっと)
【本文抜粋】
(こんな感じで書いてあります)
奏は俺の肩に顔を近づけ、耳元で言う。そしてそのまま俺の首に唇を這わせた。いつの間にか奏の両手は俺の腰に巻きつき、ぎゅっと抱きしめられている。
「ちょっ、まじでくすぐったいんだって」
俺は首を動かし、奏から逃れようとした。しかし奏は
「耳も? 拓海お耳好きだもんね?」
と言いながら、今度は耳に唇を寄せた。
「んっ⋯⋯だから、やめ⋯⋯」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる