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逃亡先の安らぎ
小鳥で逃亡3
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炭酸がぱちぱち弾ける音がする。赤いさくらんぼの下には半円形のアイスクリーム。アイスクリームの際が炭酸水と混じり、氷にくっついている。
運ばれてきた透けてみえる緑色の液体の向こうを覗き込んだ時、向こう側に横川が戻って来た。
「ギリギリ間に合った?」
「ん-……ギリアウト」
「えー?!手厳しい!」
「何してたの?」
「ふっふっふ……」
悪戯っ子の様に笑みを浮かべた横川は、背中に隠していた箱を見せてきた。
「多分サイズ大丈夫だと思うんですけど」
そう言って取り出したのは靴だ。
箱を椅子に置くと竜児の横に膝を付き、靴を履かせた。
「スニーカー?」
「竜児さんくらいの子はこういうの好きでしょ?オレも結構集めてるんですよねぇ……まあこれは高いやつじゃないですけど」
クッション素材が分厚いスニーカーは、竜児の足にすっぽりはまった。
「あ、靴下忘れた」
「素足でもいいよ。……ありがと」
横川と今日会ってから、初めて微笑んだ竜児を見てほっとする。
微笑み合った二人はメロンソーダを飲み始めた。まずはバニラアイスをすくって口に運ぶ。その次は氷の上で固まった部分を食べた。
落ち着いた木目のテーブルが、緑のフィルターがかって見えた。それは少しレトロな映像にも見えて、懐かしい気持ちになった。
「……久しぶりだ」
「メロンソーダが?前はいつ食べたんです?」
「母親が連れて行ってくれた店でだったかな」
「ふぅん……?きっと綺麗な方なんでしょうね」
先に液体を全て飲み干した横川がスプーンを咥えてそう言うと、竜児は目を合わせてきた。
「どうしてそう思うの?」
黒目がちな瞳にすっと見据えられると、こちらの気持ちが見透かされるような気がして、心臓がとくんと鳴った。
「――竜児さんが綺麗だからです」
「へえ……」
不敵に笑って、唇についたアイスをぺろりと舐める。こんなにも彼は艶めかしい人だったろうか。大きな窓からは太陽の光が入ってきて、なんだか熱い。
慌てて残りのアイスを口に入れ、必死に熱を冷ました。
「食べるの早くない?」
「竜児さんはゆっくりどうぞ!オレは水飲んでるんで!」
すぐに水のグラスを空にして、店主へ合図を送る。
「横川サンって、ちょっと親父に似てるかも」
「へ……?えっと、さすがにそれは……」
そういえば年齢を聞いていない。とはいえ横川だって二十代だ。子供がいたとしても一桁の年齢のはずだ。筋トレにも励み、顧客からは若い、カッコイイと言われているが、あれはおべっかだったのだろうか。
「違う違う、親父みたいに俺に優しいって事」
「あ、なるほど」
明らかに胸を撫で下ろす。
「親父、俺の事大好きでさ。何も言ってないのに色々買って来たりしてくれてさ」
ぶらぶらと足が揺れる。さっき勝手に靴を買ってきた事を言っているのだろう。
「ま、俺が欲しいって言ったものも、だいたいは手に入れてくれたんだけどね……元気かなぁ。……元気だろうな」
「どれくらい会ってないんです?――あ、聞いちゃった」
「きぬに止められてた?」
思わず口を片手で塞いだ横川に、竜児は再び視線を戻した。問いかけにこくりと頷くのを見て、小さくため息を吐いた。
運ばれてきた透けてみえる緑色の液体の向こうを覗き込んだ時、向こう側に横川が戻って来た。
「ギリギリ間に合った?」
「ん-……ギリアウト」
「えー?!手厳しい!」
「何してたの?」
「ふっふっふ……」
悪戯っ子の様に笑みを浮かべた横川は、背中に隠していた箱を見せてきた。
「多分サイズ大丈夫だと思うんですけど」
そう言って取り出したのは靴だ。
箱を椅子に置くと竜児の横に膝を付き、靴を履かせた。
「スニーカー?」
「竜児さんくらいの子はこういうの好きでしょ?オレも結構集めてるんですよねぇ……まあこれは高いやつじゃないですけど」
クッション素材が分厚いスニーカーは、竜児の足にすっぽりはまった。
「あ、靴下忘れた」
「素足でもいいよ。……ありがと」
横川と今日会ってから、初めて微笑んだ竜児を見てほっとする。
微笑み合った二人はメロンソーダを飲み始めた。まずはバニラアイスをすくって口に運ぶ。その次は氷の上で固まった部分を食べた。
落ち着いた木目のテーブルが、緑のフィルターがかって見えた。それは少しレトロな映像にも見えて、懐かしい気持ちになった。
「……久しぶりだ」
「メロンソーダが?前はいつ食べたんです?」
「母親が連れて行ってくれた店でだったかな」
「ふぅん……?きっと綺麗な方なんでしょうね」
先に液体を全て飲み干した横川がスプーンを咥えてそう言うと、竜児は目を合わせてきた。
「どうしてそう思うの?」
黒目がちな瞳にすっと見据えられると、こちらの気持ちが見透かされるような気がして、心臓がとくんと鳴った。
「――竜児さんが綺麗だからです」
「へえ……」
不敵に笑って、唇についたアイスをぺろりと舐める。こんなにも彼は艶めかしい人だったろうか。大きな窓からは太陽の光が入ってきて、なんだか熱い。
慌てて残りのアイスを口に入れ、必死に熱を冷ました。
「食べるの早くない?」
「竜児さんはゆっくりどうぞ!オレは水飲んでるんで!」
すぐに水のグラスを空にして、店主へ合図を送る。
「横川サンって、ちょっと親父に似てるかも」
「へ……?えっと、さすがにそれは……」
そういえば年齢を聞いていない。とはいえ横川だって二十代だ。子供がいたとしても一桁の年齢のはずだ。筋トレにも励み、顧客からは若い、カッコイイと言われているが、あれはおべっかだったのだろうか。
「違う違う、親父みたいに俺に優しいって事」
「あ、なるほど」
明らかに胸を撫で下ろす。
「親父、俺の事大好きでさ。何も言ってないのに色々買って来たりしてくれてさ」
ぶらぶらと足が揺れる。さっき勝手に靴を買ってきた事を言っているのだろう。
「ま、俺が欲しいって言ったものも、だいたいは手に入れてくれたんだけどね……元気かなぁ。……元気だろうな」
「どれくらい会ってないんです?――あ、聞いちゃった」
「きぬに止められてた?」
思わず口を片手で塞いだ横川に、竜児は再び視線を戻した。問いかけにこくりと頷くのを見て、小さくため息を吐いた。
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