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推定乙女ゲームの世界に転生した、気がする

16(ディラン視点)

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 同胞を皆殺しにした人間など嫌いだったが、同胞が好きなわけでもない。

 名のある魔法使いと優秀な魔族の間に生まれた俺は持って生まれた魔力や能力が優秀で、それゆえ人間に見逃され利用された。

 最悪のタイミングで裏切ってやろうと心に決め、王の喉元に魔力を突きつけて新しい条約を結んでやった。

 あいつらの手によって死にたくはなかったからひとりで過ごせるように結界を張ったけど、別に特別生きたいわけでもない。いずれどこかのタイミングで条約自体破棄してから死んでやろうとすら思っていたが。


『師匠!』


 愛しい少年に出会ってから、生きたいと思うようになった。





 今宵もベッドに連れ込んだテオが寝静まったのを気配で確認して、ゆっくりと目を開ける。
 窓から差し込む月光に晒された彼のグレーの髪が、出会った頃より少しだけ濃くなっていた。

(黒髪、赤に近い瞳は魔族の証拠だ。テオと口付けする時に毎度毎度俺の魔力を混ぜているから、だんだんと馴染んでくる)

 口付けだけならともかく、テオの後孔がを受け入れられるようになればもっと高濃度の魔力を渡せるだろう。

 テオを魔族に近しい存在にすれば彼の寿命は限りなく俺に近くなり、長い長い時間を共に過ごせるようになる。


(黒髪赤目の人間なんてこの世に存在しないから、おまえもそちら側には居づらくなるかもしれない。責任を取らせてくれ、テオ。この世でたった二人の人間じゃない紛い物として、ずっとずっとずっと、一緒にいよう)


 成長すればもっと美しくなることが安易に予想される、整った顔に安心しきった様子を乗せて眠る少年の髪にそっと顔を寄せ口付けた。

 きっと今の俺の目は愛を浮かべ、鮮血のような赤に染まっている。



 ほんの少しだけ、他人とは違う魂の形を持つ少年。
 そのせいで魔力の質が他の人間とは違うものになり、結果的に俺の魔力との共通点が多く、結界が彼を見逃した。

 運命なんていう稚拙な言葉で片付けたくない。
 うっかりテオが俺のもとに転がってきたのだから、あとは俺が作った赤い糸で彼をがんじがらめにしておけば良い話だ。



(愛してるよ、テオ。おまえが傍にいるなら俺は生きていける。必ず守ると誓うから、どうか俺を愛して)



 うっとりと見つめれば照れてはにかむ瞳が閉じられているのはいささかつまらない。
 早く朝になって俺を映してくれますようにと願い、テオの左手の薬指を噛んだ。



 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 くっつくまで(本編のつもり)はここで終わりです。
 テオが成長した後の話も色々書きたいことが詰まってるので、番外編を挟んだ後テオ十六歳編も書こうかなーと思ってます。
 新章扱いになるかそれも番外編に入れちゃうかは未定ですが、書け次第色々載せていきますので、よければ今後もお付き合いしていただけると幸いです!
 こういう話読みたいなーとかあれば、ぜひ……(こっそり)


 それでは一旦、ここまで読んでくださった皆さまに感謝を込めて!
 ありがとうございました!
 
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みんなの感想(5件)

虎太郎
2023.11.24 虎太郎

とても面白かったです。続き楽しみに待ってます(*´~`*)

解除
ura
2023.03.19 ura

番外編早く読みたいです!
更新待ってます!!

解除
🍵抹茶🍵
2022.10.28 🍵抹茶🍵

作品とても面白かったです( *´ `).。o○

個人的には師匠さんと結婚して人生を終える所まで見届けたい…っ!って思いました😅
あとは口付けや…まぁ夜の営みとかで髪や瞳が変化していく過程とかも見てみたいなって思いました( ˘꒳˘)💭*°

もし可能なら続編…番外編?見たいです👀︎💕



お身体にお気を付けて(*´︶`*)ノ

それでは失礼致します(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゚

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