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推定乙女ゲームの世界に転生した、気がする
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しおりを挟む昨日、予約投稿失敗していたみたいで非公開になってました……。すみませんTT
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「……えっ、今なんと?」
「ん? 光属性の子どもを無事王宮で保護したと。まだ五歳の男児なのに随分しっかりした子だったよ」
「ごっごご、ごこ、ご五歳!?」
数日後、俺は殿下から学園で衝撃の事実を聞いた。
……我らがヒロインは五歳で、しかも男の子だったらしい。
(えっじゃあ乙女ゲームは!? どうなるんだ!? あれ?)
頭の中に「全部俺の勘違い」という言葉が浮かんだ。
殿下たちを攻略対象者だと警戒したのも、ヒロインが襲来すると思ったのも、俺が何かに巻き込まれるのではと危惧していたのも、全部全部俺が勝手に思いこんでいただけらしい。
こうやって改めて言葉にするとめちゃくちゃだ。絶対に頭がおかしい。
「テオドール、どうかしたのかい?」
「いえ! なんでもありません! 五歳で急に親元を離れるなんて、いやぁ大変だなあと!」
「そうだね。今までの歴史を見てこういう判断をしたわけだけど、定期的に元の家族と面会はできるようにしないと」
本当に忙しいのだろう。眉間を揉み解す殿下を見ながら、それでも今の俺の心は「乙女ゲームが云々とか誰にも言ってなくてよかったー!!」である。
最悪、本当に頭を疑われて病院に行かされてしまう。
(よく考えなくても、そもそも俺たちって十三だし!? 恋愛ゲームのヒーローたちってだいたい平均年齢もうちょっと上だよな!? なんで俺はこんな思い込みが激しいんだ……)
学園からの帰路、転移魔法の構造を組みながらひとりで落ち込んでいた。
だってこれでもし本当に師匠知らない人を紹介されて、その人と勢いで交際なんかしてたら目も当てられない。
ていうかあんな恥ずかしいこと師匠以外とできない!
誰でもいいから恋人作らなきゃとか思ってた時の俺、切羽詰まりすぎだろ。
「……ただいま戻りましたぁ」
「テオ! おかえり」
転移魔法を発動した瞬間背後から勢いよく抱きしめられる。
師匠は俺と付き合って……付き合……ってるのか? ……そういう関係になってからスキンシップが前の比じゃないくらい増えた。
帰るとすぐ抱きかかえられて膝の上に乗せられるし、ご飯も師匠の手から食べさせたがるし、お風呂に入った後は問答無用で師匠の部屋に連行される。
……全然嫌じゃない。もっとと思ってしまうから、俺も大概だ。
「師匠……俺は今自分のポンコツ加減に嫌気がさしています」
「おまえは抜けているところも可愛いがな。その紫がかった猫のような瞳も、灰色の癖っ毛も、薄い唇も耳も、全部全部愛らしい」
「えっ、あ、そ、そうですか」
よしよし待ちしていたら急に外見激褒めタイムが始まってしまいたじろいだ。
可愛い可愛いとは言われていても、こうやって口説くみたいに囁かれるのは慣れていない。顔が赤くなってしまう。
ちらっと師匠に視線を動かすと、彼の真っ赤な瞳が俺への熱を雄弁に語りながらこちらを見ていた。
「……あ、また赤くなってる」
「…………俺の眼か?」
「はい、時々真っ赤になりますよね。結構見かけますよ」
俺の指摘に師匠は気まずそうに視線を左右させる。
えっ、なんだ、俺まずいこと言った!?
「……魔族は求愛する時に瞳が赤に染まると言われている。周りで見たこともなかったし、迷信だと思っていたのだが、そうか。テオの前ではそうなるのか」
「きゅ、えっ、求愛!?」
「ああ、俺はおまえからの愛を求めてやまない。そして俺の愛もまるごと受け取ってほしい。……何度も好きだと伝えたはずだが、その反応は足りないということか?」
頬に手を添えられ顔が近づく。
いや、別に師匠の言葉を疑ったこととかないけど、こういう物的証拠を出されるとそれはそれでこう、くるものがあるというか!?
「足りなくない、ですけど、……もっと欲しいです。ディランさん、好き」
彼の瞳に魅入るように、思った言葉がすらすらと口から出てくる。
頬に置かれた師匠の手に自分の手を重ねてみる。
あ、師匠の手も熱い。
「テオ、好きだ。愛してる。……俺とここで、ずっと一緒にいよう」
重なる唇に目を閉じた。俺の人生この人にあげたいなんて思ったけど、言葉にはならず、代わりに彼の言葉に舌で応える。
乙女ゲームの世界に転生したと思っていたら大好きな師匠が俺の未来の伴侶になった。
……今考えればこんな設定もりもりの美形は絶対攻略対象だと思うけど、もし今後本当にヒロインが出てきてもディランさんだけは譲れない。
師匠の指に俺の指を絡めながら、心中で自分だけの誓いを立てた。
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