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推定乙女ゲームの世界に転生した、気がする
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しおりを挟む乙女ゲームの世界なのでは? と思いながら過ごしていると目につくものが全て怪しく思えてきてしまう。
一昨日に至ってはなんと生徒会に入らないかと宰相の息子から声をかけられた。
忙しいのは本当らしく、先日の猫の手も借りたい発言は俺が入るって言ってくれないかな? という期待を込めていたらしい。
もちろん断ったけど、なんだか諦めていないっぽい。
俺は将来の権力者たちの人脈を求めにこの学園に通っているわけじゃないし師匠と修行以外のことに時間を取られるなんて正直ごめんだ!
というか、これがまさか『強制力』とかいうやつなのか? 俺が生徒会に入って攻略対象者(仮)達とよろしくやるように空気が動いていないだろうか。
そんなことを考え周囲の全てを訝しんでいるとまともに睡眠も取れず、言いようのない不安に襲われ続けもう三日も経つ。
寝れないので仕方なく魔法のことを考えながら夜を明かす日々を過ごしていたが、成長期の身体に睡眠不足はかなりダイレクトに影響し、今日ついに階段から足を踏み外して思いっきり転がり落ちてしまった。
「君、すごい石頭なんだね。あの高さから落ちてケロッとしてるの、普通無理だよ」
……思いっきり転がり落ちたわりには全く怪我がなく自分でも驚いている。
養護教諭の先生もそうらしく、興味深そうに俺の頭を触診していた。触っても硬いだけだと思う。
「まあ、診たところ頭の怪我はちょっとたんこぶがあるくらいかな。ナカも確認したけど多分大丈夫だよ。膝と腕も擦り傷くらい。それより……」
テキパキと怪我の該当箇所に消毒やら薬やらをつけてくれる手際を眺めていたら、不意に先生と顔が近づき目の下に指を添えられる。
中性的な美貌が目の前に迫り、思わずどきりとして身体が固まった。
「あぁほら、全然寝てないでしょ。こんな寝不足ですって顔で歩いてたらそりゃあ怪我するよ。何悩んでるのか私には分からないけど、睡眠だけはちゃんと取りなね」
どうやら先生は俺の目の下のうっすらとした隈をめざとく見つけたらしい。下瞼を引っ張られたり隈をみたりした後、身体を離しそんなことを言われた。
「……先生は」
「ん?」
「先生は、強制……いや、なんというか……。えっと、今後の人生の展開が既に決められたものだとしたら、どうしますか?」
ここが乙女ゲームの世界だとして、俺はその世界に踊らされているのかもしれないという妄想は想像以上に俺のメンタルにきていた。
俺の人生なのに、勝手に操られているのかもしれないという感覚が気持ち悪くてそれが拭いきれないのだ。
先生は「この子何言ってるんだろう?」という表情を隠しもせず俺をみていたが、不意に表情を柔らげ視線を向ける。
「まぁ、そうだね。その展開を自分も知ってるなら、そこに絶対起きないようなことをするかな」
「起きないようなこと?」
「うん。癪じゃないか、自分の人生が縛られてるなんて。相手の裏をかくことは戦闘の基本だろう?」
悪戯っぽく目を細めた先生の言葉はすとんと俺の中に入ってきた。
起きないような展開……。そうだ、俺は意志を持ってるひとりの人間なんだから、乙女ゲームっぽくない行動をとればいいんだ!
「先生っ、ありがとうございます!!!」
「うん、どういたしまして? 元気だね、君」
そうと決まればうじうじしていられない。
先生に頭を下げてそのまま学園を早退すると、師匠にメッセージを送るのも忘れて家に転移した。
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