OH MY CRUSH !!

文月 七

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「おまえ、こっちから来たよな。」
 と、駅とは反対方向の道を倖は指し示した。
「通り道にコンビニあっただろ。なんでコンビニ行かねんだよ。」
 佐藤はバカにしたような顔で倖を見返す。
「さっきも言ったけど、僕の勝手だろ?」
 そういいながら倖の手を思い切り払い、さらに物干し場の奥の方へと逃げ込んだ。そして倖に向き直ると、ふぅ、と右手に持っていたタオルで汗を拭う。
 そのタオルにどこかで見たような女の子のキャラクターが描かれているのを見て若干ひいた。
「駅方面に行こうとしてたよな?あっちにもコンビニあんだろ。おまえみたいなのが何でわざわざクーラーも効いてない狭い通路の店に来るんだよ。」 
 そしてチラリと佐藤の左手に下げられたビニール袋を確認する。
「炭酸、買うだけだったらコンビニでいーし、もっと言えば自販機でよくね?」
 佐藤は渋面でため息をつく。
「……そうだったとしても、一体君に何の関係があるんだい?」
「大方、あいつに会えるかも、とか思ってわざわざこの店利用してたんじゃねぇの。」
 倖の言葉に佐藤は目をパチクリとさせた。あいつ、ね、と小さく呟くと苦々しげに吐き捨てた。
「あの子のこと、あいつ、だなんて言ってほしくないね。」
「……あの子、ね。お前こそやけに親しげに呼ぶじゃねぇか、ストーカーのくせに。」
 ストーカーなんかじゃないさ、と佐藤はバカにしたように鼻をならした。
「彼女、似てるだろ?この子に。」
 と、手にしていたハンドタオルを広げてみせる。かほりんて言うんだ、と恍惚とした表情でそうのたまった。
「……かほりん、」
 アニメは有名どころは何となく読んだり見かけたりはしている、くらいの知識量しかないなのだが、これは知らない。 
 誰だ、かほりんて。
「てか、似てるか?」
「そっくりじゃないか!小さくて眼鏡かけてておさげで制服!」
「……その条件に当てはまるやつ、そこら辺にゴロゴロいそうだけど。」
 半眼でそう言う倖に、かっ!と目を見開き佐藤が抗議してきた。
「違うんだよ!あの子はねぇ、えぇと、何て名前だったっけ?」
 聞いたんだけどなぁ、と言いながら倖のことをチラリと見てくる。教えるわけねーだろ、と心の中で呟きながら教えてほしそうにしている佐藤を無視した。
「あの子はね、いままで見てきた子の中で一番なんだよ。」
 と、うっとりとハンドタオルのかほりんを見つめる。
「そっくりだろ?」
「……そっくりではない。あいつはこんなかわいくないだろ。」
「……あ、ありがとう。まさか……君にかほりんのことを誉めてもらえるなんて、ね。でも、嬉しいよ。」
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