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「あほか。自分の顔に満足しているやつなんてそうそういないぞ。俺から見たら意外とマシかもしんないから、取ってみったら。」
「マシって?何がですか?」
「いや、だから、人並みくらいには見れんじゃねーかって、……あれ、怒った??」
負の感情はあまり表に出さないようにしているが、それでもこの怒気は倖に伝わったらしい。
「……ごちそうさまでした。」
1/3程残った弁当箱に蓋をして後片付けを始めたりんを見て、倖がギョッとしたようにその手を掴んだ。
「ま、まてまてまて!もう言わねー!眼鏡取れって言わねーから!」
りんは掴まれた腕をグッと引き寄せて臨戦態勢を取り、じっとりと倖を睨みつけた。
「本、当、ですか?」
「ほんとーほんとー、だから、飯はちゃんと食え。」
俺も大人しくパン食うから、そう言うと、残りの総菜パンに手を伸ばした。
「まぁ、なんだ、もう眼鏡取れとは言わないから、まぁ、仲良くしよう。」
もぐもぐと口を動かしながら、総菜パンでべとついた右手でまた握手を求めてくる。
どうせ、仲良くしたいのもあわよくば眼鏡を取るチャンスを窺いたいだけのくせに、と口を尖らせた。
目の前の倖の右手を、この場合の握手はなんの意味があるのか、ともやもやした気持ちになりながら、それでも倖が切羽詰まってそうな顔をしていたのでとりあえず握手しておく。
「そうだ、とりあえずお前今日うちに来い。」
「はい?」
倖はぶんぶんと握手したままの手を振りながら言った。
「そろそろちったぁ片づいただろ?部屋。」
全部じゃなくていいから、ぬいぐるみ、今日回収していけ、と倖が凄む。りんはその倖の勢いに怯んで手を振りほどくと、フルフルと首を横にふる。
「理由を言え。」
「まだあんまり片づいてないです。」
「行き先、お前ん家に変更な。」
「え!やですよ!」
「やじゃねぇよ。俺が片づけてやる。」
「……えー……一匹、だけだったら。」
「よし。学校終わったら俺ん家いくぞ。」
「……今日は図書館も行きたかったんですけど。」
倖は最後のパンを咀嚼しながら、いけばいーだろ、ともごもごと言う。
「ちゃっちゃと本返してこい。借りるのは明日にしろ。」
倖はパックのコーヒーを丁寧に崩しながらずびびと飲み干すと、ごっそさん、とガタガタと椅子を戻す。そうしてテンションが些か低くなったりんを残し、さっさと教室を出ていった。
ぬぅ。
断る隙さえなかった。
しかし。
倖がまた声をかけてきてくれたことを嬉しく思うのも事実で。例え、これが眼鏡を取れという要求を通すための手段だとしても。
ということは、眼鏡取ったらまた倖は離れていくのだろうか?
……元々取る気はなかったけれど、絶対取らないでおこう。
せっかく戻ってきてくれた、お友達1号なのだから。
それが、なんちゃってお友達だったとしても。
うんうんと1人頷きながら、りんは少しだけ残った弁当箱の中身を平らげるために箸を動かし始めた。
「マシって?何がですか?」
「いや、だから、人並みくらいには見れんじゃねーかって、……あれ、怒った??」
負の感情はあまり表に出さないようにしているが、それでもこの怒気は倖に伝わったらしい。
「……ごちそうさまでした。」
1/3程残った弁当箱に蓋をして後片付けを始めたりんを見て、倖がギョッとしたようにその手を掴んだ。
「ま、まてまてまて!もう言わねー!眼鏡取れって言わねーから!」
りんは掴まれた腕をグッと引き寄せて臨戦態勢を取り、じっとりと倖を睨みつけた。
「本、当、ですか?」
「ほんとーほんとー、だから、飯はちゃんと食え。」
俺も大人しくパン食うから、そう言うと、残りの総菜パンに手を伸ばした。
「まぁ、なんだ、もう眼鏡取れとは言わないから、まぁ、仲良くしよう。」
もぐもぐと口を動かしながら、総菜パンでべとついた右手でまた握手を求めてくる。
どうせ、仲良くしたいのもあわよくば眼鏡を取るチャンスを窺いたいだけのくせに、と口を尖らせた。
目の前の倖の右手を、この場合の握手はなんの意味があるのか、ともやもやした気持ちになりながら、それでも倖が切羽詰まってそうな顔をしていたのでとりあえず握手しておく。
「そうだ、とりあえずお前今日うちに来い。」
「はい?」
倖はぶんぶんと握手したままの手を振りながら言った。
「そろそろちったぁ片づいただろ?部屋。」
全部じゃなくていいから、ぬいぐるみ、今日回収していけ、と倖が凄む。りんはその倖の勢いに怯んで手を振りほどくと、フルフルと首を横にふる。
「理由を言え。」
「まだあんまり片づいてないです。」
「行き先、お前ん家に変更な。」
「え!やですよ!」
「やじゃねぇよ。俺が片づけてやる。」
「……えー……一匹、だけだったら。」
「よし。学校終わったら俺ん家いくぞ。」
「……今日は図書館も行きたかったんですけど。」
倖は最後のパンを咀嚼しながら、いけばいーだろ、ともごもごと言う。
「ちゃっちゃと本返してこい。借りるのは明日にしろ。」
倖はパックのコーヒーを丁寧に崩しながらずびびと飲み干すと、ごっそさん、とガタガタと椅子を戻す。そうしてテンションが些か低くなったりんを残し、さっさと教室を出ていった。
ぬぅ。
断る隙さえなかった。
しかし。
倖がまた声をかけてきてくれたことを嬉しく思うのも事実で。例え、これが眼鏡を取れという要求を通すための手段だとしても。
ということは、眼鏡取ったらまた倖は離れていくのだろうか?
……元々取る気はなかったけれど、絶対取らないでおこう。
せっかく戻ってきてくれた、お友達1号なのだから。
それが、なんちゃってお友達だったとしても。
うんうんと1人頷きながら、りんは少しだけ残った弁当箱の中身を平らげるために箸を動かし始めた。
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