OH MY CRUSH !!

文月 七

文字の大きさ
上 下
5 / 135

しおりを挟む
 はやしだ、林田さん、だろうか。
 怪しまれないように一度通り過ぎ、すぐのT字路の角に身を隠した。時刻は夕方6時をまわったところだった。
 犬の散歩をしている学生やら買い物帰りのばあさんなどが通りすぎていくのを横目で見ながらスマホをいじる振りをする。
 よし、自宅はつきとめた。
 にやける口元を隠しつつこれからのことを思案する。
 さて、どうやって接触しようか。
 欲を言えば自宅付近で出会いを装うより、彼女の学校、例えば通学途中で出会ったほうが自然な気がする。
 高校生だろうか、中学生だろうか。
 高校生だったらいいな。
 ……どこの学校に通っているのだろうか。
 ブロック塀から覗き見ながら、あれこれと策を練るがどれもイマイチだった。
 それでもまぁ、とりあえず手っ取り早く通っている学校を知るには。

 この手しかない。


  ◇◇◇◇◇◇◇◇


「おはようございまーす!」
 倖は早朝にジョギングしている元気のよいおじさんに元気よく声をかけられ、びくっとしつつ会釈を返した。
 スポーツウェアに身をつつみ爽やかに走り去ってゆくおじさんの背中を注視しながら倖は大きくため息をつく。

 これで何人目だ。

 朝5時に林田家に到着してから、すでに数人のジョガーに挨拶されている。こういう場合、声もかけずに素通りするのが普通なのではないだろうか。
 たとえ相手がブロック塀のそばに立ち尽くしている明らかな不審者であろうとも。この地域の挨拶運動と防犯意識の高さには驚かされる。
 彼女が出てくる前に通報されるかもしれない。
 冷や汗を垂らしながら、早く出てこい、と玄関先を睨んだ。
 時間は6時30分をまわっている。
 そろそろ出てくるのではないか。否が応にも高なる鼓動。心臓が痛いくらいだ。
 声をかけてきた人の良さそうなおばあさんに、林田家のことをそれとなく聞いて身辺調査はすんでいた。
 先週越してきたばかりの3人家族。
 両親と、高校生の女の子が1人。
 女の子が1人。
 よし、わかりやすい。
 年の近いよく似た姉妹とかだったら、どっちが彼女かわかるだろうか、と心配していたのだ。さすがに母親と間違うことはないだろう。
 まだかまだかとやきもきしながら待っていると、がちゃりと扉の開く音がした。
 来た!
 慌ててブロック塀に身を隠す。駅に向かうなら、こちらに来る。
 トコトコと軽い足音が聞こえ、すぐに彼女は角から姿をあらわした。
 顔は見えなかった。
 けれどその制服には、見覚えがあった。

 白いシャツと紺のチェックのヒダスカート、エンジと紺の縞模様が入ったリボンが風に揺れる。

 彼女が着ていたその制服は、そう、倖の通う学校の制服だったのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

気まぐれの遼 二年A組

hakusuya
青春
他人とかかわることに煩わしさを感じる遼は、ボッチの学園生活を選んだ。趣味は読書と人間観察。しかし学園屈指の美貌をもつ遼を周囲は放っておかない。中には双子の妹に取り入るきっかけにしようとする輩もいて、遼はシスコンムーブを発動させる。これは気まぐれを起こしたときだけ他人とかかわるボッチ美少年の日常を描いた物語。完結するかは未定。

リコの栄光

紫蘇ジュースの達人
青春
ケルト陸軍学校の訓練生リコは、同期の心優しい男サッチと、顔はかわいいけれど気が強い女子訓練生モモと共に日々訓練に奮闘中だ。リコの父親はケルト国の英雄で、伝説的なスナイパーだった。亡き父の背中を追いかけるリコ。ある日、父の死について知っているという人物が現れ、、、。リコの内に秘めた熱い想いと、仲間達との青春を描く長編ストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

機織姫

ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり

処理中です...