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Ω先輩の章

来ない通知 〜一仁視点〜

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 唯を寮に帰した後、今俺は教室に行って授業を受けている。でも、唯のことが心配で授業に全然集中出来ない。

 本当は唯の発情期は一緒にいたいけど、俺たちは"まだ"番っていないから一緒に居られない。せっかく今まで少しずつ俺のフェロモンに触れさせて育ててきたのに。けど番になっていなくても、唯が俺を指名してくれたら学校に発情期休暇の申請をして二人で過ごすことが出来るはず。だから、唯から何かメッセージが来てないか、授業中だけどずっとスマホを見ている。「一緒にいて」とか、「助けて」とか言って欲しいな。「どうしたらいいか分からない」みたいのでもいいや。直接行って手取り足取り、丁寧に教えてあげる。なんでもいいから、唯に求めて欲しい。そして、流れに任せて噛んでって言って欲しい。そしたらすぐ噛んで番になる、……あ、発情期中に言ったのはノーカンって隼人さんと約束したんだった。
 しかし、脳内で色んなことを考えながら、黒板も見ないでずーっとスマホを見ているのに、唯からのメッセージの通知は全く来ない。もうこの際、俺が唯のところに行く理由になるものじゃなくていいから、唯の無事を確認出来る何かが欲しい。


 ついに、1時間目の授業が終わっても唯から連絡が来ることはなかった。多分、唯のことだから、部屋に帰って早々に寝ただけだと思うけど、そうでなかった場合のことを考えて、どうにかして唯の状況を確認したい。そう思った俺は授業が終わった後、唯のクラスの1-Eに行った。




 目当てのクラスの前に着いて、窓から中の様子を伺った。教室中、廊下中から見られているけど、そんな視線は無視してある人を探した。ほとんどの人が俺を見ていて、人を識別しやすいのに、なかなか探している人物が見つからないと思ったら、教室のど真ん中の席で爆睡していた。こいつ、まだ1時間目なのにガチ寝……、よく寝れるな。やっと彼を見つけて、そんなことを考えてたら1人の生徒が話しかけてきた。

「あのっ、誰かお探しですかっ?」

 俺がチラチラと教室を覗いているのを見て、気を使って聞いてくれたらしい。なので遠慮なく彼を呼んで貰うことにした。あの爆睡っぷりは廊下から呼んでも気づかないだろうから。

「あそこで寝てる、光君に用があるんだ。呼んでもらえるかな。」

「はいっ!」

 元気よく返事をして、この生徒は光君を呼びに教室へ入っていった。その様子を暫く目で追ってみると、光君が肩を大きく揺らされて起こされていた。その後すぐに廊下に出てきた。

 「あれ、鮫島君、どうしたの?」

 「君に頼みたいことがあって。ちょっといい?」

 そう言って光君を連れて玄関の方に向かった。




 「頼みって何? あ、唯が休んでる分の授業のノート? それならもう1時間目のは無理だよ。」

 教室から離れて、玄関前に着いた時光君が俺にそう言った。授業の写しは、俺が直接教えれば問題ないから頼むつもりはなかったが、やっぱり1時間目から寝ていてノートはとれてないらしい。

 「いや、それじゃない。実は、あの後唯からの連絡が何も来ないんだ。だから、今から様子を見に行ってくれないかな。それで、唯の様子を俺に知らせて欲しいんだ。多分、寝てるだけだと思うんだけど。」

 「寝てるならいいじゃん。寝かせてあげようよ。」

 「でも、そうじゃないかもしれないから。とにかく、様子を見に行って欲しいんだ。見るだけだからすぐ終わると思うけど、もし次の授業に間に合わなかったら何かお詫びもするよ。だから、引き受けてくれないかな。」

 早く唯の状況が知りたいからすぐに行って欲しいのに、光君には俺の気持ちが分からず、放っておくように言ってきた。しかし、俺がこう言うと、光君ははっと目の色を変えた。

 「そ、それって……。僕、今すぐ行くよ!、それで次の授業絶対間に合わないから休むって先生に言っておいて! 今日はこの後ずっと唯の看病するから! もう学校戻らないからー!」

 そう言うと、すぐに靴を履き替えて寮の方に上機嫌で走っていってしまった。足が速すぎてすぐに姿は見えなくなった。すぐに連絡が来るだろうから、とりあえず俺はこのまま玄関で待つことにする。きっと光君はこのまま部屋に戻って、唯の看病というていで学校を休むつもりだ。俺のせいで授業に遅れてしまったら、フォローはしようと思うけれど、嬉々として授業をサボるやつのフォローは、もういいかな。彼、さっきも寝てて、今も授業サボって、大丈夫なのだろうか。まぁ、どうでもいいか。
 しかし、彼が唯を看るとなると、俺が唯のところに行く理由がなくなってしまう。唯の気持ちが第一だけど、どうしても……いや、出来れば、初めての発情期は、というか唯の発情期は全部一緒にいたい。だから先ずは、光君をあの部屋から出ていかせる手を考えないと。えーと、今後の授業への不安感をチラつかせれば授業出るかな。いや、サボりを先生にチクった方が早いかな。

 ♪♪♪♪♪♪♪♪

 こんな感じに色々考えながら待っていると、すぐにスマホが鳴った。名前を確認すると、そこには唯と書いてあった。でも多分、光君から。そういえば、連絡してと言っておきながら、連絡先を交換するのを忘れていた。だから唯のスマホから俺の名前を探してかけてきたのだろう。すぐに通話ボタンを押した。早く唯の様子を確認して、二人きりになれるようにしないと。しかし、スマホの向こうから聞こえた声は全く予想していたものでは無かった。

 「あ、光君? 唯ちゃんと寝て……」
 「一仁!!、どうしよう!、唯が!!」

 ! !
 スマホの向こうからはそう叫ぶ声がした。泣いているのかしゃくりを上げて鼻をすする音も聞こえる。巫山戯ている訳ではなく、それだけ深刻な状態だということだろう。

 「部屋の隅で、倒れてて…。呼んでも返事しないの。どうしよう。」

 「すぐ行く。部屋どこ?」

 「あ、3階、の312号室……」

 それだけ聞いてすぐに通話を切り、走ってΩ寮に向かった。













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