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第20章:ハーレムもののトレンド云々言ってるが、やっぱり妹も作者もよくry(無恥)
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「むふ、しあわせぇ……にいちゃん、もう二度とあたしを離さないでね」
光琉が俺の胸に顔を埋めたまま、とろけた声をだした。現在、俺は妹に押したおされたような恰好になっている。
「いや、離すわ! つーか離れろ、身うごきとれないから」
「重いから」という言葉をとっさに避けたのは、我ながらファインプレーではないだろうか? 頭の中で自画自賛しながら、急いで妹を無理やり立たせる。ひとつには俺の方も光琉の身体の柔らかさを感じて、理性に自信が持てなくなってきたからである(またかよ)。くそ、今後密着する度にこんな気持ちになってたんじゃ、身がもたんぞ。
「えー、もう終わりぃ? ほんとケチなんだから」
光琉が人の気も知らんでぶつくさ文句を言ったがそれにはとりあわず、俺は光魔法で奥杜を回復するよううながした。奥杜が凄惨な流血姿になった原因はとりも直さず自発的なヘッドバットによるものだが、それを誘引したのは光琉の余計な挑発といえないこともない。その責任を度外視するとしても、この場で回復魔法を使えるのは光琉のみなのだ。
聖女の生まれ変わりは当初ものすごーく嫌そうな顔をしてはいたが、間もなく奥杜のもとへ行くと右手をかざして"慈光"を発動させた。淡いかがやきが、血まみれの額をつつむ。
何だかんだ言いつつも、目の前で怪我を負っている人間を放っておけるような妹ではないのである……そう思いたい。
「ふん、このあたしがあんたなんかを治してあげるんだから、感謝してよね! ああ、いとしい人にまとわりつくメギツネにまでこんな慈悲をかけるなんて、あたしってなんて立派なんだろ。"聖女のカガミモチ"とはこのことね」
「"鑑"な、鑑。そしてそれ以前の問題として、世迷言をほざくな!」
とはもちろん、俺によるツッコミである。ま、まあこういうすぐ調子にのるところも、愛敬と言えないこともない……そう思うことにしよう、うん!
「大体、お前だって前世で俺たちがカーシャに匿われたことはおぼえているだろ。散々世話になっといて、感謝の気持ちとかはないのか?」
「前世は前世でしょ、今のあたしたちとは関係ないわ! あたしは過去にこだわらないオンナなの」
始終聖女風を吹かせておきながら、どの口がのたまう。
そんなやり取りをしている内にも、奥杜の額は慈光によりみるみる回復していった。聖女の気品と高潔さはどっかいっても、光魔法の実力だけはたしかなんだもんなあ。
「……ねえ」
やがて治療を終えると、それまでだまって慈光を浴びていた奥杜がふいに尋ねてきた。傷口はふさがったものの、顔についた血のりは依然そのままである。
「さっきから会話を聞いていると……あなたたちって、ひょっとして兄妹なの?」
俺たちを見つめる奥杜の瞳に、疑惑と不安が宿っていた。
たしかに、俺たちは兄妹である。DNA上、間違いなく血縁はある。そして何もやましい処はない。両方とも前世の記憶を持っているという一点を除けば、どこにでもいるノーマルなブラザー&シスターなのだ! だからその汚物を見るような眼を向けるの、やめてくれない?
俺は弁明のために口をひらこうとしたが、僅差で光琉に先を越された。この妹はアホの子ながら、こと事態をややこしくすることに関しては天与の才を発揮する。
「そうよ、あたしは天代光琉。お察しのとおり、現世ではにいちゃんの実の妹よ。でもそれが何か? たとえ血がつながっていようと、前世から愛しあう2人にはそんなこと問題じゃないわ! 世間の偏見もモラルの壁も、いっしょに乗り越えていこうって誓い合ったもの」
「誓い合ってねえええ!!! よくそこまでしゃあしゃあとウソがつけるなお前!!?」
こいつ、詐欺師か政治家の才能があるんじゃないか? 妹のサイコパスっぷりに、俺は戦慄するのだった。
「やっぱり、血のつながりがあるのね……あ、天代くん、あなた、いくら前世の恋人とはいえ実の妹に!?」
「待て待てお前も信じるな。天下の風紀委員が、何でさっきまで樹の枝にしがみついていた猿女の言うことを鵜呑みにしちゃうの!? あなたのクラスメイトがこんな必死に否定してるのよ!!?」
俺、そんなに信用がなかったのかなあ……
なんにせよ、光琉のせいで奥杜に"実妹に手を出した外道畜生"と認識されかけていることはたしかのようだ。マズいだろ、これ! こんな噂が広まろうものなら、ただでさえ灰色の学園生活が限りなくブラックに近づいてしまうではないか。
あわてる俺をよそに、光琉がまたしてもしゃしゃり出てくる。このアマ、厄介すぎる……
「あたしたちが兄妹だったら、自分にもワンチャンあると思った? 残念でしたー! 前世と同じく現世でも、あんたが割り込む隙はミジンもないわ。あたしたちの絆の在り方は、サリス様とメルティアだった頃から何にも変わっちゃいないんだからね!」
いや、変わっとるわ。大いに変わっとるわ、特にお前の人格面が!!
「わ、割り込むなんて私は別に……ただ倫理的に問題でしょと言っているのよ!」
「はいはい、お決まりのゴタクね。でもそんなものはとっくに乗り越えたと言ったはずよ。何せあたしたちは、もう寝床を共にしているんだからね」
「え、それって……ま、まさか、セッ」
違う違う! 兄妹なんだから子供の頃、ひとつの布団に寝た経験くらいあって当たり前だろ? ついこの前も雷で光琉が俺のベッドに潜り込んできたが、それだってただいっしょに寝ただけでいかがわしい行為は何もしていない、俺は無実だ!
「将来はお嫁さんにしてくれるって、指輪までもらっているし」
「ゆ、指輪!? まだ高校生なのに、もうそこまで……」
幼稚園時代のおままごとの話だからね!? プルタブ指輪の効力を今更持ち出されても困るわ。あと奥杜も大げさに反応しないで、アホ妹がますますつけあがるから!
「お互いの一糸まとわない姿だってとっくに見せ合った仲だし、にいちゃんってば大胆にあたしを脱がして……きゃ、はずかし♪」
「な……な……」
とうとう風紀委員が言葉を失ってしまった。顔がゆでダコみたいである。念のため断っておくと、妹が言っているのは子供の頃いっしょに風呂に入ったこと、および奴が赤ん坊の時分に俺がそのオムツを交換したこと、だと思われる……
"ものは言い様"ってのはホントだな、ちくしょー!! はっきりウソは言っていないがそれでいて事実を脚色してしまうのだから、余計タチが悪い。
「そんな、天代くんが……サリスの生まれ変わりが、欲望のおもむくまま妹を毒牙にかけてムサボりつくす、獣だったなんて……」
なんか尾ひれがつきはじめた!
「だから誤解だって言ってんだろうが!! すこしは前世の相棒を信用して!?」
悲鳴まじりに訴えかけるが、完全に独り合点した奥杜にはすでにとどいていなかった。
「不潔よおおおおおおおおおおおおおお」
とさけびながら、脱兎のごとく走り去ってしまった。顔中血まみれで髪を振り乱した女子が、半狂乱で校内を駆ける。◯溝正史先生もびっくりのホラーテイストだなあ。はは、泣きそう。
「ふっ、勝った! いつの世も、アクがさかえたタメシはないのよ」
このカオスな状況を生んだ張本人は、腕を組んで得意げだった。どう見てもこちらの方が悪役である。
「最近はヒロイン同士が仲良くするハーレムものがトレンドらしいけど、あたしはそんな甘いオンナじゃないんだから! にいちゃんに近寄るワルイムシは誰であろうと容赦しない、しょせん恋愛は"ぐうかわクワガタ"よっ!!」
"喰うか喰われるか"、な? いよいよこじつけが強引になってきた、光琉語マイスターの俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
はなはだ読者受けの悪そうなことを宣言して高笑いをはじめた元聖女のかたわらで、俺はもはや文句を言う気力もなくうずくまるのだった。同時に考える。光琉の言葉を間に受けて想像をたくましくするあたり、現世の奥杜の中にも確実にカーシャの人格が残っているのだろう、と。
つまり、我がクラスの厳格な風紀委員様は、いわゆる"ムッツリさん"だったんだなあ……
光琉が俺の胸に顔を埋めたまま、とろけた声をだした。現在、俺は妹に押したおされたような恰好になっている。
「いや、離すわ! つーか離れろ、身うごきとれないから」
「重いから」という言葉をとっさに避けたのは、我ながらファインプレーではないだろうか? 頭の中で自画自賛しながら、急いで妹を無理やり立たせる。ひとつには俺の方も光琉の身体の柔らかさを感じて、理性に自信が持てなくなってきたからである(またかよ)。くそ、今後密着する度にこんな気持ちになってたんじゃ、身がもたんぞ。
「えー、もう終わりぃ? ほんとケチなんだから」
光琉が人の気も知らんでぶつくさ文句を言ったがそれにはとりあわず、俺は光魔法で奥杜を回復するよううながした。奥杜が凄惨な流血姿になった原因はとりも直さず自発的なヘッドバットによるものだが、それを誘引したのは光琉の余計な挑発といえないこともない。その責任を度外視するとしても、この場で回復魔法を使えるのは光琉のみなのだ。
聖女の生まれ変わりは当初ものすごーく嫌そうな顔をしてはいたが、間もなく奥杜のもとへ行くと右手をかざして"慈光"を発動させた。淡いかがやきが、血まみれの額をつつむ。
何だかんだ言いつつも、目の前で怪我を負っている人間を放っておけるような妹ではないのである……そう思いたい。
「ふん、このあたしがあんたなんかを治してあげるんだから、感謝してよね! ああ、いとしい人にまとわりつくメギツネにまでこんな慈悲をかけるなんて、あたしってなんて立派なんだろ。"聖女のカガミモチ"とはこのことね」
「"鑑"な、鑑。そしてそれ以前の問題として、世迷言をほざくな!」
とはもちろん、俺によるツッコミである。ま、まあこういうすぐ調子にのるところも、愛敬と言えないこともない……そう思うことにしよう、うん!
「大体、お前だって前世で俺たちがカーシャに匿われたことはおぼえているだろ。散々世話になっといて、感謝の気持ちとかはないのか?」
「前世は前世でしょ、今のあたしたちとは関係ないわ! あたしは過去にこだわらないオンナなの」
始終聖女風を吹かせておきながら、どの口がのたまう。
そんなやり取りをしている内にも、奥杜の額は慈光によりみるみる回復していった。聖女の気品と高潔さはどっかいっても、光魔法の実力だけはたしかなんだもんなあ。
「……ねえ」
やがて治療を終えると、それまでだまって慈光を浴びていた奥杜がふいに尋ねてきた。傷口はふさがったものの、顔についた血のりは依然そのままである。
「さっきから会話を聞いていると……あなたたちって、ひょっとして兄妹なの?」
俺たちを見つめる奥杜の瞳に、疑惑と不安が宿っていた。
たしかに、俺たちは兄妹である。DNA上、間違いなく血縁はある。そして何もやましい処はない。両方とも前世の記憶を持っているという一点を除けば、どこにでもいるノーマルなブラザー&シスターなのだ! だからその汚物を見るような眼を向けるの、やめてくれない?
俺は弁明のために口をひらこうとしたが、僅差で光琉に先を越された。この妹はアホの子ながら、こと事態をややこしくすることに関しては天与の才を発揮する。
「そうよ、あたしは天代光琉。お察しのとおり、現世ではにいちゃんの実の妹よ。でもそれが何か? たとえ血がつながっていようと、前世から愛しあう2人にはそんなこと問題じゃないわ! 世間の偏見もモラルの壁も、いっしょに乗り越えていこうって誓い合ったもの」
「誓い合ってねえええ!!! よくそこまでしゃあしゃあとウソがつけるなお前!!?」
こいつ、詐欺師か政治家の才能があるんじゃないか? 妹のサイコパスっぷりに、俺は戦慄するのだった。
「やっぱり、血のつながりがあるのね……あ、天代くん、あなた、いくら前世の恋人とはいえ実の妹に!?」
「待て待てお前も信じるな。天下の風紀委員が、何でさっきまで樹の枝にしがみついていた猿女の言うことを鵜呑みにしちゃうの!? あなたのクラスメイトがこんな必死に否定してるのよ!!?」
俺、そんなに信用がなかったのかなあ……
なんにせよ、光琉のせいで奥杜に"実妹に手を出した外道畜生"と認識されかけていることはたしかのようだ。マズいだろ、これ! こんな噂が広まろうものなら、ただでさえ灰色の学園生活が限りなくブラックに近づいてしまうではないか。
あわてる俺をよそに、光琉がまたしてもしゃしゃり出てくる。このアマ、厄介すぎる……
「あたしたちが兄妹だったら、自分にもワンチャンあると思った? 残念でしたー! 前世と同じく現世でも、あんたが割り込む隙はミジンもないわ。あたしたちの絆の在り方は、サリス様とメルティアだった頃から何にも変わっちゃいないんだからね!」
いや、変わっとるわ。大いに変わっとるわ、特にお前の人格面が!!
「わ、割り込むなんて私は別に……ただ倫理的に問題でしょと言っているのよ!」
「はいはい、お決まりのゴタクね。でもそんなものはとっくに乗り越えたと言ったはずよ。何せあたしたちは、もう寝床を共にしているんだからね」
「え、それって……ま、まさか、セッ」
違う違う! 兄妹なんだから子供の頃、ひとつの布団に寝た経験くらいあって当たり前だろ? ついこの前も雷で光琉が俺のベッドに潜り込んできたが、それだってただいっしょに寝ただけでいかがわしい行為は何もしていない、俺は無実だ!
「将来はお嫁さんにしてくれるって、指輪までもらっているし」
「ゆ、指輪!? まだ高校生なのに、もうそこまで……」
幼稚園時代のおままごとの話だからね!? プルタブ指輪の効力を今更持ち出されても困るわ。あと奥杜も大げさに反応しないで、アホ妹がますますつけあがるから!
「お互いの一糸まとわない姿だってとっくに見せ合った仲だし、にいちゃんってば大胆にあたしを脱がして……きゃ、はずかし♪」
「な……な……」
とうとう風紀委員が言葉を失ってしまった。顔がゆでダコみたいである。念のため断っておくと、妹が言っているのは子供の頃いっしょに風呂に入ったこと、および奴が赤ん坊の時分に俺がそのオムツを交換したこと、だと思われる……
"ものは言い様"ってのはホントだな、ちくしょー!! はっきりウソは言っていないがそれでいて事実を脚色してしまうのだから、余計タチが悪い。
「そんな、天代くんが……サリスの生まれ変わりが、欲望のおもむくまま妹を毒牙にかけてムサボりつくす、獣だったなんて……」
なんか尾ひれがつきはじめた!
「だから誤解だって言ってんだろうが!! すこしは前世の相棒を信用して!?」
悲鳴まじりに訴えかけるが、完全に独り合点した奥杜にはすでにとどいていなかった。
「不潔よおおおおおおおおおおおおおお」
とさけびながら、脱兎のごとく走り去ってしまった。顔中血まみれで髪を振り乱した女子が、半狂乱で校内を駆ける。◯溝正史先生もびっくりのホラーテイストだなあ。はは、泣きそう。
「ふっ、勝った! いつの世も、アクがさかえたタメシはないのよ」
このカオスな状況を生んだ張本人は、腕を組んで得意げだった。どう見てもこちらの方が悪役である。
「最近はヒロイン同士が仲良くするハーレムものがトレンドらしいけど、あたしはそんな甘いオンナじゃないんだから! にいちゃんに近寄るワルイムシは誰であろうと容赦しない、しょせん恋愛は"ぐうかわクワガタ"よっ!!」
"喰うか喰われるか"、な? いよいよこじつけが強引になってきた、光琉語マイスターの俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
はなはだ読者受けの悪そうなことを宣言して高笑いをはじめた元聖女のかたわらで、俺はもはや文句を言う気力もなくうずくまるのだった。同時に考える。光琉の言葉を間に受けて想像をたくましくするあたり、現世の奥杜の中にも確実にカーシャの人格が残っているのだろう、と。
つまり、我がクラスの厳格な風紀委員様は、いわゆる"ムッツリさん"だったんだなあ……
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