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マーシャル沖海戦
第14話 殲滅
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世界最大を誇る四六センチ砲だが、しかしよほど当たりどころに恵まれない限り、一撃轟沈ということはあり得ない。
実際、帝国海軍では敵戦艦を廃艦にまで追い込むのであれば、最低でも一〇発程度の命中弾が必要だと見積もっていた。
そして、「大和」が対峙する敵一番艦は、すでに一〇発近く被弾しているのにもかかわらず、それでもなお反撃の砲火を繰り出していた。
実際、「大和」はすでに数発の四〇センチ砲弾を食らい、艦上構造物に少なくない損害を被っていた。
「大和」を相手に大健闘と言って良い戦いぶりを見せていたのは第一任務部隊旗艦の「ウエストバージニア」だった。
しかし、その彼女の幸運も長くは続かない。
「大和」が放った第一一射のうちの一弾が「ウエストバージニア」の第二砲塔直下の艦体に命中する。
あっさりと装甲を食い破った四六センチ砲弾は弾火薬庫でその爆発威力を解放した。
この熱と衝撃で砲弾や装薬が誘爆する。
内部からの爆圧によって「ウエストバージニア」は大爆発を起こし、パイ提督とともにマーシャル沖の海へとその身を沈めていった。
「大和」が「ウエストバージニア」を仕留めた時点で、他の日米戦艦同士の戦いもまた大勢が決していた。
「長門」と「陸奥」の二隻に狙われた「メリーランド」は、一六門にも及ぶ四一センチ砲のつるべ撃ちによっていたる所を穴だらけにされた。
もともと「メリーランド」は三六センチ砲搭載戦艦として計画された艦だった。
しかし、途中の設計変更によって四〇センチ砲を装備して産声を上げた。
だから、防御に関しては三六センチ砲搭載戦艦のそれでしかない。
当然のことながら「長門」や「陸奥」が放つ四一センチ砲弾に抗堪するには力不足だ。
逆に「長門」と「陸奥」はそれぞれ「テネシー」や「カリフォルニア」から三六センチ砲弾を浴びせられたものの、しかし重要区画を撃ち抜かれたものは一つもなく、十分な戦闘力を維持していた。
「伊勢」と「日向」それに「山城」と「扶桑」から砲撃を受けた「テネシー」と「カリフォルニア」も末路は悲惨だった。
「テネシー」は「伊勢」と「日向」から、「カリフォルニア」は「山城」と「扶桑」から三六センチ砲の洗礼を浴びた。
「テネシー」と「カリフォルニア」は同じ三六センチ砲を装備する旧式戦艦の中でも最良の防御力を持つとされている。
しかし、それぞれ二四門にも及ぶ三六センチ砲に狙われてはたまったものではなかった。
「テネシー」と「カリフォルニア」はその堅艦ぶりを遺憾なく発揮し、四隻の日本戦艦が放つ主砲弾に対して、バイタルパートへの侵入をただの一発たりとも許してはいなかった。
しかし、装甲が施されていないかあるいは薄い艦の前部や後部、それに主砲塔を除く艦上構造物はそうはいかない。
艦橋や煙突、それに副砲や高角砲はそのことごとくが爆砕され、艦上はさながら鉄の堆積場のような状況となっていた。
主力艦の戦いに決着がついた頃には補助艦艇同士の戦いにも終止符が打たれている。
第一任務部隊の一六隻の駆逐艦に対し、第一艦隊の側は重巡が四隻に軽巡が三隻、それに駆逐艦が一二隻。
数でこそ三隻の違いでしかないが、しかしその戦力差は圧倒的だ。
まず、第七戦隊の四隻の「最上」型重巡が合わせて四〇門にも及ぶ二〇センチ砲で米駆逐艦をアウトレンジする。
一方、米駆逐艦の側は魚雷によって砲戦力の劣勢を覆そうと肉薄突撃に移行する。
だが、この頃には米駆逐艦の動きを読んでいた第九戦隊の「北上」と「大井」が八〇線にも及ぶ水中の罠を仕掛けていた。
米駆逐艦はまんまとこの陥穽に飛び込んでしまう。
三番艦と九番艦の舷側に巨大な水柱が立ち上り、両艦はともに大量の煙を吐き出しながら洋上停止する。
隊列が乱れた米駆逐艦に対して、四隻の「最上」型重巡が急迫、距離を詰めたことで命中弾の獲得に成功する。
たちまちのうちに四隻の米駆逐艦が二〇センチ砲弾によって炎上、そのすべての艦が脚を奪われた。
さらに、大人気ないことに四隻の「最上」型重巡は米駆逐艦に対して魚雷まで発射していた。
二四本放たれた魚雷のうちで命中したのは一本にとどまったものの、しかしこれが決定打となったのか、米駆逐艦は全艦が東へと艦首を向けて避退に移行した。
この米駆逐艦の動きもまた予想の範囲内だった。
軽巡「那珂」とそれに一二隻の「陽炎」型駆逐艦は米駆逐艦の東側に移行する形で艦隊運動を実施していた。
阻止線を形成した一三隻の艨艟は、九隻にまで減った米駆逐艦に対して先制の魚雷攻撃を実施する。
発射された一〇〇本の魚雷だが、しかし命中したのはわずかに三本にとどまった。
極めて低い命中率ではあったが、それでもこの場面では決定的ともいえる仕事を成し遂げたと言ってよかった。
九隻から六隻にまで減った米駆逐艦に対し、「那珂」は一四センチ砲を、残る一二隻の「陽炎」型駆逐艦は一二・七センチ砲をもってとどめを刺しにかかる。
さらに、その頃には追いすがってきた四隻の「最上」型重巡もまた戦列に加わり挟撃態勢が完成する。
それでもなお必死の逃避行を試みる六隻の米駆逐艦だったが、しかしどこにも逃げ場は無かった。
実際、帝国海軍では敵戦艦を廃艦にまで追い込むのであれば、最低でも一〇発程度の命中弾が必要だと見積もっていた。
そして、「大和」が対峙する敵一番艦は、すでに一〇発近く被弾しているのにもかかわらず、それでもなお反撃の砲火を繰り出していた。
実際、「大和」はすでに数発の四〇センチ砲弾を食らい、艦上構造物に少なくない損害を被っていた。
「大和」を相手に大健闘と言って良い戦いぶりを見せていたのは第一任務部隊旗艦の「ウエストバージニア」だった。
しかし、その彼女の幸運も長くは続かない。
「大和」が放った第一一射のうちの一弾が「ウエストバージニア」の第二砲塔直下の艦体に命中する。
あっさりと装甲を食い破った四六センチ砲弾は弾火薬庫でその爆発威力を解放した。
この熱と衝撃で砲弾や装薬が誘爆する。
内部からの爆圧によって「ウエストバージニア」は大爆発を起こし、パイ提督とともにマーシャル沖の海へとその身を沈めていった。
「大和」が「ウエストバージニア」を仕留めた時点で、他の日米戦艦同士の戦いもまた大勢が決していた。
「長門」と「陸奥」の二隻に狙われた「メリーランド」は、一六門にも及ぶ四一センチ砲のつるべ撃ちによっていたる所を穴だらけにされた。
もともと「メリーランド」は三六センチ砲搭載戦艦として計画された艦だった。
しかし、途中の設計変更によって四〇センチ砲を装備して産声を上げた。
だから、防御に関しては三六センチ砲搭載戦艦のそれでしかない。
当然のことながら「長門」や「陸奥」が放つ四一センチ砲弾に抗堪するには力不足だ。
逆に「長門」と「陸奥」はそれぞれ「テネシー」や「カリフォルニア」から三六センチ砲弾を浴びせられたものの、しかし重要区画を撃ち抜かれたものは一つもなく、十分な戦闘力を維持していた。
「伊勢」と「日向」それに「山城」と「扶桑」から砲撃を受けた「テネシー」と「カリフォルニア」も末路は悲惨だった。
「テネシー」は「伊勢」と「日向」から、「カリフォルニア」は「山城」と「扶桑」から三六センチ砲の洗礼を浴びた。
「テネシー」と「カリフォルニア」は同じ三六センチ砲を装備する旧式戦艦の中でも最良の防御力を持つとされている。
しかし、それぞれ二四門にも及ぶ三六センチ砲に狙われてはたまったものではなかった。
「テネシー」と「カリフォルニア」はその堅艦ぶりを遺憾なく発揮し、四隻の日本戦艦が放つ主砲弾に対して、バイタルパートへの侵入をただの一発たりとも許してはいなかった。
しかし、装甲が施されていないかあるいは薄い艦の前部や後部、それに主砲塔を除く艦上構造物はそうはいかない。
艦橋や煙突、それに副砲や高角砲はそのことごとくが爆砕され、艦上はさながら鉄の堆積場のような状況となっていた。
主力艦の戦いに決着がついた頃には補助艦艇同士の戦いにも終止符が打たれている。
第一任務部隊の一六隻の駆逐艦に対し、第一艦隊の側は重巡が四隻に軽巡が三隻、それに駆逐艦が一二隻。
数でこそ三隻の違いでしかないが、しかしその戦力差は圧倒的だ。
まず、第七戦隊の四隻の「最上」型重巡が合わせて四〇門にも及ぶ二〇センチ砲で米駆逐艦をアウトレンジする。
一方、米駆逐艦の側は魚雷によって砲戦力の劣勢を覆そうと肉薄突撃に移行する。
だが、この頃には米駆逐艦の動きを読んでいた第九戦隊の「北上」と「大井」が八〇線にも及ぶ水中の罠を仕掛けていた。
米駆逐艦はまんまとこの陥穽に飛び込んでしまう。
三番艦と九番艦の舷側に巨大な水柱が立ち上り、両艦はともに大量の煙を吐き出しながら洋上停止する。
隊列が乱れた米駆逐艦に対して、四隻の「最上」型重巡が急迫、距離を詰めたことで命中弾の獲得に成功する。
たちまちのうちに四隻の米駆逐艦が二〇センチ砲弾によって炎上、そのすべての艦が脚を奪われた。
さらに、大人気ないことに四隻の「最上」型重巡は米駆逐艦に対して魚雷まで発射していた。
二四本放たれた魚雷のうちで命中したのは一本にとどまったものの、しかしこれが決定打となったのか、米駆逐艦は全艦が東へと艦首を向けて避退に移行した。
この米駆逐艦の動きもまた予想の範囲内だった。
軽巡「那珂」とそれに一二隻の「陽炎」型駆逐艦は米駆逐艦の東側に移行する形で艦隊運動を実施していた。
阻止線を形成した一三隻の艨艟は、九隻にまで減った米駆逐艦に対して先制の魚雷攻撃を実施する。
発射された一〇〇本の魚雷だが、しかし命中したのはわずかに三本にとどまった。
極めて低い命中率ではあったが、それでもこの場面では決定的ともいえる仕事を成し遂げたと言ってよかった。
九隻から六隻にまで減った米駆逐艦に対し、「那珂」は一四センチ砲を、残る一二隻の「陽炎」型駆逐艦は一二・七センチ砲をもってとどめを刺しにかかる。
さらに、その頃には追いすがってきた四隻の「最上」型重巡もまた戦列に加わり挟撃態勢が完成する。
それでもなお必死の逃避行を試みる六隻の米駆逐艦だったが、しかしどこにも逃げ場は無かった。
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