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一人より二人
村人、ルームシェア。3
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黒い扉に金のノブ。
フェンリルがノブに触れると静電気のようなものが走った。痛くないの?
「これ魔法な。俺以外に開けられないから、部屋に戻りたいときは俺に言えよ」
「ほ、ほほう……?」
ノブをまじまじ見てしまう。手袋は焦げたりしていない。魔法だ……。
部屋はけっこう広かった。
「かっこいい……」
シックな色合いでまとめられている。
絵や置物などは一切ないが、大きな本棚に本がぎっしり詰まっているのが特徴的だった。溢れた本は部屋の隅に無造作に詰まれている。これだけで頭良さそうに見えた。
ソファとラグとミニテーブルが本棚の近くに配置されている。だいたい、そんな感じの趣味なのだろう。
カウンターもありながら、ダイニングテーブルの椅子の脚数は四脚。けっこう来客が多いのだろうか。
「本は好きに読んでいいぞ。とりあえずソファで寝ろ。こっちの部屋には入るなよ、絶対に」
奥の部屋を見遣り、フェンリルは連絡用のコウモリを飛ばした。
「なんで?」
「プライベート」
よ~~~し、タイミング見計らって夜這いにいっちゃうぞ!絶対に仕留める!
「おじゃましまーす」と言って、私はソファに座った。ふかふか……このソファは人を駄目にする座り心地だ……。香水の香りが移っていていい匂いだ。
机に水が置かれた。さすが執事の気遣いだ。
「ありがと」
「ゴートなんだけどさ。今、牢屋いんだよ」
フェンリルはダイニングテーブルのチェアに腰掛ける。目元が細められ、表情が曇っていた。
「あいつも事態をあんまりよくわかってないみたいだ。本物が死んだことは知らされてないんだよ。周囲の言うことただ信じて潜伏したんだろうな。話をしたら、ショック受けてた」
「うわ、かわいそうすぎる……。どうやって調べたの?」
「部下をこき使った。どうやら本当のゴートが偽物として処理されてたみたいだよ」
「……悪い子ではなかったかな。可愛かったよ、すごく」
「だから騙された。嫌んなっちまうよなぁ。えげつないことしやがるよ」
大きなため息だった。
三年目。しんどいだろうな。選んで推してくるくらい、目をかけていたのだろうから。
私も辛い。
ん?
しかしこれ、辛い分だけチャンスなんじゃない?
私はソファから立ち上がって、フェンリルの横につく。
「元気出して」
ポンポンとフェンリルの頭を撫でる。触ってみると、けっこうふわふわの猫っ毛だ。
意外そうに私を見上げたフェンリルは、訴えるように見つめてきた。
「魔物はこんなんばっかりじゃないからな。一部のやつがやらかすだけだ」
「人間とそんな変わんないな」
ちょっとだけ口元が和らいだ。
よし。十分だろう。手を下げて、隣に座る。
そこからは明日の予定の確認だった。
フェンリルがノブに触れると静電気のようなものが走った。痛くないの?
「これ魔法な。俺以外に開けられないから、部屋に戻りたいときは俺に言えよ」
「ほ、ほほう……?」
ノブをまじまじ見てしまう。手袋は焦げたりしていない。魔法だ……。
部屋はけっこう広かった。
「かっこいい……」
シックな色合いでまとめられている。
絵や置物などは一切ないが、大きな本棚に本がぎっしり詰まっているのが特徴的だった。溢れた本は部屋の隅に無造作に詰まれている。これだけで頭良さそうに見えた。
ソファとラグとミニテーブルが本棚の近くに配置されている。だいたい、そんな感じの趣味なのだろう。
カウンターもありながら、ダイニングテーブルの椅子の脚数は四脚。けっこう来客が多いのだろうか。
「本は好きに読んでいいぞ。とりあえずソファで寝ろ。こっちの部屋には入るなよ、絶対に」
奥の部屋を見遣り、フェンリルは連絡用のコウモリを飛ばした。
「なんで?」
「プライベート」
よ~~~し、タイミング見計らって夜這いにいっちゃうぞ!絶対に仕留める!
「おじゃましまーす」と言って、私はソファに座った。ふかふか……このソファは人を駄目にする座り心地だ……。香水の香りが移っていていい匂いだ。
机に水が置かれた。さすが執事の気遣いだ。
「ありがと」
「ゴートなんだけどさ。今、牢屋いんだよ」
フェンリルはダイニングテーブルのチェアに腰掛ける。目元が細められ、表情が曇っていた。
「あいつも事態をあんまりよくわかってないみたいだ。本物が死んだことは知らされてないんだよ。周囲の言うことただ信じて潜伏したんだろうな。話をしたら、ショック受けてた」
「うわ、かわいそうすぎる……。どうやって調べたの?」
「部下をこき使った。どうやら本当のゴートが偽物として処理されてたみたいだよ」
「……悪い子ではなかったかな。可愛かったよ、すごく」
「だから騙された。嫌んなっちまうよなぁ。えげつないことしやがるよ」
大きなため息だった。
三年目。しんどいだろうな。選んで推してくるくらい、目をかけていたのだろうから。
私も辛い。
ん?
しかしこれ、辛い分だけチャンスなんじゃない?
私はソファから立ち上がって、フェンリルの横につく。
「元気出して」
ポンポンとフェンリルの頭を撫でる。触ってみると、けっこうふわふわの猫っ毛だ。
意外そうに私を見上げたフェンリルは、訴えるように見つめてきた。
「魔物はこんなんばっかりじゃないからな。一部のやつがやらかすだけだ」
「人間とそんな変わんないな」
ちょっとだけ口元が和らいだ。
よし。十分だろう。手を下げて、隣に座る。
そこからは明日の予定の確認だった。
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