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魔王城に慣れるまで

人質、本格的に身の危険を覚える。

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殺されるかも……ということに気がついたら、やっぱり、どうしようもない。怖いのだ。

拳で机を叩く。この感情、最早、憎しみに近くなりつつある。

「くそ。ハルが変なこと言わなきゃこんな目にあわずに済んだのに……!私は婚約者なんかじゃないっ……!」

「巻き込まれちゃって可哀想にねぇ……」

のんびりとしたサイファの声。

ふと思う。

「もしかして、他の反対派の魔族から私を保護してる?」

「……」

サイファは黙って私の頭を撫でた。

肯定……この上なく懐の深い、肯定の笑顔……。

泣きそう。

「……拉致とか言わない……もうわがまま言わないから、私の命を守って……」

「大事な友達だもの。守るさ」

優しい言葉が染み入る……。ハルのせいで私、生命の危機……。


でもなんか魔王も執事も心細いよ~~~!!!

心の中では『こいつら間違いなく強い』という確信を持てずにいる。お願いだから、誰か私を安心させて……。

……とりあえず、一人より信頼できる二人かな。


「怖い無理!一人だと生き抜ける気がしない。ねえフェンリル、部屋に泊めて」

「……は?」

なに言ってんのこいつ、ちょっと意味わかんない。という顔でフェンリルは固まった。

ここぞとばかりにサイファは手を上げる。

「僕のところは?」

「違う意味で身の危険感じる……」

「嫌がることはしないつもりなんだけどなぁ。夜中までお喋りしようよ~」


子供の頃、隣の村の舞台役者の噂を、母親たちがキャッキャと話しているのを聞いたことがある。

なぜだかなんでも話してしまい、気がついたらベッドの中にいた。って村長の奥さんが言っていた。

その話を思い出した。何事も聞いておいて損はない。

プイとそっぽ向く。


「……あー、そうだ。朝の畑の件なんだけど」

フェンリルはやや無理矢理に話を切り替えてきた。なかったことにしたいのかもしれない。

「一案は予定生産額の支払いとして」

あん?嫌だって言ったろ。睨みつける。

はいはい、と、フェンリルは手でジェスチャーして。

「二案として、俺の部下をお前の代理人とする」

「……今度は大丈夫な人?」

二人目の俺の部下。昨日の今日。疑いの目を向けてしまう。

裏切りには相当疲れているようで、気だるげな頷き方だった。

「多分な。俺の学生時代からの友人だ。手先が器用で、おっとりした優しいやつ。ただ、口数が少なくて見た目が厳ついから勘違いされる」

「そういうタイプは大丈夫そうだな」

本人を見たことがないけれど、そのタイプに裏切られたら何をどうしていいかわからないかもしれない。
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