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魔王城に拉致られる

人質、魔王と対面する。

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謁見の間というものだろう。

赤いカーペットが真っ直ぐ敷かれている。数段のステップの上に玉座があった。

玉座の上からは薄いカーテンが垂れ下がり、視界が遮られている。正面に座らなければ顔は確認できないだろう。

おそらく私が座るであろう椅子は、ステップの下へおもむろに置かれている。


まだ顔は見えないが、玉座のそいつは、すらりと長い足を組んで偉そうに座っている。

靴はつやつやに磨かれており、爪先が尖ったライン。こういう靴が好きなやつは女たらしの可能性がある。


「遠方よりご足労いただき感謝の至り。どうぞ座ってください」

皮肉か?

威厳のあるハスキーなエロい声だった。この声に耳元で囁かれたらどんな女もイチコロだろう。

ここはまぁ、座っておこう。ご尊顔を拝んでやる。


……おお。

全人口トップ0.2%くらいのイケメンだ。


憂いを帯びた紫水晶のような垂れ目。細い顎に、スッと通った鼻筋。額の真ん中で分けた長い黒髪。

年齢は私とだいたい同じくらいだろうか?黒を基調にしているわりには、縁取りが金だったりして、派手な印象を与える服を着ていた。

妖艶と言って差し支えのない美貌。これはイケメンすぎて緊張する。


「これはこれは……愛らしいお嬢さんだ。勇者が惚れ込むのもわかる……」

自己陶酔したようなこの一言と、余裕の笑みですべてがわかった。

こいつ、手に入れられないものがないと思っているな。

そう思うと、私の中のあまのじゃくが活発になってくる。


「名乗るのが遅れました。僕はサイファと申します。可愛らしいお嬢さん、お名前は?」

「あら。ご存知じゃないの?」

「そうですね。失礼いたしました。レミールさん」

「レミィで結構。……フェンリルもぜひそう呼んで」

フェンリルは私から少し離れた隣くらいに控えている。わざわざ話を振って、どちらも対等に扱っていることを示した。


「手短に行きましょう。用件は?」

「失礼だぞ」

小声でフェンリルが諌めてくる。

知るか。なんだかカチンと来たのだ。こっちから合わせてやる必要はない。

「ごめんあそばせ。マナーって習ったことがないの。本来なら来る必要もない場所だからね」

「よいよい。実に可愛らしい。さらに興味が湧いてきました」

ふふ、と含みのある笑いをこぼすサイファ。


うーん。純粋な造形美はサイファの圧倒的勝利だが、私はフェンリルの方が好みだな。
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