低身長で何が悪い

寺村大貴

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低身長で何が悪い

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 『低身長分泌不全性低身長症』あまり知られていないこの病気を皆さんはこの病気を知っていますか。聞いたことがある、知っているという人もいるかもしれません。しかし、この病気の人を見かけたことがあるという人はそう多くはないはずです。この病気は身長が伸びづらい、伸びても一般的な平均身長と比べると大きく差が出る病気であり、現段階では治すことができず難病指定されています。日本には約一万五千人に一人と意外に多い病気です。では何故、実際にこの病気の方を実際に見たことがあるという人が少ないという矛盾が生まれるのでしょうか。それは、『気にしていない』という部分がおおいでしょう。
 私もこの病気の一人の男性です。長年、注射で治療をしてきました。これからは、この病気で悔しかったこと、悩んできたことを語っていきたい。この病気について悩み始めたのは小学校の頃、注射治療を始めるために検査入院を始めたころ。他の人とは違うことに気づき始めました。テーマパークに行くと、必ず身長を計らされ、腕にリストバンドをつけられる。制限年齢に達しているのに同級生の子と行っても私だけ年齢確認をされる。小学校では背の順はいつも一番前。クラスメイトからはいつもチビいじり。そしてこれから毎日注射を打たなくてはならない。そんなある日、保健室の先生から呼び出された。
 「あなたの病気はね、あの有名なサッカー選手のメッシーと同じなの。彼は今、世界で有名で大活躍しているでしょ?だからね、心配しなくても大丈夫なのよ。」
先生は私に勇気づけるために言ったのかもしれない。だが、私はサッカーには興味がなく、当時はメッシー選手のことも知らなかった。なので、こういった言葉をもらう程人と違うのかとおもってしまった。
 中学校に進学すると、他の小学校からも同じ中学に入学する人が沢山いるため、案の定チビいじりを受けた。中学校にもなるとチビいじりとは一生モノの付き合いだと理解しはじめたため小学校の時ほどショックは受けなかった。しかし、なくなったわけではない。
 高校生にもなると周りの精神年齢が高くなってきたのもあり、チビいじりはほとんどなくなった。そんな中、気になってくるのが恋愛面、周りにもカップルが増えだし、身なりも気にしだす。恋愛がうまくいく方法や会話術、おすすめのコスメなどを皆インターネットで調べだす。『モテる』『男性』と調べると必ず出てくるのが『高身長』。私たちのように身長が伸びづらい病気の人たちにとっては絶望的な条件なのです。身近にいる友達に聞いても、『優しい人』『常識のある人』としか答えないが、その前条件で『自分より身長が高い人』『デートでヒールが履ける人』などがある。直接的なチビいじりよりも現実を突きつけられる。
 大学生になると制服がなくなり、私服で通うことになる。当然、皆服には気を使いおしゃれな格好で通学する。しかし、大学生に人気のファッションというのが大体は高身長の人が着こなすようなものばかり、低身長の人へのファッションがあまりない。そして、大学生になると話題に上がってくるのは『成人式』私の時代からは『二十歳の集い』にかわった。もちろん地元の同級生が集まってくるので、中学校の頃の人たちと対面することになる。当時からの変わった様子を楽しみに参加する人や、久しぶりの友達と再会を楽しみに参加する人もいる。私もそれなりに楽しむことができた。部活動時代の知人や小学校で別れた友達、大学生になっても暇があれば集まっている友だちなどとたくさんの思い出と再会できた。ここでの低身長のお決まりごとは
 「身長縮んだ?」
である。久しぶりの人に会うと必ず出てくるワードだ。久しぶりの人からの第一声がこれだと、普段あっている人から言われた時よりも衝撃が多いことを知ってほしい。また、あまり絡んでなかった人からの
「あれ、寺村じゃね?小学生みたい」
「いや、ペンギンだろ」
という陰口も意外と耳に入ってくるので当人が見えないところで言ってほしい。
 低身長で何が悪い。この病気の人たちは好きで低身長で生まれてきたわけではない。ただ身長が低いだけで他の人とは何も変わらない。それなのにどうして人と違う条件を押し付けられているんだと時々思う。
 『成長ホルモン分泌不全性低身長症』は今までの内容でもわかる通り、見た目には違和感がある。人と違うことは理解できる。しかし、それが病気だと気にしない人・知らない人が多いため、あまり知られていない。私自身、友だちに初めて打ち明けた時、
 「それ、病気だったの?」
という返事がほとんどだった。このように身長のことで困っている人は世の中にはたくさんいるので、気軽にいじってはいけない。身長だけに関わらず、自分と違う部分というものは本人が打ち明けるまで、触れないでいただきたい。例え、そのいじりがコミュニケーション方法だという人がいるならば、それは適したコミュニケーション方法ではないということを理解していただきたい。共通の話題などを見つけ出し、別のコミュニケーション方法で話しかけると印象がいいと私は考える。
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