上 下
51 / 62
2章

48話 王都ベルセリア

しおりを挟む
王都ベルセリアはリーザスの街とは段違いの大きさで、多くの人々が行きかい活気にあふれていた。
街の中心部には大きな城も見える。
城は赤を基調とした建物で、遠めでも分かるほどとても綺麗な外観をしていた。

乗合馬車を降りるとボーゼスは騎士と御者に苦言を言い去って行った。
去り際に小声で何かを呟きながらハルト達を見ていたような気がする。

「助けて頂きありがとうございました。これを……」
馬車で話していた商人が何かをさし出してきた。
「これは?」
「これは優待カードです。もし私の商店へ来ることがありましたらサービスさせていただきますのでこちらを提示ください」
渡された名刺のような物を見ると店名が掛かれた不思議な紙だった。魔力を帯びているようにも感じられる。
「ありがとうございます。時間があれば是非顔を出させていただきます」
「くれぐれもボーゼスには気を付けてくださいね」
商人の男は小声で警戒を煽ると、にこりと笑いながら軽く会釈をしそのまま去って行ってしまった。

ボーゼスか……。この王都で豪商なんだっけ?なんか面倒そうな人に目を付けられたなぁ。



馬車に乗っていた商人たちも各々去って行ったのでハルト達も街に繰り出して情報を集めようと思っていると、騎士達に呼び止められた。
「我々の至らない点を助けて頂きありがとうございました」

「いやいや、気にしないでください。それではこれで……」
ハルトは適当に流して去ろうとしたが騎士の中でも老齢の男に腕を掴まれ止められた。
「もし商隊に死傷者を出していれば我々は良くても貴族位のはく奪、悪ければ死罪でした。あなた方へは感謝しております」

ええ……護衛の仕事ってそんなにリスク高いの?受けるの損過ぎない……?
「まぁみな無事に着けたのですからよかったじゃないですか。では――」
ハルトがそう言いその場から早く逃げようとしたが、言い切る前に兵士から願いを告げられた。
「皆様には是非、騎士団長に会って今回の話をしていただきたく願います」

「いやいや、我々は貴族でもないですし……」
「ブレードウルフは我が騎士団員でも一人で1体を相手にするのがやっとの魔物です。群れに襲われたという報告をしても恐らく信じてもらえません。それらを苦もなく圧倒する強さ感服いたしました。是非我らに同行して話だけでもお願いできませんか」

んー。まぁこの人達も頑張ってたし、危険だってわかれば護衛を増員したりするのかな?話すくらいいいか。
「はぁ、わかりました」

「ありがとうございます。挨拶が遅れましたが私はブランドと申します。これより皆様を王国騎士の訓練場まで案内させていただきます」

こうしてハルト達は情報収集のために寄ったはずのベルセリアで、何故か王国騎士団の団長に会いに行く羽目になってしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

異世界のサバゲーマー 〜転移したおっさんは国を救うために『ミリマート』で現代兵器を購入して無双します〜

フユリカス
ファンタジー
 アラサー独り身の坂本勇馬は、しがない会社員をしながらも、それなりに充実した日々を送っていた。  だが、趣味であるサバイバルゲーム――いわゆる『サバゲー』の最中に、穴へ落ちて異世界に飛ばされてしまう。  目を覚ました勇馬が慌てて愛用の電動ガンを確認すると……なんと『本物』に変わっているのだった!  呆然とする勇馬だったが、突然森の中に響き渡った悲鳴で我に返ると、銃を手に駆けだす。  そして、勇馬は本物化した89式小銃とM26手榴弾を使って獣をあっさりと倒し、女騎士を救うのだった。  すると――、 『ショップが開放されました!』  勇馬の目の前には、普段から利用している『ミリマート』というミリタリー系を扱うネットショップが突然現れたのだった。  だがその中身は、勇馬の知るものとは違う、本当の兵器を扱うショップなのだった――。 ※作者は軍事知識がかなり薄いため、間違っていたりおかしなところがある場合があります。できる限り修正いたしますが、温かい目で読んでいただけると助かります!

俺は神剣に選ばれ最強になる! 封印されてたツンデレ悪魔を引き連れ修行旅~ところで外れスキルの『努力』ってどういう事だよ!~【俺と悪魔】

いな@
ファンタジー
 小さな村で孤児として育てられた少年ケントは、教会の地下で神様に神剣で刺され、水晶に封印されていた悪魔と出会います。  幼馴染みである二人の少女がレイスに取り付かれ、命を奪われそうになっているのを助けるため、最強最悪と云われた悪魔に刺さる神剣を抜き、レイスに立ち向かいました。    眷属となった銀髪赤目つるぺた最強悪魔アンラと一緒にケントの出生に関わる聖女に逢うため旅に出て、色んな出逢いと経験で、最強になっていくお話です。 【★表紙イラストはnovelAIで作成しており、著作権は作者に帰属しています★】

転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。 若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。 魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。 人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で 出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。 その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。

妾の子だった転生勇者~魔力ゼロだと冷遇され悪役貴族の兄弟から虐められたので前世の知識を活かして努力していたら、回復魔術がぶっ壊れ性能になった

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
◆2024/05/31   HOTランキングで2位 ファンタジーランキング4位になりました! 第四回ファンタジーカップで21位になりました。皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 『公爵の子供なのに魔力なし』 『正妻や兄弟姉妹からも虐められる出来損ない』 『公爵になれない無能』 公爵と平民の間に生まれた主人公は、魔力がゼロだからという理由で無能と呼ばれ冷遇される。 だが実は子供の中身は転生者それもこの世界を救った勇者であり、自分と母親の身を守るために、主人公は魔法と剣術を極めることに。 『魔力ゼロのハズなのになぜ魔法を!?』 『ただの剣で魔法を斬っただと!?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ……?』 『あいつを無能と呼んだ奴の目は節穴か?』 やがて周囲を畏怖させるほどの貴公子として成長していく……元勇者の物語。

処理中です...