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2章

38話 魔王領 ファーメルハイトへ

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翌朝、アルレンセスの中心にある湖の前に皆で集まり各自やるべきことを確認していた。
ロンド達商店組はハルト達の帰りが遅くなってもいいように、補充に備えてかなりの量の荷物を抱えていた。
異世界の扉を通れないのでは?と心配したが、扉を出す際にイメージすると大きな扉を出すことができたのですぐに解決した。

「じゃあ行ってくる。街の管理は任せるよセバス」
「お任せください。みなさんお気を付けて」

店の内部に扉を出し、ハルト達は出立の支度を、ナターシャたちは開店の準備を進めていた。

そんなときロンドが荷物の中から色々取り出しハルト達の方へ持ってきた。
「旦那これを」
ロンドが布に包まれた長物をハルトに手渡した。
「これは?」
「開けて見てくれ」
まかれた布を取り、中を確認するとそこには真っ白な鞘の日本刀が入っていた。
刀を抜いて確認すると刀身は青みがかっており、刃の部分は真っ白で吸い込まれるような美しさをしていた。

「これはまだ試作品なんだが、旦那が言っていた折り返し鍛錬?という工法で魔法性鉱石を加工して前に貰った日本刀を再現してみたんだ。切れ味はまだ旦那が出してくれた鉄製にもやや劣るが、魔力を流せば遥かに凌ぐ切れ味を発揮するだろう」

すごいな……流石ロンドだ。
こんな短期間で俺の曖昧な鍛造の知識を聞いて0からここまでの物を仕上げてくるなんて。これで試作品……?
「ありがとう。助かるよ」

「ルナ嬢は爪、シンは剣、ヒナタは格闘が得意だったよな?」
ロンドは3人にもそれぞれの得意な戦い方に見合った武器を試作してきていた。
3人は武器を貰ってよろこんでいた。
それを見てユキ達商店組が少しうらやましそうにこちらを見つめていた。
そして魔王領組で唯一武器を貰っていないルシアがむすっとしている。

「ふふ、ちゃんとルシアの分も作ってあるぞ。ルシアは近接戦闘はあまり得意じゃなくスキルで戦う方がいいって話だったな」
そういうとロンドは布に包まれた大きな武器を取り出した。
「これは?」
ルナが武器を手に取りロンドに確認する。
「これは持ち主の魔力に応じて形を変える武器だ。普段は大剣の形をしているが、魔力を注ぐと大盾、長槍に可変する。距離を取って戦いたいならダメージ目的の武器よりもこういう方があってると思ってな。ただし可変性能に特化した分、武器としての威力はかなり低いがな」
ルシアは大剣を掲げて眺めると満足そうに微笑んでいた。
「どの武器もまだ試作段階だから完成とは言えないがないよりましだろう。使ってみて不満があったら聞かせてくれ。都度改良していってやる」

「ありがとう。頼りにしてるよロンド」
ハルトはロンドと握手を交わした。

「それじゃみんな、店のことは任せるよ。何かあったら連絡してくれ」
「おう!気を付けてな!」
「サタナキアは血を嫌う魔王として有名ですが、向かうのは魔王領よ。マナリスが動いている可能性もあるわ。気を付けてね」

「ありがとうナターシャ。君もマナリスの動きには気を付けて。ユキ、リン、マリア。何かあったときは3人を守ってやってくれ」
「お任せください」
「わかりました」
「仕方ないわねぇ」

「私たちは早速ギルドでこのお店の宣伝をしてきますね♪」
「エレン、フィルありがとう。ルッツ達にもよろしくな」

「私はマーティンの周りを探っておくわね。何か分かればこれを使ってロンドさんと連絡を取るわ」
レイラはコネクトオーブを取り出して見せながらそう言うと、ウインクして見せた。

「ありがとう。それじゃみんな、行ってくるよ」

こうして皆に見送られて店をあとにし、プルフラとの待ち合わせ場所である教会跡地に5人は向かった。

昨日聞いた通り街の北西に向かっていくと寂れてドアも外れ掛かり、壁にもびっしりとツタが巻いた古い教会が見えてきた。
教会の周りにはいつ崩れてもおかしくない廃屋が並んでいた。

ナターシャ達はこの辺りは昔の居住区だと言っていたが、今は完全に捨てられているみたいだ。
朝なのに街を囲む高い外壁の側にあるせいか、壊れかけの扉から見える廃教会の中は薄暗く、教会の脇にある古い共同墓地も相まって若干不気味な雰囲気を醸し出していた。

ルナとヒナタはその気味悪さにハルトにしがみついていた。
歩きづらそうにしながらも壊れかけの扉を抜けて中に入ると奥に人影が見えた。
「プルフラさん……?」
目を凝らしても暗くて姿ははっきりと捉えられない。
しかし薄っすらと確認できる体格から、その者がプルフラではないことだけは確信が持てた。

シンがいち早く警戒しいつでも剣を抜けるように構えていた。
プルフラを見知るハルト達3人も咄嗟に武器を構えた。
少し遅れてヒタナも戦闘の体制を取る。

「驚かせてしまいすみません。飽くまでもプルフラは連絡役です。私はアモンこの姿でお会いするのは初めてでしたね」
そう言いつつ男は少し前に出てきた。
崩れた天井の隙間から差し込む朝日が男を照らしようやく姿が確認できた。
確かに男は以前あった魔族のアモンという男の面影があった。

「流石に人の街で元の姿のままあなた方をお待ちするのは危険ですので、こうして姿を変えてお待ちしておりました。先日のキールの件、そしてダンジョンに潜っていたというマナリスの者たちを止めて頂けたことに改めてお礼を申し上げます」
そういうとアモンは片腕を胸にあてながら丁寧に深く頭を下げた。

「アモンさん、頭をあげてください。俺達はたまたま巻き込まれて成り行き上協力しただけに過ぎません。ダンジョンの件もただ頼まれたことをしただけに過ぎないので気にしないでください」

(これほどの力と強力な仲間を持ちながら、恩にも着せないとは。しかも協力したところでメリットも無い我々の申し出にまで応じてこうして来てくれている。この方は余程器の大きな人なのか、はたまた……)
「やはり貴方はサタナキア様と気が合いそうです」
そういうとアモンはにこりと笑った。

「それで、魔王領へはどうやって?人と魔族の領域は互いに巨大な壁を作って封鎖されていると聞いたけど」
「我々魔族の中には転移魔法を使用できる者がおります。人の世界にも一部使える方がいると思いますが」
「なるほど、その魔法で境界をこえるってことか」
「ええ、かなりの魔力量を消費してしまいますが、一度行ったことのある場所へなら瞬時に飛ぶことが可能です」
さすがにそんな便利な魔法を連発できるほど甘くはないってことか。でも転移魔法か、便利だな。今度街の皆に適正が無いか確認してみるのはありだ。世界の壁は流石に超えられないだろうけども……。

「それでは皆さんをファーメルハイトへお連れ致します。私の側に集まってください」
皆はアモンの近くに集まった。

「離れないように気を付けてくださいね。では参ります」
アモンがそう言うと足元に大きな魔方陣が出現した。
魔法が発動を開始すると全員、体が一瞬軽くなった感覚を感じた。
直後、転移が始まり全員その場からフッと消えてしまった。
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