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1章
30話 ナターシャの覚悟
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ハルトは街から少し離れた所に扉を出し、皆で歩いて街に戻った。
街に戻りギルドに顔を出すと泣きじゃくったミリルとエレンがルッツに飛びついてきた。
「わっ!なんだ急に!」
「なんだではありませんっ!急にダンジョンが崩れて誰も出てこないんですもの……!心配しましたよ!!」
「だっで!ルッツが$%&……!」
ミリルに至っては何を言っているか分からないほど泣きじゃくっていた。
「みんな心配してたんだぞ!!」
「全くですよ!皆さん無事でよかったです……」
ローガンとフィルも安心したようだ。
「ハルトさんのおかげで助かったんだ。うわっ!ミリル鼻水を俺の服で拭うなっ!」
『ははは』
皆その様子を見て笑った。
「無事帰ったか」
ライナスが出てきて声をかけた。
「ええ、何とか全員無事に帰還しました」
「ナターシャもダンジョンに潜っていたのか?」
「……ええ」
「……?まぁいい。話を聞きたい。ダンジョン崩壊の話を聞いて丁度さっき俺の時に領主も状況を確認にきたとこだ。お前らが見てきたことを俺らに聞かせてくれ」
ナターシャが若干影のある顔をしたのにライナスは違和感を感じ取ったようだ。
ライナスの部屋に皆で入るとアイデンリヒトとヘンゲル、マーレ、レイラが既に部屋にいた。
「やっぱり無事だったわね♪」
「ケビンとベンゼルは死んだかもと思ってたけど、生きてたみたいでよかった」
マーレの一言に怒るベンゼルをケビンが抑制した。
全員が揃うとライナスが口を開いた。
「それで?中で何があった?」
全員で顔を見合わせて頷いた。そしてエラルドに中でマナリスとの間で起きたことを説明してもらった。
ナターシャの裏切りの件も含めて……。
「……なるほどな」
そういうとライナスはナターシャの首に剣を向けた。
「ナターシャ、今からお前に一つだけ問う。その答えが俺の意に敵わなかったときはわかるな?」
「ちょっと待っ――」
「いいの。私は罰せられる覚悟でここに出向いてるから」
ナターシャの手は震えていた。
「お前は魔族なんだな。今は人の敵か?それとも人の味方か?」
『…………』
全員固唾をのんでナターシャの返答を見守った。
「私はどちらの味方でもありません」
「おい!ナターシャ!!」
「ケビン。いいから聞いてほしいの。これから話す内容は嘘も偽りも無い私の本心」
「……私は長い間マナリスに居るだろう妹の仇だけを追って生きてきたわ。何を犠牲にしてでも自分の悲願を遂げるために。その結果マナリスに加担していたのも、この街にマナリスのスパイとして潜伏していたのも事実。でもね……この街で暮らしているうちに……私はこの街が好きになってしまったの。街の人も、この街の景色も雰囲気も全部……。バカみたいよね。妹の仇を討つためだけに生きてきた私が好きなものを持つなんて。そのせいでマナリスとしての仕事も果たせず、冒険者としての仕事も果たせず、結局どっちつかず。でも私は自分の生き方に後悔はしないわ。今でも私の敵は妹の仇だけよ」
「なるほど、よくわかった」
そういうとライナスは強烈な殺気を込めて手に持った剣を振りはらった。
剣はナターシャの首飾りだけを切り落とした。
「え……?」
ナターシャはてっきり斬られたと思っていたので自分の首を触りながら驚いていた。
「助かりたい一心で俺の質問に安易に答えを返すような奴なら迷いなく切るつもりだったが、お前の覚悟は本物だと分かった。俺はお前の心を信じる。マナリスの……お前の妹の仇の情報が入ったらいの一番に知らせてやる」
「……ありがとうございます」
ナターシャは跪いて涙を流しながら感謝した。
街に戻りギルドに顔を出すと泣きじゃくったミリルとエレンがルッツに飛びついてきた。
「わっ!なんだ急に!」
「なんだではありませんっ!急にダンジョンが崩れて誰も出てこないんですもの……!心配しましたよ!!」
「だっで!ルッツが$%&……!」
ミリルに至っては何を言っているか分からないほど泣きじゃくっていた。
「みんな心配してたんだぞ!!」
「全くですよ!皆さん無事でよかったです……」
ローガンとフィルも安心したようだ。
「ハルトさんのおかげで助かったんだ。うわっ!ミリル鼻水を俺の服で拭うなっ!」
『ははは』
皆その様子を見て笑った。
「無事帰ったか」
ライナスが出てきて声をかけた。
「ええ、何とか全員無事に帰還しました」
「ナターシャもダンジョンに潜っていたのか?」
「……ええ」
「……?まぁいい。話を聞きたい。ダンジョン崩壊の話を聞いて丁度さっき俺の時に領主も状況を確認にきたとこだ。お前らが見てきたことを俺らに聞かせてくれ」
ナターシャが若干影のある顔をしたのにライナスは違和感を感じ取ったようだ。
ライナスの部屋に皆で入るとアイデンリヒトとヘンゲル、マーレ、レイラが既に部屋にいた。
「やっぱり無事だったわね♪」
「ケビンとベンゼルは死んだかもと思ってたけど、生きてたみたいでよかった」
マーレの一言に怒るベンゼルをケビンが抑制した。
全員が揃うとライナスが口を開いた。
「それで?中で何があった?」
全員で顔を見合わせて頷いた。そしてエラルドに中でマナリスとの間で起きたことを説明してもらった。
ナターシャの裏切りの件も含めて……。
「……なるほどな」
そういうとライナスはナターシャの首に剣を向けた。
「ナターシャ、今からお前に一つだけ問う。その答えが俺の意に敵わなかったときはわかるな?」
「ちょっと待っ――」
「いいの。私は罰せられる覚悟でここに出向いてるから」
ナターシャの手は震えていた。
「お前は魔族なんだな。今は人の敵か?それとも人の味方か?」
『…………』
全員固唾をのんでナターシャの返答を見守った。
「私はどちらの味方でもありません」
「おい!ナターシャ!!」
「ケビン。いいから聞いてほしいの。これから話す内容は嘘も偽りも無い私の本心」
「……私は長い間マナリスに居るだろう妹の仇だけを追って生きてきたわ。何を犠牲にしてでも自分の悲願を遂げるために。その結果マナリスに加担していたのも、この街にマナリスのスパイとして潜伏していたのも事実。でもね……この街で暮らしているうちに……私はこの街が好きになってしまったの。街の人も、この街の景色も雰囲気も全部……。バカみたいよね。妹の仇を討つためだけに生きてきた私が好きなものを持つなんて。そのせいでマナリスとしての仕事も果たせず、冒険者としての仕事も果たせず、結局どっちつかず。でも私は自分の生き方に後悔はしないわ。今でも私の敵は妹の仇だけよ」
「なるほど、よくわかった」
そういうとライナスは強烈な殺気を込めて手に持った剣を振りはらった。
剣はナターシャの首飾りだけを切り落とした。
「え……?」
ナターシャはてっきり斬られたと思っていたので自分の首を触りながら驚いていた。
「助かりたい一心で俺の質問に安易に答えを返すような奴なら迷いなく切るつもりだったが、お前の覚悟は本物だと分かった。俺はお前の心を信じる。マナリスの……お前の妹の仇の情報が入ったらいの一番に知らせてやる」
「……ありがとうございます」
ナターシャは跪いて涙を流しながら感謝した。
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