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2章
21話 意外な訪問者
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数日後、村にガルが報告に来ていた。
イザたちの計画は概ねうまくいったようだ。
「にしても魔石の効果が途中で切れるなんてな。あのまま冒険者たちがやられ始めたらどうしようかと思ったよ」
「こんな時のためにもガル達を強くして置いたんですね!流石イザさん」
銀牙はイザを妄信している。
「いやいや、ガルを指導したのはこの村を守るために虚偽の報告をしてもらう対価としてであって、今回の成果はあのエルロンという冒険者とガル自身の力だよ」
「いやぁ、ラナさんの魔法で体力を削ってあったから倒せただけっすよ。それにしても9体目の…最後の奴だけ異様に体力のこってましたね」
「え?9体目ですか?私が捕獲して弱らせたのは8体だけですよ」
「え?」
「え?」
全員顔を見合わせた。
「あー。1体元気なのが走っていったから。たぶんそれ」
スープを飲みながらマティアが答えた。
「…マティアさんんんん!しっかり止めてくださいよ!!俺死ぬかと思ったんですから!!」
「大丈夫。ガル強い。問題ない。私信じてた」
マティアはスプーンを加えながら親指を立ててウインクした。
「…俺強いっすか?マティアさんからそういわれるとなんか自身が沸いてきました!!」
全員ガルのことをチョロイと思ったのは言うまでもない。
「なるほど、そういうことか」
「!?」
扉の方から聞きなれない声がしたので全員振り向くと、そこにはエルロンが立っていた。
「どうも腑に落ちなかったんであとを付けさせてもらった」
「お前どうやってここに!?」
ミアは武器を構えた。
そんなミアをよそ眼にエルロンはリーンがいることに気が付き声をかけた。
「おや?見ないエルフだな?もしかしてお前は毒妖精か?里を追い出されたと聞いていたが、こんなとこに居たのか」
「…私を知っているってことは西の森出身者ですね。私を連れに来たのですか…?」
リーンも警戒を強めた。
「毒妖精?」
「連れ戻す?なんの話しだ?俺はその時里にはいなかったが、エルフの里全体を毒化しかけて危険人物として300年前程に追放された奴が居たってって話さ。んで付いたあだ名が毒妖精」
みな納得した。
「そんな!みなさん納得しないでください!!そ、そんなことよりもなぜあなたがここに?」
「考えても見ろよ。事前調査チームでガル達は森に行って3か月調査して来たんだ。それで脅威を見つけたから急遽討伐部隊編成の要請。しかし調査隊のメンバーは部隊に呼ばれていない。つまり逃げ帰ってきたか、虚偽報告をしたのか、何らかの理由があってギルド上層部から部隊召集を外されたと思うのが妥当だ。まぁ功を労ってって可能性もあるが、うちのギルマスや国の上層がそんなこと考えるとも思えねぇ。そう思ってたところに自ら部隊に合流。これで逃げ帰ってきた線は薄くなった」
「それで…?」
イザはエルロンの推察を最後まで聞くことにした。
「だが、もともと呼ばれていなかった理由を考えると、何かギルドにも報告していないことがあるから不信感を抱かれてるってことだろう。そしてデスワームと会敵したとき。こいつは俺よりも早く反応して避けやがった。報告ではシルバーウルフやタイラントボアのことしか知らされてないのに足元まで魔力感知で意識してるなんであり得るか?
あれはデスワームがいるってことを知って居ないと不可能だ」
「そしてなにより…俺が戦っていたデスワームは俺らと合う前から致命的なダメージを何者かによって受けていた」
「何故そう思ったんだ?」
始めはわからなかったさ。でも最後に攻撃をするとき奴の背中が見えた。そこには火属性魔法の跡と思われる焦げ跡が見えた。火に耐性の高いデスワームに火の魔法で焦げ跡を残す威力の魔法痕ってなると事前に何者かにかなりのダメージを負わされてると考えるのが普通だろう。更に…帰り際にデスワームを確認したら俺の魔法よりも後に誰かがとどめを刺したと思える痕跡も見つけた」
「…私のミスのせいで…!イザさん申し訳ありません!」
「お、俺もです!考えが甘くていたるところでぼろを!!」
「まぁまぁ、ガルもミアも悪くないよ、俺が建てた作戦だ。責任は俺にある。エルロンさん。そこまで考えて、ここに来たということはギルドにも…?」
「…いや、ここに来たのは俺の独断。ギルドにも何も言ってねぇ」
「ただ、あのデスワームにダメージを与えていた奴を確認しておこうと思って…な」
そういいつつエルロンはミアを見た。
「あの町ではもう100年以上最強の冒険者としてやってきたから俺より強い奴がいるなんて信じられなかったんだが…実際にこうやって目の前にして納得した。認めたくはねぇがあんたらみんな俺より強者だろう」
「どうだろうな」
イザはにやっと笑った。
「謙遜はよせよ、魔力は隠蔽で隠しているみたいだが、俺にはわかる。あんたはその中でも特に強いって俺の感がいってるぜ。ガルを鍛えたのもあんたらなんだろう?」
「どうしてそうおもうんだ?」
「確かに前から見込みはあると思っていたがタイラントボアを一人で。しかも複数体倒すくらいの力はなかったはずだ。これでも100年以上冒険者をやってるんで人を見る目は確かなつもりだ」
「なるほど、それで君はこれからどうするつもりなんだ?返答によっては…」
イザがそう言いかけたところでエルロンが間髪入れずに否定した。
「勘弁してくれ。俺はあんたらとことを構える気はねぇよ。たしかに利用されたのは癪だが、ギルドに別に恩義があるわけでもねぇしな。この村の存在はだまっててやる。報告したところで俺に何の利もないしな。むしろ交渉した方が利があるってもんだ。そこで1つだけ条件がある」
「なんだ?」
「そこの竜人…ミアとかいったか?先ほどの反応。デスワームに致命傷を与えたのはお前だろう?俺と手合せをしてくれ」
「私は別に構いませんが…」
ミアは対応に困ってイザを見て助けを求めた。
「ミアもいいと言っているし許可しよう。でもそれだけでいいのか?」
「ああ、それだけだ。たまにここには顔を出させてもらう。人が致命傷を与えていた敵に辛勝したとあっちゃ、俺のプライドが許さないんでな。…いつかかならずお前に勝つ」
「いいでしょう、私は貴方なんかに負けるつもりはありませんが、いつでもお相手してあげます。あ、あと私は竜人ではなくラミア族から進化したエキドナです」
「…はぁ!?」
終始冷静だったエルロンの表情が崩れた。
「その見た目でラミア…?というかラミアが進化だと…?」
エルロンは信じられないという様子だ。
もう色々知られてしまったようなので、イザが転移者だということは隠し、皆の進化の経緯を含めてラナにうまく説明してもらった。
なかでもエルロンが一番驚いていたのは銀牙が獣人でなく銀狼族が進化した姿だということだ。
クールなエルロンの顔面が崩壊する程驚いていた。
「とりあえず、話はまとまったみたいだな。一つエルロンさんに尋ねたいことがあるんだがいいか?」
「エルロンでいい」
「ではエルロン、200年以上冒険者をしてきたという君なら知っているかもしれないのでたずねたい。ここにいるマティアと同じような存在に心当たりはないだろうか?」
「桁外れの魔力は感じるが…ただの人間の少女じゃないのか?うわさに聞く勇者とかか?」
「いや、マキアは人間ではないらしい。見た目は人間そのものだが、成長したり老いたりもしないエーテロイドという存在なんだ。そのような存在の心当たりはないか?眉唾物でも構わない」
「桁外れの魔力を持った人間の容姿の存在か…ひとつ…。心当たりがあるな。聞いた話だが、不老不死と噂の宮廷魔術師がいる。100年以上前からニルンハイムの城に仕えているはずだが、噂では人間だという。それも妙齢のな。
人間の寿命は100年やそこらのはず。100年務めているだけでも怪しいだろう?」
「確かに妙だな、それにもし違っていたとしても宮廷魔術師なら何か知っているかもしれないな。会ってみる価値はありそうだ」
「しかし王城に入るのは至難の業だぞ?俺ら冒険者は基本的に政治とは無関係だし謁見なんて不可能だ。ましてや国外の素性も知れないあんたらってなると王城付近をうろついただけですぐにとっ捕まっちまうぜ」
「あ、それなら大丈夫」
今まで静かに聞いていたガルが急に口を開いた。
「ガル?何が大丈夫なんだ?」
「俺が王城に入れる手段を知っています」
「どんな方法なんだ?」
「方法と言われましても…。俺と一緒なら入れるとしか」
「あんたふざけてんの?なんであんたなんかが王城に入れるってのよ。冒険者ランクも力もこの中でも一番雑魚のあんたが?」
「まぁまぁリーン、どうどう」
ガルは少ししょげている。
「俺の家名ラグナなので…」
「…はぁぁぁあああ?!あんたが1000年前に国をまとめ上げた伝説の獣王の子孫!?ってことはお貴族様!?」
リーンは驚愕していた。他の皆も声には出さないまでも意外過ぎるガルの素性に驚いていた。
「貴族といっても知っての通り民主制を取っているあの国では権力なんてありませんけどね」
(日本でいう皇族ってことだよな…こいつが…?)
「でもどうしてお貴族様が冒険者なんか…?」
「俺は三男なので継承権もないので」
「なるほど、いいぞ、宮廷魔術師に合うのも無理じゃなさそうだ!ガル。王宮に入る話を取り付けるのにどれくらいかかりそうだ?」
「いつでも入れますよ?」
「いやいや、いくら初代王の末裔でもそれはないだろう?貴族や豪商が権力を持たないように民主制を取ってるって聞いたぞ?いくら獣王の家系だといっても…」
「それとは関係なくて、俺は原王の娘のルナと幼馴染なので彼女に話さえ通せばいつでも王城には入れてもらえます」
…
どうしたんですかみなさん?
全員力では余裕で勝てるのに、なぜかガルに負けた気がした。
リーンは何故か悔しそうだ。
ようやく冷静さを取り戻しつつあったエルロンも驚きを隠せないでいる。
「まぁとりあえずガルが居たら何とかなりそうだな」
「あ、でも王城に入る際の付き人は3人までです」
「3人か…マキナ、エーテロイド同士なら相手がエーテロイドだったら分かったりするか?」
「たぶん近づけばわかる」
「よし、ならガルについていくのは俺とマキナ、それと、…銀牙よろしくたのむ」
「イザさん!なんで銀牙なんですか!?ラナ様や私じゃなく!こんな駄犬私より弱いのに!!」
ミアがイザの提案に食い下がった。
(いやいや、駄犬って…銀牙しょげちゃったじゃん)
「理由は2つある。銀牙はワーウルフだから獣人の国でもさほど目立たない。それとガルについていくのにガルの従者が上位種の亜人なんておかしな話だろう。それにラナやミアはエキドナという種に進化したが傍から見ると竜人に見えるそうだし、明らかに不自然だ」
「確かに…。そういうことでしたら」
「頼むぞ銀牙」
「はい!頑張ります!」
「ちなみにガルは宮廷魔術師について何か知らないか?」
「小さなころから出入りはしていますが見かけたのは数度だけですね。でもいつもローブを纏っているので種族知らないですし、人間のような見た目をしているかどうかはわかりません。名前は確かアルマというはずです」
「宮廷魔術師アルマか。よし、では作戦を練るとしようか」
イザたちの計画は概ねうまくいったようだ。
「にしても魔石の効果が途中で切れるなんてな。あのまま冒険者たちがやられ始めたらどうしようかと思ったよ」
「こんな時のためにもガル達を強くして置いたんですね!流石イザさん」
銀牙はイザを妄信している。
「いやいや、ガルを指導したのはこの村を守るために虚偽の報告をしてもらう対価としてであって、今回の成果はあのエルロンという冒険者とガル自身の力だよ」
「いやぁ、ラナさんの魔法で体力を削ってあったから倒せただけっすよ。それにしても9体目の…最後の奴だけ異様に体力のこってましたね」
「え?9体目ですか?私が捕獲して弱らせたのは8体だけですよ」
「え?」
「え?」
全員顔を見合わせた。
「あー。1体元気なのが走っていったから。たぶんそれ」
スープを飲みながらマティアが答えた。
「…マティアさんんんん!しっかり止めてくださいよ!!俺死ぬかと思ったんですから!!」
「大丈夫。ガル強い。問題ない。私信じてた」
マティアはスプーンを加えながら親指を立ててウインクした。
「…俺強いっすか?マティアさんからそういわれるとなんか自身が沸いてきました!!」
全員ガルのことをチョロイと思ったのは言うまでもない。
「なるほど、そういうことか」
「!?」
扉の方から聞きなれない声がしたので全員振り向くと、そこにはエルロンが立っていた。
「どうも腑に落ちなかったんであとを付けさせてもらった」
「お前どうやってここに!?」
ミアは武器を構えた。
そんなミアをよそ眼にエルロンはリーンがいることに気が付き声をかけた。
「おや?見ないエルフだな?もしかしてお前は毒妖精か?里を追い出されたと聞いていたが、こんなとこに居たのか」
「…私を知っているってことは西の森出身者ですね。私を連れに来たのですか…?」
リーンも警戒を強めた。
「毒妖精?」
「連れ戻す?なんの話しだ?俺はその時里にはいなかったが、エルフの里全体を毒化しかけて危険人物として300年前程に追放された奴が居たってって話さ。んで付いたあだ名が毒妖精」
みな納得した。
「そんな!みなさん納得しないでください!!そ、そんなことよりもなぜあなたがここに?」
「考えても見ろよ。事前調査チームでガル達は森に行って3か月調査して来たんだ。それで脅威を見つけたから急遽討伐部隊編成の要請。しかし調査隊のメンバーは部隊に呼ばれていない。つまり逃げ帰ってきたか、虚偽報告をしたのか、何らかの理由があってギルド上層部から部隊召集を外されたと思うのが妥当だ。まぁ功を労ってって可能性もあるが、うちのギルマスや国の上層がそんなこと考えるとも思えねぇ。そう思ってたところに自ら部隊に合流。これで逃げ帰ってきた線は薄くなった」
「それで…?」
イザはエルロンの推察を最後まで聞くことにした。
「だが、もともと呼ばれていなかった理由を考えると、何かギルドにも報告していないことがあるから不信感を抱かれてるってことだろう。そしてデスワームと会敵したとき。こいつは俺よりも早く反応して避けやがった。報告ではシルバーウルフやタイラントボアのことしか知らされてないのに足元まで魔力感知で意識してるなんであり得るか?
あれはデスワームがいるってことを知って居ないと不可能だ」
「そしてなにより…俺が戦っていたデスワームは俺らと合う前から致命的なダメージを何者かによって受けていた」
「何故そう思ったんだ?」
始めはわからなかったさ。でも最後に攻撃をするとき奴の背中が見えた。そこには火属性魔法の跡と思われる焦げ跡が見えた。火に耐性の高いデスワームに火の魔法で焦げ跡を残す威力の魔法痕ってなると事前に何者かにかなりのダメージを負わされてると考えるのが普通だろう。更に…帰り際にデスワームを確認したら俺の魔法よりも後に誰かがとどめを刺したと思える痕跡も見つけた」
「…私のミスのせいで…!イザさん申し訳ありません!」
「お、俺もです!考えが甘くていたるところでぼろを!!」
「まぁまぁ、ガルもミアも悪くないよ、俺が建てた作戦だ。責任は俺にある。エルロンさん。そこまで考えて、ここに来たということはギルドにも…?」
「…いや、ここに来たのは俺の独断。ギルドにも何も言ってねぇ」
「ただ、あのデスワームにダメージを与えていた奴を確認しておこうと思って…な」
そういいつつエルロンはミアを見た。
「あの町ではもう100年以上最強の冒険者としてやってきたから俺より強い奴がいるなんて信じられなかったんだが…実際にこうやって目の前にして納得した。認めたくはねぇがあんたらみんな俺より強者だろう」
「どうだろうな」
イザはにやっと笑った。
「謙遜はよせよ、魔力は隠蔽で隠しているみたいだが、俺にはわかる。あんたはその中でも特に強いって俺の感がいってるぜ。ガルを鍛えたのもあんたらなんだろう?」
「どうしてそうおもうんだ?」
「確かに前から見込みはあると思っていたがタイラントボアを一人で。しかも複数体倒すくらいの力はなかったはずだ。これでも100年以上冒険者をやってるんで人を見る目は確かなつもりだ」
「なるほど、それで君はこれからどうするつもりなんだ?返答によっては…」
イザがそう言いかけたところでエルロンが間髪入れずに否定した。
「勘弁してくれ。俺はあんたらとことを構える気はねぇよ。たしかに利用されたのは癪だが、ギルドに別に恩義があるわけでもねぇしな。この村の存在はだまっててやる。報告したところで俺に何の利もないしな。むしろ交渉した方が利があるってもんだ。そこで1つだけ条件がある」
「なんだ?」
「そこの竜人…ミアとかいったか?先ほどの反応。デスワームに致命傷を与えたのはお前だろう?俺と手合せをしてくれ」
「私は別に構いませんが…」
ミアは対応に困ってイザを見て助けを求めた。
「ミアもいいと言っているし許可しよう。でもそれだけでいいのか?」
「ああ、それだけだ。たまにここには顔を出させてもらう。人が致命傷を与えていた敵に辛勝したとあっちゃ、俺のプライドが許さないんでな。…いつかかならずお前に勝つ」
「いいでしょう、私は貴方なんかに負けるつもりはありませんが、いつでもお相手してあげます。あ、あと私は竜人ではなくラミア族から進化したエキドナです」
「…はぁ!?」
終始冷静だったエルロンの表情が崩れた。
「その見た目でラミア…?というかラミアが進化だと…?」
エルロンは信じられないという様子だ。
もう色々知られてしまったようなので、イザが転移者だということは隠し、皆の進化の経緯を含めてラナにうまく説明してもらった。
なかでもエルロンが一番驚いていたのは銀牙が獣人でなく銀狼族が進化した姿だということだ。
クールなエルロンの顔面が崩壊する程驚いていた。
「とりあえず、話はまとまったみたいだな。一つエルロンさんに尋ねたいことがあるんだがいいか?」
「エルロンでいい」
「ではエルロン、200年以上冒険者をしてきたという君なら知っているかもしれないのでたずねたい。ここにいるマティアと同じような存在に心当たりはないだろうか?」
「桁外れの魔力は感じるが…ただの人間の少女じゃないのか?うわさに聞く勇者とかか?」
「いや、マキアは人間ではないらしい。見た目は人間そのものだが、成長したり老いたりもしないエーテロイドという存在なんだ。そのような存在の心当たりはないか?眉唾物でも構わない」
「桁外れの魔力を持った人間の容姿の存在か…ひとつ…。心当たりがあるな。聞いた話だが、不老不死と噂の宮廷魔術師がいる。100年以上前からニルンハイムの城に仕えているはずだが、噂では人間だという。それも妙齢のな。
人間の寿命は100年やそこらのはず。100年務めているだけでも怪しいだろう?」
「確かに妙だな、それにもし違っていたとしても宮廷魔術師なら何か知っているかもしれないな。会ってみる価値はありそうだ」
「しかし王城に入るのは至難の業だぞ?俺ら冒険者は基本的に政治とは無関係だし謁見なんて不可能だ。ましてや国外の素性も知れないあんたらってなると王城付近をうろついただけですぐにとっ捕まっちまうぜ」
「あ、それなら大丈夫」
今まで静かに聞いていたガルが急に口を開いた。
「ガル?何が大丈夫なんだ?」
「俺が王城に入れる手段を知っています」
「どんな方法なんだ?」
「方法と言われましても…。俺と一緒なら入れるとしか」
「あんたふざけてんの?なんであんたなんかが王城に入れるってのよ。冒険者ランクも力もこの中でも一番雑魚のあんたが?」
「まぁまぁリーン、どうどう」
ガルは少ししょげている。
「俺の家名ラグナなので…」
「…はぁぁぁあああ?!あんたが1000年前に国をまとめ上げた伝説の獣王の子孫!?ってことはお貴族様!?」
リーンは驚愕していた。他の皆も声には出さないまでも意外過ぎるガルの素性に驚いていた。
「貴族といっても知っての通り民主制を取っているあの国では権力なんてありませんけどね」
(日本でいう皇族ってことだよな…こいつが…?)
「でもどうしてお貴族様が冒険者なんか…?」
「俺は三男なので継承権もないので」
「なるほど、いいぞ、宮廷魔術師に合うのも無理じゃなさそうだ!ガル。王宮に入る話を取り付けるのにどれくらいかかりそうだ?」
「いつでも入れますよ?」
「いやいや、いくら初代王の末裔でもそれはないだろう?貴族や豪商が権力を持たないように民主制を取ってるって聞いたぞ?いくら獣王の家系だといっても…」
「それとは関係なくて、俺は原王の娘のルナと幼馴染なので彼女に話さえ通せばいつでも王城には入れてもらえます」
…
どうしたんですかみなさん?
全員力では余裕で勝てるのに、なぜかガルに負けた気がした。
リーンは何故か悔しそうだ。
ようやく冷静さを取り戻しつつあったエルロンも驚きを隠せないでいる。
「まぁとりあえずガルが居たら何とかなりそうだな」
「あ、でも王城に入る際の付き人は3人までです」
「3人か…マキナ、エーテロイド同士なら相手がエーテロイドだったら分かったりするか?」
「たぶん近づけばわかる」
「よし、ならガルについていくのは俺とマキナ、それと、…銀牙よろしくたのむ」
「イザさん!なんで銀牙なんですか!?ラナ様や私じゃなく!こんな駄犬私より弱いのに!!」
ミアがイザの提案に食い下がった。
(いやいや、駄犬って…銀牙しょげちゃったじゃん)
「理由は2つある。銀牙はワーウルフだから獣人の国でもさほど目立たない。それとガルについていくのにガルの従者が上位種の亜人なんておかしな話だろう。それにラナやミアはエキドナという種に進化したが傍から見ると竜人に見えるそうだし、明らかに不自然だ」
「確かに…。そういうことでしたら」
「頼むぞ銀牙」
「はい!頑張ります!」
「ちなみにガルは宮廷魔術師について何か知らないか?」
「小さなころから出入りはしていますが見かけたのは数度だけですね。でもいつもローブを纏っているので種族知らないですし、人間のような見た目をしているかどうかはわかりません。名前は確かアルマというはずです」
「宮廷魔術師アルマか。よし、では作戦を練るとしようか」
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