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1章

8話 スキルそして魔法について

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拠点に帰ると銀牙と銀狼たちがお出迎えしてくれた。

「ただいまみんな。とくに問題はなかった?」
「ええ!畑の水やりも欠かしませんでした!」
「そうか。ありがとう。銀狼たちも警備ありがとね」
「主に褒められた!」
と銀狼たちはイザに撫でられて尻尾を振りながら喜んでいる。

「驚いた。旦那に話は聞いてたが、ほんとにシルバーウルフ達と暮らしているとは…!」
「ええ、私も先日彼らがイザさんと行動を共にしていた時には驚きました」

「んでイザの旦那?そちらの獣人の方は…?」
「ん?彼は獣人じゃないよ?ワーウルフの銀牙。もとは銀狼だったけど今は進化したからこうして人型で居てもらってるんだ。俺とマティアしかいなかったから寂しくてね」

それを聞いてドワーフとラミア一同は固まっていた。
「ん?どうしたのみんな?」
「…ええええええ!」

みんなが驚く声でイザと銀狼たちも驚いた。
なんか変なことをいったかもと思いイザが銀牙に小声で尋ねた。
「ちょっと銀牙!みんななんで驚いてるの?俺なんか変なこと言っちゃった!?」
「さ、さぁ?俺も人の常識には疎いのでわからねぇです…」

「お、おい旦那…そこの銀牙さん…だっけか?彼が元シルバー…いや銀狼族って話は本当なのか?」
「え…と。そうだけど…俺なんか変なこと言った…かな?」
「…変なことじゃねぇですが…魔物が獣人に進化するなんて数千年前の逸話の世界の話で…根も葉もない噂レベルの伝承ですぜ…。今は獣人は魔物が進化したなんて話、獣人族たちですら信じていない者が大半…」
「あ…そうなの…?」
「我々ラミアの一族も、確かに魔物から進化したと言い伝えでは聞いておりますが…それも言い伝えレベルのお話で…亜人の中にも信じていない者も多い話です…ね。この話を公表したら世界中が大騒ぎになるかも知れません…」

またイザは小声で銀牙と話していた。
「おい銀牙!なんで進化なんてしちゃったんだよ!なんか偉く面倒な話になりそうじゃん!」
「そんなこと言われても!俺はイザさんと契約したら自然と進化しただけで!イザさんの力が強力過ぎるのが悪いんじゃないですか!」
「なんだと…!」

「ま、まぁ、進化することは別に悪いことではないので…」
(かなり驚きましたが…)
「そ、そうだな、別に俺らは歴史学者でも古代学者でもねぇんだ。気にすることではねぇさ」
(アダマンタイトが融解した時よりびっくりしたぜぇ…!)


「と、とりあえず立ち話もなんだし?みんなひとまず中に入らないか?」
銀狼たちと一緒に住んでいて、不便だから名前をつけたら、契約を結んだことになって銀狼たちが進化したこと。更に名前を付けた銀牙だけは獣人のような容姿のワーウルフに進化したことを詳しく説明した。

「なるほど…契約による進化…か。確かに稀に聞く話だが同種内で上位種に進化することはあっても、魔物が契約だけで人種にまで進化するなんて話は大昔の言い伝え以外では聞いたことねぇよ。ガハハ」
「そうですね…よほど主が強い力を持っていないと起こりえないことだと思います」
「俺でもそんなに強くないと思うんだけど…」
「それはないです」
全員が口をそろえていった。

「とりあえずこの話は外に漏らさねぇ方がいいだろう」
「そうですね。このことが外に知れたらそれこそ世界中を巻き込む大混乱に発展するかと…」
(世界中!大混乱!?銀牙の進化がそんなに大ごとだったの!?)

「でもまぁ俺らが秘密にしてれば問題ねぇさ。それよりも…」
「そうですね。それよりも…」
『俺達にも名前をつけてくれねぇか!』
『私達にも名前をつけてくれませんか!』
二人は声を揃えていった。
「はい?」

「こんな話を聞いたら放ってなんておけませんっ!」
「がはは!そりゃそうだ!」
「まてまて!人に名前なんて付けられるのか?」

「?」
二人は不思議な顔をしていた。
「確かに人の街では俺らは大きく分けると人種とされてるが、基本的に人間と獣人、エルフ以外は名前なんて持たねぇぞ?」
「そうなの?」
「はい、人の街に長く住むうちだけ語る為の名を自分で作る場合はありますが、あくまでも借りの名です。そもそも先ほどドワーフさんが言った3種族以外はここの種族の数はそれほど多くありません。なので名前を持たずともあまり困りません。ですので、より強きものと契約して名を授かるくらいしか名を持つことはありませんね。稀にごく一部の種族は婚姻を結んだ相手と同じ名を交わす契約をすると聞きますが…それくらいですね」

「ふーん、わかったんじゃ名前を付けるとするよ。でも俺なんかと契約して本当にいいのか?」
『イザ様がいいんです!』
『旦那がいいんです!』
二人はまたハモった。


こうしてドワーフ5名とラミアの族長そして後から話を聞いて、どうしても私もというのでラミアの戦士長にも名付けをすることとなった
ドワーフはそれぞれエルド、ガルド、ゲルド、ドルド、バルドと名付けた。ラミアの族長にはラナ、戦士長にはミアと名付けた。

こうして再度名付けを祝って盛大な宴が開かれた。
しっかりラミアもドワーフもこちらに来る際荷物にたんまり持っているなと思っていたら大量のお酒を持ち込んでいたらしい。
(こういう賑やかなのやっぱ楽しいな。でも…なんか毎日宴してない…?)



翌朝
「イザ様朝ですよ?起きてください」

呼ばれる声で目を覚ますとそこには知らない女性が居た。透き通るような白い肌に整った顔立ち赤く長い髪、そして蛇のような鱗を持った長い尻尾を携えた妙齢の美女が立っていた。

「なっ!だれ?」
「ふふっ。私です。お忘れですか?ラナです」
ラナは片手で髪をかき上げ微笑みながらそう返した。

たしかに、よく見ると面影がある。
だが、ラミアの姿だと胸さえ隠していたらあまり気にならなかったが、こう人の姿に近くなると露出が高い恰好はどうも目のやり場に困る。
(というか下は布を巻いただけじゃないか!?)
「どうかなさりましたか?」
「い、いや何でもない、おはようラナ」
「はい、おはようございます♪」

(後日服装については話をしておこう。俺が色んな意味でもたなそうだ)


その後ろにも見慣れない女性の姿がある。ミアも進化して人の姿に近づいたようだ。
こちらもラナと同じく下は腰布を巻いただけのようで刺激的な格好をしている。
(ミアの場合は上に軽鎧を着ているから、上下のちぐはぐさもまた危うい)

どうやら他のラミアは姿こそあまり変わらなかったそうだが全員が亜人として上位の種に進化したようだ。
「おかげ様で私と、そしてミアはこうして進化することが出来ました。種族の皆も一様に進化を遂げております。イザ様のおかげです」
「そんな大げさな。気にしなくていいよ。これからもよろしくな」
「はいっ♪朝食の支度が出来ております」


準備されていた朝食を取りつつラナたちと会話する。
(朝食って言っても芋を蒸かしただけのやつと、肉を塩降って焼いただけなんだよなぁ。ってか朝から肉って…!)

「そういえばラミア族って人間に追われてここにたどり着いたって前に銀牙に聞いたけど、その…進化して人間みたいな見た目になることに抵抗はないのか?」

「?」
ラナもミアも首を傾げて何を言っているのかよくわからないって顔をしている
「進化することはこの上ない喜びです。普通は数百年と修行をしたり、神に近しい力を持った英雄と呼ばれるものの眷属となることでしか進化なんて出来ないんですよ?それでも私やミアのように人に近しい姿に進化したなんて話は聞いたことがないほどです。こんなにうれしいことはありませんよ」
「昨日の銀牙さんの進化の話も驚いたが、こうして実際ラミアの姉ちゃんたちまで進化しちまうなんてもう笑うしかねぇな。ガハハ」
そういって笑うエルド達を見てイザは少し安心した。
先ほど進化したラナを見たときにエルドたちも人間と同じくらいの背丈の筋骨隆々のおっさんに進化してるのではないかと考えていたからだ。

「ドワーフたちは特に変わってないみたいだな」
「何言ってんですか!イザの旦那!わかりませんか!」
「俺らぁただのドワーフじゃなくてエルダードワーフに進化したんです!進化したことで新しいスキル古匠を習得しましたぜ!!これでより高度な細工や貴重な鉱石の加工もできるってもんでさぁ!」
(うーん見た目邪全くわからん。)

「進化したのはエルドだけか?他のみんなは?」
「全員進化済でさぁ。あいつらは少しでも早く鍛冶仕事がしたいからって今朝から工房の建築を始めてるぜ。」
(欲望に忠実で何よりだな。ははは。)


「確かに容姿だけみればほとんど変わりありませんが、ドワーフさん達の内包する魔力量は数倍になっていますよね」
「すごいな。ラナは魔力とか一目見てわかるのか?」
『えっ?』
全員がイザをありえない!という目で見た。

「え?何?みんなして…銀牙まで!!」
「あの…イザ様…もしや魔力感知というスキルを存じ上げませんか?」
「なにそれ?銀牙もしってるの?」
銀牙はもちろん常識だと言わんばかりに頷いている。

ラナは苦笑いしつつも丁寧に説明してくれた。
「名前の通り魔力感知とは魔力の量や質を感覚で感じ取ったり、視覚的に捉えて感知するスキルです。おそらくこの世界で使えないものはほとんどいないかと…。そこいらの動物やスライムでさえも使えますね…。」

(うう、俺はあの角兎やスライム以下なのか…)
「イザ様は魔法を使うとき手に魔力を集中させていましたよね?」
「うん?」
「その時に手に集まっている魔力を感じていたと思うのですが。その感覚を体全体から外に広げるイメージをしてみてください。」

「こんな感じか」
イザは目を閉じて自身の周囲の魔力に意識を集中してみた。
すると全員の存在を感覚で認識できるようになった。

「おお!なるほどこれは便利だなっ!」
この場にいる銀牙、エルド、ラナ、ミアの存在を目を閉じていても感じることができる。
こうして魔力を感じるようになって分かったが。ラナは他の進化した者と比べてもかなり魔力量が多いようだ。

(そういえばエルドたちはエルダードワーフになったって言ってたな。ラナたちはなんて種族なんだろう)
「ちなみに進化したラミアさん達は種族とかはどうなるの?」
「私とミアはラミアからエキドナに進化を遂げました。他の子はハイラミアに進化しました。姿はあまり変化していませんが皆人化する能力は得ておりますのでイザさんがお望みであれば、そのようにお伝えいたしますが?」

(エキドナ?なにそれ強そう。絶対また口外したらいけない種族に進化してるじゃん。)
「無理に俺に合わせようとしないで好きにしていいよって伝えといて」
「かしこまりました。(皆きっとイザさんに気に入られようと人化したまま過ごすと思いますが…)」
「ん?何か言った?」
「いえ、何でも。うふふ」

「それにしてもラナはかなり魔力が高いね。同じく進化している銀牙やミアよりも頭一つ魔力の量が多く感じられる」
「ふふふ、これでもイザ様やマティアさんの足元にも及びませんよ」
「え?俺ってそんなに魔力あるの?マティアも?」
全員が頷いた。

「魔力感知で広げた意識を自分に向けてみてください」
「うわっ!なにこれこの部屋を覆うくらいの魔力が溢れてる」
(ラミアに会いに行くときに銀牙に最初離れた場所で隠れているように言われたのも、洞窟内でミアさんに見つかったときにラミアのみんなが震えていたのもこういうことか。)

「これって抑えることできるの?」
「周囲にあふれている魔力を体内に留めるイメージで押さえていけばある程度はなんとかなるかと」
イザは言われるがままに試してみた。


出来ない。魔力を抑えるという感覚がまるで分からなかった。
「まぁこの森にいるうちはそのままでも大丈夫だろう。そのうち魔力を抑制する装備でも俺らがこさえてやるさ」
「助かるよエルド!」

「あ、でもそういえば俺が洞窟内部でサンドワームを誘導する前にみんなは俺のことに気が付いてなかったよね?」
「そういえば…?私がイザ様の魔力に気が付いたのはあの広場にイザ様が現れてからですね。こんな魔力があればいくら隠れていても警戒していたと思いますが…」
(ということは隠蔽スキルに魔力を隠蔽する効果もあるってことか)
「試してみるか。隠蔽!」
「おお、イザさんの魔力がほとんど感じられなくなりました」
魔力のコントロールを覚えるまでは暫く常に隠蔽で過ごすことにした。


魔法の知識に明るいラナのおかげで魔法をより詳しく知ることもできた。
基本属性のこと以外にも特異属性のことも。
特異属性はイメージがよくわからなかったのであまり使ってこなかったが。
なかでも空属性はとても希少だそうだ。
人間で空属性の適正を持っているものは宮廷魔導士や王国騎士団、魔術院から引っ張りだこだそう。
人間に限らず、空に適正があるものはどんな種族でも魔力に長け、その道では有名なものが多いそうだ。

空属性の魔法は主に転移魔法、次元魔法といってある点と点をつなげて移動ができる。ようはワープしたり空間を作り出したりできるようだ。試しに使ってみたらドワーフの里やラミアの里には一瞬で転移できることが分かった。一度行ったことがある場所同士でないとつなげることができないらしい。これは魔法にはイメージが重要という前提があるからだそうだ。簡易領域を作り出し倉庫として使えることも分かった。

作り出した空間はこことは別の次元らしく、その空間の中では時間の流れも限りなく遅い様だ。つまり食料を魔法で作り出した空間に保存しておけばほぼ永久的に腐らない最高の保存庫になるらしい。

光属性は光に関する魔法で明かりや色に関する魔法を使うものが多いらしい。

そして闇属性は呪いや重力等、闇に起因した特性を持った魔法を使えるそうだ。

最後に無属性。この属性は他のどの属性とも違い特殊で。人によって様々な魔法があり、人間や亜人種に使い手が多く。かゆいところに手が届く程度の効果の魔法がほとんどだそう。
中には強力な無属性魔法を扱うものも居るそうだが、無属性魔法はユニークスキルに近いので、たとえ無属性に適正があったとしても他人の固有無属性魔法を扱えるようになることはめったにないらしい。
血縁の場合は同じ無属性魔法に適正がある場合が多いそうだ。

無属性は特異属性に割り当てられているが適正を持つものは多く、しかし適正を持っていても無属性の魔法を使えるものはほとんどいないので特異属性とされているらしい。
適正を持つものの多さだけで言うと基本属性のどの属性よりも適正を持つものは多いが、扱えるものがとても少ないという特殊な属性らしい。
(自分に合った無属性魔法とめぐり合う必要があるのか…確かに適正があっても使えないものが多いわけだ。)
魔法の世界も奥が深いらしい。


俺と契約を強く結んだものは俺の能力も一部使えるようで契約と進化によって空の適正が得られたラナはゲートの魔法と空間作成の魔法も使えるようになった。
ラナは元々魔法に対する適正が高かったようで契約後に発現した適正を含めると、火、風、土、雷、空、光、無の適正があるらしい。
水と闇以外ほぼ全部だ。

他にも銀牙は光と無。銀狼族は光。ミアは風と雷と光。ラミアたちは風魔法、ドワーフたちは火と雷の魔法の適正を受け継いだらしい。
これは種族によって元々隠れた適正があったものを契約によって開放しているかららしい。
なので本来は適正が高い魔法やスキルを持ったものに仕えることでその能力を得るのが最も一般的なようだ。

「イザさんは全属性扱えますのでどんな種族の者と契約してもそのものの適正を限界まで引き出せそうですね。イザさんのことを知ったらきっとどんな方もこぞって契約を結びに来ますよ」
全員頷いた。

「でもいくら何でも全然知らない人や、好きでもない人と契約を結ぼうと思うものなんてそういないんじゃ?」
「そうですね。ある程度互いの信頼関係がないと例え契約したとしてもギフトで得られる恩恵も薄いですからね。ですが…」
「ですが…?」
「力だけを求めているものや、進化を求めているものにイザさんの存在が知れたらやぶさかではないかもしれません」
「なんか怖いな…まぁでもその話だと、みんなに適正が出てるのは俺を信頼してくれてるみたいで嬉しいよ」
「そうですね。ふふふ」
「我は一生イザさんに付き従う覚悟です!」
「あー、一生とか。銀牙。そういう重いのはちょっといいかな」
「そんな…!俺の覚悟を…ひどいです!!」
「ふふふ」
「ははは」
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