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第九章 地上へ 

第68話 今更なんでそんな事を (ショウ視点) /幸せになって欲しいのだ......。 (アラン視点)

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 現在、また魔国の王宮に戻って来ている。

 子供達もリュウもアランも一緒だ。

 リュウの邪気はまだ残っているので例の前王様が居た部屋に居てもらっている。アランと一緒に。


 本当はリュウは魔国に連れてくるべきでは無い事は分かっている。

 だけど、リュウがアランを抱きしめて離さないのだ。

 アランも仕方ないという顔をしながらリュウに抱きしめられている。

 アランを上の世界に残しておくのも危ないという事で2人してしばらく大丈夫と分かるまで、この以前前王様に居て頂いた部屋で過ごしてもらう事にしたみたいだ。

 アランはリュウといても、もう魔物に変化する事も無いようだ。
 子供達ももう大丈夫の様だが様子見で王宮に一晩泊まる様だ。


 
 そして現在俺はタイアンさんとタイアンさんの部屋にいた。

「タイアンさん、俺がショウだと気づいていたんですね」

 そう、今回、俺はマーサの姿をしていたのだがずっとショウとタイアンさんに呼ばれていた。

 あの時は必死だったから気づかなかったけど、俺は普通に返事していたと後で気づいた。

「……ショウ、何故姿を偽っていたんだ? あの男の元に行きたいのか?」


 そうタイアンさんに詰め寄られベッドに押し倒された。

 もうバレているから俺は元の姿に姿を戻していた。
 現在、身長165cm、タイアンさんに押し倒されたら身動き取れない小さな身体だ。


「タイアンさん……どうしてっ、俺の気持ち、分かっているでしょう?」

「何がだ? 分かっている事はショウが俺から逃げようとしている事だけだ。ショウ、いや、そんな事を言いたかった訳じゃない。ショウは将之なんだろう? 将之っ俺は……今更だが俺はあの時、将之の事が好きだった。気づいているか分からないが俺は大魔だ。あの時は……すまなかった。ずっと謝りたかった」

 へっ? 他に好きな人居るのに優しくしないでって問い詰め様と思ったのに、今、聞き捨てならない事、言ったよね?

 タイアンさんが大魔だったって?

 ちょっと、そんな……そうだよ。声も仕草も顔も匂いも……前のままだもん。


 あえて言うならタイアンさんの方がもうちょい筋肉質かな……って、今更なんでそんな事、言うの?

 感動の再会後の別れなんて、嫌だよ。
 タイアンさんの事、やっと諦めようと思っていたのに……タイアンさんが好きな人と結ばれて幸せになるなら良いって思っていたのに、諦められないじゃんっっ。

 そう思い雄の香りをさせる……大好きな良い香りを振り撒くタイアンさんを俺は上目遣いで睨みつけた。


******

【アラン視点】


 急展開過ぎて頭がついていかない。

 筋肉質な金髪美形である男が俺にしがみついて離れない。

 彼が龍鬼様の今世であり名前はリュウさんであると先程知った。

「龍鬼様、俺はココに居ますから、少し離れて下さいますか?」

 前世では彼とは肉体的な繋がりもあったが、あの時もあくまで俺は使用人であり、彼はいつも心の中は将之様でいっぱいだった。


 リュウさんはしかも今世でもショウの幼なじみだと言う。

 本当は俺ではなくショウと一緒に居たいよな?
「嫌だ」

 そう言いながらリュウさんは俺に抱きついて俺の上衣の更に奥の肌着の中に手を入れてきた。

「ちょっ、ちょっと待って下さい」

 俺はそう言いながらも抵抗できない。
 逢いたいとずっと思っていた存在にやっと逢えた。

「今の名はアランと言うのだな……」
「龍鬼様は……ええと、今はリュウ様というお名前なんでしたっけ? ええと、俺が誰か分かってらっしゃるのでしょうか?」
 
「当たり前だ。あの時も今もお前は俺のモノだ。それとも、今はもう違うというのか?」
 リュウ様が鋭い目つきで見つめてくる。
 リュウ様は前世の様にショウの事を思いながらも俺を良い様に使うというのだろうか?

「リュウ様、俺はあの時の俺はではないのですよ?」

 逢いたいと思っていたけど、俺はまた前世の様に都合の良い男になってしまうのだろうか?

 逞しい身体に包まれて、頭の中がトロンと溶けてしまいそうになる。

 彼の声を間近にまた聞く事が出来るなんて……。

「お前はお前だけは俺の味方なんじゃなかったのか? 俺が何者だとしても、俺が悪人だったとしても俺の側に居るとあの時、言ったじゃねーか」

 リュウ様は少し弱々しくそう言った。

 俺は結局、リュウ様を放っておけない。
 都合の良い相手になったとしても俺は俺だけは龍鬼様の、リュウ様の味方でいたい。
 その思いは昔も今も変わらない。
「リュウ様、いいのですか? ショウが将之様が近くにいるのですよ? ショウ様の気持ち、今ならまだ取り戻せるかもしれませんよ?」
「何だよ。お前は俺がショウの元へ行っても平気だと言うのか?」

 平気な訳ない。

 だけど……。

「平気です。俺はもう、平気です。…………。今世ではリュウ様に幸せになって欲しいのです」

 リュウ様が俺の背に直接触れていた掌を動かし始めた。


「もう。うだうだとうるさい口は塞いでしまおうか」

 そう呟いたリュウ様が俺を見つめ唇を塞ぐ。

 ゆっくりと挿入されてきた舌に、うっとりととろけてしまいそうだ。

「……うっ、気持ち良くして……うやむやにしようって……しても……だっダメです……よっ」
「うるせーっ。もうっ何回も言わせるな。お前は俺のなんだよ!」

 力なく抵抗する俺に激しく口付けてくるリュウ様。
 前世のあどけない姿ではなく、有無をも言わさぬ格好良さに流されそうになりながらもリュウ様の逞しい胸を押す。

「リュウ様、今、俺に手を出してしまわれたら……」

 ショウは魔王様に惹かれていると俺は気づいていた。

 魔王様が前世で龍鬼様のライバルであった大魔様だという事にも、だからリュウ様は今、俺に構っている場合ではないのだ。

「アラン……居なくならないでくれ」

 リュウ様が俺を必要として下さって嬉しい。
 だけど俺はリュウ様に幸せになって欲しいのだ。
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