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第97話 比奈ちゃんがいない間に。仲間への連絡(プディ視点)

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 比奈ちゃんの部屋の中、居るのは私、一匹だけ。



 扉もしまっているし、私は誰かが近くに来るとなんとなく身体の毛がその気配を察してピリピリと痛む。

 まあ痛むと言ったって蚊に刺された程度の痒みに似たような微かな痛みなんだけど。



 現在はその痛みも無いから安心して画面を見つめて集中する事が出来た。


 
 私は画面を見つめながらキーボードを爪で押す。
 そしてその感触に、意識と、少しだけ音を乗せる。
 
 その小さな、音になってない様な音から、仲間の感情、パワーを探す。


 部屋の中の電気は点いていない。

 だけど比奈ちゃんの部屋の家具は暖色っぽい色が多く、今日は風は強いけど、晴れているから、部屋の中は明るかった。



 外からの風の色、その先にある木や葉の色。

 薄く白い雲の色、外にいる猫の鳴き声や鳥の鳴き声。



 色々な音や、それぞれと、自分のパワーを混ぜる様に......想像していく様に......その中で仲間の色を探す。



 キーボードを叩きながら私の頭の中で様々な色が見えた。


 私は更に意識を集中し、様々な色から仲間の色を探った。

 ......。



 ............。




 あ、あったこの色だ。


 私はその色に音を、意識を込めた。




『き、聞こえる? ......、、、......。』



 神経を研ぎ澄まし爪に、画面に音を送る。


 少量のパワーを使っているから変な神経を使って疲れるけど仕方がない。




 神経は集中させたまま、薄目を開けて、パソコン横下に目線を移して時間も確認する。

 まだまだ比奈ちゃんが帰るまで、もう少しあるわね......。



 ゔゔっ......。


 ちょっと脇が痒いけど、今、かいたり舐めたりしたら意識が途切れちゃうから我慢よ。



 脇が痒いと言っても誰かが来たわけではないわ。
 ちょっと神経を集中しすぎて汗をかいてきただけよ。




 毛がちょっと湿っていて気持ちが悪いわ。





  ......。



 ......。



 もう、まだ反応してくれないのかしら。



 少しだけ腹が立ってきていた私だけど、そんな事を考えていたら意識の向こう側の色から反応があったのが分かった。

 私の頭頂部の柔らかいグレーの毛が少しだけ立ち上がった。

 
 少しだけ声を遮る様な電波音が、聞こえたけど、小さかった音が少しずつ、少しずつ大きくなってきて、耳に届くくらいになった。
  

『......、は、はい。
......こ、こちら......ユイリーです。
......あっ!
......プディ王女! プディ王女様ですか? 
本物ですか?!!

連絡が途切れていたので、仲間達と、心配していたんです!
ご無事ですか?』




 画面の向こうから聞こえてくる声は掠れ掠れで慌てている。
 いつも冷静沈着な彼女らしくなく、必死さが伝わってくる。




 随分と心配をかけていた様ね......。





 ユイリーは私が小さな幼子だった時から、私の世話係をしてくれていて、歳は離れているけど、なんでも話せる友達だ。



 私に常識や色々な事を教えてくれたのは別のモノだけど、それよりも大事な『思いやり』などを教えてくれたのは彼女だ。


 彼女がいなかったら私はもっと今以上に捻くれた性格だったかもしれない。


 私達の星のモノは感情を殺して生活をする事を、当たり前にして過ごしてきている。






 その社会に染まれないモノはある施設に入れられる。



 入れられてしまったら中でどんな事をされているかは分からない。

 感情を出さない様に訓練されているのだろうか?




 施設から出る時は入る前より、大人しく感情も表に出さない様になって出てくるらしい。




 彼女、ユイリーは、その施設、出身だった。

 
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