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番外編

その狼の愛は止まることを知らない 5

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「はぁ……はぁ……」

腰が抜けたようになってしまったおれの身体を支えるダレスティアは、濡れたおれの唇を指で撫でると、抱き上げてソファに運んでくれた。

「は、激しすぎ……」
「お礼はきちんとしてもらわないといけないだろう?」

そう言って微笑むダレスティアは、ちょっとした悪戯を楽しんでいるかのよう。彼が初めて見せるその表情に、思わずぽかんと見上げてしまう。

「……おれ、明日の夜はどうなっちゃうんでしょうか?」

お礼でこれなら、もっと激しいかも……おれの腰は無事かなぁ。

「私も男だ。タカトと触れ合うのも久々なのだから、少々激しくしても許してほしい」
「はは……」

最近のダレスティアは竜王の儀に向けて、各騎士団と忙しくやり取りをしている。そのため、しばらくダレスティアとは夜を共に過ごしていない。そのことをダレスティアは表情には出さないものの、気にしているのはちょっと気づいていた。
本人は無意識なんだろうけど、話している時の距離感が近いなぁとか、ボディタッチが多いなぁとか。構ってもらう
のを我慢している犬みたいで可愛いなぁと思ったのは内緒だ。

「今はおれと時々お茶を飲みながら、おしゃべりするだけで我慢して欲しいなぁ、なんて……」
「こうやってお茶を入れてくれるのはもちろん嬉しい。しかし今の状況でタカトと二人きりだと、もっと触れ合いたいと思ってしまうのだが」
「うっ」

働き詰めのダレスティアに少しでも休んでほしくてお茶を入れてきたわけだが、どうやらおれを自分の首を絞めてしまっていたらしい。明日のおれ、ごめん……。ダレスティアを休ませることもできて、オウカのお母さんについても知ることができる! と欲張ったおれが悪かったです……

「……ふっ。すまない。そこまで困らせるつもりはなかったのだが」

しかし先ほど言ったことは本音だ。
少しもその言葉の端に冗談の欠片も浮かべることもなく、ダレスティアは未だ腰が抜けているおれを軽々と抱えると、ソファに座らせてくれた。そういうところだぞ。好き。

「どうかしたか? 何か言いたげだな」
「おれの彼氏がカッコよすぎてツラい」
「……そうか」

絶対おれが言いたいことが伝わっていないってことは、ダレスティアの仄かに染まった目元を見て分かった。おれの彼氏様はカッコよくて可愛いようだ。

「それで、カーネリアン夫人のことだったな」

おれの視線に気が付いているだろうに、気が付かないふりをして一口お茶を飲むと、誤魔化すように咳払いした。

「夫人は、朗らかだが芯の強い方だな。普段は穏やかで優しいが、昔からやんちゃだったオウカの度が過ぎると、頭に拳骨を落としていたこともある」

拳骨を落とされるオウカ……想像が簡単にできる。やっぱりオウカは昔からやんちゃだったんだなぁ。

「夫人は元々カーネリアン家の遠戚にあたる男爵家の令嬢だったと聞いている。領地も手放し爵位だけ持っているような状況だったが、夫人のお父上がせめて夫人のデビュタントは華を持たせてやりたいと王都で小さいながらも開いた夜会に、ラシュド様が気まぐれで参加されて夫人に一目ぼれしたことが出会いのきっかけらしい」

やけに詳しいなと思ったら、偶々会ったときに散々ラシュドに惚気られたらしい。夫人が妊娠したうえにクーロという可愛い養子ができて浮かれているとオウカがぼやいていたけれど、ダレスティアも捕まっていたとは。
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