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しおりを挟む学園に入学し、同じ屋敷に住むようになった俺とエリー。
俺の道楽部屋と書斎にする予定だった場所をエリーの工房スペースに宛てた。
エリーの才能は世の宝だ。少しでも不便なく過ごさせてやりたい。エリーに渡せた部屋は実家に比べればちっぽけな場所だったけど、目を輝かせて喜んでいた。可愛い奴め。今日はエリーの好きな牛筋のワイン煮にしてやろう。
今まで魔道具の合間にたまに社交みたいなエリーだが、学園に通う以上は単位を取って卒業しなきゃならん。
エリーとルッツを毎日叩き起こし、飯を食わせて弁当を持たすのはなぜか俺の仕事だった。最初は頑張っていたメイドや従僕の皆さんは、寝汚い婚約者様に泣き、寝相の悪いルッツに物理的に叩きのめされてダメだった。
ルッツは飯の匂いをかがせれば、大抵起き上がるからいい。問題はエリーだ。エリーの奴は本当に起きないんだ。
眠ねむ状態のエリーを椅子に座らせ飯を食わせる。そしてぼけーっとしている間に亜麻色の髪に櫛を通す。動きやすく、そしてお淑やかに見えるようにハーフアップにした。シニョンの時もある。そして、俺の髪色であるブラックベルベットのリボンを結ぶ。
綺麗な空色の目に前髪が掛からないようにきちんと脇に寄せ、跳ねない様にヘアアイロンを軽くかける。流石に服は着させられないのでメイドにやってもらうが、眠くて不機嫌なエリーの足に靴を履かせるのは俺の仕事だ。
細いエリーの小さな足。学校は制服の代わりに男子は上着、女子はケープを纏う。校章のワッペンとリボンの色で学園が判る。その日の服装に合わせ、可愛いエリーの足に似合う靴を選ぶのが俺の仕事だ。
膝をついて吟味した靴を履かせているとき、エリーは薄目をあけてちょっと俺のことを観察している。
エリーは淑女だから、きっちりと服を着せる。だらしないとふしだらだとか言われるからな。
俺は馬鹿王子やっているんで、胸元を開けさせたり腕まくりしてたりと露出多めにしておく。この国ではカッチリキッチリだから、鎖骨チラ見え、胸板チラ見えだけでもうフェロモン野郎扱いだ。見苦しくない程度にはしているが、たまに伸びをしていると男女の視線が突き刺さる。
何故男まで、と思ったらルッツが「王子、なんでか俺より腹筋バキバキなんすよ。何あれ? 人種? もはや存在のグレードの違い?」とクラスメイトに口を滑らせたらしい。やめろ、男のチラリズムなんざ期待すんな。
ルッツ、男なら女を片手で持ち上げるくらい鍛えた方がいいぞ。
女性からの婀娜っぽいお誘いはそこそこにかわし、学園生活を謳歌していた。
ちなみに異腹兄の第一王子と第二王子が同じ学校にいた。
まあそれなりにつかずはなれずやっていた。エリーはあの二人が大嫌いだから、あんまり仲良くできないんだよね。
あんまり話すとぶすくれるし、拗ねられると困ってしまう。
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