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連載
レニ先輩、後輩の面倒を見る
しおりを挟むレニ先輩監修のもと、カミーユは聖騎士としての振る舞いを仕込まれることとなった。
神子のイメージを損なわれては困るのでがっつりしごかれるだろう。
シンとビャクヤは一足先に部屋に戻った。
(あ。レニにお土産の木苺あったんだった)
渡しそびれたのを思い出したが、現在レニはマンツーマンで指導中。
会いに行ったら、カミーユの恨みがましい縋る視線が刺さるのは間違いない。
やっぱり面倒なので、今はやめておこうという結論に達した。
夕食を食べに食堂へ向かうと、顔に包帯で巻いて湿布のようなものを張りまくったカミーユがいた。
「美白パックでござる。ご飯が食べづらいでござる……」
いつもなら美味しそうにパクパク食べるのだが、顔に着いたパックが邪魔なのかもそ……もそ……と口に運び、咀嚼もゆっくりだ。
隣にいるレニは、それを冷ややかに見ている。
今日は客人としてドーベルマン伯爵邸に泊まることになったそうだ。
パンをちぎりながら「カミーユだけ日焼けしすぎだからです」とのたまった。
「シン君とビャクヤも多少はしていますけれど、顔が一番焼けているのはカミーユですからね」
手足は装いで隠すことができるが、いくら護衛とはいえフルフェイス型の兜や仮面をかぶせるわけにはいかない。
「それに天狼祭向けに、礼儀作法を仕上げなくてはいけません。ティンパインの王侯貴族はもちろん、友好国が多数出席します。しごきますからね」
容赦ないレニ先輩の言葉に、後輩二人のカミーユとビャクヤは震えあがった。
カミーユは座学系がとにかく苦手だし、ビャクヤの要領が良くても国のトップが集うような場所なんて経験したことがない。
騎士科の単位として、一般的な礼儀作法は覚えてもまだ一年生。初歩の初歩だ。
「それ……僕もやるの?」
「シン君は誘拐対策も込みで、式典の最低限しか出ないので少なめですよ。ただ、衣装合わせと裾捌きは要練習でしょうね」
絶対布面積が半端ない衣装が用意される。
何せお偉いさん揃い踏みなのだ。国の認めた公式神子の、初の大舞台に周囲は気合を入れるだろう。
「現在、王宮ではシン君の歓迎会をしたい国王陛下とティルレイン殿下を周囲がこってり絞っている最中です。お二方を完全に黙らせたら、お城からの招待状が届くのでそれまでは自由時間ですよ――カミーユは準備に時間がかかるので、私が通ってしつけを叩きこみますけれど」
「そんな特別扱い嫌でござるぅ!」
「そのござる口調も矯正しますよ! 普段ならいいですけど、公式の場で出したらダメですからね!」
「そんなー! 酷いでござる―!」
カミーユは不満と悲哀を訴えるが、当然それも含めてお説教である。
表情は包帯とパックでよくわからないが、目元が湿っているので多分泣いている。
出会った当初はこの残念イケメンを隠すために、口数少ないクールミステリアスを振る舞っていたカミーユ。今では立派な食欲旺盛腹ペコ系ワンコ属性だ。
(確かにこれはやばいよなー)
(あかんやろ、これは)
口には出さないものの、シンもビャクヤも納得だ。
レニも試験への取り組みの様子から、時間がかかることを見越して行動しているのだろう。
「見習いでもお給料は出ますから、冒険者ギルドでお金稼ぎは諦めてくださいね? 今回受けた依頼でしばらくはカード失効しないでしょう?」
そこまで織り込み済みらしい。
さすがレニだ。抜け目がないことに感心しつつも、夕食に舌鼓を打つシンだった。
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