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第三章 本当の気持ちですわ

21話 私も愛してますわ

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レイは未だに私に目を合わせてくれやしない。手で目を覆っている。そんなにマズイ服装をしているかと聞かれればそうでも無いと思う。しかし、レイが言うには刺激が強すぎたらしい。


「そういえば、そっちは順調か?」


どうにか話を振ろうとするレイのおかげでどうしてこんなことになっているのかを話せたが、依然トリネは出てこようともしない。スラムの街中でほぼナンパを仕掛けてきた彼はどこへやら。


「…まあそんなにすぐは見つからないよな」


お互い特に人探しに進展がなかったようではあるが、私よりレイの方が数倍疲れきった顔をしている。彼は今日だけではなく昨日からずっと働きっぱなしだったので無理はない。


「ねぇーなんか食い物ねぇのー?」


やっと落ち着きを取り戻したトリネが窓から顔を出した。赤面して逃げて次はこれだからレイも忙しい訳だ。あるわけないとレイに返されてトリネが頬をふくらませる。


「俺買い出し行ってくるー!ここ右曲がったとこに美味そうなの見つけたんださっき!」


しばらくの沈黙の後に思い出したかのようにトリネはレイからお代を奪ってすぐさま飛び出して行った。


「あいつ、腹減るとダメでさ」


呆れるわけでもなくただ笑ってレイは俺とお嬢様のもなと付け足してトリネを見送った。そして、その後。穏やかな表情を消したレイは私を睨みつけた。睨みつけたわけではないのかもしれないがただ怖かった。


「あいつあれでも明るく保ってる方でさ」


俯いた彼がぽつりと言葉を吐く。私には何を言いたいのか全くをもって理解出来ないが、深刻なことであると、それだけは分かる。


「恋もしたことないのに親父さんから他国の令嬢様との婚約押しつけられててな」


だから、嫌になって、どうしよもなくて、国からでてきた、逃げてきたと。大掛かりな家出だと彼は愚痴を漏らす。その後処理は俺がするんだぞとおどけてみせる。


「親父さんも悪い気は全くなかったみたいでさ。息子可愛さに早く幸せを掴んで欲しかったんだってよ。余計なお世話だとは思うけどな」


政略結婚でもあるけど、とレイが付け足す。


「で、あいつせめて結婚相手ぐらい自分で決めたいって俺の付き添いのもと、顔の知られてない場所来てるの」


でな、と切り出された話は嬉しくても受け入れ難いものだった。まだ頭をぐるぐる回って答えの一言目も出ない。なんて言えばいいのかわからない。気づいていた気ではいた。でも、選択を迫られるのには早すぎる。


「あいつ、お嬢さんに告白しようとしてるよ」


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