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【番外編】
穏やかな炎 前編(※性描写有り)
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「ヘンドリック、そこで踏み込む! 脇が甘いぞ。最後まで手を緩めるな」
「はい、お父様!」
私は、ストールを羽織り、澄んだ空気の中で、二人を見守っていました。
金属音が定期的に鳴り響き、足を動かす度に踏みしめた土が、宙を舞います。
ヘンドリックは今年で10歳になったばかりでしたが、ゲオルクやディートリヒに剣術を習い、みるみるうちに吸収していく様子を見ると、母親として誇らしく思います。
幼いながらも強く剣を振るうヘンドリックの姿は、まるで小さな獣人王のよう。
黒い髪も、月長石のような瞳も、まるで執事になる前の、小間使いだった頃のディートリヒにそっくり。
その、凛々しい姿を見るたびに私は顔が綻み、ヘンドリックを抱きしめたくなるのです。
ふと、動物の足音が聞こえたかと思うと、ピタリと私の足元で止まりました。
ドレスにじゃれるような感覚がして、私は視線を向けます。
そこには、大きなくりくりとした目の可愛らしい黒豹の子供がちょこんと、お座りしていたのです。
「ねぇねぇ、おかあさま。ぼくも、あにうえみたいに、かっこういいけんをもって、おとうさまとたたかいたい!」
「ふふ。アルベルトはもう少し大きくなってから、稽古して頂きなさい。お父様もゲオルクもそれを楽しみにしているの」
小さな黒豹の姿のまま、背伸びをして私に手を伸ばす、第二王子のアルベルトを抱き上げました。
また、獣人の姿になって走り回り、メイドたちと追いかけっこをして遊んでいたようです。
人族のメイドでは、足の早いアルベルトに追いつかないようですが、可愛らしい黒豹の姿は彼女たちの人気の的になっているようで、ヘンドリックと同様、皆に愛されているようです。
私はふわふわとした黒の毛皮に顔を埋めるようにして、優しく口付けました。
そうすると、みるみるうちに黒豹のアルベルトは、私に似た亜麻色の髪と大きな金色の瞳をした坊やに変わります。
「ディートリヒ、ヘンドリック。そろそろ稽古は終わりにしてちょうだい。アルベルトが退屈しているわ」
私の呼びかけで、ようやく長い稽古を終えたディートリヒとヘンドリックは、私の元へと戻ります。
乱れたヘンドリックの髪を直してあげると、大好きな兄をようやくお父様から取り戻すことができたアルベルトは、少々疲れた様子の兄上に構わず、手をぐいぐいと引っ張りました。
「あにうえ! あそんで!」
「ちょ、ちょっとアルベルト。まずはお茶にして僕と一緒にお菓子を食べようよ。それから遊んであげるから」
「うん!」
弟思いで、責任感の強いヘンドリックの返答に微笑ましく思っていると、ディートリヒにやんわりと肩を抱き寄せられました。
息子たちの楽しげな後ろ姿を見ながら、私はディートリヒを見上げます。
威厳のある美しい月長石の瞳が、優しく私を見つめますと、軽く口付けを落としました。
「君を退屈させてしまったかな、オリーヴィアお嬢様」
「ふふ、そうね……アルノー。時々、忙しい貴方のことが心配になるわ。でもヘンドリックは久しぶりに貴方に稽古をつけて貰えると聞いて、とても喜んでいたのよ」
ディートリヒの肩を撫でるようにして言うと、彼は私の額に口付け、エスコートするように腕をさしだします。
宮廷内に戻る道中、私はディートリヒの腕に手を絡めて、ゆっくりと歩きました。
白い吐息を吐くたびに、また厳しい冬がルサリィに訪れるのだと実感します。
けれど、ディートリヒのお陰で古くから伝わる獣人たちの越冬の知識が、民に伝授され、さらに進化し、この雪深い北の国でも豊かな生活が送れるようになりました。
10年の歳月はルサリィを発展させ、以前よりも人と獣人繫がりは強くなりました。
それでも、すべての問題が解決したわけではありません。けれど、ヘンドリックたちが大人になる頃には、それらの問題も解決していることでしょう。
ディートリヒの王政は多くの獣人と人族の民に歓迎され、ルサリィの平和は保たれています。
「ヘンドリックはずいぶんと様になってきたよ。だが、愛する王妃に心配をかけるような王ではいけないな。今日は早めに床につこう」
「そうだわ、ヴィヴィが異国で癒しの精油をお土産に持ってきてくれたの。私が貴方の体をマッサージしてあげるわね」
「ふぅん、あいつの買ってくるものは何かと驚かされる物ばかりだが。労いのマッサージならば、君にしたい」
たしかにヴィヴィから『よりよい夫婦生活のために』と、怪しげな贈り物が届くこともありましたが、心が落ち着く香りはきっと癒やしの効果があることでしょう。
私たちは顔を見合わせて笑うと、久しぶりの夫婦の時間を楽しむことにしました。
✤✤✤
暖かな寝室に、薪の割れる乾いた音が響きます。
燭台のランプの炎がゆらゆらと神秘的に揺れて、私は穏やかな気持ちになりました。
ヴィヴィがくれた、精油の爽やかな花の香りのお陰かしら?
「本当に私がしなくても良いの? アルノー、貴方だってお疲れでしょう」
「愛妃の足をマッサージするくらい、どうってことはない。君の可愛い足の先をじっくりと拝める機会なんて、最近はそうないからな」
ディートリヒは、ベッドに座る私の足を膝に乗せ、足の指からゆっくりと精油でマッサージをすると、冗談っぽく笑いました。
ディートリヒの優しさも愛も、結婚当初から変わることはなく、新しい家族ができたことでより深くなったような気さえします。
二人きりのときは、お嬢様と執事に戻って戯れることも変わりありません。
ディートリヒの変わったことと言えば……無精髭を生やすようになったくらいかしら?
精悍な獣人王となったディートリヒには、とても良く似合い、ヘイミル王と同じく威厳に満ちていることでしょう。
「ふふ、お上手ね。でも私は、昔のように肌に張りがなくなってきたわ」
「いいや、年齢と共に艶ができて美しいよ。君の顔に皺が刻まれても、俺と共に生きていた年輪を見れるのは幸せなことだ。そうだろう?」
「ええ。そうね……愛してる、アルノー。貴方と共に生きれることを、女神エルザに感謝しているの」
ディートリヒの手のひらがゆっくりと膝までマッサージし、熱を帯びて太ももまでくると、私たちは、何度目かの啄むような優しい口付けを交わしました。
熱の籠もった野性的な黒豹の瞳に見つめられると、久しぶりに体が疼くような感覚がしたのです。
そう言えば、ここ最近の多忙さからお互いの肌に触れ合う機会も、少なくなっていました。
「愛しのお嬢様、よろしければ俺が、貴女の体の隅々までマッサージ致しましょう」
「……ええ。お願いしたいわ」
「それでは、お嬢様……ご自分でネグリジェをお脱ぎになってください」
ディートリヒに囁かれると、私はクスクスと笑いながら、リネンのネグリジェを脱いで生まれたままの姿になりました。
私は体をうつ伏せにして彼を待つと、愛しげに臀部に口付けられ、精油をつけたディートリヒの手が背中に触れ、丁寧に肌の上を滑ります。
彼の繊細な動きは心地よく、ついつい私はうっとりと目を細めてまどろんでいました。
「……ん。心地いい……。アルノーの手は本当に安心できるの」
「俺も君の肌に触れていると、よく眠れるんだ、オリーヴィア。本当に綺麗だな……。年齢を重ねる度に君は輝いて、素敵になっていく」
ディートリヒは穏やかな声で甘い言葉を囁くと、背中から、脇腹、そして臀部に触れて精油をなじませていきます。
彼の手が、優しく愛撫するように私の肌を撫でると、劣情に支配されてディートリヒを求める気持ちで一杯になってしまいました。
そして繊細な手付きで、臀部から太ももの付け根にかけて愛撫されると、私は思わず小さく甘い声を漏らしたのです。
少しでも指の位置がずれれば、きっとその奥に潜む私の陰部に触れてしまうことでしょう。
意地悪なディートリヒは、私がこのように彼に焦らされる行為を好ましく思っていることを充分に知っています。
ですから、あえて陰部に触れないのでしょう。
臀部の付け根や、会陰に悪戯に触れられると、甘い声を抑えようと試みても体は素直に反応してしまうのです。
「はぁっ……ん………」
「もっとたっぷり精油をつけないとな。オリーヴィア、前もマッサージしても構わないか?」
「ええ……、今夜は私が断らないことも知っているくせに、本当に意地悪ね」
ディートリヒは私を抱いて仰向けにすると笑いながらシャツの袖を捲りあげました。
昔より鍛えられた胸板は、艶やかで今でも生娘のように恥じらいを感じてしまいます。
そして、ディートリヒは私のお臍あたりに冷たい精油をかけると、妖艶に微笑んだのです。
「さて、明日はメイドの仕事が増えそうだな」
「はい、お父様!」
私は、ストールを羽織り、澄んだ空気の中で、二人を見守っていました。
金属音が定期的に鳴り響き、足を動かす度に踏みしめた土が、宙を舞います。
ヘンドリックは今年で10歳になったばかりでしたが、ゲオルクやディートリヒに剣術を習い、みるみるうちに吸収していく様子を見ると、母親として誇らしく思います。
幼いながらも強く剣を振るうヘンドリックの姿は、まるで小さな獣人王のよう。
黒い髪も、月長石のような瞳も、まるで執事になる前の、小間使いだった頃のディートリヒにそっくり。
その、凛々しい姿を見るたびに私は顔が綻み、ヘンドリックを抱きしめたくなるのです。
ふと、動物の足音が聞こえたかと思うと、ピタリと私の足元で止まりました。
ドレスにじゃれるような感覚がして、私は視線を向けます。
そこには、大きなくりくりとした目の可愛らしい黒豹の子供がちょこんと、お座りしていたのです。
「ねぇねぇ、おかあさま。ぼくも、あにうえみたいに、かっこういいけんをもって、おとうさまとたたかいたい!」
「ふふ。アルベルトはもう少し大きくなってから、稽古して頂きなさい。お父様もゲオルクもそれを楽しみにしているの」
小さな黒豹の姿のまま、背伸びをして私に手を伸ばす、第二王子のアルベルトを抱き上げました。
また、獣人の姿になって走り回り、メイドたちと追いかけっこをして遊んでいたようです。
人族のメイドでは、足の早いアルベルトに追いつかないようですが、可愛らしい黒豹の姿は彼女たちの人気の的になっているようで、ヘンドリックと同様、皆に愛されているようです。
私はふわふわとした黒の毛皮に顔を埋めるようにして、優しく口付けました。
そうすると、みるみるうちに黒豹のアルベルトは、私に似た亜麻色の髪と大きな金色の瞳をした坊やに変わります。
「ディートリヒ、ヘンドリック。そろそろ稽古は終わりにしてちょうだい。アルベルトが退屈しているわ」
私の呼びかけで、ようやく長い稽古を終えたディートリヒとヘンドリックは、私の元へと戻ります。
乱れたヘンドリックの髪を直してあげると、大好きな兄をようやくお父様から取り戻すことができたアルベルトは、少々疲れた様子の兄上に構わず、手をぐいぐいと引っ張りました。
「あにうえ! あそんで!」
「ちょ、ちょっとアルベルト。まずはお茶にして僕と一緒にお菓子を食べようよ。それから遊んであげるから」
「うん!」
弟思いで、責任感の強いヘンドリックの返答に微笑ましく思っていると、ディートリヒにやんわりと肩を抱き寄せられました。
息子たちの楽しげな後ろ姿を見ながら、私はディートリヒを見上げます。
威厳のある美しい月長石の瞳が、優しく私を見つめますと、軽く口付けを落としました。
「君を退屈させてしまったかな、オリーヴィアお嬢様」
「ふふ、そうね……アルノー。時々、忙しい貴方のことが心配になるわ。でもヘンドリックは久しぶりに貴方に稽古をつけて貰えると聞いて、とても喜んでいたのよ」
ディートリヒの肩を撫でるようにして言うと、彼は私の額に口付け、エスコートするように腕をさしだします。
宮廷内に戻る道中、私はディートリヒの腕に手を絡めて、ゆっくりと歩きました。
白い吐息を吐くたびに、また厳しい冬がルサリィに訪れるのだと実感します。
けれど、ディートリヒのお陰で古くから伝わる獣人たちの越冬の知識が、民に伝授され、さらに進化し、この雪深い北の国でも豊かな生活が送れるようになりました。
10年の歳月はルサリィを発展させ、以前よりも人と獣人繫がりは強くなりました。
それでも、すべての問題が解決したわけではありません。けれど、ヘンドリックたちが大人になる頃には、それらの問題も解決していることでしょう。
ディートリヒの王政は多くの獣人と人族の民に歓迎され、ルサリィの平和は保たれています。
「ヘンドリックはずいぶんと様になってきたよ。だが、愛する王妃に心配をかけるような王ではいけないな。今日は早めに床につこう」
「そうだわ、ヴィヴィが異国で癒しの精油をお土産に持ってきてくれたの。私が貴方の体をマッサージしてあげるわね」
「ふぅん、あいつの買ってくるものは何かと驚かされる物ばかりだが。労いのマッサージならば、君にしたい」
たしかにヴィヴィから『よりよい夫婦生活のために』と、怪しげな贈り物が届くこともありましたが、心が落ち着く香りはきっと癒やしの効果があることでしょう。
私たちは顔を見合わせて笑うと、久しぶりの夫婦の時間を楽しむことにしました。
✤✤✤
暖かな寝室に、薪の割れる乾いた音が響きます。
燭台のランプの炎がゆらゆらと神秘的に揺れて、私は穏やかな気持ちになりました。
ヴィヴィがくれた、精油の爽やかな花の香りのお陰かしら?
「本当に私がしなくても良いの? アルノー、貴方だってお疲れでしょう」
「愛妃の足をマッサージするくらい、どうってことはない。君の可愛い足の先をじっくりと拝める機会なんて、最近はそうないからな」
ディートリヒは、ベッドに座る私の足を膝に乗せ、足の指からゆっくりと精油でマッサージをすると、冗談っぽく笑いました。
ディートリヒの優しさも愛も、結婚当初から変わることはなく、新しい家族ができたことでより深くなったような気さえします。
二人きりのときは、お嬢様と執事に戻って戯れることも変わりありません。
ディートリヒの変わったことと言えば……無精髭を生やすようになったくらいかしら?
精悍な獣人王となったディートリヒには、とても良く似合い、ヘイミル王と同じく威厳に満ちていることでしょう。
「ふふ、お上手ね。でも私は、昔のように肌に張りがなくなってきたわ」
「いいや、年齢と共に艶ができて美しいよ。君の顔に皺が刻まれても、俺と共に生きていた年輪を見れるのは幸せなことだ。そうだろう?」
「ええ。そうね……愛してる、アルノー。貴方と共に生きれることを、女神エルザに感謝しているの」
ディートリヒの手のひらがゆっくりと膝までマッサージし、熱を帯びて太ももまでくると、私たちは、何度目かの啄むような優しい口付けを交わしました。
熱の籠もった野性的な黒豹の瞳に見つめられると、久しぶりに体が疼くような感覚がしたのです。
そう言えば、ここ最近の多忙さからお互いの肌に触れ合う機会も、少なくなっていました。
「愛しのお嬢様、よろしければ俺が、貴女の体の隅々までマッサージ致しましょう」
「……ええ。お願いしたいわ」
「それでは、お嬢様……ご自分でネグリジェをお脱ぎになってください」
ディートリヒに囁かれると、私はクスクスと笑いながら、リネンのネグリジェを脱いで生まれたままの姿になりました。
私は体をうつ伏せにして彼を待つと、愛しげに臀部に口付けられ、精油をつけたディートリヒの手が背中に触れ、丁寧に肌の上を滑ります。
彼の繊細な動きは心地よく、ついつい私はうっとりと目を細めてまどろんでいました。
「……ん。心地いい……。アルノーの手は本当に安心できるの」
「俺も君の肌に触れていると、よく眠れるんだ、オリーヴィア。本当に綺麗だな……。年齢を重ねる度に君は輝いて、素敵になっていく」
ディートリヒは穏やかな声で甘い言葉を囁くと、背中から、脇腹、そして臀部に触れて精油をなじませていきます。
彼の手が、優しく愛撫するように私の肌を撫でると、劣情に支配されてディートリヒを求める気持ちで一杯になってしまいました。
そして繊細な手付きで、臀部から太ももの付け根にかけて愛撫されると、私は思わず小さく甘い声を漏らしたのです。
少しでも指の位置がずれれば、きっとその奥に潜む私の陰部に触れてしまうことでしょう。
意地悪なディートリヒは、私がこのように彼に焦らされる行為を好ましく思っていることを充分に知っています。
ですから、あえて陰部に触れないのでしょう。
臀部の付け根や、会陰に悪戯に触れられると、甘い声を抑えようと試みても体は素直に反応してしまうのです。
「はぁっ……ん………」
「もっとたっぷり精油をつけないとな。オリーヴィア、前もマッサージしても構わないか?」
「ええ……、今夜は私が断らないことも知っているくせに、本当に意地悪ね」
ディートリヒは私を抱いて仰向けにすると笑いながらシャツの袖を捲りあげました。
昔より鍛えられた胸板は、艶やかで今でも生娘のように恥じらいを感じてしまいます。
そして、ディートリヒは私のお臍あたりに冷たい精油をかけると、妖艶に微笑んだのです。
「さて、明日はメイドの仕事が増えそうだな」
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