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異世界モブキャラに転生しましたが、幼馴染みの褐色筋肉農夫に囚われています
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ここは、ドルフラークの村。
この先に、風の国オーランドの輝かしい王都がある。ドルフラークは、城下町の中間地点にあたるそれなりに大きな農村だ。
王国の騎士達だけでなく、旅人や吟遊詩人、冒険者御一行様など、様々な人々が訪れる。立ち寄る人々はこの長閑のどかな村で、温泉に入って旅の疲労を取り、回復薬や解毒草を補充して、次の目的地に旅立って行く。
ドルフラークには、美味しい魚が釣れる湖があり、そこで彼ら相手に観光案内したり、食料品や武具を売って、商売をしている人々も多い。
酒場の掲示板にお願い事でも貼っていれば、村を訪れた冒険者達や、王都から派遣された騎士が解決してくれる。
畑に出る魔獣を退治して下さいだとか、街道に出る盗賊を捕まえたら、村長が謝礼金を出しますとでも書けば、数日中に解決してくれるので、お互いの利害が一致しており助かっていた。
ドルフラークの村は、閉鎖的な村ではなく、人々も親切で食事は美味しく、王都から近いので過ごしやすいと人気の場所になっていた。
「こんにちは。天気が良いですね。もうすぐポムの実を収穫するんですよ」
エレナは、こんにちはと話しかけてきた冒険者に微笑むと、いつも通りにそう返事を返した。
実はこの世界、運命の星姫になってイケメンヒーローと恋や冒険を楽しむ『幻想世界ルーファスレイン』という育成RPG型の乙女ゲームの世界だ。
ヒロインのセラフィーナは、看板キャラクターのイケメン七人を攻略出来る上に、エッチな事まで出来る、大人向けのものである。
選択次第では悪役のイケメン魔王と戦って世界を救ったりも出来るし、さらには条件を満たせば、そのイケメン魔王とも熱烈な恋に落ちる隠しルートまで存在している。
あるいは恋愛なんて完全に無視して、可愛いペット達と、もふもふのんびりライフも送れる、かなり自由度の高いゲームで、女子に大人気だった。
生前、エレナもこの大人向け恋愛育成RPGを楽しく遊んでいたのだが、不慮の事故で命を落としてしまう。気付けば何故か子供の姿で、このルーファスレインのゲームの世界に異世界転生していた。
(王道展開の漫画なら、ここはヒロインに転生したり、悪役令嬢に転生するよね……?)
彼女が転生したのは、このドルフラークの村に住む、NPCモブ村人の少女エレナだった。
ルーファスレインの世界では、主要人物ではない、道行くただのモブNPCさえも、全員名前がつけられているので、製作者の拘りを感じる。
だから、周回イベントをこなしていくうちに、プレイヤーは、だいたいモブの名前を覚えてしまうのだ。
ドルフラークに住むエレナは腰までのふわふわの栗色の長い髪、二重のぱっちりとした大きな薄茶ブラウンの瞳をしている。この村の伝統的な民族衣装を着ていて、赤いカチューシャを好んでしている。
丸いおでこを丸出しにしているのが、愛嬌があり、自分好みの可愛いお人形の格好をしていて、どこか見た事のある、親近感のあるようなモブキャラだと、ぼんやりと記憶していた。
(だから私はモブに転生したのかな……?)
この世界に転生した彼女は、漠然とそう結論付けていた。
ゲームの世界に転生するだなんて、どう考えても現実的じゃない。
もしかして、死ぬ直前に見ている脳の妄想なのかもしれないし、アニメや映画の世界でありそうな肉体が滅んで、意識だけがルーファスレインの世界に繋がれ、生かされているのかもしれない。
ここにきた当初は、そんなふうにエレナは考えていたが、そのあり得ない考察は、現実に起こっていたのだ。
どうやらこの乙女ゲームのヒロインも、それに対抗するライバルの悪役令嬢も、自分と同じく転生者だと知ったのは、つい最近の事である。
(主人公枠に転生出来るのは、特別な理由なんてないらしいけど、本当かな。公式に大金を貢ぎまくってた子が事故にあって、その中で先着二名様に滑り込めた子がヒロイン枠に転生出来ただなんて……、世知辛いなぁ)
この噂が、どこまで本当なのか分からないが、エレナと同じようにルーファスレインに転生してきたという、吟遊詩人の女の子からそう聞いた。
この村には、エレナ以外の転生者はいないのだが、どうやら彼女が言うところによると、火の国や水の国に数人存在しているらしい。
(ヒロインやヒーローとは違って、モブキャラには、それぞれ個人で制限がつけられているんだよね)
一つ、このドルフラークの村を出て、城下町や国、他の村に行く事は出来ない(旅人や特別なイベントがあるキャラは除く)
二つ、モンスターや魔獣襲撃イベントが発生したら、モブNPCは取り敢えずヒロイン達が来るまで避難場所で待機する。これで死ぬ事はないので安心。
三つ、ヒロインや攻略ヒーローとの会話パターンは限られており、彼らとの接点は向こうからこちらに話しかけられた時のみだ。
そして基本的にヒーローやヒロインの立場が強く、力も強いので彼等は絶対的な支配力を持つらしい。
それ以外の生活は、現実の世界と変わらず、自由に人生を謳歌出来る。優しい家族がいて、学業に励めるし、家を継いで農業するもよし、それが嫌ならこの村の中で、別の職につく事も反対されない。
それから、現実の世界と変わらない親密な人間関係を、モブ同士で築けるのだ。
(私にも、本当はルーファスレインで推しキャラがいたんだけどな。孤高の竜騎士のグウェイン様。でも、グウェイン様は、転生者ヒロインちゃんとべったりだし、私からは声をかけられないんだよね)
エレナがモブとして、グウェインと通常の挨拶程度の会話をしただけで、転生者ヒロインの視線がかなりきつくなり、怖かったのを思い出した。
やはり正ヒロインとやり合えるのは悪役令嬢だけ、とエレナは早々にグウェインを諦め、モブとしてこの世界で生きると腹を括るしかなかった。
「それにしても、グウェイン様、格好良かったよねぇ。伝説の竜の鎧に銀髪、青い瞳が素敵だし、寡黙でクールな感じも最高よ。でもさすがに、竜騎士様に告白なんて出来ないから、影からあの美しい横顔に、見惚れるしかないわ。あーあ、私にも格好良い運命の王子様が訪れないかしら。本当は亡国の王子でイケメン詩人のエリック様とか、赤狼の騎士様、ローラン様とか良いよねぇ!」
そう言ってうっとりと夢みがちに目を輝かせたのは、この世界での幼馴染みで、子供の頃から一番の親友であるクレアだ。
「うんうん、本当に素敵よね。エリック様もローラン様も格好いいけど、やっぱりグウェイン様は、竜騎士の甲冑が良く似合うし、寡黙で口下手だけど、本当は女性に優しくて、仲間想いのところも良いよね。前の魔獣襲撃の時なんか……」
エレナもクレアと一緒になって、きゃあきゃあとはしゃいでしまった。
例え、グウェインと自分が恋に落ちる事は出来なくとも、この村に推しがふらりと立ち寄り挨拶してくれるだけで、幸せであり尊いものだ。
クレアの言う通り、この村には格好いい他の攻略ヒーロー、重要キャラ、訳あり吟遊詩人、冒険者、傭兵等が立ち寄る。彼女が淡い期待を抱いて、運命の白馬の王子様と出逢うのを夢見てしまうのも、エレナには理解出来た。
「エレナ、ああ言うタイプの男が好きなの?」
「わっ……! アレン、吃驚しちゃった」
背後から声をかけられ、驚いたエレナは彼を振り返る。そこに立っていたのは、クレアと同じ幼馴染みの一人である、アレンだ。
ドルフラークの村で一番背が高く、185センチはあるだろう。肌は褐色で黒髪、普段は大型犬のように、人懐っこい表情をした同い年の青年だった。
畑仕事をして、狩猟ハンターなどもしているせいか、半袖から見える腕は、がっしりとしていて筋肉質である。魔獣が襲撃した時も、斧を持って討伐出来る位に彼は強いと耳にした事がある。
噂によると、傭兵や騎士団への入団の誘いがあるんだとか。
そんなアレンが、しょんぼりとした様子でエレナを見下ろした。
「あ、あの、えーっと。グウェイン様はとっても格好良いから、星姫のセラフィーナ様とお似合いよねって、話してたの。別に好きなタイプとかそんなんじゃなくて」
「そうか……。うん、グゥエイン様にはセラフィーナ様が『絶対に』お似合いだよ」
あまりにも哀しそうな表情をするので、エレナはそう言って誤魔化した。幼馴染みである二人は、恋人としておつきあいしている訳ではないのだが、エレナに対するアレンの好意は、とてもはっきりとしている。
分かりやすく純朴な彼を、エレナは無碍むげに出来なかった。ヒロインである、星姫のセラフィーナ様がお似合いだと言うと、子供のようにアレンの表情が明るくなった。
「今日は、アレンとイムムの実を取りに行くんでしょ。私はお父さんのお手伝いがあるから、また今度ね。最近、森の方に魔獣が出るらしいから気をつけて」
「うん、そうなんだよ。だから俺はエレナを迎えに来たんだ。クレア、今回は本当に残念だったけど、また今度三人で採りに行こう」
「クレア、またね。次は皆でポムの実を収穫しようね」
クレアが突然、父親の手伝いを申し出たのは驚いた。
彼女の性格からして、アレンとエレナの関係にいい加減やきもきし、二人きりになれるよう、気を遣ってくれたんだろう。
エレナにとって、子供の頃から共に過ごしてきた幼馴染みのアレンの事は大好きだし、大切に思っている。
改めてはっきりと、アレンの事を異性として恋愛感情を抱いているのかと問われると、なんだか気恥ずかしい気がした。エレナにとってはアレンは、双子の兄妹のような存在である。
けれど、このまま恋人としておつきあいを始めても、別に構わないと思えるような相手だ。
そこから流れるようにアレンと結婚しても、気が合うだろう。優しくて思いやりのある、純朴で頼れるアレンとなら、楽しく穏やかで幸せな時間を一緒に過ごしていける筈だ。
アレンは、間違いなく良い伴侶になってくれ、共に幸せな家庭を築けるような相手だ。
ただ、彼との恋は少し刺激には欠けそうな気がする。
せっかく大人向け乙女ゲーム『ルーファスレイン』の世界に、転生出来たのだから、特別な使命を持った、格好いい攻略ヒーローと、現実では味わえないような、ロマンチックで刺激的な運命の恋を、経験してみたいと心の片隅で思ってしまう時もある。
「エレナ、どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
アレンが心配そうに覗き込んでくると、エレナはハッとして我に返り、取り繕うように笑って誤魔化した。そんな彼女を、アレンは無表情で静かに見下ろしていた。
✤✤✤✤
「わぁ! 見て、アレン。今年のイムムの実は立派に育ってるね」
「本当だ、赤くて美味しそうだ。イムムのジャムは、パンにつけても美味しいし、煮込み料理に使っても美味いから、楽しみだなぁ」
農地通りを抜け、森に入ってしばらくすると、赤い実をつけたイムムの木が見えてきた。この時期になると、ドルフラークの村人達がイムムの木に実る、林檎のような赤い実を収穫しに訪れる。イムムの実はそのまま食べても果汁たっぷりで美味しいが、煮込んでジャムにしたり、酸味のあるソースにして、肉料理に使ったりすると美味しい。
また、アップルパイのようにお菓子にする事も出来た。
エレナはイムムの実が大好物だったので、上機嫌で収穫していた。
「アレン、あっちの木の方が実が多いよ。もう少し奥の方に行く?」
「うん、あっちには休憩所があるし、一休みも出来そうだな。最近は、森に魔獣が出るから手前で収穫する人が多いんだよ。だから手前より、奥の方が豊作なんだ」
「えっ。魔獣……? だ、大丈夫かな。やっぱり手前で収穫した方が良いかなぁ」
改めて言われると、エレナは不安になってアレンを見上げる。魔獣襲撃イベントに出てくる魔獣なら、どんな種類なのか把握しているし、原則それでこの村の人達が死ぬ事はない。
だが、自由に行動できる範囲で遭遇する敵に負けた場合、エレナはどうなるか、予想もつかなかった。怖がる彼女に、アレンは安心させるようににっこりと微笑む。
「俺がいるから、大丈夫だよ。俺だって、孤高の竜騎士様ほどじゃないけど、それなりに強い。それに小屋で一休みしようって、エレナを誘おうと思ってたからさ」
「ふふ、頼りにしているね」
しばらく森の中を歩いて、イムムの実を収穫していると、叢くさむらから魔獣が唸り声を上げて飛び出してきた。
エレナは悲鳴を上げながら尻餅をつく。
エレナに襲い掛かってくる大型の魔獣めがけて、アレンが手斧で反撃した。初めて見る彼の戦いは、優しいアレンからは想像できないくらい手慣れており、あっという間に息の根を止める。
「エレナっ……怪我はないか?」
「あ、ありがとう。アレンって本当に強いんだね。あの、わ、私……腰が抜けちゃって」
心配して駆け寄ったアレンに抱き上げられると、エレナは感謝の言葉を述べる。ドルフラークの村では、村の周りに魔物や魔獣が出没する以上、全員がある程度それらを追い払ったり、反撃出来るように、子供の頃から訓練を受けるのだが、あくまで自衛するためだけの護身術の剣技だ。
アレンは、噂通り戦士として戦場に立ってもおかしくない位に強かった。
「俺は鍛えてるからね。エレナ、驚き過ぎて腰が抜けた? 小屋に戻って休んだ方がいいな。あそこは旅人の避難所としても使って貰っているし、何でも揃っているから」
アレンは、エレナを抱き上げたまま安心させるように微笑むと、一度通り過ぎた山小屋へ、引き返すように提案した。
「そうだね、ちょっと休憩してから帰ろうかな……また出たら怖いし」
森に建てられた小屋は、万が一遭難して、命からがら魔物や、魔獣に追われこの村に辿り着いた時でも、生活が出来るように、家具一式が揃えられ、保存食も用意されている。
ルーファスレインでは、魔獣の襲撃で家を失った村人が、ここを仮住まいにするという、特殊なイベントも用意されているので、エレナにとってはお馴染みの場所でもある。
(噂じゃ、あの小屋には時々村の男女が入り込んでデートしたり、エッチな密会場所として使われるらしいから、その辺りが大人向けの乙女ゲーム設定だよね)
二人が小屋の側を通った時、今日は誰も使用していない事を確認していたので、エレナは、アレンの言葉に甘える事にした。
「あの小屋って、アレンのお父さんが建てて村に提供したんでしょ? みんなのために無償で建てるだなんて、おじさん偉いなぁ」
「父さんは世話焼きだったからな。父さんが死んでから、ここは俺が管理してる。だから一応俺が、小屋の鍵も持っているんだよ。普段は開けっ放しなんだけど」
小屋につくと、アレンはベッドに彼女を座らせ、何故か鍵をかけた。ドルフラークでは、基本的に夜間以外は鍵をかけない。
アレンが、おもむろに上着を脱ぎ始めたので、エレナは慌てて視線を反らした。
「きゃっ……な、なんで脱ぐの!」
「いや、さっき魔獣と戦った時に少し爪で引っ掻かれたから、治療をしようかなと思って」
「えっ……大丈夫?」
アレンの言葉に、エレナはさっと顔色を変えた。薬草なら常時持ち歩いているので大丈夫だが、相手が大柄の魔獣となるとアレンの傷の深さが気になる。
「ああ。思ったより傷は浅いし、大丈夫だから心配しないで、エレナ。お願いがあるんだ。申し訳ないけど傷口に薬草を塗ってくれないか?」
「うん……わ、分かったわ」
アレンも当然薬草を持っているし、自分で塗れる場所に怪我をしていた。
彼が言う通り傷は深くはなく、かすった程度だが、魔獣がつけた傷跡だ。軽傷だと放置し、膿んでしまっては命取りになる。
彼は大丈夫と言っていたが、エレナに、傷の手当を頼んできたので、彼女は心配になってしまった。
(もしかして、本当は凄く痛くてやせ我慢しているの?)
アレンが上半身を脱ぐと、褐色の鍛えられた肉体が露になって、エレナは頬を染める。彼は、農夫というより戦場を駆け抜ける傭兵のようで、鍛えられた胸板は盛り上がり、腹筋は割れ、大きな斧を武器にする腕は、がっしりとして太い。
子供の頃とはくらべものにならない位に、アレンは『男』になっていた。
「き、傷に、菌が入らないように水で濡らして……、や、薬草を塗っていくね」
「ああ、ありがとう」
エレナは水で傷口の血を拭き取ると、薬草を塗る。背の低いエレナの頭は、ちょうどアレンの胸板辺りだ。
彼女は、イムムの実のように頬を染めながら、アレンに悟られないように、割れた腹筋に薬を塗り込んでいた。
この薬草の効能は凄いが、かなり染みる。
そんな薬草を塗り込まれても、アレンは、微動だにしなかった。エレナは薬草を塗り終えて、小屋に置いてあった包帯を、がっしりとした胴体に腕を回して、巻いていく。
「これでもう、大丈夫だよ」
「ありがとう、エレナ」
エレナが、包帯の上から優しく緩んでいないか指でなぞると、アレンが突然、彼女の指を握った。この小屋に入った時からなんとなく感じていたアレンの熱っぽさに、エレナは頬を染めて、おずおずと幼馴染みを見上げる。
「なに?」
「エレナ」
「あ、アレン?」
「エレナ。俺じゃだめなの?」
「な、なにを……?」
アレンの言わんとしている事は理解しているのだが、幼馴染みだからこそ大切な友人関係を壊したくない。一歩踏み出すのが、怖い気持ちもあって、エレナははぐらかしてしまう。
(アレンの事は好きだけど、失うのが怖い……)
彼女がはぐらかせば、はぐらかせるほどアレンに、寂しい顔をさせてしまうと分かっているのに。
その癖、アレンが他の女性と恋人同士になったらと考えると、気持ちが落ち着かなくなるのは何故だろうか。
「グウェイン様の事だよ。俺は竜騎士様みたいに、知的じゃないし、格好良くないかもしれないけど……。エレナをオーランド国で幸せに出来るのは俺しかいない。それに……案外、俺とも刺激的な毎日を送れると思うよ」
いつもなら、つれない幼馴染の態度に、しゅんと叱られた犬のような表情をするアレンだったが、エレナの頬を撫でながら熱っぽい瞳で告白した。
刺激的な毎日、という言葉にエレナは、自分の心をアレンに見透かされたような気がして、驚く。
どのみち、ドルフラークの村から出られない彼女を、この世界で幸せに出来るのは、幼馴染みで誠実なアレンしかいないだろう。
「エレナ、好きだ。俺のお嫁さんになってくれ」
「あ、アレン……お、お嫁さんに?」
恋人を飛び越して、妻になってくれという直球の告白に戸惑ったものの、エレナはとうとう頷いた。
(いい加減、失うのは怖いという気持を捨てなきゃ。アレンと一緒にいて楽しいし、私もアレンが好きだもの)
推しのグウェインに未練がないわけじゃないが、やはり自分を良く知る身近な人との方が幸せになれる。
幼馴染みから、夫婦になるのも漫画やドラマのようで、素敵じゃないかと思った。
「うん、いいよ。私もアレンの事が好き」
「良かった……。ははっ、ルート確定だ。これでようやく君も、正式なルーファスレインの一員さ」
「え……?」
生前に聞いた事のある単語に彼女は驚き、聞き返そうとすると、エレナの顎を掴んでアレンが優しくキスした。エレナの唇を舐め、隙間から舌がぬるっと挿入されると、やんわりと絡められる。
「んっ……んっ……はぁっ…………んぅ」
アレンに彼女がいた事など一度もない。
誰とも付き合った事がない、恐らく童貞だろうと思われる彼の舌遣いは、思いの外巧みで、焦る事もなくゆっくりと、エレナの舌を愛撫した。
角度を変えながら、舌を優雅に舐られると、エレナは腰から崩れ落ちそうになるほど感じて、抱きとめられた。
「んんっ……っ、ふは、はぁっ……んぁ……あ、アレン、さ、さっきの言葉って……っ、あっ……ひぁっ……、ま、待って……い、いきなりそんな、私……まだ心の準備が」
「俺は、充分過ぎるくらいこの日を何年も待ち続けていた。もう我慢出来ない」
屈み込んだアレンが、エレナの耳の付け根に口付けると苦しそうに囁いた。ゆっくりと首筋を舐められて、痕をつけるように吸い付かれると、エレナの体は敏感に反応した。
低く囁いたアレンは、素朴で陽気な少年だった頃の面影はなく、どこか狩人のような鋭さと、別人のような色気を感じる。
「ゃ……あっ……んっ……んん、や、ま、まだお昼間だよ、……誰か来ちゃう」
「大丈夫だよ。鍵は俺が持っているし、誰も入って来られないように、小屋は閉めておいたからさ」
「きゃっ……!」
アレンはにっこりと笑うと、エレナの腰を抱き上げ、寝室の方へと向かう。そして彼女をベッドに寝かせると、エレナの両手首を押さえ込んだ。
彼は頬を染め、潤んだ瞳で彼女を見つめると、再び深く口付けた。
エレナの口腔内を犯すようにそれは蠢き、互いの粘膜を擦っては睦み合う。
「エレナ、俺とするのは嫌かな?」
「んんっ……はっ、んぅ……そんな事ないけど……アレ、ンッ……んっ、なんかいつもと……んっ、違っ……んんっ、ひゃあっ……はぁっ……」
アレンの大きな手が、エレナの服越しに膨らむ乳房を揉んだ。彼に揉み込まれると、乳房の奥から、ジンジンと燻る炎のように快感が生まれる。
生前、エレナは大人向け乙女ゲーをしていたものの、男性経験はなかったので、自分の体がこんなに敏感な反応をする事に驚きつつも、甘い嬌声を上げる。
「ああ、エレナ……可愛いな。ようやく俺は君の事を手に入れたんだ。ずっと見ていたよ。どうやったら君が、ルーファスレインに……俺のもとに来られるのか、考えていた」
「どういう……、どうして……その、名前を知ってるの?」
「あは……どうしてかな?」
アレンは背筋が寒くなる位に、退廃的に笑った。
ルーファスレインという言葉は造語で、このゲームの作中に出てくるモブが知るような単語ではない。攻略対象のヒーロー達さえも、ヒロインと個別エンディングを迎えない限り、知りようのない言葉だった。
幻想世界ルーファスレイン。
それがこの作品の題名であり、プレイヤー達から呼ばれている永遠の都の名前だ。
アレンは、エレナの質問に答える事なく微笑むと、服の下にすっと熱い手を忍ばせる。
服を捲ると、エレナの手のひらから零れ落ちそうなほどの豊かな乳房を揉み、もう片方の胸に舌を這わせた。
触れるか否かの舌の愛撫に、エレナは背中を反らせて反応する。
「ひゃあっ……! はぁっ、あっ……あんっ、ふっ……あ、恥ずかしい、私っ……声、が……んっ、んぅっ……やっ……ぁっ……んん」
「君も初めてだもんね。乱暴にしないから安心してくれ、エレナ。君の質問の答えも後だ。今は、俺の事を沢山感じてよ」
柔らかく、甘い乳房の輪郭をアレンの舌でなぞられ、乳頭を舌先で突かれると、我慢できず声が漏れる。どっしりとした手のひらで、もっちりとした乳房が優しく包まれた。
脇からマッサージするように触れられると、熱が全身に広がり、弱い電流が走るのを感じた。
程よく強い力加減で揉まれると呼吸が荒くなりほど、気持ちがいい。
「はっ……ぁっ……やぁっ……あ、アレンっ……そ、そこはっ……は、恥ずかしい……、ひっ……んっ、んぅ……」
「大丈夫だよ、怖がらないでくれ。この十数年間、どんな時もエレナの側にいて、大切にしてきただろう?」
アレンの手が、エレナの内股を割ると、太腿の付け根まで撫でた。そして飢えたように下着の中に手を入れ、人形のように形の良い秘部に、しっとりと指を這わす。
閉じた亀裂をなぞる無骨な指に、エレナの吐息は段々と上がっていき、その瞳に涙が滲む。思い返せば、エレナが男の子に苛められた時、どこからともなくアレンが駆け付け、守ってくれていた。
仕事で大失敗して、泣いてしまった時も、体調を崩した時も、飼っていたペットが亡くなった時も、アレンは自分の側にいて、寄り添ってくれたのだ。
許嫁とまではいかないが、そんな彼等をずっと見てきた互いの両親達は、いずれ大きくなったら、二人を結婚させようと笑いながら話していた。
「あっ……ぁっ……ああっ……んっ、んぅ……はっ、あぅっ……ひっ、あっ、だ、めっ……んぁっ……あぁっ……そこっ」
アレンの指が、意地悪するように円を描いて秘部を愛撫する。そしてマッサージするように上下に擦り、埋もれた花芽を根元から掘り起こすように指で擦った。
下着の中で、ちゅくちゅくと濡れた音が響いてエレナは唇を噛む。
恥ずかしくなって、エレナがアレンの手を制止しようとしたが、華奢な彼女が制止する事など出来ず、さらに意地悪に表面を指で弄られ、花弁を弄ばれると、お尻の穴まで溢れた蜜が零れ落ちた。
「あっ、ああっ! いやぁ……ん、あっ、だめっ、待って……はっ、んんっ……こ、こんなのっ……んんぅ……ゃっ……」
「でも、エレナ……濡れてる。やっぱり君は体も心も素直なんだよ。可愛いな……俺の指で感じるエレナ、大好きだよ」
彼はそう言って、感動したように微笑みかけると、エレナの下着をゆっくりと脱がす。恥毛のない陶器人形のような慎ましい花弁は、先ほどの愛撫でぐっしょり?と濡れて糸を引いていた。
彼女の華奢な両脚を肩にかけると、アレンは、堪らず花芽に向かって吸い付く。
エレナは、実際に異性との経験がなくとも、この乙女ゲームで覚えた前戯の知識はあるので、これがどういう行為なのか、理解は出来る。花弁の蜜を喜んで舐める犬のように、興奮してアレンは舌を這わせていた。
「あぁっ……! んんっ、そこ、はぁぁっ、汚っ……あ、アレン、だめ、あっあっあっ……んんっ……はっ……はぁっ…………ぁっ…………やぁっ、んぅぅっ……! あっあっあっ、んんっ」
「あは……汚くなんてない、エレナ。ピンク色でヒクヒクしていて綺麗だ。ちゃんと濡らさないと、初めては痛いよ? それに……、気持ち良さそうな顔をして、ダラダラ愛液を垂らしているんだから、説得力なんてないな」
アレンはエレナの股の間で笑うと、わざと音を立てながら、愛液を吸い上げた。まるで飢えた犬のように、舌で縦横無尽じゅうおうむじんに舐められると、エレナは彼の頭を抑えながら、背中を反らして快感に震えてしまう。
重なり合う花弁の隅々までアレンは丁寧に舐め、小さく隠れた陰核を舌で掘り起こすと、それを舌に絡ませる。エレナは執拗に、小さく勃起した陰核を意地悪に扱かれ、吸い上げられていた。
彼女の意識は大きな波に飲まれて頭が真っ白になる。
激しく何度もそこを嬲られ、いたぶられ絶頂を繰り返し、ぐったりとエレナは体を横たえた。
「~~~~ッッ! はっ……はぁ、今のなに……これって……いやぁ、と、止まらないっ、あっ、あんっ……あぁっ、ひっ、んんぅ」
「ふふ、あんまり気持ち良くてイッたんだよ。エレナのイク時の顔、本当に可愛いかったなぁ! 想像以上だった……処女なのにこんなに感じやすいだなんて、俺は幸せだ」
アレンは、満足したように恍惚とした笑みを浮かべると、エレナのヒクヒクと震える花弁の入口に指を挿入する。無骨なアレンの指が、男を知らないエレナの蜜を纏った媚肉を割ると、痛みよりも、挿入された快感の方が上回ってしまった。
「あっ……あぁっ……やぁん! んっ、あ、アレンっ……はぁっ、あっあっいや、恥ずかしい……あ、あっ……ん、もう、きもち……いい、の、やだぁ……あ~~~~ッッッ」
「エレナ、痛くないみたいで良かった。ほら、膣内なかに指が入ると、犯されているみたいだろ?」
アレンの目が鋭く光って、エレナは一瞬心臓が飛び跳ねた。どうして彼に自分の癖を勘付かれてしまったのだろう。
もちろん、誰彼構わずという事ではなく、自分好みのヒーローに、少し強引に迫られるのが、エレナは好きだった。
寡黙なグウェインも、ルートによってはヒロインに対して、饒舌に嗜虐的に攻めるシーンがあり、エレナのようなM属性の人間にとっては、それが魅力的に感じる一つでもある。
アレンは、侵入した指を陰核の裏にある快楽のスポットに向け、指の腹でピタピタと押し上げた。敏感な花芽を吸い上げ、舌で転がし、そこに歯を立てるとエレナは、シーツを握りしめ咽び泣いた。
「ひっ、ああっ……! やぁっ……ぁっ、あっあっあっ、ああんっ、はっ、きもちっ……んんっ、だめ、同時にっ……♡♡ あれんっ……ゃっゃっ……あっ、くるっ、~~~~~ッッッ」
ぬちゅ、ぬちゅと音を立てながら膣内の指を動かされた。執拗に固く勃起した陰核を嬲られると、次々に愛液が溢れ、シーツに染みを作り、再び絶頂に達してしまう。
なんだか、いつもと雰囲気の違う刺激的なアレンは、エレナの陰部をペロリと舐めると、さらに二本目の指を挿入する。
「~~~~ッッッ!」
「俺の指、太いだろ。これで少し慣らしておこうね。あは、エレナ……こんなに蜜を垂らしてギチギチに指に食い付いてきてる。こんなに感じやすいのなら、他の男にも目をつけられないか心配だなぁ。なぁ、エレナ。グウェインって女ったらしだよ、知ってた?」
アレンは、エレナの花芽に歯を立てる。
二本の指を出し入れする速度を上げると、シーツを握りしめ、ガクガクと体を震わせて喘いだ。あまりにも気持ち良くて、言われている言葉が頭に入らない。
けれど、設定上ではグウェインは寡黙で、女気がなく、どちらかというと異性が苦手なのに、女たらしだなんてイベントは、存在していなかったと記憶しているのだが。
「グウェっ……イン様が、女、たらしっ……? あっ、あぁっ、またっ……はぁっ、はぁっ、きもちいいっ、きちゃうっ、あっあっあんんっ、舐めたらっ、あっあっ、んん~~~~ッッッ!」
「またイっちゃったね。そろそろ大丈夫かな。グウェインの名前なんてエレナの口から出たら、俺もう限界だよ」
アレンのズボンから取り出されたそれに、エレナは赤面する。ゲームの世界のようにモザイクが入るわけでもなく、彼の肉体と同じく立派な一物は天に向けて、反り返っていた。
エレナの腰を引き寄せ、両足首を持つ。
彼女の蜜を纏うように、アレンは自分の竿を陰部に擦りつけると、一気に奥まで挿入した。
「ひっ…………あぁぁ!!」
さすがに、この時ばかりはエレナも体を切り裂くような痛みを感じ、破瓜の血を垂らした。彼女の膣内の心地良さに、切なく呼吸を乱すアレンは、エレナの体が馴染むまで、じっと動かずに我慢をする。
額にキスされ、ジンジンとした痛みが緩和される頃になると、アレンはゆっくりと腰を動かし、エレナを突き上げた。
「んぁっ……! はっ、はぁっ……んぁっ、あっあっ、やんぁぁっ……はっ、はっ、あっ……あふっ、んんっ……はぁっ……あん」
「はぁ、やった……。これでっ……エレナの処女を俺の手で奪えたんだ。俺もエレナに童貞を捧げられたっ……はぁ、気持ちいい、最高に気持ちいいっ……はぁっ、なんて幸せなんだろう」
アレンは恍惚と呟くと、耽けるように膣内に陰茎を出入りさせる。エレナは口端から銀糸を垂らし、揺さぶられながら感じていた。
ちゅぽ、ちゅぽ、と恥ずかしい音が響いて、エレナは身悶える。
「エレナは、ちょっとっ……はぁ、鈍感なんだよ。……はぁっ、こんなに可愛いのに自覚がないっ……村の未婚の男達はっ……エレナを狙ってたんだよ。まぁ、俺が全員初期化したけど。あの、グウェインだってっ……エレナと寝たがってたんだ」
アレンは、エレナの両足首を持ちながら、どっしりとした腰を動かした。大きな体に突き上げられると、エレナの体は揺さぶられる。ゲームの世界のお陰なのか、処女喪失の痛みはすぐに消え去り、現実では得られないような強い快感が、膣内から迫り上がってきた。
あまりの気持ち良さに、エレナとアレンの結合部は泡立ち、蜜が溢れ返っている。
「ぁっ……! やあっ、あっあっあっ……! やぁっ……はっ、ああっ、んんっ……アレン、ふっ、んんっ、ひゃあっ……それ、だめぇ、きもちいいっ、んぅっ、はっ、はーー、グウェイン様が、どうし、んぁぁっ♡♡」
「勘違いするな。グウェインは君の事なんて好きじゃない」
アレンは、恐ろしく冷たい目でエレナを見下ろすと、花芽をつねるとエレナの陰核の裏を擦って、さらに奥へ突き上げる。
「あいつは、自分に貢いでくれる女が好きなだけだ。俺達とは違うんだよ」
頭の中で火花が散り、背中を反らせると悶絶しながらエレナは絶頂に達した。彼女の締め付けに、アレンは思わず自分の欲望を吐き出してしまったが、抜かずに挿入したまま、白濁液をかき混ぜ、種付けするようにぐっと伸し掛かった。
「はぁっ……凄く気持ちいい、エレナ。俺の事好きだよね……? はぁっ……ちゃんと言ってくれなきゃ分からない……不安になるよ。はぁっ、今すぐにでも孕ませたいくらい大好きだ……可愛いなぁ、はっ、はぁっ……俺の精子でエレナの子宮を一杯にしたい」
アレンは鍛えられた肉体と、天性の素質なのか、エレナの膣内を擦り、どちゅ、どちゅと突き上げていく。
「ひっ、ああっ♡♡ あ、アレン、ちゃんんと、しゅきっ、しゅきだからっ、あっ、あっあっんぁぁ、そこ、グリグリやめて、きもちいいっんんんん♡♡ んん~~~~ッッッ♡」
アレンが、上から子宮へと打ち付けるように陰茎を突き立て、さらに腰をくねらせると、結合部から淫らな愛液か飛び散った。純朴で誠実なアレンからは想像出来ないくらい、過激なセックスだった。
陰茎が膣内で擦れる度に、エレナの未熟な膣内が、蠕動して絡みつく。アレンが奥を擦る度に、初めて感じる強烈な快楽にエレナの思考が、ドロドロに形もなく蕩けていった。
彼女を追い詰めるように、快楽のツボが集中した場所を、幾度も打ち付け擦られると、連続イキが襲い掛かってきた。
「~~~~ッッッ♡♡♡」
「はぁっ……! またっ、射精るっ」
アレンが呻いた瞬間、エレナの膣内に欲望を吐き出した。ゆっくりと彼が陰茎を抜くと白濁した液体が、花弁からドロリと流れ落ちる。
恍惚としてベッドに寝転がるエレナを優しく抱擁し、アレンは静かに囁きかけた。
「ずっと君の事を見ていたよ。君がこのルーファスレインで、グウェインを選ぶ度に苦々しく思っていた。君達は知らないだろうけど、俺達はこちら側から見ているんだよ。そして、君達と同じように俺達も恋に落ちる。彼等は運命の相手が、この世界に降り立つ事を指を咥えて待っているんだ。俺は彼等と違う。運命を引き寄せるために、実行出来る力があるだけだ」
エレナの頭の中は、霧が掛かったようにぼんやりとしている。このゲームをしていた事も、転生した事も覚えているのに、その他の事はぼんやりとしていた。
「あのヒロインと、悪役令嬢の子はこの世界への貢献度が高いからね。見返りがあってもいいだろ? ところで君は前世の姿も、名前も覚えているかな? 本当に幻想世界ルーファスレインに、エレナなんてモブキャラはいた?」
ドルフラークに、クレアが住んでいた事は知っているのに『エレナ』の事が思い出せない。
あの日、いつも通る大きな横断歩道を渡っていると、青に変わったばかりの信号が不自然に点滅し、何故かすぐに赤になってしまった。そして、安全確認を怠ったトラックが、彼女に向かって突っ込んできた。
あの時、ビルの最上階に設置された幾つもの広告用の液晶画面。
そこにはルーファスレインのプレイ動画が映っていた。その中で、彼女の知らないキャラがこちらを見て微笑んでいた。
(あれはアレンだったの……?)
これは新しいCMで、追加キャラがきたのか、続編が出たのだろうかと思って、気持ちが高ぶってしまったのもいけなかった。
けれど、今はもうどうでも良い。
アレンの腕の中は心地良く、安心出来るのだから。
「この架空幻想世界で、俺と永遠に愛し合おうね、絵麗奈エレナ」
✤✤✤
「ま、待って……アレン。ここでするの? 誰かっ……はぁ、来たら……み、見られちゃう」
「でも、エレナは好きだろ? 晴れた森の中で、俺に挿れられるの」
エレナは、恥ずかしそうにしながら乳房を隠した。アレンは優しく笑いながら、スカートを捲る。こんなところをクレアや、村の人達に見られたら『新婚さんだからお盛んなのね』と言われかねないのに、彼は堂々としている。
しかも、アレンと共に仕事をする際は下着を履かないようにと、恥ずかしい言いつけまでされていた。
大きな木の幹に両手をついたエレナは、アレンに片方の乳房を揉まれながら、肩越しに振り返ると、弱々しく抗議した。
「だ、だめぇ……魔獣がっ、現れたら」
「安心して、次のアップデートはまだ先みたいだし、俺がだいぶこの辺りの魔獣を狩っておいたから、もう出ないよ。それにほら、ちゃんとここも玩具を咥えて、濡れているじゃないか」
エレナの可愛らしい薄桃色の陰部に、魔力の振動で動く、親指くらいの大きさの魔石が挿入され、ブゥンブゥンと重低音を響かせていた。頬を染め、太腿にまで蜜を垂らしながらエレナは感じて爪先立ちになると、嬌声を押し殺す。
「はぁっ……んん、抜いっ……てぇっ、あっ……あんっ……♡ アレン、はぁっ……♡ いじわる、しないでっ♡」
「さっき、グウェインに挨拶しているエレナ可愛かったなぁ。顔を赤らめてもじもじして……まさか、玩具を咥えてるなんてあいつは知らないだろうし。いや、気付いてたのかもな。あいつ、俺が嫉妬深いのは知ってるから」
「ひゃぁっ……ん♡♡♡」
「そうだ……っ! 俺達がしてるところ、ヒロインとヒーローが覗けるイベントも入るんだって」
アレンはそう言うと、玩具を持って膣内をかき混ぜる。そして、もう一度押し込むと魔力で振動する玩具を残したまま、自分の陰茎を挿入した。
激しいピストン運動はせず、軽く小突くように動かし、お互いを刺激する振動を楽しんだ。魔石をなぞるように腰をグラインドさせて動かし、押し付ける。
「あっ、ああっ♡♡ んんっ、やぁっ♡♡あっ、あっあっ♡ おくでっ、響くっ、あっぁ、あれんっ♡♡それっ、きもちいいっ、んぁ♡♡ ~~~~~ッッッ♡♡♡」
「はぁっ……奥で響くから気持ちいいだろ、エレナ。んっ……君の望む事ならなんでも俺が叶えてあげるから……ねっ……!」
アレンが花芽を撫で回し、奥を刺激すると、彼女ははしたなく木の幹に蜜を飛び散らせる。
絶頂に達して、ガクガクと震えるエレナの膣内から濡れた魔石を取り出すと、今度は花芽にぴったりと魔力で固定した。
再びアレンは、自分の一物を挿入すると、彼女が一番感じる奥を突き上げた。木の幹に縋りながら、アレンにパンパンと激しく突き上げられると、頭の中で火花が散るような快感に飲み込まれ、腰が抜けそうになる。
エレナはもう、何も考えられなかった。
擦れ合う、粘膜の淫靡な音が森に響き、二重に与えられる淫らな攻めに、エレナの膣内は、アレンの全てを絞り取るように蠕動して、限界を迎えようとしていた。
「いっっ……はぁっ、イッてるっ、イッてるからぁっ……♡♡♡ アレン大好きっ、あぁあぁ~~~~ッッッ♡♡♡」
「はぁ、大好きだよエレナっ……これからも刺激的な毎日を過ごそうね」
ぐっと、奥に突き上げられた瞬間に熱いものが体内で弾けるのが感じた。
アレンがこのルーファスレインでどのような存在なのかは分からない。世界の事も、グウェインや他のヒーローの事、転生してきた現実世界のヒロイン達の事情までも、まるで見てきたかのように彼は良く知っている。
それからエレナは、ヒーロー達や他のモブキャラが彼を訪ねて話し込んでいる姿も、時々見かけるようになった。
彼は、この世界で普通にモブとして生活し、愛する妻のエレナと共に幸せに生きていくだけだ。
二人の薬指に、指輪が光っていた。
了
この先に、風の国オーランドの輝かしい王都がある。ドルフラークは、城下町の中間地点にあたるそれなりに大きな農村だ。
王国の騎士達だけでなく、旅人や吟遊詩人、冒険者御一行様など、様々な人々が訪れる。立ち寄る人々はこの長閑のどかな村で、温泉に入って旅の疲労を取り、回復薬や解毒草を補充して、次の目的地に旅立って行く。
ドルフラークには、美味しい魚が釣れる湖があり、そこで彼ら相手に観光案内したり、食料品や武具を売って、商売をしている人々も多い。
酒場の掲示板にお願い事でも貼っていれば、村を訪れた冒険者達や、王都から派遣された騎士が解決してくれる。
畑に出る魔獣を退治して下さいだとか、街道に出る盗賊を捕まえたら、村長が謝礼金を出しますとでも書けば、数日中に解決してくれるので、お互いの利害が一致しており助かっていた。
ドルフラークの村は、閉鎖的な村ではなく、人々も親切で食事は美味しく、王都から近いので過ごしやすいと人気の場所になっていた。
「こんにちは。天気が良いですね。もうすぐポムの実を収穫するんですよ」
エレナは、こんにちはと話しかけてきた冒険者に微笑むと、いつも通りにそう返事を返した。
実はこの世界、運命の星姫になってイケメンヒーローと恋や冒険を楽しむ『幻想世界ルーファスレイン』という育成RPG型の乙女ゲームの世界だ。
ヒロインのセラフィーナは、看板キャラクターのイケメン七人を攻略出来る上に、エッチな事まで出来る、大人向けのものである。
選択次第では悪役のイケメン魔王と戦って世界を救ったりも出来るし、さらには条件を満たせば、そのイケメン魔王とも熱烈な恋に落ちる隠しルートまで存在している。
あるいは恋愛なんて完全に無視して、可愛いペット達と、もふもふのんびりライフも送れる、かなり自由度の高いゲームで、女子に大人気だった。
生前、エレナもこの大人向け恋愛育成RPGを楽しく遊んでいたのだが、不慮の事故で命を落としてしまう。気付けば何故か子供の姿で、このルーファスレインのゲームの世界に異世界転生していた。
(王道展開の漫画なら、ここはヒロインに転生したり、悪役令嬢に転生するよね……?)
彼女が転生したのは、このドルフラークの村に住む、NPCモブ村人の少女エレナだった。
ルーファスレインの世界では、主要人物ではない、道行くただのモブNPCさえも、全員名前がつけられているので、製作者の拘りを感じる。
だから、周回イベントをこなしていくうちに、プレイヤーは、だいたいモブの名前を覚えてしまうのだ。
ドルフラークに住むエレナは腰までのふわふわの栗色の長い髪、二重のぱっちりとした大きな薄茶ブラウンの瞳をしている。この村の伝統的な民族衣装を着ていて、赤いカチューシャを好んでしている。
丸いおでこを丸出しにしているのが、愛嬌があり、自分好みの可愛いお人形の格好をしていて、どこか見た事のある、親近感のあるようなモブキャラだと、ぼんやりと記憶していた。
(だから私はモブに転生したのかな……?)
この世界に転生した彼女は、漠然とそう結論付けていた。
ゲームの世界に転生するだなんて、どう考えても現実的じゃない。
もしかして、死ぬ直前に見ている脳の妄想なのかもしれないし、アニメや映画の世界でありそうな肉体が滅んで、意識だけがルーファスレインの世界に繋がれ、生かされているのかもしれない。
ここにきた当初は、そんなふうにエレナは考えていたが、そのあり得ない考察は、現実に起こっていたのだ。
どうやらこの乙女ゲームのヒロインも、それに対抗するライバルの悪役令嬢も、自分と同じく転生者だと知ったのは、つい最近の事である。
(主人公枠に転生出来るのは、特別な理由なんてないらしいけど、本当かな。公式に大金を貢ぎまくってた子が事故にあって、その中で先着二名様に滑り込めた子がヒロイン枠に転生出来ただなんて……、世知辛いなぁ)
この噂が、どこまで本当なのか分からないが、エレナと同じようにルーファスレインに転生してきたという、吟遊詩人の女の子からそう聞いた。
この村には、エレナ以外の転生者はいないのだが、どうやら彼女が言うところによると、火の国や水の国に数人存在しているらしい。
(ヒロインやヒーローとは違って、モブキャラには、それぞれ個人で制限がつけられているんだよね)
一つ、このドルフラークの村を出て、城下町や国、他の村に行く事は出来ない(旅人や特別なイベントがあるキャラは除く)
二つ、モンスターや魔獣襲撃イベントが発生したら、モブNPCは取り敢えずヒロイン達が来るまで避難場所で待機する。これで死ぬ事はないので安心。
三つ、ヒロインや攻略ヒーローとの会話パターンは限られており、彼らとの接点は向こうからこちらに話しかけられた時のみだ。
そして基本的にヒーローやヒロインの立場が強く、力も強いので彼等は絶対的な支配力を持つらしい。
それ以外の生活は、現実の世界と変わらず、自由に人生を謳歌出来る。優しい家族がいて、学業に励めるし、家を継いで農業するもよし、それが嫌ならこの村の中で、別の職につく事も反対されない。
それから、現実の世界と変わらない親密な人間関係を、モブ同士で築けるのだ。
(私にも、本当はルーファスレインで推しキャラがいたんだけどな。孤高の竜騎士のグウェイン様。でも、グウェイン様は、転生者ヒロインちゃんとべったりだし、私からは声をかけられないんだよね)
エレナがモブとして、グウェインと通常の挨拶程度の会話をしただけで、転生者ヒロインの視線がかなりきつくなり、怖かったのを思い出した。
やはり正ヒロインとやり合えるのは悪役令嬢だけ、とエレナは早々にグウェインを諦め、モブとしてこの世界で生きると腹を括るしかなかった。
「それにしても、グウェイン様、格好良かったよねぇ。伝説の竜の鎧に銀髪、青い瞳が素敵だし、寡黙でクールな感じも最高よ。でもさすがに、竜騎士様に告白なんて出来ないから、影からあの美しい横顔に、見惚れるしかないわ。あーあ、私にも格好良い運命の王子様が訪れないかしら。本当は亡国の王子でイケメン詩人のエリック様とか、赤狼の騎士様、ローラン様とか良いよねぇ!」
そう言ってうっとりと夢みがちに目を輝かせたのは、この世界での幼馴染みで、子供の頃から一番の親友であるクレアだ。
「うんうん、本当に素敵よね。エリック様もローラン様も格好いいけど、やっぱりグウェイン様は、竜騎士の甲冑が良く似合うし、寡黙で口下手だけど、本当は女性に優しくて、仲間想いのところも良いよね。前の魔獣襲撃の時なんか……」
エレナもクレアと一緒になって、きゃあきゃあとはしゃいでしまった。
例え、グウェインと自分が恋に落ちる事は出来なくとも、この村に推しがふらりと立ち寄り挨拶してくれるだけで、幸せであり尊いものだ。
クレアの言う通り、この村には格好いい他の攻略ヒーロー、重要キャラ、訳あり吟遊詩人、冒険者、傭兵等が立ち寄る。彼女が淡い期待を抱いて、運命の白馬の王子様と出逢うのを夢見てしまうのも、エレナには理解出来た。
「エレナ、ああ言うタイプの男が好きなの?」
「わっ……! アレン、吃驚しちゃった」
背後から声をかけられ、驚いたエレナは彼を振り返る。そこに立っていたのは、クレアと同じ幼馴染みの一人である、アレンだ。
ドルフラークの村で一番背が高く、185センチはあるだろう。肌は褐色で黒髪、普段は大型犬のように、人懐っこい表情をした同い年の青年だった。
畑仕事をして、狩猟ハンターなどもしているせいか、半袖から見える腕は、がっしりとしていて筋肉質である。魔獣が襲撃した時も、斧を持って討伐出来る位に彼は強いと耳にした事がある。
噂によると、傭兵や騎士団への入団の誘いがあるんだとか。
そんなアレンが、しょんぼりとした様子でエレナを見下ろした。
「あ、あの、えーっと。グウェイン様はとっても格好良いから、星姫のセラフィーナ様とお似合いよねって、話してたの。別に好きなタイプとかそんなんじゃなくて」
「そうか……。うん、グゥエイン様にはセラフィーナ様が『絶対に』お似合いだよ」
あまりにも哀しそうな表情をするので、エレナはそう言って誤魔化した。幼馴染みである二人は、恋人としておつきあいしている訳ではないのだが、エレナに対するアレンの好意は、とてもはっきりとしている。
分かりやすく純朴な彼を、エレナは無碍むげに出来なかった。ヒロインである、星姫のセラフィーナ様がお似合いだと言うと、子供のようにアレンの表情が明るくなった。
「今日は、アレンとイムムの実を取りに行くんでしょ。私はお父さんのお手伝いがあるから、また今度ね。最近、森の方に魔獣が出るらしいから気をつけて」
「うん、そうなんだよ。だから俺はエレナを迎えに来たんだ。クレア、今回は本当に残念だったけど、また今度三人で採りに行こう」
「クレア、またね。次は皆でポムの実を収穫しようね」
クレアが突然、父親の手伝いを申し出たのは驚いた。
彼女の性格からして、アレンとエレナの関係にいい加減やきもきし、二人きりになれるよう、気を遣ってくれたんだろう。
エレナにとって、子供の頃から共に過ごしてきた幼馴染みのアレンの事は大好きだし、大切に思っている。
改めてはっきりと、アレンの事を異性として恋愛感情を抱いているのかと問われると、なんだか気恥ずかしい気がした。エレナにとってはアレンは、双子の兄妹のような存在である。
けれど、このまま恋人としておつきあいを始めても、別に構わないと思えるような相手だ。
そこから流れるようにアレンと結婚しても、気が合うだろう。優しくて思いやりのある、純朴で頼れるアレンとなら、楽しく穏やかで幸せな時間を一緒に過ごしていける筈だ。
アレンは、間違いなく良い伴侶になってくれ、共に幸せな家庭を築けるような相手だ。
ただ、彼との恋は少し刺激には欠けそうな気がする。
せっかく大人向け乙女ゲーム『ルーファスレイン』の世界に、転生出来たのだから、特別な使命を持った、格好いい攻略ヒーローと、現実では味わえないような、ロマンチックで刺激的な運命の恋を、経験してみたいと心の片隅で思ってしまう時もある。
「エレナ、どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
アレンが心配そうに覗き込んでくると、エレナはハッとして我に返り、取り繕うように笑って誤魔化した。そんな彼女を、アレンは無表情で静かに見下ろしていた。
✤✤✤✤
「わぁ! 見て、アレン。今年のイムムの実は立派に育ってるね」
「本当だ、赤くて美味しそうだ。イムムのジャムは、パンにつけても美味しいし、煮込み料理に使っても美味いから、楽しみだなぁ」
農地通りを抜け、森に入ってしばらくすると、赤い実をつけたイムムの木が見えてきた。この時期になると、ドルフラークの村人達がイムムの木に実る、林檎のような赤い実を収穫しに訪れる。イムムの実はそのまま食べても果汁たっぷりで美味しいが、煮込んでジャムにしたり、酸味のあるソースにして、肉料理に使ったりすると美味しい。
また、アップルパイのようにお菓子にする事も出来た。
エレナはイムムの実が大好物だったので、上機嫌で収穫していた。
「アレン、あっちの木の方が実が多いよ。もう少し奥の方に行く?」
「うん、あっちには休憩所があるし、一休みも出来そうだな。最近は、森に魔獣が出るから手前で収穫する人が多いんだよ。だから手前より、奥の方が豊作なんだ」
「えっ。魔獣……? だ、大丈夫かな。やっぱり手前で収穫した方が良いかなぁ」
改めて言われると、エレナは不安になってアレンを見上げる。魔獣襲撃イベントに出てくる魔獣なら、どんな種類なのか把握しているし、原則それでこの村の人達が死ぬ事はない。
だが、自由に行動できる範囲で遭遇する敵に負けた場合、エレナはどうなるか、予想もつかなかった。怖がる彼女に、アレンは安心させるようににっこりと微笑む。
「俺がいるから、大丈夫だよ。俺だって、孤高の竜騎士様ほどじゃないけど、それなりに強い。それに小屋で一休みしようって、エレナを誘おうと思ってたからさ」
「ふふ、頼りにしているね」
しばらく森の中を歩いて、イムムの実を収穫していると、叢くさむらから魔獣が唸り声を上げて飛び出してきた。
エレナは悲鳴を上げながら尻餅をつく。
エレナに襲い掛かってくる大型の魔獣めがけて、アレンが手斧で反撃した。初めて見る彼の戦いは、優しいアレンからは想像できないくらい手慣れており、あっという間に息の根を止める。
「エレナっ……怪我はないか?」
「あ、ありがとう。アレンって本当に強いんだね。あの、わ、私……腰が抜けちゃって」
心配して駆け寄ったアレンに抱き上げられると、エレナは感謝の言葉を述べる。ドルフラークの村では、村の周りに魔物や魔獣が出没する以上、全員がある程度それらを追い払ったり、反撃出来るように、子供の頃から訓練を受けるのだが、あくまで自衛するためだけの護身術の剣技だ。
アレンは、噂通り戦士として戦場に立ってもおかしくない位に強かった。
「俺は鍛えてるからね。エレナ、驚き過ぎて腰が抜けた? 小屋に戻って休んだ方がいいな。あそこは旅人の避難所としても使って貰っているし、何でも揃っているから」
アレンは、エレナを抱き上げたまま安心させるように微笑むと、一度通り過ぎた山小屋へ、引き返すように提案した。
「そうだね、ちょっと休憩してから帰ろうかな……また出たら怖いし」
森に建てられた小屋は、万が一遭難して、命からがら魔物や、魔獣に追われこの村に辿り着いた時でも、生活が出来るように、家具一式が揃えられ、保存食も用意されている。
ルーファスレインでは、魔獣の襲撃で家を失った村人が、ここを仮住まいにするという、特殊なイベントも用意されているので、エレナにとってはお馴染みの場所でもある。
(噂じゃ、あの小屋には時々村の男女が入り込んでデートしたり、エッチな密会場所として使われるらしいから、その辺りが大人向けの乙女ゲーム設定だよね)
二人が小屋の側を通った時、今日は誰も使用していない事を確認していたので、エレナは、アレンの言葉に甘える事にした。
「あの小屋って、アレンのお父さんが建てて村に提供したんでしょ? みんなのために無償で建てるだなんて、おじさん偉いなぁ」
「父さんは世話焼きだったからな。父さんが死んでから、ここは俺が管理してる。だから一応俺が、小屋の鍵も持っているんだよ。普段は開けっ放しなんだけど」
小屋につくと、アレンはベッドに彼女を座らせ、何故か鍵をかけた。ドルフラークでは、基本的に夜間以外は鍵をかけない。
アレンが、おもむろに上着を脱ぎ始めたので、エレナは慌てて視線を反らした。
「きゃっ……な、なんで脱ぐの!」
「いや、さっき魔獣と戦った時に少し爪で引っ掻かれたから、治療をしようかなと思って」
「えっ……大丈夫?」
アレンの言葉に、エレナはさっと顔色を変えた。薬草なら常時持ち歩いているので大丈夫だが、相手が大柄の魔獣となるとアレンの傷の深さが気になる。
「ああ。思ったより傷は浅いし、大丈夫だから心配しないで、エレナ。お願いがあるんだ。申し訳ないけど傷口に薬草を塗ってくれないか?」
「うん……わ、分かったわ」
アレンも当然薬草を持っているし、自分で塗れる場所に怪我をしていた。
彼が言う通り傷は深くはなく、かすった程度だが、魔獣がつけた傷跡だ。軽傷だと放置し、膿んでしまっては命取りになる。
彼は大丈夫と言っていたが、エレナに、傷の手当を頼んできたので、彼女は心配になってしまった。
(もしかして、本当は凄く痛くてやせ我慢しているの?)
アレンが上半身を脱ぐと、褐色の鍛えられた肉体が露になって、エレナは頬を染める。彼は、農夫というより戦場を駆け抜ける傭兵のようで、鍛えられた胸板は盛り上がり、腹筋は割れ、大きな斧を武器にする腕は、がっしりとして太い。
子供の頃とはくらべものにならない位に、アレンは『男』になっていた。
「き、傷に、菌が入らないように水で濡らして……、や、薬草を塗っていくね」
「ああ、ありがとう」
エレナは水で傷口の血を拭き取ると、薬草を塗る。背の低いエレナの頭は、ちょうどアレンの胸板辺りだ。
彼女は、イムムの実のように頬を染めながら、アレンに悟られないように、割れた腹筋に薬を塗り込んでいた。
この薬草の効能は凄いが、かなり染みる。
そんな薬草を塗り込まれても、アレンは、微動だにしなかった。エレナは薬草を塗り終えて、小屋に置いてあった包帯を、がっしりとした胴体に腕を回して、巻いていく。
「これでもう、大丈夫だよ」
「ありがとう、エレナ」
エレナが、包帯の上から優しく緩んでいないか指でなぞると、アレンが突然、彼女の指を握った。この小屋に入った時からなんとなく感じていたアレンの熱っぽさに、エレナは頬を染めて、おずおずと幼馴染みを見上げる。
「なに?」
「エレナ」
「あ、アレン?」
「エレナ。俺じゃだめなの?」
「な、なにを……?」
アレンの言わんとしている事は理解しているのだが、幼馴染みだからこそ大切な友人関係を壊したくない。一歩踏み出すのが、怖い気持ちもあって、エレナははぐらかしてしまう。
(アレンの事は好きだけど、失うのが怖い……)
彼女がはぐらかせば、はぐらかせるほどアレンに、寂しい顔をさせてしまうと分かっているのに。
その癖、アレンが他の女性と恋人同士になったらと考えると、気持ちが落ち着かなくなるのは何故だろうか。
「グウェイン様の事だよ。俺は竜騎士様みたいに、知的じゃないし、格好良くないかもしれないけど……。エレナをオーランド国で幸せに出来るのは俺しかいない。それに……案外、俺とも刺激的な毎日を送れると思うよ」
いつもなら、つれない幼馴染の態度に、しゅんと叱られた犬のような表情をするアレンだったが、エレナの頬を撫でながら熱っぽい瞳で告白した。
刺激的な毎日、という言葉にエレナは、自分の心をアレンに見透かされたような気がして、驚く。
どのみち、ドルフラークの村から出られない彼女を、この世界で幸せに出来るのは、幼馴染みで誠実なアレンしかいないだろう。
「エレナ、好きだ。俺のお嫁さんになってくれ」
「あ、アレン……お、お嫁さんに?」
恋人を飛び越して、妻になってくれという直球の告白に戸惑ったものの、エレナはとうとう頷いた。
(いい加減、失うのは怖いという気持を捨てなきゃ。アレンと一緒にいて楽しいし、私もアレンが好きだもの)
推しのグウェインに未練がないわけじゃないが、やはり自分を良く知る身近な人との方が幸せになれる。
幼馴染みから、夫婦になるのも漫画やドラマのようで、素敵じゃないかと思った。
「うん、いいよ。私もアレンの事が好き」
「良かった……。ははっ、ルート確定だ。これでようやく君も、正式なルーファスレインの一員さ」
「え……?」
生前に聞いた事のある単語に彼女は驚き、聞き返そうとすると、エレナの顎を掴んでアレンが優しくキスした。エレナの唇を舐め、隙間から舌がぬるっと挿入されると、やんわりと絡められる。
「んっ……んっ……はぁっ…………んぅ」
アレンに彼女がいた事など一度もない。
誰とも付き合った事がない、恐らく童貞だろうと思われる彼の舌遣いは、思いの外巧みで、焦る事もなくゆっくりと、エレナの舌を愛撫した。
角度を変えながら、舌を優雅に舐られると、エレナは腰から崩れ落ちそうになるほど感じて、抱きとめられた。
「んんっ……っ、ふは、はぁっ……んぁ……あ、アレン、さ、さっきの言葉って……っ、あっ……ひぁっ……、ま、待って……い、いきなりそんな、私……まだ心の準備が」
「俺は、充分過ぎるくらいこの日を何年も待ち続けていた。もう我慢出来ない」
屈み込んだアレンが、エレナの耳の付け根に口付けると苦しそうに囁いた。ゆっくりと首筋を舐められて、痕をつけるように吸い付かれると、エレナの体は敏感に反応した。
低く囁いたアレンは、素朴で陽気な少年だった頃の面影はなく、どこか狩人のような鋭さと、別人のような色気を感じる。
「ゃ……あっ……んっ……んん、や、ま、まだお昼間だよ、……誰か来ちゃう」
「大丈夫だよ。鍵は俺が持っているし、誰も入って来られないように、小屋は閉めておいたからさ」
「きゃっ……!」
アレンはにっこりと笑うと、エレナの腰を抱き上げ、寝室の方へと向かう。そして彼女をベッドに寝かせると、エレナの両手首を押さえ込んだ。
彼は頬を染め、潤んだ瞳で彼女を見つめると、再び深く口付けた。
エレナの口腔内を犯すようにそれは蠢き、互いの粘膜を擦っては睦み合う。
「エレナ、俺とするのは嫌かな?」
「んんっ……はっ、んぅ……そんな事ないけど……アレ、ンッ……んっ、なんかいつもと……んっ、違っ……んんっ、ひゃあっ……はぁっ……」
アレンの大きな手が、エレナの服越しに膨らむ乳房を揉んだ。彼に揉み込まれると、乳房の奥から、ジンジンと燻る炎のように快感が生まれる。
生前、エレナは大人向け乙女ゲーをしていたものの、男性経験はなかったので、自分の体がこんなに敏感な反応をする事に驚きつつも、甘い嬌声を上げる。
「ああ、エレナ……可愛いな。ようやく俺は君の事を手に入れたんだ。ずっと見ていたよ。どうやったら君が、ルーファスレインに……俺のもとに来られるのか、考えていた」
「どういう……、どうして……その、名前を知ってるの?」
「あは……どうしてかな?」
アレンは背筋が寒くなる位に、退廃的に笑った。
ルーファスレインという言葉は造語で、このゲームの作中に出てくるモブが知るような単語ではない。攻略対象のヒーロー達さえも、ヒロインと個別エンディングを迎えない限り、知りようのない言葉だった。
幻想世界ルーファスレイン。
それがこの作品の題名であり、プレイヤー達から呼ばれている永遠の都の名前だ。
アレンは、エレナの質問に答える事なく微笑むと、服の下にすっと熱い手を忍ばせる。
服を捲ると、エレナの手のひらから零れ落ちそうなほどの豊かな乳房を揉み、もう片方の胸に舌を這わせた。
触れるか否かの舌の愛撫に、エレナは背中を反らせて反応する。
「ひゃあっ……! はぁっ、あっ……あんっ、ふっ……あ、恥ずかしい、私っ……声、が……んっ、んぅっ……やっ……ぁっ……んん」
「君も初めてだもんね。乱暴にしないから安心してくれ、エレナ。君の質問の答えも後だ。今は、俺の事を沢山感じてよ」
柔らかく、甘い乳房の輪郭をアレンの舌でなぞられ、乳頭を舌先で突かれると、我慢できず声が漏れる。どっしりとした手のひらで、もっちりとした乳房が優しく包まれた。
脇からマッサージするように触れられると、熱が全身に広がり、弱い電流が走るのを感じた。
程よく強い力加減で揉まれると呼吸が荒くなりほど、気持ちがいい。
「はっ……ぁっ……やぁっ……あ、アレンっ……そ、そこはっ……は、恥ずかしい……、ひっ……んっ、んぅ……」
「大丈夫だよ、怖がらないでくれ。この十数年間、どんな時もエレナの側にいて、大切にしてきただろう?」
アレンの手が、エレナの内股を割ると、太腿の付け根まで撫でた。そして飢えたように下着の中に手を入れ、人形のように形の良い秘部に、しっとりと指を這わす。
閉じた亀裂をなぞる無骨な指に、エレナの吐息は段々と上がっていき、その瞳に涙が滲む。思い返せば、エレナが男の子に苛められた時、どこからともなくアレンが駆け付け、守ってくれていた。
仕事で大失敗して、泣いてしまった時も、体調を崩した時も、飼っていたペットが亡くなった時も、アレンは自分の側にいて、寄り添ってくれたのだ。
許嫁とまではいかないが、そんな彼等をずっと見てきた互いの両親達は、いずれ大きくなったら、二人を結婚させようと笑いながら話していた。
「あっ……ぁっ……ああっ……んっ、んぅ……はっ、あぅっ……ひっ、あっ、だ、めっ……んぁっ……あぁっ……そこっ」
アレンの指が、意地悪するように円を描いて秘部を愛撫する。そしてマッサージするように上下に擦り、埋もれた花芽を根元から掘り起こすように指で擦った。
下着の中で、ちゅくちゅくと濡れた音が響いてエレナは唇を噛む。
恥ずかしくなって、エレナがアレンの手を制止しようとしたが、華奢な彼女が制止する事など出来ず、さらに意地悪に表面を指で弄られ、花弁を弄ばれると、お尻の穴まで溢れた蜜が零れ落ちた。
「あっ、ああっ! いやぁ……ん、あっ、だめっ、待って……はっ、んんっ……こ、こんなのっ……んんぅ……ゃっ……」
「でも、エレナ……濡れてる。やっぱり君は体も心も素直なんだよ。可愛いな……俺の指で感じるエレナ、大好きだよ」
彼はそう言って、感動したように微笑みかけると、エレナの下着をゆっくりと脱がす。恥毛のない陶器人形のような慎ましい花弁は、先ほどの愛撫でぐっしょり?と濡れて糸を引いていた。
彼女の華奢な両脚を肩にかけると、アレンは、堪らず花芽に向かって吸い付く。
エレナは、実際に異性との経験がなくとも、この乙女ゲームで覚えた前戯の知識はあるので、これがどういう行為なのか、理解は出来る。花弁の蜜を喜んで舐める犬のように、興奮してアレンは舌を這わせていた。
「あぁっ……! んんっ、そこ、はぁぁっ、汚っ……あ、アレン、だめ、あっあっあっ……んんっ……はっ……はぁっ…………ぁっ…………やぁっ、んぅぅっ……! あっあっあっ、んんっ」
「あは……汚くなんてない、エレナ。ピンク色でヒクヒクしていて綺麗だ。ちゃんと濡らさないと、初めては痛いよ? それに……、気持ち良さそうな顔をして、ダラダラ愛液を垂らしているんだから、説得力なんてないな」
アレンはエレナの股の間で笑うと、わざと音を立てながら、愛液を吸い上げた。まるで飢えた犬のように、舌で縦横無尽じゅうおうむじんに舐められると、エレナは彼の頭を抑えながら、背中を反らして快感に震えてしまう。
重なり合う花弁の隅々までアレンは丁寧に舐め、小さく隠れた陰核を舌で掘り起こすと、それを舌に絡ませる。エレナは執拗に、小さく勃起した陰核を意地悪に扱かれ、吸い上げられていた。
彼女の意識は大きな波に飲まれて頭が真っ白になる。
激しく何度もそこを嬲られ、いたぶられ絶頂を繰り返し、ぐったりとエレナは体を横たえた。
「~~~~ッッ! はっ……はぁ、今のなに……これって……いやぁ、と、止まらないっ、あっ、あんっ……あぁっ、ひっ、んんぅ」
「ふふ、あんまり気持ち良くてイッたんだよ。エレナのイク時の顔、本当に可愛いかったなぁ! 想像以上だった……処女なのにこんなに感じやすいだなんて、俺は幸せだ」
アレンは、満足したように恍惚とした笑みを浮かべると、エレナのヒクヒクと震える花弁の入口に指を挿入する。無骨なアレンの指が、男を知らないエレナの蜜を纏った媚肉を割ると、痛みよりも、挿入された快感の方が上回ってしまった。
「あっ……あぁっ……やぁん! んっ、あ、アレンっ……はぁっ、あっあっいや、恥ずかしい……あ、あっ……ん、もう、きもち……いい、の、やだぁ……あ~~~~ッッッ」
「エレナ、痛くないみたいで良かった。ほら、膣内なかに指が入ると、犯されているみたいだろ?」
アレンの目が鋭く光って、エレナは一瞬心臓が飛び跳ねた。どうして彼に自分の癖を勘付かれてしまったのだろう。
もちろん、誰彼構わずという事ではなく、自分好みのヒーローに、少し強引に迫られるのが、エレナは好きだった。
寡黙なグウェインも、ルートによってはヒロインに対して、饒舌に嗜虐的に攻めるシーンがあり、エレナのようなM属性の人間にとっては、それが魅力的に感じる一つでもある。
アレンは、侵入した指を陰核の裏にある快楽のスポットに向け、指の腹でピタピタと押し上げた。敏感な花芽を吸い上げ、舌で転がし、そこに歯を立てるとエレナは、シーツを握りしめ咽び泣いた。
「ひっ、ああっ……! やぁっ……ぁっ、あっあっあっ、ああんっ、はっ、きもちっ……んんっ、だめ、同時にっ……♡♡ あれんっ……ゃっゃっ……あっ、くるっ、~~~~~ッッッ」
ぬちゅ、ぬちゅと音を立てながら膣内の指を動かされた。執拗に固く勃起した陰核を嬲られると、次々に愛液が溢れ、シーツに染みを作り、再び絶頂に達してしまう。
なんだか、いつもと雰囲気の違う刺激的なアレンは、エレナの陰部をペロリと舐めると、さらに二本目の指を挿入する。
「~~~~ッッッ!」
「俺の指、太いだろ。これで少し慣らしておこうね。あは、エレナ……こんなに蜜を垂らしてギチギチに指に食い付いてきてる。こんなに感じやすいのなら、他の男にも目をつけられないか心配だなぁ。なぁ、エレナ。グウェインって女ったらしだよ、知ってた?」
アレンは、エレナの花芽に歯を立てる。
二本の指を出し入れする速度を上げると、シーツを握りしめ、ガクガクと体を震わせて喘いだ。あまりにも気持ち良くて、言われている言葉が頭に入らない。
けれど、設定上ではグウェインは寡黙で、女気がなく、どちらかというと異性が苦手なのに、女たらしだなんてイベントは、存在していなかったと記憶しているのだが。
「グウェっ……イン様が、女、たらしっ……? あっ、あぁっ、またっ……はぁっ、はぁっ、きもちいいっ、きちゃうっ、あっあっあんんっ、舐めたらっ、あっあっ、んん~~~~ッッッ!」
「またイっちゃったね。そろそろ大丈夫かな。グウェインの名前なんてエレナの口から出たら、俺もう限界だよ」
アレンのズボンから取り出されたそれに、エレナは赤面する。ゲームの世界のようにモザイクが入るわけでもなく、彼の肉体と同じく立派な一物は天に向けて、反り返っていた。
エレナの腰を引き寄せ、両足首を持つ。
彼女の蜜を纏うように、アレンは自分の竿を陰部に擦りつけると、一気に奥まで挿入した。
「ひっ…………あぁぁ!!」
さすがに、この時ばかりはエレナも体を切り裂くような痛みを感じ、破瓜の血を垂らした。彼女の膣内の心地良さに、切なく呼吸を乱すアレンは、エレナの体が馴染むまで、じっと動かずに我慢をする。
額にキスされ、ジンジンとした痛みが緩和される頃になると、アレンはゆっくりと腰を動かし、エレナを突き上げた。
「んぁっ……! はっ、はぁっ……んぁっ、あっあっ、やんぁぁっ……はっ、はっ、あっ……あふっ、んんっ……はぁっ……あん」
「はぁ、やった……。これでっ……エレナの処女を俺の手で奪えたんだ。俺もエレナに童貞を捧げられたっ……はぁ、気持ちいい、最高に気持ちいいっ……はぁっ、なんて幸せなんだろう」
アレンは恍惚と呟くと、耽けるように膣内に陰茎を出入りさせる。エレナは口端から銀糸を垂らし、揺さぶられながら感じていた。
ちゅぽ、ちゅぽ、と恥ずかしい音が響いて、エレナは身悶える。
「エレナは、ちょっとっ……はぁ、鈍感なんだよ。……はぁっ、こんなに可愛いのに自覚がないっ……村の未婚の男達はっ……エレナを狙ってたんだよ。まぁ、俺が全員初期化したけど。あの、グウェインだってっ……エレナと寝たがってたんだ」
アレンは、エレナの両足首を持ちながら、どっしりとした腰を動かした。大きな体に突き上げられると、エレナの体は揺さぶられる。ゲームの世界のお陰なのか、処女喪失の痛みはすぐに消え去り、現実では得られないような強い快感が、膣内から迫り上がってきた。
あまりの気持ち良さに、エレナとアレンの結合部は泡立ち、蜜が溢れ返っている。
「ぁっ……! やあっ、あっあっあっ……! やぁっ……はっ、ああっ、んんっ……アレン、ふっ、んんっ、ひゃあっ……それ、だめぇ、きもちいいっ、んぅっ、はっ、はーー、グウェイン様が、どうし、んぁぁっ♡♡」
「勘違いするな。グウェインは君の事なんて好きじゃない」
アレンは、恐ろしく冷たい目でエレナを見下ろすと、花芽をつねるとエレナの陰核の裏を擦って、さらに奥へ突き上げる。
「あいつは、自分に貢いでくれる女が好きなだけだ。俺達とは違うんだよ」
頭の中で火花が散り、背中を反らせると悶絶しながらエレナは絶頂に達した。彼女の締め付けに、アレンは思わず自分の欲望を吐き出してしまったが、抜かずに挿入したまま、白濁液をかき混ぜ、種付けするようにぐっと伸し掛かった。
「はぁっ……凄く気持ちいい、エレナ。俺の事好きだよね……? はぁっ……ちゃんと言ってくれなきゃ分からない……不安になるよ。はぁっ、今すぐにでも孕ませたいくらい大好きだ……可愛いなぁ、はっ、はぁっ……俺の精子でエレナの子宮を一杯にしたい」
アレンは鍛えられた肉体と、天性の素質なのか、エレナの膣内を擦り、どちゅ、どちゅと突き上げていく。
「ひっ、ああっ♡♡ あ、アレン、ちゃんんと、しゅきっ、しゅきだからっ、あっ、あっあっんぁぁ、そこ、グリグリやめて、きもちいいっんんんん♡♡ んん~~~~ッッッ♡」
アレンが、上から子宮へと打ち付けるように陰茎を突き立て、さらに腰をくねらせると、結合部から淫らな愛液か飛び散った。純朴で誠実なアレンからは想像出来ないくらい、過激なセックスだった。
陰茎が膣内で擦れる度に、エレナの未熟な膣内が、蠕動して絡みつく。アレンが奥を擦る度に、初めて感じる強烈な快楽にエレナの思考が、ドロドロに形もなく蕩けていった。
彼女を追い詰めるように、快楽のツボが集中した場所を、幾度も打ち付け擦られると、連続イキが襲い掛かってきた。
「~~~~ッッッ♡♡♡」
「はぁっ……! またっ、射精るっ」
アレンが呻いた瞬間、エレナの膣内に欲望を吐き出した。ゆっくりと彼が陰茎を抜くと白濁した液体が、花弁からドロリと流れ落ちる。
恍惚としてベッドに寝転がるエレナを優しく抱擁し、アレンは静かに囁きかけた。
「ずっと君の事を見ていたよ。君がこのルーファスレインで、グウェインを選ぶ度に苦々しく思っていた。君達は知らないだろうけど、俺達はこちら側から見ているんだよ。そして、君達と同じように俺達も恋に落ちる。彼等は運命の相手が、この世界に降り立つ事を指を咥えて待っているんだ。俺は彼等と違う。運命を引き寄せるために、実行出来る力があるだけだ」
エレナの頭の中は、霧が掛かったようにぼんやりとしている。このゲームをしていた事も、転生した事も覚えているのに、その他の事はぼんやりとしていた。
「あのヒロインと、悪役令嬢の子はこの世界への貢献度が高いからね。見返りがあってもいいだろ? ところで君は前世の姿も、名前も覚えているかな? 本当に幻想世界ルーファスレインに、エレナなんてモブキャラはいた?」
ドルフラークに、クレアが住んでいた事は知っているのに『エレナ』の事が思い出せない。
あの日、いつも通る大きな横断歩道を渡っていると、青に変わったばかりの信号が不自然に点滅し、何故かすぐに赤になってしまった。そして、安全確認を怠ったトラックが、彼女に向かって突っ込んできた。
あの時、ビルの最上階に設置された幾つもの広告用の液晶画面。
そこにはルーファスレインのプレイ動画が映っていた。その中で、彼女の知らないキャラがこちらを見て微笑んでいた。
(あれはアレンだったの……?)
これは新しいCMで、追加キャラがきたのか、続編が出たのだろうかと思って、気持ちが高ぶってしまったのもいけなかった。
けれど、今はもうどうでも良い。
アレンの腕の中は心地良く、安心出来るのだから。
「この架空幻想世界で、俺と永遠に愛し合おうね、絵麗奈エレナ」
✤✤✤
「ま、待って……アレン。ここでするの? 誰かっ……はぁ、来たら……み、見られちゃう」
「でも、エレナは好きだろ? 晴れた森の中で、俺に挿れられるの」
エレナは、恥ずかしそうにしながら乳房を隠した。アレンは優しく笑いながら、スカートを捲る。こんなところをクレアや、村の人達に見られたら『新婚さんだからお盛んなのね』と言われかねないのに、彼は堂々としている。
しかも、アレンと共に仕事をする際は下着を履かないようにと、恥ずかしい言いつけまでされていた。
大きな木の幹に両手をついたエレナは、アレンに片方の乳房を揉まれながら、肩越しに振り返ると、弱々しく抗議した。
「だ、だめぇ……魔獣がっ、現れたら」
「安心して、次のアップデートはまだ先みたいだし、俺がだいぶこの辺りの魔獣を狩っておいたから、もう出ないよ。それにほら、ちゃんとここも玩具を咥えて、濡れているじゃないか」
エレナの可愛らしい薄桃色の陰部に、魔力の振動で動く、親指くらいの大きさの魔石が挿入され、ブゥンブゥンと重低音を響かせていた。頬を染め、太腿にまで蜜を垂らしながらエレナは感じて爪先立ちになると、嬌声を押し殺す。
「はぁっ……んん、抜いっ……てぇっ、あっ……あんっ……♡ アレン、はぁっ……♡ いじわる、しないでっ♡」
「さっき、グウェインに挨拶しているエレナ可愛かったなぁ。顔を赤らめてもじもじして……まさか、玩具を咥えてるなんてあいつは知らないだろうし。いや、気付いてたのかもな。あいつ、俺が嫉妬深いのは知ってるから」
「ひゃぁっ……ん♡♡♡」
「そうだ……っ! 俺達がしてるところ、ヒロインとヒーローが覗けるイベントも入るんだって」
アレンはそう言うと、玩具を持って膣内をかき混ぜる。そして、もう一度押し込むと魔力で振動する玩具を残したまま、自分の陰茎を挿入した。
激しいピストン運動はせず、軽く小突くように動かし、お互いを刺激する振動を楽しんだ。魔石をなぞるように腰をグラインドさせて動かし、押し付ける。
「あっ、ああっ♡♡ んんっ、やぁっ♡♡あっ、あっあっ♡ おくでっ、響くっ、あっぁ、あれんっ♡♡それっ、きもちいいっ、んぁ♡♡ ~~~~~ッッッ♡♡♡」
「はぁっ……奥で響くから気持ちいいだろ、エレナ。んっ……君の望む事ならなんでも俺が叶えてあげるから……ねっ……!」
アレンが花芽を撫で回し、奥を刺激すると、彼女ははしたなく木の幹に蜜を飛び散らせる。
絶頂に達して、ガクガクと震えるエレナの膣内から濡れた魔石を取り出すと、今度は花芽にぴったりと魔力で固定した。
再びアレンは、自分の一物を挿入すると、彼女が一番感じる奥を突き上げた。木の幹に縋りながら、アレンにパンパンと激しく突き上げられると、頭の中で火花が散るような快感に飲み込まれ、腰が抜けそうになる。
エレナはもう、何も考えられなかった。
擦れ合う、粘膜の淫靡な音が森に響き、二重に与えられる淫らな攻めに、エレナの膣内は、アレンの全てを絞り取るように蠕動して、限界を迎えようとしていた。
「いっっ……はぁっ、イッてるっ、イッてるからぁっ……♡♡♡ アレン大好きっ、あぁあぁ~~~~ッッッ♡♡♡」
「はぁ、大好きだよエレナっ……これからも刺激的な毎日を過ごそうね」
ぐっと、奥に突き上げられた瞬間に熱いものが体内で弾けるのが感じた。
アレンがこのルーファスレインでどのような存在なのかは分からない。世界の事も、グウェインや他のヒーローの事、転生してきた現実世界のヒロイン達の事情までも、まるで見てきたかのように彼は良く知っている。
それからエレナは、ヒーロー達や他のモブキャラが彼を訪ねて話し込んでいる姿も、時々見かけるようになった。
彼は、この世界で普通にモブとして生活し、愛する妻のエレナと共に幸せに生きていくだけだ。
二人の薬指に、指輪が光っていた。
了
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