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オリーヴィアの涙②
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アルノーはどうして私の首元に『証』を付けたのでしょう。昔から彼は必要なこと以外は、自分の気持ちを表に出す事はありません。
熱にうなされたようなあの瞳は、私の知るどのアルノーでも無く、胸が締め付けられるように切ない感情を宿していたように思えます。
「っ………はぁっ……はぁっ……んっ……あっ」
外気にさらされ、体温が奪われていくはずの私の体を大きなアルノーの手のひらが太腿から腰、そして脇腹を通って乳房へとゆっくり駆け上がっていくと、呼吸が乱れて上ずった甘い声を上げてしまいました。
唇が鎖骨から胸元に落ちると、私は黒猫の体毛のように柔らかいアルノーの黒髪に指先を絡めて抱きしめます。
肌に落ちる唇と、柔らかな舌先が冷たい肌を伝う度に愛しさと熱が帯びていくようで……私の意識は雲の上のよう。
アルノーの指先はいつもとは異なり、私に触れるのは初めてかのように、まるで壊れ物を扱うような丁寧な手付きで、胸の先に触れ、そして舌先で愛撫をしました。
「んっ……はぁっ、ぁっ、アルノー……! はぁ、はぁっ……んっ」
「……お嬢様……ここにいる使用人は私だけです。遠慮なさらずに」
恥じらう私にアルノーは素直に快楽を享受するように促しました。私は女神エルザと夫ギルベルトを裏切り、もう貞淑な妻では無いのです。
獣の瞳を光らせるアルノーに頷きました。
流れ落ちる汗を追うように、アルノーの柔らかな唇が口付けると、私の臀部を優しく撫でながら体を開きました。
「もう、濡れてらっしゃいますね、オリーヴィア様……私をそんなに求めていらっしゃるのですか」
「恥ずかしいわ、アルノー……ずっと貴方に触れてほしかったの」
不浄の場所に触れられる前から、私はそこをはしたなく濡らしてアルノーを待ち侘びていました。
二人だけの秘密は、この城に来てからは行われる事も無く、最愛の人と仮初でも結ばれる幸せに体が自然と反応しているようでした。アルノーは憂いを秘めた瞳で、私を見ると花弁に舌先を這わせました。
濡れた亀裂を丁寧にたどり、火照る体を鎮めるようにアルノーの舌先は私の華を荒らしていきます。
「はぁっ……あっあっ……はぁぁ、んっ……気持ちいい……アルノー……」
「はぁっ……んっ……お嬢様」
もっと乱暴にしても良いのにアルノーは私の秘部を優しく舐め、丁寧に扱います。
一番感じる花芯と呼ばれる場所を舌で愛撫され、指先が初めて体の中に入ると緊張したように体を固くさせてしまいました。
快楽と圧迫感で、腰を浮かせ私は恥ずかしい声を出して腰をくねらせていました。
アルノーの姿が見えないのが不安で、シーツを強く握りしめると、大きな手のひらが私の心を察するように包み込んでくれます。
「お嬢様、痛いようでしたら仰って下さい」
「はぁっ……んっ、いいえ……大丈夫。んっ、あっ……はぁっ、はぁっ……口付けをしてアルノー」
「かしこまりました……んっ……はぁ……」
かすかにアルノーは笑うと、私の中で指を動かし感じた事の無い心地よい場所に触れ、手のひらで花芯を押し付けるように愛撫をされて……。
私の思考は一瞬にして溶けてしまい、真っ白になるとアルノーに抱きつくようにして体を震わせました。
快感が頂点に達したのでしょうか、シーツが塗れるほど溢れた愛液に恥じながら、アルノーが私の体に伸し掛かってくるのを感じました。
今から純潔を失う、その予感がしたのです。
「アルノー………っ!」
「痛い……ですか?」
「はぁ……っ、平気よ」
下腹部に焼けるような痛みを感じましたが、私は嘘を付きました。
アルノーと体だけでも結ばれたいとずっと以前から願っていたのだから。それに、彼の受けた傷に比べれば純潔を失う痛みなんて……。
けれど、幼い頃から私を知るアルノーに小手先の嘘など通用するはずもありません。
私の体に馴染むまで動きを止め、やがて黒豹のようなしなやかな肢体をくねらせて動き始めました。
「はぁっ……んっ……っ、はぁっ……っ……あんん」
「はっ……っ……はぁっ……」
暖炉の火に彩られたアルノーの胸に流れ落ちる汗は朝露のように美しくて、人々が忌み嫌う獣人は私には完璧な存在に思えました。
揺れながら憂いを秘めた瞳を見せるアルノーが額を合わせると私の頬を撫でます。
どうやら私は、知らない間に涙を流していたようです。
身を引き裂くような痛みを感じて泣いているわけでは無く、刹那的なこの幸せに感情が溢れてしまったのです。
呼吸を乱す、切ないアルノーが愛おしくて、痛みは徐々に鈍痛へと変わり、混じり合う喜びで蕩けてしまいそうです。
私の視界は愛しさと快楽で歪んでいきました。
「はっ……んんっ、あっあっ……はぁっ……はぁ……ぁん」
「はっ、はぁっ……はぁっ……少し動きを……早めますよ」
快感で私を壊さないように、我慢をしていたアルノーはそう言うと体を擦りつけるようにして動きを早めていきました。
喉の奥から獣人特有の唸り声が聞こえ、その瞳は猫のように瞳孔が細くなっていきます。
私と同じようにアルノーも、快感を感じてくれているのでしょうか。
「はぁっ……はぁぁんっ、アルノー……愛してる」
「っっ……オリーヴィア」
驚いたようにアルノーが目を見開いた瞬間に果てるように倒れ込んでくると、遅れて私も弓なりに背中をそらして快楽に飲み込まれました。
汗ばんだ彼の大きな背中に腕を回し互いに呼吸が楽になるまで、抱きしめ合っていました。
揺らめく暖炉の火を眺めながら、この夜が永遠になって、私たちを閉じ込めてくれればいいのにと……願わずにはいられませんでした。
✤✤✤
ギルベルト様が、必要以上に私や使用人がこの離れに近づく事を禁じられていたのをいい事に、私とアルノーはもう一度、どちらともなく愛し合ってしまいました。
ここには近付かないようにきつく申し付ける理由は、結婚前から関係のある愛人を時々呼び寄せ、しばらく滞在させていることが原因だと、メイドの噂話を聞いて存じていました。
ベッドに寝そべり、目を閉じて眠るアルノーは私と不適切な関係を結んでもその高貴さは失われません。
彼はヘイミル王の忘れ形見、獣人の王となるべきはずだった存在なのですから。
私はベッドの上に座りながら、柔らかな彼の黒髪に触れました。
私の純潔を奪ったのは、彼が考えた復讐のシナリオの一部だったとしても、私の決意は揺るぎないもの。
「アルノー、貴方が望むなら私は」
この人が望むならば、たとえ私の命が奪われても良いのです。
けれどその前にやるべきことがあります。
私はアルフレッド・シュタウフェンベルクの娘。生まれながらにして呪われた血を引くのだから、きっと……悪女にだってなれる事でしょう。
これは両家が犯した許されざる罪。
アルノーがその手を血で染める必要なんて無いのです。
「オリーヴィア様、泣いているのですか?」
「……っ、アルノー……違うわ」
「体が冷えますよ……こちらに」
アルノーが強引に私の体を引き寄せると背後から抱きしめてくれました。獣人の体温は人間よりも高く、冷え始めた私の体を温めてくれます。
その腕に甘えながら、私は視界が揺れるのを感じました。
――――どうか、優しくしないでアルノー。
優しい腕に包まれると、わずかな希望を抱いて、心に芽生えた恐ろしい決心が揺らぐのだから。
もし、貴方が私をアルフレッド・シュタウフェンベルクの娘ではなく、リーデンブルクに嫁いだ復讐の道具ではなく、私という存在を愛してくれるなら、他の未来があるのでしょうか。
熱にうなされたようなあの瞳は、私の知るどのアルノーでも無く、胸が締め付けられるように切ない感情を宿していたように思えます。
「っ………はぁっ……はぁっ……んっ……あっ」
外気にさらされ、体温が奪われていくはずの私の体を大きなアルノーの手のひらが太腿から腰、そして脇腹を通って乳房へとゆっくり駆け上がっていくと、呼吸が乱れて上ずった甘い声を上げてしまいました。
唇が鎖骨から胸元に落ちると、私は黒猫の体毛のように柔らかいアルノーの黒髪に指先を絡めて抱きしめます。
肌に落ちる唇と、柔らかな舌先が冷たい肌を伝う度に愛しさと熱が帯びていくようで……私の意識は雲の上のよう。
アルノーの指先はいつもとは異なり、私に触れるのは初めてかのように、まるで壊れ物を扱うような丁寧な手付きで、胸の先に触れ、そして舌先で愛撫をしました。
「んっ……はぁっ、ぁっ、アルノー……! はぁ、はぁっ……んっ」
「……お嬢様……ここにいる使用人は私だけです。遠慮なさらずに」
恥じらう私にアルノーは素直に快楽を享受するように促しました。私は女神エルザと夫ギルベルトを裏切り、もう貞淑な妻では無いのです。
獣の瞳を光らせるアルノーに頷きました。
流れ落ちる汗を追うように、アルノーの柔らかな唇が口付けると、私の臀部を優しく撫でながら体を開きました。
「もう、濡れてらっしゃいますね、オリーヴィア様……私をそんなに求めていらっしゃるのですか」
「恥ずかしいわ、アルノー……ずっと貴方に触れてほしかったの」
不浄の場所に触れられる前から、私はそこをはしたなく濡らしてアルノーを待ち侘びていました。
二人だけの秘密は、この城に来てからは行われる事も無く、最愛の人と仮初でも結ばれる幸せに体が自然と反応しているようでした。アルノーは憂いを秘めた瞳で、私を見ると花弁に舌先を這わせました。
濡れた亀裂を丁寧にたどり、火照る体を鎮めるようにアルノーの舌先は私の華を荒らしていきます。
「はぁっ……あっあっ……はぁぁ、んっ……気持ちいい……アルノー……」
「はぁっ……んっ……お嬢様」
もっと乱暴にしても良いのにアルノーは私の秘部を優しく舐め、丁寧に扱います。
一番感じる花芯と呼ばれる場所を舌で愛撫され、指先が初めて体の中に入ると緊張したように体を固くさせてしまいました。
快楽と圧迫感で、腰を浮かせ私は恥ずかしい声を出して腰をくねらせていました。
アルノーの姿が見えないのが不安で、シーツを強く握りしめると、大きな手のひらが私の心を察するように包み込んでくれます。
「お嬢様、痛いようでしたら仰って下さい」
「はぁっ……んっ、いいえ……大丈夫。んっ、あっ……はぁっ、はぁっ……口付けをしてアルノー」
「かしこまりました……んっ……はぁ……」
かすかにアルノーは笑うと、私の中で指を動かし感じた事の無い心地よい場所に触れ、手のひらで花芯を押し付けるように愛撫をされて……。
私の思考は一瞬にして溶けてしまい、真っ白になるとアルノーに抱きつくようにして体を震わせました。
快感が頂点に達したのでしょうか、シーツが塗れるほど溢れた愛液に恥じながら、アルノーが私の体に伸し掛かってくるのを感じました。
今から純潔を失う、その予感がしたのです。
「アルノー………っ!」
「痛い……ですか?」
「はぁ……っ、平気よ」
下腹部に焼けるような痛みを感じましたが、私は嘘を付きました。
アルノーと体だけでも結ばれたいとずっと以前から願っていたのだから。それに、彼の受けた傷に比べれば純潔を失う痛みなんて……。
けれど、幼い頃から私を知るアルノーに小手先の嘘など通用するはずもありません。
私の体に馴染むまで動きを止め、やがて黒豹のようなしなやかな肢体をくねらせて動き始めました。
「はぁっ……んっ……っ、はぁっ……っ……あんん」
「はっ……っ……はぁっ……」
暖炉の火に彩られたアルノーの胸に流れ落ちる汗は朝露のように美しくて、人々が忌み嫌う獣人は私には完璧な存在に思えました。
揺れながら憂いを秘めた瞳を見せるアルノーが額を合わせると私の頬を撫でます。
どうやら私は、知らない間に涙を流していたようです。
身を引き裂くような痛みを感じて泣いているわけでは無く、刹那的なこの幸せに感情が溢れてしまったのです。
呼吸を乱す、切ないアルノーが愛おしくて、痛みは徐々に鈍痛へと変わり、混じり合う喜びで蕩けてしまいそうです。
私の視界は愛しさと快楽で歪んでいきました。
「はっ……んんっ、あっあっ……はぁっ……はぁ……ぁん」
「はっ、はぁっ……はぁっ……少し動きを……早めますよ」
快感で私を壊さないように、我慢をしていたアルノーはそう言うと体を擦りつけるようにして動きを早めていきました。
喉の奥から獣人特有の唸り声が聞こえ、その瞳は猫のように瞳孔が細くなっていきます。
私と同じようにアルノーも、快感を感じてくれているのでしょうか。
「はぁっ……はぁぁんっ、アルノー……愛してる」
「っっ……オリーヴィア」
驚いたようにアルノーが目を見開いた瞬間に果てるように倒れ込んでくると、遅れて私も弓なりに背中をそらして快楽に飲み込まれました。
汗ばんだ彼の大きな背中に腕を回し互いに呼吸が楽になるまで、抱きしめ合っていました。
揺らめく暖炉の火を眺めながら、この夜が永遠になって、私たちを閉じ込めてくれればいいのにと……願わずにはいられませんでした。
✤✤✤
ギルベルト様が、必要以上に私や使用人がこの離れに近づく事を禁じられていたのをいい事に、私とアルノーはもう一度、どちらともなく愛し合ってしまいました。
ここには近付かないようにきつく申し付ける理由は、結婚前から関係のある愛人を時々呼び寄せ、しばらく滞在させていることが原因だと、メイドの噂話を聞いて存じていました。
ベッドに寝そべり、目を閉じて眠るアルノーは私と不適切な関係を結んでもその高貴さは失われません。
彼はヘイミル王の忘れ形見、獣人の王となるべきはずだった存在なのですから。
私はベッドの上に座りながら、柔らかな彼の黒髪に触れました。
私の純潔を奪ったのは、彼が考えた復讐のシナリオの一部だったとしても、私の決意は揺るぎないもの。
「アルノー、貴方が望むなら私は」
この人が望むならば、たとえ私の命が奪われても良いのです。
けれどその前にやるべきことがあります。
私はアルフレッド・シュタウフェンベルクの娘。生まれながらにして呪われた血を引くのだから、きっと……悪女にだってなれる事でしょう。
これは両家が犯した許されざる罪。
アルノーがその手を血で染める必要なんて無いのです。
「オリーヴィア様、泣いているのですか?」
「……っ、アルノー……違うわ」
「体が冷えますよ……こちらに」
アルノーが強引に私の体を引き寄せると背後から抱きしめてくれました。獣人の体温は人間よりも高く、冷え始めた私の体を温めてくれます。
その腕に甘えながら、私は視界が揺れるのを感じました。
――――どうか、優しくしないでアルノー。
優しい腕に包まれると、わずかな希望を抱いて、心に芽生えた恐ろしい決心が揺らぐのだから。
もし、貴方が私をアルフレッド・シュタウフェンベルクの娘ではなく、リーデンブルクに嫁いだ復讐の道具ではなく、私という存在を愛してくれるなら、他の未来があるのでしょうか。
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