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十四話 十三夜の下で②(※R18性描写有り)

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「大丈夫だ、美雨。ここは私を受け入れる大事な女陰ほとであり、貴女の一部だから乱暴にはしないよ」

 悪樓の落ち着いた低い声は、美雨の性に対する恐怖感や、不安を優しく拭ってくれるような気さえする。悪樓の声を耳元で聞くと蕩けそうなほど感情が揺さぶられて、自分でも戸惑ってしまうくらいだ。
 月夜に曝け出した美雨の秘部は、愛液に濡れてきらきらと光っている。冷たくて長い悪樓の指が、濡れた陰裂を辿ってゆるゆると膣口に挿入された。美雨は異物感を感じたものの、鋭い痛みが走ることはなかった。

「あっ……んっ……悪樓さっ……ん、こ、わい」
「初いな。貴女は男を知らぬから、余計に恐ろしく感じるのだろう。美雨、貴女は生涯私の嫁御寮だ。ここは私しか触れぬ場所だから、傷付けるようなことはしないので安心して欲しい」

 その囁きは、美雨の緊張を解した。
 入り口から慣らすように浅い挿入を繰り返して、左手で無垢な亀裂に芽吹く肉芽を指の腹で撫でられると、じわじわとした快楽を感じ、腟内なかが潤む。膣の奥から巻き起こってくる、擽ったくて、気持ちいい奇妙な感覚に襲われて美雨の吐息が乱れた。
 挿入の痛みを紛らわせるために触れられた、花芯クリトリスに走る強烈な、快楽に美雨はあられもない声を上げる。

「んっ、はぁっ、あっ、あぁっ……はぁっ、あくるさっ、んんっ、そこだめ、だめ、はぁっ……んっ、んんっ、そこ、感じちゃう、はずかしい」
「美雨は本当に花芯さねが弱いな。ここを数回擦っただけで、腟内なかに挿れた指が貴女の蜜で、濡れそぼる。ほら、可愛らしい花の芽を、擦ってやろう」

 ぱっくり開いた秘部の上部に、固く勃起した花芯を二本の指で捏ね回し、優しく根元から上まで擦ると、美雨の瞳から涙が飛び散り、呼吸が止まった。突然、なんの前触れもなく瞬く間に絶頂に達してしまい、恥ずかしくなって思わず美雨は、両手で顔を覆う。
 誰かに体をコントロールされて、自分の意志に反し頭が真っ白になり『絶頂』に達してしまうなんて、何度経験しても慣れない。それなのに美雨は、背中がぞくぞくと泡立つような喜びを感じ、睫毛を震わせた。

「あ……悪樓さん、私」
「ふふ、気をやってしまったのだろう? 構わぬ……ほら、同時に触れてやろう。段々と入り口が柔らかくなってきたな、嫁御寮」
「ひっ、はっ、あ、あっあっ……! なんか、へん、あくるさ、んんっ、あんっ、ゃ、やぁっ、はぁっ……!」

 神楽の音に混じって、指を動かす度に響く粘着音。悪樓の指はさらに肉華の奥へと分け入り、美雨の上部を擦るようにして、膣口が抜ける寸前まで指を引いた。それをゆっくり数回繰り返して、花芯を撫でられる。美雨は鈴のように澄んだ嬌声を上げ、彼の膝の上でピンと足先を伸ばすと、下駄がずれ落ちるほど感じてしまった。
 悪樓の動きはあいかわらず緩やかで、優しいのに、経験の浅い処女の美雨の頭に火花が散るくらい、前戯が上手い。

「あっ、い、いや、また、きちゃう、気持ちいい、あっ、んん、あっ、んんっ、あっあっ……――ッッ!!」
「――――今しがた、美雨が達したのが指に伝わったよ。僅かに、ヒクヒクと媚肉が動いて私の指を締め付けた。どうやら私が思うよりも、嫁御寮は腟内なかも感じやすいようだ。ふふ……ならば、これはどうだろう?」

 美雨は彼の胸板にもたれかかっていたが、しなやかに反り返って絶頂に達した。愛液が溢れて、次々と太腿を濡らしていくのを感じた美雨は、指先まで赤くなって涙目になり、悪樓を見上げる。涼しい美貌に、妖艶で嗜虐的な笑みが浮かぶと、美雨はそれに飲まれるように魅入られ、いやらしく蠢く手に釘付けになった。
 悪樓は手のひらで美雨の花弁を揉むように撫で、挿入した指先を少し折り曲げると、ちょうど花芯の裏側に指の腹が当たり、彼女の体がビクンと動く。いわゆる、ここがGスポットだ。

「あっ、やぁぁっ、あっ、ああっ、んんっ、んぅっ、悪樓さん、そこ……な、なに? あっ、やぁっ……あっ、ああっ、んっ、あっ、はぁ、あっ、あっ、はぁっ」

 美雨の花芯の裏を、悪樓は指の腹で確かめるように押しては撫で、今までで一番良い反応が返ってきた場所を、重点的にピタピタと愛撫した。腰を抱かれ、美雨は彼の膝の上でガクガクと悶えながら震える。
 美雨の腟内なかは、淫らに蠢くように締め付けることはできなかったが、昨晩よりも遥かに愛液の量は多くなって感じている。
 美雨は、敏感な花芯クリトリスだけではなく腟内なかまでも、感じやすい体だと言うことは分かった。悪樓は花弁全体を愛撫するように緩やかに手を動かしながら、Gスポットを刺激する。
 恥ずかしくて、彼の大きな手の甲に指先を添え喘いでいた美雨は、信じられないくらい淫らな音を鳴らす。そして、自分が思いの外濡れていることも自覚した。美雨は性経験がないので、友人たちのように、それほど智識があるわけではない。けれど、お尻の穴まで液体が垂れるほど感じていることだけは、身を持って知った。
 やはり、彼が言うように感じやすいのか。それとも相手が悪樓だろうか。

「あっあっあっ、ゃぁっ、んんっ、あくるさ、あんっ、だめ、だめ、はぁっ、ひっ、――――ッッ! はぁっ、ぁん、も、もう、あくるさん、むり、何回も頭真っ白になってぇっ、あっ、やぁぁっ!」
「嗚呼。神楽などどうでも良くなってしまうくらい、私の嫁御寮は愛らしい。気をやることを我慢できぬくらい、私の指の愛撫に感じているのだね。快楽に喘ぐ貴女の顔を見るとめちゃくちゃにしてしまいたくなる……」

 悪樓にクイッと顎を掴まれると、美雨はとろんとした表情になり、目に涙を浮かべた。悪樓の冷たい唇が重なって、暖かな舌が絡まり合う。悪樓の指が淫らな音を立てて美雨の弱点を攻め、快楽の頂へと追い詰める。そして、深海のように深くて甘い舌の動きに、飲み込まれ美雨は絶頂に達した。
 畳み掛けるように、何度も達し続ける美雨の膣口に指を動かして愛撫すると、お漏らしするように、大量の愛液が飛び散りキラキラと光って舞った。

「~~~~ッッ!」
「美雨。残念ながら時間切れのようだね。巫女舞が、もうそろそろ終わる頃だろう」
「わ、私……お漏らししちゃって」
「ふふ……良い。私の愛撫で潮を吹いただけだ。それは小水とは異なるので、心配はいらぬ」
「潮……? は、はい」

 悪樓は優しくそう言って、美雨の額に口付ける。着物から取りだしたハンカチで、濡れた秘部を綺麗に拭かれると、それだけで感じてしまう自分が恥ずかしくなる。
 尿ではないなら、あれが何なのか美雨には見当がつかなかった。
 しかし、そんなことより下着はもう使い物にならない。このまま神楽をノーパンのまま見なければいけないのだろうか? 着物を整えられて、抱き起こされた美雨は、もじもじしながら彼を見上げた。

「あ、あの……下着が」
「すまぬ。私としたことが、月に惑わされたのか……。座っても見えないだろうが、神楽が終われば、すぐに私たちの屋敷に戻ろう」
「は、はい……」

 抱き寄せられると、美雨は彼の胸板に頬を寄せた。申し訳なさそうにしているけれど、さり気なく『私たちの屋敷』に戻ろうと促しているところを見ると、きっと悪樓は確信犯なのだろう。
 美雨は男に羽衣を取られた天女が、天界に帰れなくなってしまった民話を思い出した。彼は友人たちの屋敷に、自分を帰すつもりはないのだから。

(悪樓さん、ずるい……でも、嫌いになれない。私、変なのかな……。うん、変だよね……)

 涼しい顔をして、自分を絡め取るように惑わせる悪樓を嫌いになることができない。不思議と屋外であんなに、恥ずかしいことをされてしまったのに、怒りは湧いてこないのだ。こうして悪樓の腕に抱かれる度に、昨日よりも距離が近くなったような気がする。

「美雨、歩けるか?」
「はい、大丈夫です」
「ほう。それは残念だ。私が貴女を抱いて、歩こうと思ったのだが」
「あ、悪樓さんの意地悪っ」
「そうか? 躓いて転びそうになったくせに。ふふ。童女のように、頬を膨らませて愛らしいな」

 無感情な悪樓が口の端に笑みを浮かべると、美雨は彼の着物の袖を握った。ふと、その指先を悪樓が握る。神楽鈴の音が聞こえ、二人が手を繋いで歩き出すと、夜光虫のような青い光が前方を照らし、後ろに線を引いてキラキラと流れていく。
 まるで、神様の通り道を共に歩いているようだとさえ、錯覚してしまうほど神秘的な光景だった。あれはなんだろう、それを尋ねることも忘れるくらい魅入っていた。
 美雨は、海の中で髪を揺らすようにして歩く、悪樓の彫刻のような横顔を見つめ、漠然とこの神楽は、彼のために捧げられているのだろうと思った。


✤✤✤

 月光と、大量の提灯のお陰なのか、かろうじて女の艶めかしい白い肌が目視できる。鮮やかな着物を捲りあげて、尻を突きだす穂香を陽翔は欲望のままに、突き上げていた。
 穂香は、木の幹に捕まり、陽翔の陰茎に突き上げられる度に、甘い声をあげて悩ましくよがっている。その結合部と白い尻を見ながら、陽翔は唇を噛んだ。

(――――クソッ、なんだってあいつらあんな所で。美雨のやつ、簡単に股開きやがって。昨日会ったばかりの男だろうが)

 陽翔は、辛気臭い神楽なんてなんの興味もなかった。だから、穂香を誘い出し、二人で人気のない森の方へと向かったのだ。良い場所を見つけると、夜空を眺めて彼女と話しながらいちゃついていた。陽翔の経験からして、こういうロマンチックな雰囲気に、女は弱い。
 ここで、二人が居なくなっても、友人たちは察するだろうし、退屈な時間を過ごすならば、穂香とセックスしている方がいい。
 その前に、と用を足しに行った先で、陽翔が見たのは、美雨と悪樓の密会だった。息を殺しながら、悪樓の膝の上で感じる美雨を見た瞬間、怒りがふつふつと込み上げてきた。万年自分に片思いをしていたはずの幼なじみが、他の男の愛撫によがっている。まるで、裏切られたような気分だ。
 美雨の白い肌も、柔らかそうな豊かな胸も、細い足も、着物と悪樓の手で見えなかった陰部も、陽翔は目が離せず、釘付けになってしまった。事が終わり、その場から二人が立ち去るまで陽翔は何もできず、立ち尽くしていた。
 陽翔は、二人の行為を見た直後の興奮と、怒り、嫉妬で感情がごちゃ混ぜになっていた。だから、なかなか戻ってこない陽翔を心配して、こちらに向かってきた穂香を見た瞬間、衝動的にセックスした。

「はぁっ……すごいっ、陽翔くんっ、気持ちいいっ、あっ、ああっ、んん!」
「穂香ちゃんって、エッチだよ……ね! すげぇ濡れてるし」
「そんなこと言わないで、あ、ああんっ」

 興奮と怒りに任せて穂香とセックスをしたものの、肉欲に任せて喘ぐ彼女がおぞましく感じる。セックスをした後の、冷却期間のような感情だ。
 自分の目の前に居る女が、美雨の姿に重なって見えると、萎えそうになっていた自身が復活し、妙に気持ちよくなる。このまま髪を掴んでねじ伏せ、むちゃくちゃに腰を降っていかせてやりたい。
 美雨とは付き合っていた訳でもない。よくあるエロ漫画のように、幼なじみだからといって初恋の相手でもない。ましてや、キスやセックスもしたこともなかった。物静かで一途な金魚のフンのような美雨を、今まで利用することはあっても、疎ましく思っていた。
 そのはずだったのに、自分の手から離れて他の男の元へと飛び立とうとした瞬間、強烈に美雨の存在を意識するとは、思いもしなかっただろう。陽翔の歪んだ愛情かんじょうが、美雨への気持ちを自覚させた。

(分からせてやらねぇと……。俺のこと好きなんだろ)

 そのうち限界にきたのか、穂香が背中を反らせて絶頂に達すると、陽翔も達し欲望を腟内なかにぶちまけ、彼女の腰を抱きしめた。

「――――雨」
「はぁ……はぁ……え?」
「ううん、なんでもない。はぁ……穂香ちゃん、そろそろ戻ろっか。このままここに居たら、また穂香ちゃんを抱きたくなるから。神楽も少しは見ないとな」

 陽翔のにこやかな微笑みに、穂香はほんのり頬を染めると着物を整えた。しかし、耳元で美雨と呼ばれたような気がして、穂香は内心モヤモヤする。けれど陽翔は、何事もなかったかのように、穂香の腰を優しく抱いたので、おそらくあれは、空耳だろうと結論付けた。

(だって……。陽翔くんは、大地くんと美雨が仲良くできるきっかけ作ろうって言ってたじゃない)

 ちらりと、陽翔の顔を見ても感情は全く読み取れない。この旅行に来てからずっとそうだ、と穂香は思った。
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