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十三話 十三夜の下で①(※R18描写有り)

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「え……あ……」

 悪樓の、十三夜の月光に彩られた透けるように白い肌は、まるで漁師を海に引きずり込む人魚のように見えた。妖艶な声で口説かれ、しなやかな指先でゆっくりと唇に触れられると、ぞわぞわと背中に快感が走る。
 あの豪雨の夜に、離れで行われた淫らな戯れを思い出した美雨は、悪樓から目が離せなくなっていた。吸い寄せられるような、悪樓の切れ長の瞳は神秘的で、直視するのも恥ずかしくなってしまうくらいなのに。
 あいかわらず、遠くの方で神楽のお囃子と、歓声が聞こえるのだが、まるでここだけが別世界に隔離されたかのようである。あの、夜光虫のように見える蒼い光は蛍なのだろうか。それが横切る度に彼の髪が銀色に見えて、まるで夢の中のようだ。

「美雨」
「悪樓さん」

 同時に名前を呼んでしまい、美雨は気恥かしくなって項垂れた。悪樓は、すっと美雨の華奢な手首を掴むと彼女の耳元まで屈み込む。悪樓の微かな吐息が首筋にかかるだけで、美雨は感じて、淫靡な吐息をもらしてしまいそうになった。

「美雨、私は大変喉が乾いている。だから貴女の蜜で私を潤して欲しい。もちろん、あの日約束したように、祝言をあげるまでは処女は奪わないが……」
「で、でも。誰かに見られたら、恥ずかしいです」
「私と嫁御寮の逢瀬を、盗み見るような無礼者は私が目を潰してやろう。それとも……いっそ喰い殺してやろうか?」

 妖艶な黒曜石のような瞳が、ゾッとするような冷たい光を放つ。悪樓なら冗談ではなく、本当に殺めてしまいそうな気さえする。それほど彼には迫力があったので、美雨は青ざめるようにして、彼の手をぎゅっと握ると、物騒な言葉をいさめるように頭を振った。

「く、喰い殺しちゃ、駄目です……絶対!」
「嫁御寮がそう言うなら喰らうのはやめておこう。けれど私は、美雨を傷つける者は許さぬ。こればかりは、貴女に頼まれても聞けないよ」

 悪樓はくすくすと笑うと、美雨に口付ける。小鳥のように何度も啄んで、美雨が体の力を抜いた瞬間に、舌が挿入された。柔らかくて温かいそれが美雨の下唇の内側を舐め、優しく傷つけないようにしっとりと舌に絡まると、一気に美雨の呼吸が乱れた。
 羽毛で触れるかのように舌で愛撫し、呼吸を奪うかのような深く甘い口付けで、美雨はそのまま思考まで彼の舌で蕩かされるような気がして、悪樓の着物を握りしめた。まるで深海に沈んでいくような浮遊感だ。
 舌の裏や、口腔内を優しく舐られる度に、彼の懐に堕ちていく。

(――――悪樓さんのキス、本当に気持ちいい。ずっとして欲しいな……)

 ようやく唇が離されると、月光と提灯の淡い赤色の中で銀糸が橋を作った。美雨はまだ息継ぎのタイミングが分からず、少し呼吸を乱すと彼を見上げた。彼女の不安を察したのか、悪樓は手を握ると、大きな大木の下に美雨を誘導する。
 悪樓は体を低くすると、三度目の甘い口付けを交わした。そして、美雨の耳朶をやんわりと唇で咥えると、彼女の耳の形を確かめるように舌でなぞった。耳の裏から耳垂じすいまで、しっとりと舌で舐めて愛撫する。

「あっ………はぁっ………んっ………悪樓さ、ゃ……はぁっ、はぁっ」
「初い。美雨の嬌声は私を簡単に狂わせてしまうな。少しずつ貴女を私の色に染めよう。実は私は貴女が思うよりも淫乱な男でね。貴女が欲しくて欲しくて堪らぬ。これでも、私は我慢をしているのだぞ……罪な嫁御寮よ」

 首筋に唇を這わせた悪樓の囁きは、どこか切なく、待ち侘びていたような苦しげな声で、美雨は心臓を掴まれたように胸が苦しくなった。熱い舌が首筋を辿り、強く吸い付くと、もうこのまま快楽に飲まれてしまってもいいと思うほど、悪樓の愛撫は美雨の身を焦がした。
 こんなに無機質で美しい男性ひとに淫乱だと告白されると、様々な想像が巡ってしまって、顔が熱くなる。そして、知りもしない過去の女性の影に、ほんの少しだけ美雨はヂリっと胸が焦げた。

「んっ……はぁっ……あっ、んんっ、悪樓さん……も、もてそうですよね……はっ、はぁっ……んっ、きゃっ」
「私の嫁御寮は本当に分かりやすくて、いじらしい。私は貴女以外の女には興味はない。私の愛は、貴女だけに捧げられるもの……私は、美雨がいればそれでいい」 

 悪樓は美雨の指の間に舌を入れると嬲る。
 率直に気持ちを伝えられると、美雨の心も体も溶かされて、この行為もすんなりと受け入れてしまう。着物の襟から侵入した手が肌襦袢の上から乳房を揉むと、指の動きに合わせてじんじんとした快楽が脳を刺激した。

「あんっ……ぁっ、んっ、はぁっ、あぅ、やっ、だめ、悪樓さん、そこはっ……、んっ、あっ……やぁんっ……あっあっ」
「そうか。肌襦袢の上からでは物足りぬようだな……。もっと、私を感じてほしい。ほら、美雨の心臓が飛び出さんばかりに鳴っている」

 すっと、指先が肌襦袢の中に入ると丁寧に乳房を揉みほぐす。胸の奥にある快楽の点を親指で抑えるようにして愛撫した。美雨は木の幹にもたれ掛かり、涙を浮かべると頬を染めながら快楽に悶え、足を震わせていた。悪樓は、親指で敏感な胸の先端を押し潰し、円を描いてそこを撫で回すと、美雨は、それに反応するように小刻みに甘い吐息を漏らした。
 そして悪樓は、いよいよ襟元を大きく開いて、美雨の乳房を晒した。性経験のない美雨の乳輪は可憐な薄桃色で、弾力のある柔らかな乳房が愛撫をするたびに揺れた。

「あっ、んっ、はぁっ、あ、悪樓さん、恥ずかしい……んっ、お外でこんな……あっ、はぁっ、ふっ、ぁっ……声が」
「ん……。そう恥じらう必要はない。貴女の声も、神楽で掻き消されてしまうだろう。けれど私だけが、愛しい貴女の淫靡な嬌声を聞くことができる。もう、貴女はこの島から出られず、私の嫁御寮として、私の腕の中で快感に喘ぐしかない」

 悪樓はニヤリと妖艶な微笑みを浮かべると、美雨の豊かな乳房をゆっくりと、下から上へと舐め、揉みほぐしていく。薄桃色の乳輪は季節外れの桜のように鮮やかに充血してきた。
 悪樓はそれを舌で転がすようにして舐めた。乳輪を執拗に愛撫しては、先端に触れないように焦らされると、甘い嬌声も途切れ途切れになる。美雨は跪いた悪樓の肩に手を置き、体を敏感に震わせて背中を反らした。
 美雨の形の良い乳房は、本人が思うよりも美しく、敏感で蠢く舌と指でじわりと汗が滲むほど感じてしまっていた。手の甲で、必死に声を殺す美雨をじっと見つめ、悪樓は唾液に塗れた乳輪から舌を離した。  

「美雨、恥ずかしがる姿もそそられるが、快楽を我慢する姿も良いな。だが、もっともっと素直になって、私の快楽に溺れておくれ」
「っ……はぁっ……んっ、悪樓さん……ひゃっ、あっ、ま、待って、そこはっ……んんっ!」

 悪樓のしなやかな手が、美雨の着物の裾を捲りあげると、ゆっくりと内股を撫でていく。手のひらで優しく擦られているだけなのに、とても気持ちがいい。あの夜の戯れで、悪樓はもうすでに美雨の性感帯を、きちんと把握しているようだった。
 深海のように冷たい美貌に、淫らな笑みが浮かぶと、美雨は悪樓のどんな恥ずかしい命令にも従いたくなるほど、被虐心を擽られた。

「美雨、着物の裾を持ってくれないか。もう、貴女の蜜が欲しい。愛らしい膣口から淫らな津液を垂れ流して、私を満足させてくれぬか」

 異性にコンプレックスや苦手意識のある美雨が、流されやすい性格であるはずはない。けれど彼には逆らえず、心の中であの時の快感をもう一度、感じさせてほしいと願っていた。美雨は素直にコクリと頷くと着物の裾を捲りあげる。
 前座の神楽はいつの間にか終わり、巫女の姿をした二人の少女が神楽鈴を持って現れた。さきほどの賑やかなお囃子とは異なり、雅楽に合わせて、緩やかな舞いが始まる。
 悪樓が美雨の下着を指で掴むと、不思議なことに刃物で斬られたようにスッパリと外れ、はらりと地面に落ちた。

「はっ、やぁ、なんでっ……んっ、はぁっ、あっ、あんっ……やぁっ、悪樓さっ、んっ……やっ、あっあっ、はぁっ、だめ、それっ、あっ、んっ、ああっ、だめっ、はぁっ、やぁぁん」

 悪樓は美雨の片脚を肩にかけると、無毛の女陰に顔を埋めた。優しく労るように亀裂を舌を尖らせて舐めると、ゆっくりと舌の腹で全体を捏ね回すようにして愛撫する。美雨は耳まで赤面して唇を強く噛むと、無意識に腰が動いてしまった。

(悪樓さんっ……優しい、凄く優しく舐めてるのに、気持ちいいっ。あんな所を男の人に舐められて、気持ちいいなんて、私、本当に変態なの? どうしよう、声が……とめられない)

「っ、はうっ………あっ、んっ、あっあっあっ、んっ……はぁっ、んんっ、やっ、あっ、悪樓さんっ……はぁっ、だめ、だめ、気持ちいいの、んっ、んんっ」
「嗚呼、ようやく素直な貴女の鳴き声が聞けたな。ん……ほら、美雨の女陰から蜜が溢れてきた。私は喉が乾いているのだ、もっと濡らしておくれ、私の愛らしい嫁御寮……んん」

 悪樓の指がぱっくりと美雨の陰裂を開けると、重なり合った媚肉びにくを舌で犯すように挿入し、溢れてきた愛液を吸い、舌に絡ませ尿道口から花芯までを丁寧に愛撫して、深く口付ける。美雨は、自分でも知らないうちに次々と溢れ出る愛液に驚愕しながら、嬌声を上げるしかなかった。
 柔らかくて熱い舌先は、美雨の体を傷つけることなく、ただただ淫らな快感だけを体に覚えさせてくれるだけだ。

「はぁっ、はぅっ、んっ、あっあっ、ああっ、わたし、わたしっ、んっ、やっ、やっ、あっ……んっ、また、頭が真っ白にっ………ッッ!」
「良い、良い。なまじ快楽を覚えておいたほうが、初夜が待ちどうしくなるだろう。さぁ、私の舌で達しておくれ」

 ピチャ、ピチャと愛液と舌が絡まる音が大きくなっていく。悪樓の愛撫に、美雨の花弁は愛液で濡れそぼっていた。溢れたそれは内股から一筋の液体となって流れていて、厚い舌が集中的に勃起した花芯を舐めると、美雨の呼吸が浅くなっていく。まるで快楽の全神経がそこに集中して、もう腰が抜けてしまいそうなほどの愛撫に酔いしれた。
 同じリズムで、そこを集中的に舐められ苛められると、あの時初めて感じた絶頂オーガニズムが連続で、美雨の体に押し寄せてくる。

「~~~~ッッ! はぁっ、はぁっ、だめ、いっちゃう、あくるさっ、ん、やあぁっ!」

 美雨の体が硬直すると、溢れた愛液で悪樓は喉を潤した。お尻の穴まで愛液で濡れてしまって、美雨は真っ赤になる。おまけに下着も破れて履けなくなってしまい、濡れた秘部のままノーパンで神楽を見ることになるのでは、と考えると恥ずかしくなってしまった。
 そんなこともつゆ知らず、悪樓は不意に立ち上がると、美雨を抱いて木下に座り込んだ。
 美雨を自分の膝の上に乗せ、背中にもたれさせると、乱れた着物のまま彼女の両足を開き、あられもない格好で濡れた花弁を外部に曝した。
 美雨はいやらしい格好に動揺し、思わず肩越しに悪樓を振り返って話しかけた。

「あ、悪樓さん……っ。着物が汚れちゃいますよっ……。そ、それに、巫女舞が始まっちゃいました。もう向かわないと。あ、な、なに……してるの?」
「ふふ、巫女舞はまだ始まったばかりだ。私の着物のことは気にしなくていい。美雨、まだ時間はあるぞ。思う存分女陰を舐めたいが、貴女を鳴かせる楽しみは初夜に取っておこう。今宵は少し、嫁御寮の腟内なかを指で慣れさせておきたいのだ。昨晩は私の男根の収まりがつかず、しなかっただろう?」

 後ろから低い声で艶っぽく囁かれると美雨の鼓動が早くなる。ふと悪樓は美雨の濡れた花弁に触れ、つぅ、と花弁から淫らに愛液が糸を引いているのを、美雨に見せつけるようにして悪樓は舌で舐め取る。その淫靡な行動に、美雨は赤面しながらも陰部への指の愛撫を想像すると、緊張して身を固くした。未知の場所に異物が入るとなると身構えてしまう。

「あ、あの、それって痛いですか……?」
「大切な私の嫁御寮だ。無論優しくするが、痛かったら私の手に爪を立ててもいい。指に慣れるまで、貴女が一番感じる花芯さねを撫でてやろう。穴戸神舞が始まるまで、美雨は何回達するだろうな。……ふふ」

 耳の付け根を舐められると、美雨の華奢な丸い肩が震えた。美雨は、劣情と快楽で思考はふわふわとしていたが、悪樓の強い愛情だけはしっかりと感じられたので、信頼するようにこくんと頷く。

(――――悪樓さんなら、きっと私に乱暴なことはしないよね)
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