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第三部 天界編
玖、天の命運をかけて―其の弐―
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この銀河の管理者として、朔は父親の望みを叶えることにした。彼の寿命がどれほど残っているのか分からない。気が遠くなるほど、天帝が統治していたのだから、人間の感覚とは異なり、何万年も先なのか。それとも、今すぐ崩御してしまうのか。
しかしこの孤独の中で、均等を保つために統治していた彼は、ずいぶんと疲労しているように見える。あの黒い穴は天帝の力が弱まり、均等が崩れると、大きく広がっていくという。長い時間、この銀河のために力を使っていたのだから、ようやく安らぎを手に入れるのだろう。
天帝が言うには、管理者の仕事とは自分の力を制御し、任された銀河と神々、人間、そして今は敵対している天魔との均衡を保つこと。何かが一つでも滅びれば、積み木が崩れて落ちてしまうように乱れる。そう聞けば、天魔界を統治しているよりも、格段に面白そうだった。
「――――朔。これが私がそなたに父として最後にしてやれることだ。私のすべての力をそなたに授ける。この銀河の成り立ちも『彼ら』のことも知ることができる。神々にはそなたの本当の姿は見えないが、誰に見せるかはそなたが選べる」
「すげぇ、便利だな。敵対していた奴が天帝になるだなんて、あいつらにとっちゃ地獄かもしれねぇけどよ」
「知らぬが仏。そのように力を使い分けよ。それから、最愛の者を側に置くといい。私が最も力が安定していたのは……、そなたの母のお陰であるから。私は、これでもそなたが可愛くてな。背負わせてしまうが、幸せを願っている」
無感情の天帝に、懐かしむように笑みが浮かぶ。思えば自分だけが父の姿が見えるのも、信頼しているという証だったのか。実の親に捨てられたと不貞腐れていたが、天帝は阿修羅王から自分を守るために逃しただけだった。母を愛していたのも、嘘ではないだろう。
天魔の養父も、天帝も、朔にとってまぎれもなく『父』だった。神や天帝が死ぬとどこへ行くのか、それとも無に還るのか、朔にも想像もつかないが、今になって酷く寂しく思えた。
「俺に力を譲れば、親父は本当に死ぬのか?」
「そうだ。私の魂が完全に蝕まれてしまう前に継承する。若菜を助けたいのだろう? ならば強くなれ。信頼できる友と力を合わせて、調和を乱す阿修羅王を裁くのだ。そなたは阿修羅王の力も、私の力も受け継いだ、強い管理者だ。私よりもよりよくこの銀河を導ける」
天帝はまっすぐに朔を見つめると、最後の抱擁をした。もし父の死の先に、母と落ち合えることができるなら、それを望まずにはいられない。朔が恐る恐る、敵対し、憎んでいたはずの父の背中に手を回した瞬間、膨大な力が自分の体に流れ込んできた。
そして数々の記憶、知らない言語、知識に頭がパンクしそうになりながら朔は歯を食いしばる。その凄まじさに思わず呻いた瞬間、触れていた天帝の体が一瞬にして消え去った。まるで初めからそこには、何もなかったかのように。
朔の頭の中に、ぼんやりと手のひら大の銀河が浮かんで、輝く星雲が見える。父から見せられた蝕む黒い穴はもう跡形もなく消え去り、感じたことのない力が満ち溢れているように思えた。ふと、肉親を失った寂しさと、孤独が胸に押し寄せる。
「……こんな、布切れ一枚残して死ぬなんてさ。冗談きちぃよな。だけどこれで、本当に朔の願いも叶えてやれる。若菜を救出し、そして天国の調和を幾度となく乱す、阿修羅王を罰する」
もう、なんの憎しみもない。第六天魔王の頃に抱えていた怒りもない。彼の背中に生える六枚の翼は、白銀に光り輝いていて、無限の力に満ちている。床に落ちていた、父が身につけていた陰陽の布を取ると、朔は自分の顔にそれをそっとつける。
「天界兵よ。ここに、安倍晴明を呼べ。そして俺の意志を、天国の神々に伝えよ」
「はい。天帝様」
新しい天帝が誕生した瞬間に、それまでの天界兵は天帝の力を失い泡のように消え、神々は随分と戸惑ったことだろう。一体何が起こったのかと混乱したはずだ。朔の力が満ちて、天界人を宿す卵から黄金の翼をもつ天界兵が生まれた。彼らは天帝による高度な式神のようなもので、自分の意志はあるものの、管理者の力に依存する。
ずらりと並んだ天界人や天女はどれも鎧を身に着け、跪いた。
「御意」
✤✤✤
由衛や吉良たちは、安倍晴明とようやく天界で出逢って安堵した。天照大神の元にいたものの、どうやってあの暴君の阿修羅王から、若菜を引き離せば良いのか、分からなかったからだ。
天照大神の話によると、若菜は第六天魔王の愛人の罪状があり、阿修羅王は戦利品として彼女を奪っていった。阿修羅王は若菜に執着しているようで、主人の身を案じる四人だったが、ただの眷属では天照大神の命令を、待つしかなかない。しかし、安倍晴明という強力な助っ人が現れたのだ。
晴明の姿は、娑婆世界にいた時と変わらず、天魔界で戦った時のように、半神の姿ではなく、人間の姿そのままで、完全体になったようだ。
『晴明様、高天原に戻られてから神通力がお強くなられたのでは。なんと神々しい……』
『久しぶりねェ、色男。で、私たちをどこに連れて行くつもりだい?』
『まさか、狗神の俺が高天原まで来るとはァ、思わなかったが。もう何が起きても驚きゃあしねェよ。所で、朔はどうなっちまった? まさか、天帝とやらに殺されてねェだろうな』
『天照大神様のお話しでは、魔王は幽閉されたまま、処分が決まっていないと聞きましたが』
晴明と天照大神が、しばらく密談をしたのちに、別の場所に移動すると言われた。口々に不安を漏らす眷属たちに、晴明は少し笑う。無理もない、彼もまた天帝の強い気配を感じたと思ったら、隣で幽閉されていたはずの朔が居なくなっていた。
どうしたものかと考えていたら、毛色の違う天界兵によって、新しい天帝の御前まで連れてこられたのだ。白亜の故宮を歩きながら、五人は謁見の間へと向かう。無機質だが、調和されたそこは美しく、神聖だった。
「そう、心配せずとも良い。きっと先代の天帝よりもお主らは親しみを持つだろう。私も、母上の神狐の力ではなく、陰陽道の神として新たに神格を完全に目覚めさせて貰った。もとより、それが私の力であった。もう、私は半神ではない」
『は、はぁ……。なんかよう分からんけど、つまり、完全体のような感じやろか。天帝により覚醒されたみたいな』
由衛が吉良にそう囁くと、知らんと突っぱねられる。ともかく今から向かうところは、天帝がいる故宮であることはわかった。さきほどから忙しく飛び交う天界兵も、見慣れた姿ではなく、翼が金色に光り輝いていて鎧も違う。
それを不思議に思いながら、とうとう天帝の御前まで来ると、四人は緊張したように体を固くさせた。彼らの知識では天国止まりで、その上の存在なんてものは知らなかったし、意識したこともない。神々よりも上の、銀河の創造神のような存在に、出逢えるとは思ってもみなかった。
白い大理石で出来た石段の上に、無機質な玉座が置かれ、そこにはまだ誰の姿もない。晴明が目配せすると、四人が本能的にその場で跪き、目を伏せる。もし、失礼なことがあれば存在ごとかき消されるかもしれない。
「――――天帝よ。若菜の式神を連れてきた」
「うむ。苦しゅうない……って言ってみてぇ台詞だよな。よぉ、久しぶり」
聞き覚えのある声がして、反射的に四人が顔を上げる。そこには、陰陽の布をペラっと暖簾のように上げた朔が、口の端にニヤリと笑みを浮かべていた。完全に全員が鳩が豆鉄砲を食ったような顔になると、言葉を失う。
あいかわらずふてぶてしく、玉座に座っている第六天魔王だが、その格好は神々しく、巨大な力を手にしたように見えた。
『は? なんや……夢でも見とるんか? それとも天帝の幻覚か』
『いや、幻覚なんかじゃねェ。どういうこった。第六天魔王と天帝は、同じだなんてオチなんぞ、笑えねぇぞ?』
『ぼ、僕も意味が分かりません……』
『あんたは、死んでないって思ってたけど、これは一体どういうことなのさ。下剋上して天帝になったのかい?』
大混乱する四人を見て、朔はニヤニヤと笑っていたが、晴明はこの趣味の悪い手法に呆れつつも、彼らの方に向き直って言った。
「天帝の出生を私が話す訳にはいかぬが、朔はもう、第六天魔王ではない。天魔界を統べるのは霧雨という男に任せると言う」
「俺の目からみても、霧雨が天魔界を支配したほうが、均等が取れる。あいつはそれだけの手腕を持った男だ。ま、いい藍雅もすぐにできるだろうしな。俺が天帝になることで、天魔界との争いはなくなるだろう。簡単に言うと、どでかい親子喧嘩して、和解。んで、俺は若菜のために親父の跡を継いだ」
超展開で理解が追いつかず、全員が内心動揺を隠せなかったが、ともかく現実は、朔は自分たちの味方である。紛れもなくここは天界で、彼がありとあらゆる神々と、天国の頂点に立ち、管理者となったのだ。朔は瓜二つで邪悪な第六天魔王と呼ばれた朔と同化したが、彼らの目的も、心も完璧に一つになったような気がする。
『お姫さんのために……。ここに連れて来られたってことは、俺たちにもその役割があるってことやろうな?』
「あぁ。お前らだってさんざんあいつらにしてやられただろ。若菜を殺しかけたのも阿修羅王だ。俺はあいつに借りがあるし、最愛の女は取り返す。だから、調和と均等を保つために修羅界を攻め入るぞ。そのために俺の加護の力を少し分け与えてやろう。この戦のみの、限定になるが」
決着をつける時が来た。朔の言葉で四人の体の内側から力が漲るのを感じた。今回は天界兵を相手にはしないが、それ以上に強力な天鬼たちがいる。そいつらを仕留めるだけ力がついたような気がした。
ゆらりと朔が玉座から立ち上がると、大きな白銀の六枚の羽が揺らめいた。そして浮かび上がる飛天の光背が、黄金に光り輝いている。
「今度こそ決着をつけてやろうぜ。若菜は泣き虫だからな。早く俺たちで迎えに行ってやろう」
しかしこの孤独の中で、均等を保つために統治していた彼は、ずいぶんと疲労しているように見える。あの黒い穴は天帝の力が弱まり、均等が崩れると、大きく広がっていくという。長い時間、この銀河のために力を使っていたのだから、ようやく安らぎを手に入れるのだろう。
天帝が言うには、管理者の仕事とは自分の力を制御し、任された銀河と神々、人間、そして今は敵対している天魔との均衡を保つこと。何かが一つでも滅びれば、積み木が崩れて落ちてしまうように乱れる。そう聞けば、天魔界を統治しているよりも、格段に面白そうだった。
「――――朔。これが私がそなたに父として最後にしてやれることだ。私のすべての力をそなたに授ける。この銀河の成り立ちも『彼ら』のことも知ることができる。神々にはそなたの本当の姿は見えないが、誰に見せるかはそなたが選べる」
「すげぇ、便利だな。敵対していた奴が天帝になるだなんて、あいつらにとっちゃ地獄かもしれねぇけどよ」
「知らぬが仏。そのように力を使い分けよ。それから、最愛の者を側に置くといい。私が最も力が安定していたのは……、そなたの母のお陰であるから。私は、これでもそなたが可愛くてな。背負わせてしまうが、幸せを願っている」
無感情の天帝に、懐かしむように笑みが浮かぶ。思えば自分だけが父の姿が見えるのも、信頼しているという証だったのか。実の親に捨てられたと不貞腐れていたが、天帝は阿修羅王から自分を守るために逃しただけだった。母を愛していたのも、嘘ではないだろう。
天魔の養父も、天帝も、朔にとってまぎれもなく『父』だった。神や天帝が死ぬとどこへ行くのか、それとも無に還るのか、朔にも想像もつかないが、今になって酷く寂しく思えた。
「俺に力を譲れば、親父は本当に死ぬのか?」
「そうだ。私の魂が完全に蝕まれてしまう前に継承する。若菜を助けたいのだろう? ならば強くなれ。信頼できる友と力を合わせて、調和を乱す阿修羅王を裁くのだ。そなたは阿修羅王の力も、私の力も受け継いだ、強い管理者だ。私よりもよりよくこの銀河を導ける」
天帝はまっすぐに朔を見つめると、最後の抱擁をした。もし父の死の先に、母と落ち合えることができるなら、それを望まずにはいられない。朔が恐る恐る、敵対し、憎んでいたはずの父の背中に手を回した瞬間、膨大な力が自分の体に流れ込んできた。
そして数々の記憶、知らない言語、知識に頭がパンクしそうになりながら朔は歯を食いしばる。その凄まじさに思わず呻いた瞬間、触れていた天帝の体が一瞬にして消え去った。まるで初めからそこには、何もなかったかのように。
朔の頭の中に、ぼんやりと手のひら大の銀河が浮かんで、輝く星雲が見える。父から見せられた蝕む黒い穴はもう跡形もなく消え去り、感じたことのない力が満ち溢れているように思えた。ふと、肉親を失った寂しさと、孤独が胸に押し寄せる。
「……こんな、布切れ一枚残して死ぬなんてさ。冗談きちぃよな。だけどこれで、本当に朔の願いも叶えてやれる。若菜を救出し、そして天国の調和を幾度となく乱す、阿修羅王を罰する」
もう、なんの憎しみもない。第六天魔王の頃に抱えていた怒りもない。彼の背中に生える六枚の翼は、白銀に光り輝いていて、無限の力に満ちている。床に落ちていた、父が身につけていた陰陽の布を取ると、朔は自分の顔にそれをそっとつける。
「天界兵よ。ここに、安倍晴明を呼べ。そして俺の意志を、天国の神々に伝えよ」
「はい。天帝様」
新しい天帝が誕生した瞬間に、それまでの天界兵は天帝の力を失い泡のように消え、神々は随分と戸惑ったことだろう。一体何が起こったのかと混乱したはずだ。朔の力が満ちて、天界人を宿す卵から黄金の翼をもつ天界兵が生まれた。彼らは天帝による高度な式神のようなもので、自分の意志はあるものの、管理者の力に依存する。
ずらりと並んだ天界人や天女はどれも鎧を身に着け、跪いた。
「御意」
✤✤✤
由衛や吉良たちは、安倍晴明とようやく天界で出逢って安堵した。天照大神の元にいたものの、どうやってあの暴君の阿修羅王から、若菜を引き離せば良いのか、分からなかったからだ。
天照大神の話によると、若菜は第六天魔王の愛人の罪状があり、阿修羅王は戦利品として彼女を奪っていった。阿修羅王は若菜に執着しているようで、主人の身を案じる四人だったが、ただの眷属では天照大神の命令を、待つしかなかない。しかし、安倍晴明という強力な助っ人が現れたのだ。
晴明の姿は、娑婆世界にいた時と変わらず、天魔界で戦った時のように、半神の姿ではなく、人間の姿そのままで、完全体になったようだ。
『晴明様、高天原に戻られてから神通力がお強くなられたのでは。なんと神々しい……』
『久しぶりねェ、色男。で、私たちをどこに連れて行くつもりだい?』
『まさか、狗神の俺が高天原まで来るとはァ、思わなかったが。もう何が起きても驚きゃあしねェよ。所で、朔はどうなっちまった? まさか、天帝とやらに殺されてねェだろうな』
『天照大神様のお話しでは、魔王は幽閉されたまま、処分が決まっていないと聞きましたが』
晴明と天照大神が、しばらく密談をしたのちに、別の場所に移動すると言われた。口々に不安を漏らす眷属たちに、晴明は少し笑う。無理もない、彼もまた天帝の強い気配を感じたと思ったら、隣で幽閉されていたはずの朔が居なくなっていた。
どうしたものかと考えていたら、毛色の違う天界兵によって、新しい天帝の御前まで連れてこられたのだ。白亜の故宮を歩きながら、五人は謁見の間へと向かう。無機質だが、調和されたそこは美しく、神聖だった。
「そう、心配せずとも良い。きっと先代の天帝よりもお主らは親しみを持つだろう。私も、母上の神狐の力ではなく、陰陽道の神として新たに神格を完全に目覚めさせて貰った。もとより、それが私の力であった。もう、私は半神ではない」
『は、はぁ……。なんかよう分からんけど、つまり、完全体のような感じやろか。天帝により覚醒されたみたいな』
由衛が吉良にそう囁くと、知らんと突っぱねられる。ともかく今から向かうところは、天帝がいる故宮であることはわかった。さきほどから忙しく飛び交う天界兵も、見慣れた姿ではなく、翼が金色に光り輝いていて鎧も違う。
それを不思議に思いながら、とうとう天帝の御前まで来ると、四人は緊張したように体を固くさせた。彼らの知識では天国止まりで、その上の存在なんてものは知らなかったし、意識したこともない。神々よりも上の、銀河の創造神のような存在に、出逢えるとは思ってもみなかった。
白い大理石で出来た石段の上に、無機質な玉座が置かれ、そこにはまだ誰の姿もない。晴明が目配せすると、四人が本能的にその場で跪き、目を伏せる。もし、失礼なことがあれば存在ごとかき消されるかもしれない。
「――――天帝よ。若菜の式神を連れてきた」
「うむ。苦しゅうない……って言ってみてぇ台詞だよな。よぉ、久しぶり」
聞き覚えのある声がして、反射的に四人が顔を上げる。そこには、陰陽の布をペラっと暖簾のように上げた朔が、口の端にニヤリと笑みを浮かべていた。完全に全員が鳩が豆鉄砲を食ったような顔になると、言葉を失う。
あいかわらずふてぶてしく、玉座に座っている第六天魔王だが、その格好は神々しく、巨大な力を手にしたように見えた。
『は? なんや……夢でも見とるんか? それとも天帝の幻覚か』
『いや、幻覚なんかじゃねェ。どういうこった。第六天魔王と天帝は、同じだなんてオチなんぞ、笑えねぇぞ?』
『ぼ、僕も意味が分かりません……』
『あんたは、死んでないって思ってたけど、これは一体どういうことなのさ。下剋上して天帝になったのかい?』
大混乱する四人を見て、朔はニヤニヤと笑っていたが、晴明はこの趣味の悪い手法に呆れつつも、彼らの方に向き直って言った。
「天帝の出生を私が話す訳にはいかぬが、朔はもう、第六天魔王ではない。天魔界を統べるのは霧雨という男に任せると言う」
「俺の目からみても、霧雨が天魔界を支配したほうが、均等が取れる。あいつはそれだけの手腕を持った男だ。ま、いい藍雅もすぐにできるだろうしな。俺が天帝になることで、天魔界との争いはなくなるだろう。簡単に言うと、どでかい親子喧嘩して、和解。んで、俺は若菜のために親父の跡を継いだ」
超展開で理解が追いつかず、全員が内心動揺を隠せなかったが、ともかく現実は、朔は自分たちの味方である。紛れもなくここは天界で、彼がありとあらゆる神々と、天国の頂点に立ち、管理者となったのだ。朔は瓜二つで邪悪な第六天魔王と呼ばれた朔と同化したが、彼らの目的も、心も完璧に一つになったような気がする。
『お姫さんのために……。ここに連れて来られたってことは、俺たちにもその役割があるってことやろうな?』
「あぁ。お前らだってさんざんあいつらにしてやられただろ。若菜を殺しかけたのも阿修羅王だ。俺はあいつに借りがあるし、最愛の女は取り返す。だから、調和と均等を保つために修羅界を攻め入るぞ。そのために俺の加護の力を少し分け与えてやろう。この戦のみの、限定になるが」
決着をつける時が来た。朔の言葉で四人の体の内側から力が漲るのを感じた。今回は天界兵を相手にはしないが、それ以上に強力な天鬼たちがいる。そいつらを仕留めるだけ力がついたような気がした。
ゆらりと朔が玉座から立ち上がると、大きな白銀の六枚の羽が揺らめいた。そして浮かび上がる飛天の光背が、黄金に光り輝いている。
「今度こそ決着をつけてやろうぜ。若菜は泣き虫だからな。早く俺たちで迎えに行ってやろう」
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